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※この作品は『メッセージ』を共通項目としたCPランダムの
オムニバス作品集です。
暫くの期間、出てくるCPはネタによって異なります。
通常のように一つのCPに焦点を当てて掲載する話ではなく
1話完結から2~3話で纏めて、鬼畜眼鏡ゲーム本編に出てくる一通りの
CPを消化するまで続きます。
期間中、それらを踏まえた上で作品をご覧になって下さい。
この形での連載期間はタイトルの部分に扱うCPも同時に
表記する形になります。興味ない方はスルーなさって下さい。
その日、佐伯克哉は皆にガムを配っていた。
最近発売したガムレターという…ガムに文字を刻印する形で
メッセージをつけるという道具を取引先から貰った為だ。
ただ…現状では9種類しか規定のメッセージが用意されていないので…
ネット上で手続きをして比較的安価な値段で新しいメッセージプレートを
受注して作るという試みをしていると聞かされて、克哉は試してみませんか?
と取引先から声を掛けられていた。
それで一種類、オリジナルの物が作れますよ…と言われて克哉は
大いに関心を持ったようだった。
ようするにそういう形式で発表する前に、モニターとして実際に
やってみてそれが実際に出来るか試してみたいと…そういう意図で
声を掛けられたのだ。
そしてその作って貰った三種類の文字を加えて、10枚入りのミント味の
ガムを購入し、メッセージを刻印して…日頃お世話になっている八課の
仲間たちに手渡しで配っていた。
こういう心遣いは結構、嬉しいものである。
克哉の手からガムを渡された人々の顔には皆、笑顔が浮かんでいる。
ただ…その中で本多だけが酷く緊張した面持ちで、どんなメッセージが
刻まれているのか渡された品を凝視していた。
「これ、片桐さんどうぞ…。ガムレターといって、文字を刻んであるので
食べる時にちょっと見てやって下さい」
「ああ、これが先日佐伯君がモニターとして声を掛けられたといっていた
製品のですか…。ちょっと気をつけて触って見ると確かに少しボコボコ
していますよね。果たして…どんなメッセ―ジなんでしょうか?」
「…ふふ、それは見てのお楽しみです。恥ずかしいですから出来れば
あまり人に見せないで下さいね」
「えっ…そんな事はないですけど。あ、そろそろ外回りに出ないといけない
時間になったので失礼しますね」
「ああ、行ってらっしゃい佐伯君。暖かい心遣いをありがとう…」
「…先に言われてしまいましたね。はい、でも…行って来ます」
そうして本多が座っている席からそう離れていない距離で、片桐と克哉の
暖かい言葉のやりとりが交わされていく。
だが、本多としては克哉からどんな言葉が贈られるのか気が気ではなかった。
(克哉…俺には一体、どんな言葉を贈ったんだ…?)
数ヶ月前、本多は克哉に本気で惚れている事を自覚して…熱烈な
アタックを続けたが結局、両想いになる事は出来なかった。
彼的に今でもトラウマになるような一言を笑顔で言われてしまい…
そして今の友人以上、恋人未満という微妙な関係を続けることに
なってしまっていた。
(…ちょっとでも期待が持てるようなメッセージを渡されていますように…!)
そういって自分の携帯でネット機能を立ち上げて…さっき克哉が言っていた
ガムレターというのを検索していく。
すると三種類のセットが用意されていて…一つのセットに三つのメッセージ
プレートが付属しているようだ。
ブルーの本体はベーシックレターで「おつかれさま」「ありがとう」「がんばってね」が。
レッドの本体にはアシストメッセージ「ファイト」「リラックス」「よろしくね」が。
イエローの本体はハッピーレターとして「祝\(^o^)/」「ごめんね」「こんや☆どう?」
の三つのメッセージが付属されているようだ。
そしてその時…本多が希望を見出したのが「こんや☆どう?」だった。
(もし…この言葉が刻印されているのならば、少しは期待しても良い筈だ…!
それが飲みに誘う程度の意味であったとしてもな…)
そして本多はガムの包み紙を取るだけとは思えないぐらいに緊張
しながら…メッセージを確認する勇気を出した。
心拍数は上昇し、何というか汗がジワっと指先から溢れてくるようだ。
だがどうしても克哉の気持ちを今、確かめたかった。
―果たして彼にとって自分はどういう存在なのか…
そして本多は包み紙を取っていく。
其処には本来用意されている9種類とはまったく違い、同時に彼の
心を大きく打ちのめす一言が刻印されていた。
「そんなぁぁぁぁ!」
その時、本多は大いにオフィス内で雄叫びを挙げてしまった。
彼の魂の叫びとも言える、切なく…同時に滑稽な声だった。
本多はその場で机の上に突っ伏して、シクシクシクと心の中で
泣き始めていく。
この悪夢のような一言を告げられるぐらいなら、単なる同僚宛てとして
ベーシックな「ファイト」や「ありがとう」「よろしくね」などの言葉が贈られた
方が絶対に良かったと心底思った。
「…おや、本多君。どうしましたか…。何か凄い声を挙げていましたけど…」
「いや、克哉から渡されたガムの文字を見て…ちょっと悲しくなってしまったので」
「えっ…何て書かれていたんですか?」
「これですよ…」
そうしてゾンビのようにカクカクしたぎこちない動きをしながら…自分に渡された
ガムを片桐に見せていく。
其処にはくっきりとこう書かれていた。
『本多は親友だよ』
それはあの日、克哉に告げられた残酷すぎる言葉だった。
本多は克哉に対して本気で想いを寄せている。
なのに惚れている相手にこんな言葉をぶつけられて打ちのめされない男は
存在しないだろう。
だが片桐はそれを見て微笑ましそうに呟いていった。
「…おや、とても良い言葉ではありませんか。それだけ佐伯君にとって…
本多君は大切な親友なんでしょう。充分に佐伯君の想いが伝わって
くるようですよ…。規定のものではなく、一種類だけのオリジナルプレートを
わざわざこの言葉を刻んで渡すなんて…充分特別ですし」
「…えっ、そうなんすか?」
「はい、モニターを持ちかけられた時…規定の奴にないメッセージを一個だけ
作ってもらえる事になったそうですが…これがきっと、そうなんですね。
それだけでどれだけ佐伯君が本多君を頼りにしているか伝わってきます」
「そ、そうですね…! そう、前向きに考えることにします…!」
さっきまで打ちのめされていた本多だが、八課きっての癒し系である片桐に
そう言われて再び希望を取り戻していった。
そうして本多は惚れてやまない相手の笑顔を脳裏に浮かべていくと…
次の瞬間に、あれ…と思った。
「おや、どうしました?」
「いや、何でもないっす…! そういえば片桐さんはどんなメッセージを
克哉から貰ったんすか?」
「ああ、僕は「ありがとう」でしたよ。ふふ…こういう形で感謝を伝えられると
何かくすぐったい気分になって…嬉しいですよね」
「そう、ですね。励まして下さってありがとうございます。俺もそろそろ
仕事に戻りますね…!」
そういっていつもの元気ハツラツの態度に戻して、片桐を心配かけまいと
カラ元気を出して話を終わりにしていく。
だが、仕事に戻った瞬間…さっき浮かんだ克哉の笑顔がまるで
ある歌の一小節のようだったので猛烈な違和感を覚えていった。
(確か昔…あったよな。天使のような~悪魔の笑顔って…フレーズが
どっかの歌で…。何故かこのガムを見ていると…脳裏に浮かぶ克哉の
顔が…そんなふうに思えるのはどうしてだろう…)
そうして、本多は溜息を吐いていく。
きっと特別な想いを抱く前だったら心から嬉しかった一言も、恋する男と
なってしまった彼にとっては…其れはあまりに残酷すぎる、克哉からの
本音のように思えてならなかったのだった―
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当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
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…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。