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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 ※本日2009年10月28日を持ちまして、
当サイトも無事二周年を迎えました。
 サイト開いた当初は身辺もゴタゴタしていましたが
その状態でも萌えのままに突っ走り、勢いで始めたサイトが
まさか二年も続くとは本人もびっくりです。
 これも拍手をして下さったり、こちらの更新を楽しみにして
下さっている方々がいてくれたおかげです。
 本当にありがとうございました!!

 本日掲載のSSは持ち帰り自由です。
 CPは御克にしようか、眼鏡×御堂にしようか迷いましたが
サイト開いた当初、最初に始めた連載がメガミドの「夜の帝王」
だったことにちなんで、眼鏡×御堂にしました。
 …一人ぐらい、持ち帰ってくれると良いなぁ…という実に弱気な
企画ですが、良ければ目を通してやって下さい。
 なお、このSSは年内はいつでも持ち帰り自由です。
 その際には一言報告して頂ければ喜びますv

『贖罪』 

                         香坂 幸緒

 ―君とは本当に色々あったな

 彼と出会ってから気づいたら二年以上経過していたことに
ふと気づいたある夜、御堂は相手の腕の中に包み込まれて
しみじみと実感していった。
 ここは運営している会社が同じビル内に存在している、現在の
佐伯克哉の自宅の寝室だった。
 多忙を極める日々の中、僅かな隙間を縫うようにこの部屋で
肌を重ねたことが果たして何度あっただろうか。
 もし、会社のすぐ上に住所がなければ…会社を設立して以来、
自分たちがこうして触れ合う時間は取れなかっただろう…そう思うと、
相手の気持ちが見えてしまって、御堂は小さく笑っていく。

(…あの当時は君の行動が酷く突飛に見えたけれど…こうして会社が
軌道に乗ってからは、何故ここに君が住居を構えたのか…嫌って程
理解は出来るな…)

 貪るような行為の後、まだ夜半だというのに御堂だけふと…
先に目覚めてしまった。
 室内の電灯は完全に落とされていて、窓からは銀色の月明かりが
仄かに差し込んでくるだけだった。
 真円に限りなく近い月の形は、まるで夜空に浮かぶ鏡のようだ。
 傍らには克哉が安らかな寝息を立てて眠っている。
 こうして目を閉じていると…自分の恋人は、七歳も年下の青年である
事を実感していく。

「…まったく、寝顔だけは年相応なんだな…君は…」

 御堂は相手の無防備な姿を見て、小さく微笑んでいく。
 きっと今なら、殺意か何かを抱いているならば…相手を容易に手を掛ける
事が出来るだろう。
 ふと、そんな想いがジワリと滲んで…首を振って否定していった。

(…そんなのは、今更だな…。彼を殺して恨みを果たそうとするなら…
彼と再会してからなら幾らでも機会はあった…)

 そう考えた瞬間、御堂の心は二年前の彼との出会った当初の頃に
馳せられていった。
 二年前、傲岸不遜な態度と言動を持って自分の前に現れた七歳も
年下の男は…出会ったばかりの頃の関係は最悪も良い所で、どうにか
失敗させてやろうと、相手を屈服させてやろうと当時はこちらも躍起に
なっていた。
 こちらから接待を要求して、相手より優位に立ってやろうと思ったのは
丁度今くらいの時期の話だった。
 
「っ…!」

 その日の事が過ぎった瞬間、御堂の心に黒いものが浮かんでいく。
 …今でも、許しているとは言い難い。
 胸の奥に秘めたドロドロしたものを垣間見て、御堂は声を漏らしていく。
 たったそれだけの事で心臓の鼓動は乱れ始めて、こちらの息も少し荒く
なっていくのが判った。

―私は君と出会って、初めて愛憎という言葉の意味を理解出来るようになった…

 自分たちは憎しみから、関係が始まった。
 無理やり犯されている処を録画されて、それを盾に脅されて強引に犯され続けた。
 そして最終的には監禁までされ、10年間勤務して部長職にまで登り詰めたのに
MGNも退職せざる得ない状況にまで追い込まれた。
 一時は廃人寸前になり、社会生活を送れるように回復するまでかなりの
時間を要した。
 これだけ上げれば、相手を憎む要素しか存在しない。
 なのにどうして…そんな男を愛するようになってしまったのか、御堂は
今更ながらに振り返っていく。

「克哉…」

 自分の傍らで、泥のように眠っている男の頬を優しく撫ぜながら…
何故、こんな心境の変化が起こったのかを分析していく。
 きっと…彼があのまま自分を追い詰め、何もかも奪い続けていたなら
こんな愛情は決して生まれることはなかった。
 なのに…最後に彼が言った言葉が、全てをひっくり返してしまったのだ。

―そうだな。あんたの事が好きだって事にもっと早く気づけば良かった…

 その一言、きっと…こちらが現状を認識していないと思っていたからこそ
零れたその一言が、きっと今の自分たちの関係を作り上げたキッカケの
ような気がした。
 去り際に残された、想いのこもった一言が…月日が流れていくことで
憎しみも薄れていく中…彼への想いを変質させていった。
 幾ら思っていたからといって、自分が欲しかったからと言って…
彼のした事の全てが許せる訳ではない。
 だが、最後に彼は潔く自分の前から立ち去って…解放していった。
 御堂は部長という役柄上、多くの人間と知り合って来た。
 人間というのは土壇場と去り際に、その人間性が現れる。

―最後の土壇場で、相手を思い遣って立ち去れる人間は本当に稀なのだ

 大抵は決裂するまで抉れた場合、相手の口から漏れるのは恨み言ばかり
だったり…嫌がらせめいた行動を取る人間は非常に多い。
 だからこそ、最後の彼の振る舞いは酷く鮮やかに思えてしまったのだ。
 御堂はそんな当時の心境を思い出して…寂しいような、切ないような
そんな想いを抱いていく。

―私たちには、空白の一年がある。その期間もまた…君と私の今の
関係を作り上げるには不可欠だったんだな…

 もしその間に、佐伯克哉が自分の方から一度でも現れていたら…
彼の最後の行動とその想いを疑ってしまったかも知れない。

―あんたを解放するよ

 そう告げたように、彼はその後…決して御堂を縛らなかったし、
目の前に現れることもなかった。
 最後に想いを告げられたこと、そして本当にこちらを解放してみせた事。
 これが…きっと、憎しみが愛情に転じた大きな要因になっているのだろう。

「…私はどうして、君を愛してしまったんだろうな…?」

 眠る恋人に、問いかける。
 相手と触れ合っている箇所から心地よい温もりが感じられた。
 克哉の息遣いが、体温が…そして鼓動が愛おしい。
 お互いを曝け出し、こうして無防備な姿を晒すのは…相手を信頼
しているからだ。
 憎しみが自然に淘汰され、代わりに愛情と信頼の芽が芽吹いて…
それがゆっくりと育まれたのはどうしてだろうと。
 ふと…不思議に思いつつ、御堂の方から…相手の身体をそっと
抱きしめていく。
 
(まるで…ぬるま湯に浸かっているような気分だな…)

 相手の体温がじんわりとこちらの身も心も温めてくれている。
 つい、キスをしたくなって…相手の唇にキスを落としていった。
 その瞬間に相手の睫が小さく揺れていくのを見て…また、御堂は
微笑を浮かべていった。

―この瞬間、自分は確かに幸福を感じているのを実感した

 そうして…御堂は窓の向こうに浮かぶ月を眺めていく。
 真摯に見つめて、ただ…相手と自分との間に起こった様々な
出来事を振り返っていった。
 どんな人間関係であろうと、長く身近な処で付き合い続けていけば
相手の嫌な処を見て、揉めたりすれ違ったりする事は必ず起こる。
 良い面だけでも、悪い面だけでも人という存在は成り立たない。
 誰でも長所と短所、そして弱点や欠点はあるものだからだ。
 あんなに酷い男なのに、あそこまでの事をされたのに…最終的に
許したその理由。
 自らそれを問いかけて…御堂はふと、気づいていった。

―彼ほど、今まで出会った人間の中でこちらに執着して求めて来た
人間はいなかったからだ

 確かにその行動と手段は間違っていた。
 その為に一歩間違えれば自分という人間は壊れていた…その寸前まで
確かに追い詰められてしまった。
 だが、その酷い行為の奥に…自分が欲しかったからという想いが込められて
いたと知ったからこそ、離れている時間の間にどうにか相手を許して…
その関係を新しい形で再生させたいと思うようになった気がした。
 淡い月光に照らされて、恋人の整った容姿が静かに闇の中に
浮かび上がっていく。
 その時、克哉の唇が小さく動いて…こう呟いていった。

―孝典、すまない…

 まるで、贖罪を求めているようなそんな響きを持って…
相手の目元から、一筋の涙が零れていく。

「嗚呼…そう、か…」

 その涙を見て、御堂は悟っていく。
 この男が犯した重罪を、結局は自分が許したことを。
 告白して去っていく時の彼の背中が、本気で後悔していることが
判ったからだ。
 己の罪を居直る訳でもなく、素直に認めて謝罪した事。
 そしてその事を悔いているのが真実であると伝わった事。
 それが…空白の一年を経て、自分が彼を許せた理由に
繋がっているのだと、そう思った。

「…泣かなくて、良い…。私は、君を赦しているから…」

 いつもは気丈で傲慢でどうしようもない男の癖に…時折、
こうやって自分の前に弱い面を晒す。
 …結局はそのアンバランスさに惹かれてしまったのかも知れない。
 そのことに気づいて、御堂はそっと相手の目元の涙を静かに
唇で拭い取っていく。
 意地の悪い発言や、傲慢な心の奥底に…いつだって彼の中には
御堂に対しての侘びや、贖罪の気持ちが存在している。
 あのような振る舞いは二度としないと、こちらを大切にするという
意思を端々に感じられるからこそ…だから、赦そうと思った。
 後悔し、悔い改めようとしている者を責めるのは…残酷な
行為だからだ。
 逆にこの男が居直り、こちらにした行為を正当化するようなことを
もししていたのなら…御堂が今、彼の傍らにいることは決してなかっただろう。
 そうして労わりの心を持って相手の頬に触れ、目元に口付けていくと…
瞼が開かれ、克哉の澄んだアイスブルーの瞳が覗いていく。
 危うい、表情だった。

「孝典…? 其処に、いるのか…?」

「嗚呼…私は、君の傍にいる。だから…不安がらなくて良い…」

 そうして彼の唇に優しく口付けていくと、暖かい時間が流れていく。
 そして克哉に強く抱きしめられていった。

「…あんたが、俺の傍にいてくれて…本当に、良かった…」

 切なさすら帯びた声で、男は呟いていく。
 安堵したような、ずっと堪えていた何かから解放されたような
そんな声音だった。

「…俺を赦してくれて…ありがとう、孝典…」

「っ…!」

 寝ぼけているからだろうか。
 珍しく素直な一言が克哉の唇から漏れて、御堂は瞠目していく。
 しかしその発言の後…暫くこちらを強く抱きすくめていたかと思うと、
唐突に力が抜けていき…克哉は再び夢の世界に落ちていく。
 それに御堂は呆れたように呟いていった。

「…本当に、君はどうしようもない…男だな…」

 そう呟いた御堂の表情は優しく、慈愛に満ちたものだった。
 そうして…愛しくてどうしようもない自分の恋人の胸に、そっと
顔を埋めてその生命の音を聞いていった。

 自分たちの間にある過去はどうしたって消し去ることなど出来ない。
 犯された過ちは、きっと真摯に克哉が贖うことでしか拭えないだろう。
 だが…彼の中に、その罪を悔いる気持ちがある限りは…御堂は
この男をきっと赦していくのだろうと思った。
 人の弱さを、過ちを責めて切り捨てていくのは簡単だ。
 辛抱強く相手を見守り、赦して…正しい道に導くのはそれの何十倍もの
労力と忍耐力を必要とする。
 …けれど、そうして自分がこの男の傍にいるのは…あの日からきっと
御堂の中で克哉がそれだけの価値のある存在に変わってしまったからだろう。

「…まったく、君は本当に罪深い男だ。私をこんな風に変えて…。私の本来
歩むべきだった道筋を君は捻じ曲げて引き寄せてしまった。…その責任は
一生掛けて、償ってもらうからな…」

 そう呟き、彼がこれ以上…後悔に苦しむ夢を見ないように額にそっと
口付けていく。
 自分は、この愚かしくて一途にこちらを求める…彼を赦そう。
 贖罪を続けている限り、自分もまたそれを流していこう。
 いつまでも過去に縛られていても何を生み出さない。
 何よりも…今は二人で、同じ目標に向かって…前に進んでいる
途中なのだから。
 その喜びとやりがいを与えてくれたのもまた…紛れもなくこの男
なのだから…。

「…おやすみ、克哉…」

 そう告げて…御堂は恋人の腕に包まれて眠りに落ちていく。
 そうして寄り添いながら、彼らはこれからも長い時間を紡いで
いくことだろう…。
 克哉がかつての罪を悔い、御堂がその罪を赦して傍にいる限り…
ずっと―
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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