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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 ※2012年9月6日より開始した眼鏡×御堂に克哉が絡んでくる
形式の話になります。
  三角関係や恋愛主体ではなく、眼鏡や克哉の心理や葛藤に
焦点を当てた話になりますので了承した方のみ目を通して
下さいませ。

 今、思い返せば自分が目覚める直前に見た夢。
 緩やかに深い場所に落ちていった黒い人影はもしかしたらもう一人の
自分だったのだろうか?
 そんな事を考えながら、佐伯克哉は眼鏡を掛けた状態で
疲れきった顔で、ベランダでタバコをふかす真似をしていた。
 眼鏡を掛けて、もう一人の自分の髪型をして…自分が覚えている範囲で知っている
もう一人の自分らしい言動と行動をしながら今日一日をどうにかやり過ごしたが、
自分じゃない別の人格を演じるというのがこんなにも疲れるものだと今まで知らなかった。
 部屋のリビングに置いてあった銘柄のタバコの火を点けていきながら、
眼下に輝いている夜景を眺めていく。
 自分が知っている場所と、全く違っていた。
 都内の一等地に立てられたビルの最上階。
 ここが、もう一人の自分が会社を興す際に新しい住居と決めた場所。
 そこから見える夜景を眺めながら、克哉は深い溜息を吐いていった。
 
「…オレの眠っている内にあいつがここに引っ越しているって事は…もう、
とっくの昔に…オレが住んでいた部屋は解約されてしまっているんだろうな…」
 
 少し寂しそうな表情を浮かべて、演じるのを止めて…ようやく素に
戻って呟いていく。
 ぼんやりとしか今のもう一人の自分に関しての事は知らないけれど…この状況と、
もう一人の自分と御堂が抱き合ってキスをしていた記憶から照合するに、御堂とは
恋人同士という事だけは嫌でも分かった。
 
(けど…一体、どうして俺と御堂さんが恋人関係になんてなったんだろう…? 
その辺の経緯が全く思い出せない…)
 
 煙草を吸いたい、と告げて一人なる時間を得てやっと思考に耽る時間が
与えられていく。
 もう一人の自分らしい振る舞いと物言いをするだけで、克哉には精一杯だった。
 住んでいた部屋は無くなり、二年以上の記憶が欠落して突如放り出されたこの状況に
戸惑いを覚えるしかなかった。
 ただ、一つだけ分かっているのは…今の自分は、小さいながらも会社の社長を
やっていて、御堂とは公私共にパートナーになっている事だ。
 
(此処は、あいつの居場所だ。なら…オレは、あいつが戻って来た時の為に…
それを維持する努力をしないといけないな…)
 
 此処は、本来なら自分がいるべき場所じゃない。
 佐伯克哉にとって、自分のいた会社も家も…この二年で無くして
しまっていたのだ。
 ぼんやりと、キクチ・マーケティングを退社してMGNで部長をやっていたと
いう記憶だけは思い出せた。
 なら、すでにもう一人の自分がキクチを辞めてからもそれなりの時間が
経過しているという事だ。
 本多は、片桐は…営業八課にいた他の人達は果たして今はどうしているのだろうか?
 
「みんな、元気かな…」
 
 知らない間に、自分の持っていた全てのものは無くしてしまって…新しい環境や、
人間関係がもう一人の自分の手によって築かれてしまっていた。
 その状況に、何も覚えていない状態で放り出されても戸惑いしか覚えない。
 一体どうしてこんな事になったのか、知りたかった。
 だが…幾ら問いかけても、もう一人の自分の声が聞こえる事はなかった。
 
「…どうして、オレが今更…出て来たんだろ…。御堂さんって恋人がいて、こんな都内の
一等地に自分の家と、会社を構えて…順調に生きていた筈のお前がどうして、眠って…
代わりにオレが出ているんだよ…」
 
 もう一人の自分の心が、今の克哉には分からない。
 今の時点では、それを推測するだけの情報が手元にないからだ。
 けれど、さっき唐突に相手側の記憶が流れ込んで来て…御堂と眼鏡を掛けた
自分が恋人同士だった事が分かったように、彼が生活していた環境で過ごす事で
手掛かりを得られるかも知れない。 
 煙草に火を点けているが、克哉にとってこれは美味しいものでは決してない。
 この銘柄の煙草を愛用して、このビルで相手が何を思い…胸に秘めて
生きて来たのだろうか?
 一つ言えるのは、人格の交代というのは…本人にとって大きな出来事が起こらない
限りは起こり得ないという事だった。
 もう一人の自分が現れた時、不安でどうしようもなくて…あの当時、自分は二重人格の
事が書かれた本を目を通した事があった。
 
(あれ…なら、オレの方は…どうして、あいつと入れ替わったんだっけか?)
 
 今回、相手と自分が入れ替わった原因を知りたいと思った事で…二年以上前に、
それまで生きていたこっちが眠って…もう一人の自分が出てくるようになったキッカケが
なんだったのかを疑問に感じていく。
 
「…何で、思い出せないんだろう…」
 
 眠る直前に何があったのか、相変わらず白いモヤが掛かったようにはっきりと
思い出せない。
 それを知りたくて必死に心の中を探ろうとしたが、それをする度にズキズキと
頭痛が走っていく。
 
「うっ…くぅ…!」
 
 次第にその痛みは大きくなっていく。
 まるで、こちらに思い出すなと訴え掛けてくるような感じだった。
 
「…一体、二年前に…何が、起こったんだよ…」
 
 克哉はポツリと呟いていく。
 けれどその問いに答える人間は誰もいなかった。
 
『克哉、いつまで外にいるんだ…? あまり長く外にいると…秋口とは言え、
風邪を引くぞ』
 
 頭の痛みに苛まれていると、ガラス戸の向こうから御堂の声が聞こえて来る。
 それを聞いた途端、もう一人の自分の仮面を被って…受け応えをしていった。
 
「…ああ、悪いな…。ちょっと色々…考えていた…」
 
『そうか。たまに一人で思案に耽りたい時は誰しもあるからな…だが、身体を冷やさない方
が良い。早く部屋に入ったらどうだ?』
 
「…ああ、そうだな」
 
 口調も表情も、出来るだけ覚えている範囲のもう一人の自分のものを真似ていく。
 それはまさに仮面をつけて生きるようなものだ。
 
(けど、これで良いんだ…。二年も眠っていたオレに、もう居場所なんてないんだから…)
 
 そうどこか達観とも、諦めの極地とも言える事を考えていきながら克哉は
部屋に戻っていた。
 
―自分の全てを殺す覚悟すらしていきながら…
 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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