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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※桜の回想は、もう少し時間を取って掲載していきたいので一旦、間を置いて
こちらを連載開始させて頂きます。(5~6話程度の長さの予定です)   
  
この話は2009年の日付設定で執筆されています。
  そして鬼畜眼鏡R経過前提です。 
  Mr.Rが絡んでくるのでなかなか不可思議なことが起こりまくる予定です。
  この三点を予めご了承の上、お読みくださいませ(ペコリ)

 
 
 ―愛しい人と再会して、会社を設立して一緒に運営するようになってから
丸八ヶ月が過ぎようとした頃。
 佐伯克哉はある事で真剣に悩んでいた
 
 9月22日、愛しい人の誕生日の一週間前。
 もう間近に迫っているというにも関わらず、彼にしては珍しく御堂に対して
何を贈って良いのか決めかねていた。
 正式に恋人関係になってから初めて迎える、大切な人の誕生日。
 その日ぐらい何かを相手に贈りたいと…ごく自然に思ったからここ数日、
ずっと考え通しだったのだが…いまいち、思考回路は順調とは言えなかった。
 しかもその一日ももうじき終わろうとしている。
 初めてのシルバーウィークの真っ最中。
 この長い連休を御堂と過ごしながら、克哉なりに必死に考えていた。
 今、御堂は入浴中で克哉の目の前にはいない。
 だからこそ余計に、来週贈るべきプレゼントを何にしようかその考えで満たされ
てしまう訳だが…一番良いのがなかなか浮かばなかった。
 
(…あいつに俺が贈りたいものと言ったら、真っ先に浮かぶのは指輪だがな。
だが…それはまだ早い気がする。せめて二人で運営しているアクワイヤ・
アソシエーションを一年は無事に持たせてもう少しが軌道に乗せてからにしたい…)
 
 そう、克哉の気持ち的にはすでに御堂と生涯添い遂げたいとすら思っている。
 だが、まだ自分が定めている目標にまで全然到達していない。
 御堂は彼にとってもっとも愛しい相手であると同時に、追いつきたいと思っている
目標でもあり、対等に並びたいと望んでいる存在がある。
 
―だからまだ途中経過でしかない段階でプロポーズを兼ねて指輪を
贈るのは早計だと思った。
 
(意味を込めて指輪贈るなら、胸を張れるだけの成果を出してからにしたい…。
これは俺のプライドだけどな…それは、譲りたくない…)
 
 だが、それを除くと御堂に相応しいプレゼントは何か…思い浮かぶものが
あまりない。
 御堂の生まれ年でもあるヴァンテージワインでも、と思ったが…彼が喜びそうで、
克哉が今求めている水準の代物は運悪く手に入らなかった。
 ワインを愛好している相手に贈るならば、日常で飲めるような代物では
物足りないだろう。
 最高級と言われる銘柄で、彼の生まれ年の物。
 だが、そんな希少品と言われる代物は一ヶ月前から手を尽くしているが
一向に見つかる気配はない。
 克哉が希望している水準の物は、すでに愛好家やバイヤーの手に渡って
しまって簡単には流れて来ないレベルの代物ばかりだ。
 毎日、マメにネットに接続して調べているが…一向にチャンスに恵まれなかった。
 そのおかげでもうじきリミットを迎えてしまいそうだった。
 
「指輪、ワイン…あいつに贈りたいと思うものはそれぐらいしかないんだがな…。
なかなか上手くいかないものだ…」
 
 どうせプレゼントするなら、同時にサプライズになる物の方が良い。
 相手を驚かせて、楽しませる事が出来そうな品か場所…。それを彼なりに
探しているのだが、これだ!と思えるものは見つからないままだった。
 
「くそっ…このままではタイムリミットを迎えてしまうな。中途半端な物を贈ったり、
連れていくような真似はしたくないのに…」
 
 苦渋に満ちた表情を浮かべながら呟いていくと、克哉は革張りの大きな
ソファに腰を掛けながら、煙草に火を点けて…紫煙を燻らせていった。
 
―それなら、良い場所を紹介しましょうか…?
 
「っ…!」
 
 唐突に窓の方から、聞き覚えのある声が耳に届いて…克哉は
慌ててそちらに視線を向けていく。
 其処には長い金髪と漆黒のコートをなびかせた、妖しい男が立っていた。
 言わずと知れた、Mr.R…時々克哉の前に前触れもなく現れる謎多き男だ。
 不審さと胡散臭さに掛けては右に出る者はいない程で、現れる度に
難解な言葉掛けと、不吉な予感を与えて去っていくという行動を繰り返している。
 今の眼鏡を掛けた克哉が十数年ぶりに解放されるキッカケを与えてくれた
存在でもあるのだが、基本的に彼は決してこの男を信用してはいなかった。
 
(…というか、こいつはどこから出て来たんだ…? このマンションの住居
区域はオートロック式の上、ここは最上階の筈だぞ…?)
 
 克哉が自分の会社と住居を構えたこのビルは都内の一等
地にある上にセキュリティ関連も万全である筈だった。
 普通の人間なら、無断でこうやって室内に入って来るのは
不可能の筈なのである。
 しかし目の前の男は、ごく当たり前のような顔をして存在しているのを見て、
克哉は一つ…気づいた事があった。
 
(…冷静に考えれば、コイツを普通の人間に数える方が愚かだったな…)
 
 そう自分に言い聞かせて、体制を立て直していく。
 しかしその表情は、極めて不機嫌そうかつ…偉そうなものであった。
 
「…一体どこから湧いて来た、という件は不問にしておいてやる…。しかし、
一体どこに俺たちを案内するつもりだというんだ…?」
 
―…そうですねぇ。ちょっとしたアトラクションを楽しむことが出来る場所…
とでも申しておきましょうか…?
 
「アトラクション…だと?」
 
―えぇ、ちょっとした趣向を凝らしてありましてね…。この鍵を使用します…
 
 克哉が怪訝そうな眼差しでそう問いかけていくと…男は唐突に懐から一本の鍵を
取り出して彼の前に見せていった。
 
「…何だ、その鍵は…?」
 
―そうですね、魔法の鍵とでも申しておきましょうか…? 貴方と、最愛の人を
非日常の世界へと…お連れする為のね…
 
「魔法の鍵だと…馬鹿馬鹿しい。おとぎ話の世界でもない限り…そんなものは
有り得ない。それにその鍵で、何が出来るというんだ…?」
 
―貴方が承諾して下さるなら、この鍵を使用する場所に…御堂様の生誕日に
お二人をお連れして差し上げましょう。まさに其処は非日常…いえ、幻想空間
そのもの。退屈極まりない日常生活内では決して味わえない娯楽と、
エキセントリックに満ちた素晴らしい場所です。サプライズとしては…
恐らくそれ以上のものは望めないでしょう…
 
 男はまるでセールストークか何かのように実に流暢に
言葉を並べ立てていく。
 だが、熱っぽく語れば語るだけ…胡散臭さもまた増大していった。
 
「だから遠回しな言い方はこれ以上しなくて良い…。これを使う場所は
どういった所なのかだけ簡潔に話せ」
 
―そうですね…とある古城の中に、沢山の鍵穴が並べられている空間があります。
その鍵穴にこの鍵を差し込むことによって…様々な趣向を凝らされた素晴らしい
部屋へと誘われる事でしょう。しかし…鍵は五回使えば、壊れてしまいます。
 何十個もある鍵穴から…果たしてどのような部屋に辿り着くか…実に
ワクワクしませんか…? スリルと高揚を求めるならば…試されてみるのも一興ですよ…?
 
 男は実に楽しそうにこちらに薦めてくる。
 その言葉を聞いて、克哉は考えあぐねいていた。
 
―こいつの言葉を本当に信じて良いのか…?
 
 克哉の中には、Mr.Rの言葉に激しく警戒している部分があった。
 この男が善意だけでこちらにこんな話を持ちかけてくるとは到底思えない。
 何らかの裏か、別の意図が隠されているに間違いなかった。
 訝しむような顔を浮かべていきながら克哉が考え込んでいくと…男は、
ねっとりと甘い声音でこう呟いていった。
 
―嗚呼、一つ言い忘れておりました。数ある部屋の中には…貴方様が心の奥底に
秘めて隠していらっしゃる欲望を満たす為の素晴らしい部屋が…幾つも
用意されています。きっとその部屋を引き当てたなら…ご満足して頂けると思いますよ…?
 
「…素晴らしい部屋、だと…?」
 
―えぇ、途方もなく。貴方の好みにぴったりだと思いますよ…
 
「ふむ…」
 
 その言葉を聞いて、少しだけ興味が湧いていく。
 実際に辿り着いた部屋のどれかを使う使わないは置いておくことにして…
今の発言を聞いて少しだけ試してみても良い、という風に心が傾き始めていった。
 
「…とりあえず鍵は渡しておいて貰おうか。実際に使うかどうかはまだ
判らないがな…。気が向いたなら試してみても良い…」
 
 そう克哉が答えた瞬間、男は愉快そうに微笑んでいった。
 
―えぇ、必ずやお気に召して頂けることでしょう…
 
 そうして男はそっと克哉の手のひらに豪奢な装飾が施された
銀色の鍵を手渡していく。
 瞬間、ほぼ同時に背後の扉がガチャと開く音が聞こえていった。
 
「克哉…今、上がったぞ…待たせたか…?」
 
「あ、ああ…」
 
 とっさに御堂の声がした方向を振り向いていく。
 そしてすぐにハっとなった。
 今、自分の前にはあんな胡散臭い男が立っているのを御堂に
見られる訳にいかない。
 だが、御堂は無反応のままだった。
 
「…? どうしたんだ克哉?」
 
「い、いや…何でもない」
 
 そう答えて、黒衣の男が立っていた方角を見やっていくと…其処には何も
存在しなかった。目を離していたのは本当に一瞬。
 その間に男は煙か何かのように…跡形もなく消えていた。
 
(ど、どこまで人外なんだ…あの男は…)
 
 流石にこれは克哉も言葉を失いかけたが…今更、あの男の非人間的な部分を
どうこういっても仕方がない気がした。
 
「…克哉、様子が変だぞ…? それで、君もシャワーを浴びてくるのか…?」
 
「ああ、すぐに戻ってくる。少し待っていてくれ…」
 
 そう答えて、相手の唇に小さくキスを落としていく。
 手の中にある鍵を悟られないようにしながら…平静を取り繕っていき、
静かに御堂の脇を抜けていった。
 そして浴室の手前、脱衣室まで辿り着いていくと…ドっと疲れが出た。
 
「…魔法の鍵か…。あんな男の言葉を真に受けて良いものか…」
 
 そう呟きながら、克哉は手のひらの上にある…銀色の美しい鍵をそっと眺めて、
暫く考え込んでいったのだった―
 
 
 
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無題
魔法の鍵1と2が同じ文章です
らんか 2012/11/11(Sun)19:23:56 編集
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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