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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 ※この話は本編のED№3「嗜虐の果て」にを迎えた後、どうにか立ち直った
御堂と眼鏡が結ばれた後、という設定の上に執筆した眼鏡誕生日ものです。
ミドたんが佐伯の嫁状態になっています。(当サイトの作品『白銀の輪舞』の後です)
それを了承の上でお読みくださいv

 あれから、何度求め合ったのか…御堂自身も正しく認識していなかった。
 達する度に、意識が朦朧とするぐらいにイイのに…こちらが覚醒すると同時に
すぐに克哉に求められる。
 体位を何度も変えられて、その度に違う角度で奥まった場所を熱いペニスで
貫かれて。
 相手の放ったもので溢れかえった其処を気が狂ってしまうくらいに激しく
掻き回され続けて。
 そんな応酬を、今夜はどれくらい繰り返して来たのだろうか?
 
(…本気で腹上死するかと思った…)

 ようやく克哉の方の意識が、疲労で落ちた頃を見計らって…彼の下から
脱出出来て、御堂は…一度、シャワーを浴びて身体を清めていた。
 …あまりに激しいセックスをしたせいか、全身が汗と互いの体液でベタベタ
だったからだ。
 まだベッドシーツの上なら汗も吸ってくれるが、革張りのソファではそうは
いかない。
 清潔なバスローブに身を包み、バスタオルで髪を拭いながらリビングへと
戻っていく。克哉は先程と変わらず、穏やかな顔をして眠りこけている。
 …さっきシャワーに行く前に、軽く濡れタオルで身体を拭ってやったおかげか
実に気持ち良さそうな表情をしていた。

「…まったく、良く寝ているな…。こいつは…」

 そういえば、正月からしっかりと休みを取る為に…この年末はずっと克哉は
働き通しだった事を思い出していく。
 それだけ疲れている癖に、あれだけこちらを好き放題出来るのだから…
やはり若さという奴なのだろうか。

(そういえば…こいつとは七つ違いだったな。すっかり忘れていたが…)

 ソファの傍らに腰を掛けながら、相手の髪にそっと触れていく。
 柔らかい癖っ毛は…意外に触り心地が良い。
 普段は怜悧な印象の瞳がこうやって閉じられていると…案外、幼い
顔立ちをしている気がした。
 …七歳も年下の男にここまで惚れ込んで、一生を捧げても良いと思うように
なるとは…自分でも予想していなかった。

 何より、自分でも驚きなのは…克哉のこんな無防備な姿を見て、心から
愛しいなどと感じてしまっている事だ。
 心を通わせる前は、こいつの顔を見るだけで複雑な感情が込み上げて
どうすれば良いのか判らなかったのに…大した心境の変化だな、と
自分でも思った。

(今なら…こいつの首も容易に絞められるな…)

 ふと、あまりに穏やかな顔をして眠っているものだから…一瞬だけそんな
物騒な考えが脳裏を過ぎっていく。
 クッションを枕にしながら…裸身で、毛布だけを身体に掛けているだけの
この男の首に両手を回せば、それはあっさりと達成出来そうだった。
 そのまま…相手の首筋に整った指先を伸ばしていく。
 何度か優しくそこを撫ぜていくと…クイっと顎を掴んで、自分の方へ
顔を上向かせていった。

「んっ…」

 唇を重ねると同時に、遠くで除夜の鐘が鳴り響いているのが耳に届いた。
 もうこんな時間になっているのかと…気づいた瞬間、克哉の睫が揺れて
澄んだ青い双眸が…こちらに向けられていく。

「…御堂…」

「起きたか? 佐伯…」

「ん…あぁ。今、な…ずっと其処にいたのか…?」

「…まあな。一度シャワーを浴びに席を外したが…戻って来てからは
ずっとこうして…君の寝顔を見させてもらった。貴重な体験だったぞ?」

 クスクスと笑いながら、はっきりと言ってのけると…一瞬だけ克哉の顔が
赤く染まっていく。
 それから…すぐに体制を整えて、見慣れた…余裕たっぷりの表情を口元に
称えていった。

「…これからは、飽きるぐらいに拝めると思うけどな。あんたは…俺の伴侶に
なってくれたんだろ…?」

 そうして、自分の左手の薬指を翳して…御堂に見せていく。
 御堂もまた、それに習って…己の指に嵌められたリングを克哉の方に
翳していった。
 お互いの指に嵌められたプラチナのリングは…白銀に輝いて、お互いの
指先を彩っていた。

「…あぁ、私の気持ちは君に示した。…式も、立会人も何もない。慎しまやかな
誓いだがな。君が私の人生を受け取ってくれるのなら…もう、私は君のものだ」

 そう、それはお互いだけが知っている誓い。
 祝福してくれる人間も、それを見届ける神父すら存在しない…静かな式典。

「…それなら、きちんと誓いの言葉ぐらいはした方が良いな。神など俺は
頭から信じてはいないが…こういうのは通過儀礼だ。御堂…良いか?」

「…何をするつもりだ?」

 ふいに自分の左手を引き寄せられると…御堂は怪訝そうな顔をしていく。
 そのまま克哉の方は気にせずに、御堂の銀の指輪に…厳かな顔をして
恭しく口付けていく。
 この指輪を贈った時も、同じような仕草をしていた。
 しかし…今は、少しだけ先程と様子が異なっているように感じられた。

「…私、佐伯克哉は…病める時も健やかなる時も…御堂孝典を生涯の
伴侶として、これからの人生を共に歩んでいく事を誓います。…御堂
孝典は…佐伯克哉を生涯の伴侶として…認めますか?」

 それは…神父が式場で読み上げる、定番の誓いの言葉。
 克哉がこんなかしこまった口調で告げていく事に…最初は御堂も
少し驚いたが、すぐに満面の笑みを浮かべて…答えていく。

「…あぁ、誓おう。私の生涯のパートナーと成り得る人間は…この世で
君だけだ。克哉…」

 やっと、御堂は照れることなく…初めて克哉の名をしっかりと口に
登らせていく。
 結ばれてからも、セックスの最中も…ずっと、「佐伯」という呼び方を
崩さなかった御堂が…初めて、克哉の名を呼ぶと…克哉もまた心から
嬉しそうな笑みを浮かべていく。
 そのまま自然と、顔が寄せられていく。
 それはまるで…将来を誓い合った二人が、神前で誓いの口付けを
交わすかのように…自然に、唇が重なり合う。
 窓の外から照らされる煌々とした月光は…まるで二人を祝福
しているかのように幻想的だった。

「…やっと、呼んでくれたな。佐伯のままだと、凄い他人行事に
聞こえていたからな…」

「じゃあ、君も私の呼び方をいい加減改めたらどうだ? 君だって…
私の事を『御堂』とばかり呼んで…下の名前じゃ殆ど呼ばないじゃないか…」

「ん、そうだな…。それなら、今度からあんたが俺を克哉と呼ぶ代わりに
俺も…あんたを孝典、と呼ばせて貰おう…」

「良い提案だ。それで…もう一つ、私の方から君に贈りたいものが
あるんだが…良いかな?」

「もう一つ…?」

 眼鏡が訝しげに眉を潜めると、そのまま…ごく自然な感じで髪を
掻き上げられて、額に口付けられる。
 そして厳かな口調で…御堂は一言、告げた。

「君の…私に犯した全ての罪を、この瞬間に…許そう…」

 時計の針が十二時を指し、今年が終わる瞬間を見計らいながら
御堂は…静かな声で告げていく。
 108つ目の鐘が鳴り終わり、場所によっては盛大に祝いを告げられる
その瞬間。二人の間にはどこまでも透み切った沈黙だけが落ちていた―

「み、どう…」

「…違う、『孝典』だろう…? 克哉…」

 震える声で呼びかければ、どこまでも優しい顔で訂正されていく。
 その顔を見れば判る。
 今の言葉を、恐らく本心から発している事を―
 
 御堂が穏やかに微笑みながら、慈愛を込めた手で…克哉の頬を撫ぜた。
 その指先の温かさに…克哉は知らず、頬に涙を伝らせていく。
 やっとそれで自覚する。
 どれだけ自分の中で、この人に対しての罪悪感が重石になって
乗りかかっていたか。
 心の底では深い罪悪感が消える事なく、今も自分を縛り付けている事を―
 そして克哉は理解する。
 御堂が用意した三つの誕生日プレゼント。
 一つ目は極上のシャンパン。
 二つ目は御堂の将来とそれを象徴する銀色のリング。
 そして三つ目は…克哉を罪悪感から解放する為の『赦し』である事を―

「克哉…泣いている、のか…?」

「あぁ…あんまりにも、予想外過ぎてな。こんなに早く…あんたから、俺のした事を
許して貰えるとは…思ってもみなかったからな…」

 本当はこんな風に相手の前で泣くことはみっともないと、判っている。
 けれど…嬉しくて、重荷になっている事からやっと解放されて…自分の意思と
関係なく、瞼からは透明な涙が溢れてくる。

 この人を壊した日から、罪の意識は克哉の中で消える事がなかった。
 正気に戻るまでずっと傍らで面倒を見て、徐々に以前の姿を取り戻していく間も
自分が傍にいて良いのか、触れて良いのか逡巡して…なかなか身体を求める事すら
出来ずにいた。
 けれどこの人は、自分が傍にいる事を求めてくれているし…これから先の己の
人生までもこうして捧げようとしてくれている。
 この人が欲しくて欲しくて堪らなくて…仕方なかった自分にとって、これ以上の
誕生日プレゼントがあるのだろうか?

 克哉の頬を伝う涙を、御堂はただそっと…唇で静かに拭っていく。
 相手に触れる手はどこまでも優しく。
 まるであやすかのように…その背中を静かに擦り上げていった。

「…愛している、克哉。だから…ずっと…私の、傍に…」

 愛して止まない人が、そんな言葉を口付けと共に与えてくれる。
 幸福で眩暈すらして…そのまま放っておいたらそれだけで逝けそうだ。
 克哉の方も堪らずに、御堂の唇を強く吸い上げていく。
 キスは次第に情熱的になり…互いの身体をまた、強く強く抱き上げていく。

「…あぁ、何があってももう…あんたの傍から離れない。あんたが俺のもののように…
俺の人生もまた…あんたのものだ。孝典…」

 涙を乱暴に拭い、いつもの強気の表情を浮かべながら…はっきりと眼鏡もまた
己の気持ちを伝えていく。

「当然だ…。離れたら、地の果てまで追って探し出して…その償いはしてもらう。
その覚悟はあるな…? 克哉…?」

 物騒な笑みを浮かべながら、御堂もまた口付けを落としていく。
 しっかりと指を絡ませるように手を握り合い…お互いの左手に嵌まっている白銀の
リングを確認していった。
 月の光を帯びて、それは燦然と輝き…彼らの中に芽生えた絆をより確かなものに
感じさせてくれていた。
 お互いに満たされるものを感じて、自然と微笑を浮かべていく。
 御堂がほっと安堵の息を吐いた瞬間…頭が真っ白になるようなとんでもない一言が
克哉の唇から紡がれていった。

「言われるまでもない。じゃあ…姫初めでも始めるとしようか。孝典…」

 不敵な笑みを浮かべながら、突然そんな事を克哉が言ってのけたので…御堂は
ぎょっとした顔を浮かべていく。

「…っ! 克哉! 姫初めって…! さっきまで散々…シたばかりだろうが!」

 自分をさっきまで抱きすくめていた手が、再び怪しく蠢いていくのを感じて御堂は
思いっきり動揺しまくっていた。
 先程だってあれだけ好き放題にされてこのままじゃ死ぬ! と思うくらいに追い詰められた
のに更にまたヤられたら今度こそ腹上死をしてしまう。
 そう危機感を感じて、バタバタと相手の腕の中で暴れ捲くるが…眼鏡の方はさりげなく
関節技をかまして、決して御堂が逃げられないように押さえ込んでいった。

「…嫌だなぁ。孝典…これだけ、俺の心を熱くするような事ばかり言ってくれて…このまま
朝まで大人しく眠るつもりでいたのか? その責任はちゃんと…お前の身体で取って
貰わないとな…?」

「だめ、だって! 今夜はこれ以上君にされたら…本気で、死んでしまうかも知れ、ない
から…やっ!」

 バスローブを問答無用で剥がされて、御堂は顔を真っ赤にさせていく。
 まったくこの男は…そんな顔をしたら、こちらがそそるだけだというのを恐らく自覚して
いないに違いない。

「…あんたとなら、腹上死しても俺は一向に構わないぞ?」

「私が、構うんだっ! あっ…バカ…止め、ろ…! これから先、ずっとずっと…歩んでいく
つもりなのに、こんな形で…はっ! 殺されたら、堪ったものじゃ…ないっ、から…!」

 克哉の手が御堂の性器をやんわりと包み込んで愛撫していくと、先程までの情欲を
思い出したのかあっという間に…それは育って硬度を取り戻していく。
 しかし御堂の態度は強固なものだったので…相手の耳朶にキスを落としていきながら
克哉は妥協案を囁いていった。

「…判った。あんたを殺さないように…凄く時間を掛けて、優しく抱くようにする。
それなら…構わない、だろ…?」

「…そんな事、本当にお前に…出来る、のか…?」

「やらなきゃ、お預けになるんだろ…? それならそうするさ…。それよりもこの先は
将来を誓い合った初夜にもなる訳だし…あんたをたっぷりと時間を掛けて味わうのも
良さそうだしな…」

「しょ、初夜って…! 今更、だろ…!」

「ん? だってさっき誓い合ったその瞬間に…あんたは俺の嫁さんになったんだ。それなら
その晩にあんたを抱くのは人として正しい道筋だろ? そうじゃないのか…孝典…」

「っ…! うぅ…もう、好きにしろ! これ以上君に何かを言い返しても不毛にしかならない
気がしてならない…!」

 不貞腐れながらも、ようやく腕の中で抵抗を止めていくと…御堂は克哉に自らの
身を委ねていった。
 触れ合う肌は灼けてしまいそうなくらいにすでに熱く。
 心臓は忙しなく早鐘を打ってこのまま壊れてしまいそうなくらいだった。
 けれど眼鏡の瞳は…やっと、罪悪から解放されて…澄んだ色合いを取り戻していた。
 意地悪だけど、どこか優しい色を帯びた瞳をやっと見る事が出来て…御堂はガラになく
胸が高まっていく。

 その目が真っ直ぐに…御堂の瞳を覗き込んでくる。
 真摯で、どこまでも情熱を感じさせる眼差し。
 彼に心まで射抜かれながら…御堂はぎゅっと強くその身体を抱きすくめていった―

―孝典、愛している…

 その一言を耳元で囁かれ、背筋に甘い痺れが走り抜けていった。
  克哉のその囁きだけで、先程の軽口も怒る気力が失せてしまい…御堂も
素直に克哉に身を任せていった。
 後はただお互いの愛情を感じ合う長い長い時間が…二人の間に静かに訪れる―

 ここまで来る道のりにお互いに過ちは数多くしてきた
 沢山の傷を負い、どれくらい血と涙を流してきたかも判らない
 それでも…今はこうして寄り添い、罪を許し…二人は寄り添う道を選択した
 この先にどんな苦難が待ち受けるのか
 辛い事もあるかも今は見えないが…これだけの試練を乗り越えても離さない道を
選択出来たのなら…自分たちはこれからも一緒にやっていけると、そう確信していた。

 御堂はそれを覚悟して、一対のリングを克哉に贈った。
 それを承知で克哉もまた受け取った。
 後はただ愛し合って、確認しあうだけだ。
 これからもずっと相手の手を離さないと…そう己の心に刻みあう為に。

 情熱の時間が、二人の間に再び訪れる。
 その間、ずっと…指に嵌められた白銀の絆の証だけが
 藍色の深い闇の中で光を放って輝き続けていた―
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 ※この話は本編のED№3「嗜虐の果て」にを迎えた後、どうにか立ち直った
御堂と眼鏡が結ばれた後、という設定の上に執筆した眼鏡誕生日ものです。
ミドたんが佐伯の嫁状態になっています。(当サイトの作品『白銀の輪舞』の後です)
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 二人分の体重が、ソファ全体に掛かって身体が揺れる度にギシギシと音が鳴っていた。
 それでも構わずに身体と唇を重ねあい、お互いを求めていく。

「ん…あっ…」

 今夜、積極的なのは御堂の方だった。
 熱い吐息を零していきながら、克哉のスーツとYシャツを脱がしに掛かる。
 それに対して、克哉の方も負けていない。
 相手の身体を全身くまなく弄りながら…ゆっくりと御堂のYシャツを
たくし上げに掛かっていた。

「…あんたの身体、もう…こんなに熱くなってる…」

 お互いに相手の首筋に顔を埋めると…所有の証を刻み込んでいく。
 熱く火照り始めている相手の肌を、唇と舌で丹念に味わっていくと…眼鏡は
相手の胸の突起を弄り始めていく。
 御堂の一喝と、自らの想いを体当たりでぶつけたおかげか…先程までの怯えは
払拭されていた。
 ただ、今は…こうして触れ合っているだけで昂ぶって来るし…もっと御堂の
感じる顔が見たい。
 苛めて、感じさせて…悶えさせて。ともかく、愛しい相手のそういう姿が
見たくて仕方がなかった。

「…ここもこんなに、堅く尖って…もう、期待しているみたいだな。俺の指をこんなに
弾き返して来ているぞ…?」

「…っ! あまり、そういう事は…口に出して、言うな…っ!」

「嫌だね。あんたの恥ずかしがる顔は…本当に可愛い、からな。もっと…俺は
見たくて…堪らないんだ…」

 クスクス笑いながら、熱っぽくそう囁くとキュっと胸の突起を両方同時に摘み上げる。
…たったそれだけの刺激で御堂の身体はビクン、と大きく弓並みに反りあがっていった。

「…くくっ! 口では生意気な事を言っていても…身体は本当にあんたは正直だな…」

「…っ! 君は、本当に…意地が、悪すぎるぞ…!」

 抗議するように真っ直ぐに相手を見据えていくと…両手で克哉の頬を包み込んで
思いっきり歯を立てるようにして口付けていく。
 流石にこれは痛かったのか…克哉の方も少し眉を顰めた。

(…ったく、これなら…さっきの罪悪感を感じている時の方が可愛げがあったな…)

 心の中でひっそりとそう思ったが、口に出さないでおいた。
 それに自分は…この男が本当は物凄く意地が悪い事を承知の上で惚れて
しまったのだ。…優しい彼も嫌いじゃないが、そればかりだと気持ち悪いのも
事実だった。
 
「…随分とじゃじゃ馬じゃないか…」

 ふいに腰を引き寄せられると、下肢に…克哉の昂ぶりが押し付けられた。
 臀部の狭間にソレが来るように身体の位置をズラされたのだから…こちらは
溜まったものではない。
 そのあからさまな欲望に、ビクっと震えながらも…期待で息を呑んでしまっていた。

「…あんまり、おいたが過ぎると…それなりのお仕置きをさせて貰うぞ…?」

  こちらが積極的に求めれば求めるだけ、強気で応対すればするだけ…先程の
罪悪感に囚われた彼の顔ではなく…自分が良く知っている傲慢で、強気で…
意地悪な佐伯克哉の顔が覗き始めていく。
 
「…お仕置きじゃなくて、今夜は君の好きにすれば良いって…さっき言っただろう…?
もう私は…君のもののつもり、何だがな…?」

 そのまま克哉のシャツのボタンを全て取り外していくと…肩からシャツを抜かせて
スルリと滑らせて脱がしていく。
 克哉もまた、御堂の着衣を脱がすように手伝っていけば…すぐにお互い、上半身の
裸体を相手に晒していった。
 自分の臀部付近にある克哉の昂ぶりを…腰を何度も揺らして、挑発していく。
 こちらの尻肉と布地越しに触れ合う度にその欲望は育ち、痛いぐらいに御堂の下で
張り詰めていくのが判った。

「くっ…あんた、それ…本当に、クる…っ!」

 御堂の腰使いに、克哉の方が抑えが効かなくなる。
 そのまま乱暴な手つきで相手のスーツズボンを下着と一緒に剥ぎ取っていくと…
自分のスーツのポケットから携帯用のローションを取り出していって…それをたっぷりと
掌の上に取っていく。
 それを性急に…相手の臀部に塗りつけていけば、蕾の周辺は…大量のローションで
ビチョビチョになっていく。
 克哉の指が蕾の中に沈められて…敏感な箇所を的確に探り当てれば…今度は
御堂の方が翻弄される結果となった。

「くっ…! 君の…方、こそ…! いきなり、性急…過ぎる、ぞ! んぅ!!」

 克哉の指が正確に前立腺の位置を擦り上げれば…背筋に走り抜けていく
強烈な快楽が襲い掛かってくる。
 その度に呼吸を荒げて、身体を小刻みに痙攣させ続けると…克哉の方は
早くも相手を快楽で支配し始めている事に満足そうだった。

「…あんたが煽るから、悪いんだろ…? あんな風にあんたに身体の上で
腰を揺らされて…俺が冷静でいられるとでも、思っていたのか…?」

「思っている、訳ないだろ…。むしろ、冷静で何かいたら…君を、思いっきり
恨むだろうな…」

 ククッ、といたずらっ子のような笑みを浮かべながら…克哉の身体をぎゅっと
強く抱きしめていく。
 もう触れ合う場所のどこもかしこも、熱くなっているのが伝わってくる。
 どこか冷たさを感じる外気の中、お互いの汗が気化して…自分達の周り
だけが濃密な空気で包まれているように感じる。

「…早く、私だって…君を、感じたいんだ…佐伯…」

 耳元で、耳朶を唇でくすぐられながらそんな殺し文句を言われれば…限界
寸前だった克哉の欲望は更にはち切れそうになっていく。

「…くっ! バカ…が。もう加減…してやれない。抱くぞ…っ!」

 今夜の御堂は魅力的過ぎて、挑発的過ぎて…克哉の方もすっかりと
主導権を握られっぱなしだった。
 相手の中から指を引き抜けば…両腰に手を添えて、御堂の奥まった箇所に
熱い猛りを押し当てていく。
 接合部の付近が…お互い、燃えるように熱を帯びているのを感じ取りながら
息をゴクン、と呑みあっていた。

「み、どう…っ!」

「ふあっ!」

 そのまま、一気に深い場所まで刺し貫かれていけば…耐え切れずに
御堂は克哉の身体に縋り付いていく。
 十日ぶりに感じる、相手のペニスは…受け入れた場所から、御堂を
そのまま蕩けさせていくようだった。
 御堂の方も負けてはいない。
 狭い隘路を強引に押し開いていく相手の情熱の塊を…必死になって
受け入れて…貪るように収縮を繰り返していく。
 まだ挿れたばかりだというのに…早くも貪婪に克哉を求めていくのを
自覚して、それだけで羞恥で死にそうになる。

「んっ…あっ…はっ…! 凄く…君の、熱い…っ!」

「あんたの、だって…燃えている…みたいだ…。凄くキツくて…
良い締め付け…加減、だな…」

「…っ! だから、言うなってば…バカっ…! ひっ!!」

 いきなりペニスを掌で握りこまれながら、容赦なく内部を掻き回されたもの
だから溜まったものじゃない。
 受け入れているだけで痺れそうになるくらいにイイのだ。
 それで…ギンギンに張り詰めているペニスまで弄られたら、こちらとて
正気でいられる訳がないのだ。
 克哉の手が蠢く度に、御堂の性器はまるで駄々っ子のように暴れて大量の
蜜を零し始めていく。
 グチャグチャグチュ…と部屋中に、接合音と相俟って淫らな水音が
響き渡るのがどうしようもなく恥ずかしい。
 全力で頭を振って、逃れようと試みていくが…克哉もすでに容赦がなかった。

「だ、ダメッだ…! 其処まで、弄られたら…おかしく、なるからっ…!」

 必死に克哉の手を引き剥がそうと抵抗していくが、あまりに強烈な快感の
せいかその力はどこか弱々しかった。
 逆に今度は、克哉が主導権を握る番だ。
 先程のどこか迷っているような影は払拭され、いつもの…御堂が良く
知っている強気で傲慢な笑みを浮かべている克哉の顔がそこにはあった。
 
「おかしく、なれよ…あんたが乱れる姿を、俺はもっと見たい…」

 熱っぽい眼差しを向けながら、克哉が囁いて…深く唇を重ねて、吸い上げていく。
 その舌のねっとりした熱さと甘さに…御堂の鼓動と吐息は更に忙しなく
乱れたものになっていく。

「…っ! 君のその眼差しの、方が…反則だっ! あまり…見ない、で…くれ!
恥ずかしい、から…っ!」

 部屋中に自分達の厭らしい水音が響き渡っているだけで憤死ものなのに、
こちらの顔を真っ直ぐ見つめてくる克哉の顔が真摯過ぎて…真っ赤になって
快楽に染まっている今の顔を見られるのが恥ずかしくて仕方なかった。
 克哉の腰使いが一層早いものへと変わり…あまりに的確に御堂の
弱いポイントを突き上げていけば…その度に内部はキツく収縮し
彼のペニスを搾ろうと締め付けを強めていく。
 
「断る。あんたの…そんな色っぽい顔なんて、こんな時ぐらいしか
たっぷりと拝め…ないんだ。堪能させて…もらうぞ…」

「んっ! あっ! 本当に…君は、意地、悪な…男っ、だっ! あぁ!!」

 精一杯抗議の言葉を吐いていくが、すでにまともな言葉になって
なかった。何度も途切れ途切れになりながら訴えていくが…男が
与える熱い楔の感覚にすでに意識が翻弄されていく。
 御堂のペニスもまた熱く張り詰めて、はしたなく蜜を溢れさせている。
 足を大きく開きながら克哉の上に乗り上げて…必死になって克哉の
身体に縋り付いてくる様は…いつもの冷然とした御堂の態度からは
想像出来ない程の乱れっぷりだった。

「そんな事は、承知の上だろ…あんた、は…! イク、ぞ…!」

 克哉もまた、そんな御堂の狂態を見て…限界近くまで欲望を
高めていた。
 相手の中でドクドクドクと荒く脈打ち…最大にまで膨張して
頂点が近い事を訴えていく。
 相手のペニスをギュっと掌で握りながら、最後の渾身の一突きを
最奥目掛けて、突き上げていく。

「やっ…ぁ!! さ、えきっ…! ああっ―!」

 その瞬間、御堂も大きく啼いて…克哉の背中に縋りつきながら
達していく。
 あまりの強烈過ぎる感覚に意識が一瞬、浚われていく。

(あ、熱い…っ!)

 ドクンドクン、という乱れた鼓動に合わせて…内部の相手のモノが
震えて…熱い欲望が注ぎ込まれていくのを感じた。
 頭が真っ白になるほどの強い快感が走りぬけ、その余韻にお互い
浸っていく。

  ふと、自分の指先に視線を向けた。
 …白銀の指輪が、キラリと輝いているのが視界に飛び込んでくる。
 いつもと同じ情交なのに、ただ…自分が贈った指輪と同じものが
相手の指にも嵌められている。
 その違いだけで…十日前に抱かれた時よりも、ずっとずっと深く
相手と繋がれたような…そんな錯覚に陥った。

 克哉もまた同じ事を考えたのだろうか…?
 ふと視線が合うと…彼もまた、自分の指輪の方を暫く見つめて
それからこちらに小さくキスを落としてくる。
 唇に重なる、柔らかい感触だけで…幸福感が込み上げてくる。
 呼吸が整って、吐息が重なると同時に…ふっと意識もまた、緩やかに落ちていく。
 相手の鼓動と息遣いを感じながら…一時、御堂の意識は…心地よい
まどろみの中へと落ちていった―
※この話は本編のED№3「嗜虐の果て」にを迎えた後、どうにか立ち直った
御堂と眼鏡が結ばれた後、という設定の上に執筆した眼鏡誕生日ものです。
ミドたんが佐伯の嫁状態になっています。(当サイトの作品『白銀の輪舞』の後です)
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 御堂からの思いも寄らぬ言葉と口付けを受けて、とっさに眼鏡は
反応出来ないでいた。
 一瞬、何を言われたのか理解出来なかったという方が正しいだろうか。
 それでも相手の唇と舌先の熱さに…次第にこちらも酔いしれていく。
 こちらからも相手の身体をしっかりと抱きすくめていき…背骨のラインを
優しく指先で辿ってけば…御堂の身体が、ピクリと震えていく。
 克哉の方からもたっぷりと御堂の唇を貪っていくと…珍しく、不服そうな
表情で…囁きを落としていった。

「…あんたの誕生日に、俺の方からプロポーズする予定でいたんだがな…
先を越されたか…」

「…ふふ、それは嬉しいけどな。しかし…今から私の誕生日まで、九ヶ月も
先じゃないか? それまで…お預けにするつもりだったのか…?」

 御堂が挑発的に笑いながら、ゆったりとこちらの膝先に腰掛けていく。
 身長180を超える男同士がこうやって密着しあう様はかなりの迫力だが…
こちらとて、相手の体重が少し掛かったくらいで崩れる程、柔ではない。

「いや…そういう訳ではない。しかし…あんたは、本当にそれで良いのか…?」

「…今更、何を。確かに…一時はあんなに酷い真似をした君を憎んだ。だが…
私が壊れてからも君はずっと私の傍にいて面倒見てくれていたんだし…今は
心から想ってくれているのを実感している。
 それとも、私の人生全てを押し付けられるのが重いというのか? それなら
撤回させてもらうけどな…」

「冗談じゃない。むしろ…大歓迎だ。だが…一度受け取ったら、絶対に俺の方からは
あんたを手放してやったりはしないぞ? それでも…?」

「…むしろ手放したりしたら、盛大に君を恨ませて貰うぞ。私にここまで言わせて
受け取らない…何て事はないよな? 佐伯…?」

 クスクスクス、と楽しげに笑いながら…御堂はこちらの唇を、ゆっくりと舌先で
舐め上げていく。
 そのまま御堂の方から唇を重ねて、やんわりと吸い上げていくと…今度は
克哉の背中がピクリ、と震えていく。
 お互いの吐息が、体温が徐々に熱を帯びてくるのが伝わってくる。
 御堂の手が愛しげに克哉の頬に、首筋に触れ…カリ、と唇を甘噛みなんて
されたらもう駄目だ。
 降参だ、と訴えんばかりに…克哉は御堂の肩を掴んで、軽く唇を引き離しながら
余裕のない顔で告げていった。

「…御堂っ! もうこれ以上されたら…あんたをこの場で押し倒し兼ねない。
続きは、寝室で…」

「…私は、ここでしても…一向に構わないぞ…? 佐伯…?」

 瞳を蟲惑的に細めながら、御堂が艶やかな声音で告げていく。
 最上のシャンパンを唇移しで与えられて、それだけで酩酊しそうなのに…
更に御堂孝典という魅力的な存在まで、与えられたら…こちらは正気でなど
いられる訳がない。
 そうしている間に、御堂の手がゆっくりと克哉のボタンを一つ一つ…丁寧に
外し始めていく。
 整った指先が、克哉の露になった首筋から胸元までゆっくりと撫ぜ擦って…
興奮して堅くなり始めた胸の突起を掠めていく。

「くっ…! 御堂…せめて、ソファー…に…」

「あぁ…私も、同じ事を…思って、いた…。最早…ベッドに移動する…時間すらも、
惜しい、からな…あっ!」

 御堂の腰を抱きながら、どうにか食卓の椅子から立ち上がっていくと…互いの
身体を支えあうような形で性急にリビングの方へと身体を移動させていって、御堂を
黒革のソファの上に組み敷いていく。
 御堂の頭の位置に、クッションが来るように身体の位置を整えていってやると…
ふと、初めて御堂を抱いた時の記憶が脳裏を過ぎった。

(そういえば…御堂を初めて『接待』したのは、このソファの上でだったな…)

 あの時の自分と御堂の関係は、お世辞にも友好的とは言えなかった。
 殆ど嫌がらせに近い感じでプロトファイバーの売り上げ目標値をメチャクチャな
数字に引き上げられて…それの抗議に行ったら、私を接待しろと言ってきたのだ。
 当然、御堂はその接待をキッカケに優位に立つつもりだったのだろうが…その件に
関しては克哉の方が一枚上手で、薬で一服を持って身体の自由を奪い…近くに
あったビデオで陵辱場面を録画した。

 その事を思い出して、ふと…克哉の中に引け目が蘇っていく。
 エリートコースを邁進して、誇らしげに生きていたこの人を…自分のエゴで追い詰め
そして、一度は廃人にまで追い込んでしまった。
 そんな自分が今でもこうして御堂の傍にいる事が許されて、相手はこれから先の
人生まで与えてくれようとしている。
 それはまるで…夢のようで、逆にあまりに現実感がないように思えた。

「…どうした? 佐伯…? せっかくのお前の誕生日で…私がここまでしているのに
酷く浮かない顔をしている…じゃないか?」

「いや…少し思い出した、だけだ…。そういえばあんたを初めて抱いたのも…
このソファの上、だったな…って思って…」

 こちらが少し戸惑いを感じてしまっている事など、御堂にはお見通しだろう。
 その言葉を聞いて…少しだけ御堂の眉間に皺が寄っていく。
 確かに…克哉と初めて関係を持った時は、合意ではなく半ば騙されて強姦された
ようなものだ。
 あの時は克哉の事はむしろ嫌っていたし、あんな真似をしでかしたこの男を
絶対に許すものか…と憎んでさえいた。

「…そうか、君がさっきから非常にノリが悪いのも…心を通わせてから、なかなか
私を抱かないのも…罪悪感って奴が邪魔しているから…何だな…」

 深く溜息を突きながら、御堂が身体を起こしていく。
 その顔を見て…克哉の方は居たたまれないような顔をしていく。
 そう、両思いになってから早二週間が経過しているが…その期間中に、二人が
セックスした回数はたったの二回だった。
 あの雪が鮮やかに舞っている中にキスした日と…十日ほど前の休日の前夜。
 それ以外は仕事が忙しいを理由に、なかなか触れようとしなかったのだ。

「いや…そうだな。確かに…あんたに、俺は…罪悪感を抱いているな…」

 だからこそ…先程の御堂の言葉を心から嬉しいと思う反面、本当に自分がこの人の
手を取って良いのだろうかという迷いが克哉の中に生まれていた。
 こんなに及び腰になっているのなんてみっともないし、自分らしくないと思う。
 しかし…今の克哉にとって、御堂はとても大切な存在だった。
 もう二度と失いたくないし、あんな人形のような状態に戻したくないのだ…。
 己の御堂に対する執着心やエゴが、また暴走する日が来るのではないか。
 その恐怖心が…克哉を未だに竦ませていたのだ。

「…ったく! いい加減にしたまえ! いつまでそうやって…私の前で怯え
竦んでいるつもりだ!」
 
 克哉の想いは、御堂にだって充分にわかっている。
 その罪悪感があるからこそ、自分が壊れてもこの男は一年も自分の面倒を
見て決して離れなかった事ぐらい判っている。
 しかしもう自分はとっくの昔に…二週間前に許したし、もう気にしていないと
その間に何回も伝えて来ているのだ。
 それでも…伝わりきっていない事に…御堂は焦れて、怒りすら覚えていた。

「私は…君にこれからの人生全てを捧げても構わないと考える程に…
君を想い、愛しているんだ! だからいつまでも…過去の罪に君も囚われるな!
 そんな事、私は一切望んでなんか…いないんだ!」

 感情が昂ぶりすぎて、瞳にうっすらと涙すら浮かべながら…相手の襟元を
引っつかんで御堂は訴えていく。
 相手の誕生日だからこそ、抑えようと少しは思ったが…一度、堰を切った
気持ちは留まらず、溢れてくるばかりだ。

「み、どう…」

 克哉は、相手の真っ直ぐすぎる怒りと…想いを前にして、唇を震わせていく。 
 しかしその瞳の奥に宿る光は真剣そのものだ。

「私は…佐伯克哉を愛している。君をこれからの…生涯の伴侶として、
一生を歩んでいけたら…! それくらいの覚悟で私は先程…君に気持ちを
伝えた。…それは、佐伯。君にとって…単なる重荷でしか、ないのか?
 それとも…嬉しい事なのか、キチンと答えて欲しい…」

 自然と、御堂の方から…今度は克哉の身体の上に乗り上げる形となった。
 相手の腰に、己の身体を重ねて…お互いに吐息が伝わるくらいの近さで
見つめあう。
 
「…嬉しいに、決まっているだろ。…俺にとって、人生を賭けてまで
欲しい相手なんて…御堂孝典、あんた以外には存在しないんだ。
…最高の誕生日プレゼントだよ。だから…」

 相手の目をまっすぐ見つめながら、御堂自身が己の薬指に嵌めた
銀色のリングをそっと口付けていく。
 自分の指にも…同じ証が、今は輝いている。
 結婚指輪というのは元々…継ぎ目のない円を心臓に一番近いとされる
薬指に嵌めることで、永遠不滅の愛を願うという処から生じている風習だ。
 それをどんな想いで、御堂は贈ってくれたのか。
 どれだけ強い気持ちで、今気持ちを伝えてくれているのか。
 …克哉はしっかりとその想いを受け止めて…今度こそ迷いない声で
告げていく。
 
「あんたを心行くまで…今夜は貪らせてもらう。あんたは、今夜から…
これから先、ずっと…俺に人生を…捧げて、くれるんだろ…?」

「…あぁ、もう…私は、君のものだ。…だから、好きに…すれば良い。
…何をされても、今夜は…受け入れる、から…」

 そんな甘い言葉を、愛しい人間に耳元で囁かれて…こちらも冷静でなど
いられる訳がない。

「…くっ! 今夜のあんた、本当に…反則、過ぎるぞ…っ!」

 そうして、自分の腰の上に乗り上げている御堂の身体をこちらからも
引き寄せて、荒々しくキスを施していく。
 お互いに身体は燃えるように熱くなっていた。
 もう、止められない。
 そう確信しながら…二人は、噛み付くように…唇を重ねあっていった―
 
 

 

この話は本編のED№3「嗜虐の果て」にを迎えた後、どうにか立ち直った
御堂と眼鏡が結ばれた後、という設定の上に執筆した眼鏡誕生日ものです。
ミドたんが佐伯の嫁状態になっています。(当サイトの作品『白銀の輪舞』の後です)
それを了承の上でお読みくださいv


 御堂が用意したご馳走の全てを平らげていくと…克哉は満足げな笑みを
浮かべながら、讃える言葉を継げていった。

「今日の夕食は…本当に美味かった。お前がこれほどまでの味を作り出せる
腕前の持ち主とは知らなかったな…」

「…まあな。満足出来たか?」

「あぁ…大満足だ。お前の愛情がたっぷりと詰まっていたからな…」

「なっ…バカ、真顔でそういう事を言われると…どう反応すれば良いのか、
判らなくなる…だろ…」

 御堂が赤くなりながら、拗ねた顔を浮かべていくと…克哉はククっと
喉の奥で笑っていく。
 本当にこういう意地の悪い処は、困ったものだと思った。

「…素直に受けておけ。俺は…本当に思った事しか、言わないからな…」

「っ!!」

 途端に、自分の耳まで赤く染まっていくのが判って、机をバンッ! と
叩きながら勢い良く椅子から立ち上がっていく。

「…どこに行くんだ?」

「…今日の為に用意しておいた、極上のシャンパンを…取ってくる。君の
ような男に振舞うのが勿体無いくらいの一品だがな…」

 御堂が本日用意したシャンパンの銘柄はクリュグ=「グランド・キュヴェ」
 シャンパンの中のシャンパンとも言われている極上品である。
 一本18000円から、20000円はする代物なので…一般のサラリーマンでは
なかなか飲めない高級品だ。
 御堂が優美な動作で…ソムリエナイフを使い、コルクを抜いていくと早くも
部屋中にシャンパンの芳醇な香りが広がっていく。
 細長いフリュート型のシャンパン用のグラスに…程よく冷えた液体を注げば
綺麗な琥珀色の底の方から…細かい綺麗な泡が水面に向かって緩やかに
立ち昇っていく。

「…俺は基本的にビールや蒸留酒の類ばかり飲むのでシャンパンは初めてだが…
綺麗なものだな…」

「あぁ、この泡一つ一つが…芸術品みたいなものだ。味わって飲むと良い…」

 二つのグラスに、慎重に液体を注ぎ終わると…相手の顔を深く覗きこむように
しながら、手渡していく。
 お互いの視線が、絡み合えば…御堂は相手の手に…己の手を重ね、先に
相手のグラスの液体を口に含んでいく。
 克哉の目が柔らかく細められると同時に…唇を重ねて、相手の口内に
極上のシャンパンを送り込んでいった。

「ん…ふっ…」

 甘い声を漏らしながら、相手の口腔に舌を忍び込ませて…やんわりと
熱い舌を絡ませあっていく。
 鼻腔を突く、シャンパンの心地よい香りと…相手の唇の甘さに、それだけで
酔いしれてしまいそうだ。

「…美味いな。お前が用意してくれたシャンパンも…お前の唇の味も…」

「…だろう? 気に入ったか…?」

「あぁ、当然だ。これ以上の贈り物は…そうあるものじゃないからな…」

 強気に微笑んだ克哉の腕が、御堂の腰に絡まっていくと…こちらからも
相手の首筋にぎゅっとしがみ付いていった。
 眼鏡の視線がグラスの方に注がれているのに気づくと…強気な笑みを
浮かべながら、御堂がもう一度液体を口に含んで…相手の口腔に
注ぎ込んでいく。
 そのまま…お互いの情熱に火が突いて、次第に抱きしめあう腕の力も
強まり、絡めあう舌の動きも性急なものへと変わっていった。

「さ、えき…今夜は、もう一つ…贈り物があるんだが、受け取って貰える、か…?」

 声の振動が伝わるくらいの至近距離で、御堂が囁いていく。

「…これだけでも、充分だがな。…それで、何をくれるんだ…?」

 お互いの熱に浮かされた眼差しが、ぶつかり合う。
 相手の真意を読み取ろうと…ジっと克哉の怜悧で鋭い眼差しが
御堂の瞳の奥に注がれていった。
 それだけで…御堂の背中には甘い痺れが走り、ゾクゾクと悪寒めいたものを
感じながら…甘い吐息と共に言葉を紡いでいった。

「…これを…」

 ふっと瞳を細めて、克哉の左手を掬い取っていくと…その指先に口付けた。
 丹念にその指先を唇で愛でて…チュっと小さくキスを落としていくと…己の
スーツズボンのポケットに忍ばせていた銀色のリングを、そっと相手の指先に
つけていく。
 …そして、眼鏡が言葉を失っている間に…フッと不敵に微笑みながら
自分の指先にも同じようにシルバーリングをつけていった。

 その間、克哉は何も言わない。
 御堂からどんな言葉が紡がれるのか…真摯な表情を浮かべながら、
見つめていく。
 そんな彼の表情が酷く愛しくて…ふっと、穏やかな笑みを浮かべながら
御堂は高らかに告げていく。

「…私のこれからの人生全てを、君に…」

 そう告げながら、相手の唇に…深く深く口付けていった―

 ※この話は本編のED№3「嗜虐の果て」にを迎えた後、どうにか立ち直った
御堂と眼鏡が…結ばれた後、という設定の上に執筆した眼鏡誕生日ものです。
ミドたんが佐伯の嫁状態になっています。(当サイトの作品『白銀の輪舞』の後です)
それを了承の上でお読みくださいv

 眼鏡との間の確執が取れてから二週間後。
 心から結ばれてから、初めての相手の誕生日が訪れようとしていた。
 ここ暫くはまだ身体のリハビリも兼ねて、日中は働いている相手の代わりに夕食は
御堂の方が担当していた。
 だが…本日は一際力を入れて、料理を作る事に当たっていた。

「…フフフフ、これを食べたらあいつもきっと驚くに違いない…」

 異様な気合を込めながら、グツグツと煮立つ鍋の中身を丁寧に掻き回していく。
 大きな鉄製の鍋の中に入っている物は…数日前から仕込んで、丹念に
煮込み上げていたビーフシチューだった。
 まだ時間の融通が利いた学生時代ならともかく、社会人になってエリートコース
になってからは忙しくて料理を作る暇などなかったので…実際に作って見たのは
十数年ぶりになっていたが…渾身の料理の出来栄えに御堂は酷く満足げだった。

 塊のままの牛肉のブロックを数日掛けて野菜と一緒にトロ火で煮込み続けた。
 肉が蕩けるように柔らかくなってから、ホールトマトとローリエ等の香辛料の類を
一緒に投入し、仕上げに高級なワインと市販の高級なビーフシチューの元を使った
それは…芳醇な匂いを称えて、こうしているだけでも食欲を掻き立てる程だった。
 一口味見をしてみると、その完成度の高さに自分でも満足げの笑みを浮かべた。

 元々御堂は完璧主義者である。
 やるからには徹底的にやらないと気が済まない性分だ。
 本日は相手の誕生日に当たる訳だし、どうせなら盛大に祝ってやりたい。
 上質なライトグレイのシャツに、すっきりとしたラインのスーツズボン。
 それにカーキーのエプロンを身に纏いながら…時計の針を確認して
ポタージュスープとサラダ、カリっと焼いたフランスパンの用意をしていく。

「…そろそろ佐伯が帰ってくる頃だな…」

 本日の克哉は、来年から始動するプロジェクトの前準備の為に
出勤している。
 今年中にやるべき事は二日前には全て終えた、と言っていたが…取引先
よりも先んずる為や二重の確認の為に昨日も今日も、MGNに赴いていた。
 今日が終われば、年明けから七日くらいまでの一週間は休んでも何の
問題ない…と言っていたのだが。

「…本当にあの男は。今日は自分の誕生日だっていうのに…わざわざ
働きに出るなんて…一体何を考えているんだ…」

 こちらは十日ほど前にこいつの誕生日が、今日だと知った時から…その日は
盛大に祝うつもりで準備をしてきたのに…直前になって31日まで働くと聞かされた
時には、呆気に取られた。
 しかし御堂もかつてはエリートコースを邁進していた仕事人間だ。
 相手が仕事をすると言っているのに、自分との時間を優先しろだなんて…口が
裂けたってそんなみっともない事は言えない性分だった。

「…早く、帰って来い…。せっかく…用意、したんだぞ…」

 午後七時、定時に終わった場合は…眼鏡が必ず帰って来る時間が近くなって
ガラにもなく心臓がドキドキしていた。
 作っている時は夢中で気にしなかったが…自分の方から手料理を振舞って
相手の誕生日を祝ってやるなんて行為は生まれて初めての経験だ。
 そんな事を自分がやる日が来るなんて以前はまったく想像していなかったし…
その相手が克哉である事も…信じられなかった。

 用意した全ての料理が頃合に仕上がり、皿の上に盛り付けて…食卓の上に
二人分の用意を並べていく。
 そして…本日、ガーヴから取り出して丁度頃合に冷えているシャンパンの用意を
していく。
 シャンパン・フリュートと呼ばれる全体的に細めで背が高い、スラリとした
シルエットのグラスを二個用意していく。
 全ての準備が整い、時間を眺めていく。
 午後七時まで後…1分を切ろうとしていた。
 その時間になってまで、まだ帰って来る気配がない事に御堂は…少し不安を
覚えていく。

(もしかして…今日は遅れる、のか…?)

 昨日も一昨日も、佐伯は七時までには確実に帰って来ていた。
 それなのに…肝心の今日に限って、その気配はない。
 せっかく一番美味しい状態で食べて貰おうと頑張っていただけに…普段なら
何でもない事でも、少し相手が遅れるのだろうかと考えるだけで落胆してしまう。

「…あいつに、限って珍しいな…」

 ボソリ、と呟いた瞬間…ガチャと扉が開く音が聞こえた。
 顔を上げると、時計の針は丁度ジャスト7時。
 それと同時に…上質の黒いスーツとカシミアのコートを身に纏った眼鏡の
男が室内に入っていく。

「ただいま、御堂…。今夜も美味そうな料理を用意してくれているな…。
この匂いはビーフシチューか…?」

 コートを脱いで、リビングのハンガーにつるしていきながら…自分をこれだけ
やきもきさせた男は何でもない事のように、不敵な笑みを浮かべている。

「あぁ…そうだ。数日前から仕込んで用意してあったのを…今日完成させた。
多分、君が食べたら驚くレベルでの最上の仕上がりだ…。楽しみに
していると良い…」

 御堂もまた、先程までの不安を全て隠して…いつも通りの、強気な態度で
彼と会話を交わしていく。

「君は先に席に座っていてくれ。…今日は君が主役だ。私の方で全ての
準備をして…祝わせて貰いたい。良いな…佐伯?」

 そうして、相手を歓待する為の準備を御堂は始めていく。
 その間、彼の胸は…いつになく高揚し、早鐘を刻み続けていた―

 
 
 
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HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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