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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 10月20日は普段お世話になっている某Hさんの
誕生日な為に贈呈品をアップさせて頂きます。
 といっても長くなったので間に合わず、前編だけの
掲載になりますけど…(汗)

 この間会った時にこういう話を読みたいってリクエスト
されたのでそれを実際に書きました。
 完成させきれなくてすみません(あうあう)


 寄せ鍋☆パニック
 
 ―本多君、良かったら僕の家で鍋大会をしませんか?
 
 ある秋の夕暮れ、本多憲二は上司の片桐にそう誘いかけられて自宅に
お邪魔をする事になった。
 仕事帰りにスーパーに一緒に立ち寄って鍋用の具材をお互いに意見を言い合い
ながら色々と購入した。
 人の好みというのは本当に様々である。
 片桐は魚介類や野菜、白滝やダシ用の昆布などあっさりめの物や、鍋の基本と
なる品を買い物カゴに入れていくのに対して…本多は鶏肉や牛肉、豚肉など…
焼き肉やすき焼きをやるのではないか、と疑うぐらいにどっさりと買い込もうとしていた。
 その辺までは温厚な片桐も黙って見守っていたがスパイスコーナーでカレー粉や
ガラムマサラ、ターメリックの類まで入れようとした際には流石に片桐も止めに入った。
 放っておいたら寄せ鍋が、カレー鍋に変えられる危険性がある辺り…流石は
カレーバカの本多であった。
 荷物の大半は本多が持つ事にして、片桐の歩調に合わせて電車を乗り継いで
目的地まで二人で歩いて向かっていく。
 簡素で静かな住宅街の中に片桐の自宅はひっそりと建っていた。
 
「へえ、ここが片桐さん家っすか…結構広いですね」
 
「はい…そうですよ。けど、僕一人で住むには広すぎる家ですけどね…。
だから今夜、本田君や佐伯君が来てくれる事になって…本当に嬉しいですよ」
 
「いえいえ、こちらこそ…今夜は誘い掛けてくれて嬉しかったっすよ。俺も
一人暮らししているから…何となく寂しさとかそういうのは判るつもりですし。
だからその分、今夜はパーといきましょう!」
 
「はい、そうですね…。腕に寄りを掛けて美味しい鍋を作らせて頂きますよ」
 
 片桐はにっこりと微笑みながらそう言うと、二人で連れ立って家の扉を
潜っていった。
 こじんまりした一軒家の中は綺麗に整理整頓されて片づけられていて、
上司の性格が良く滲み出ていた。
 台所の方に買い物袋を置いていくと和室の方に通され、本多は其処で…
片桐に飼われている二匹のオカメインコと対面する事になった。
 部屋の隅の方に二匹の鳥かごは置かれていて、かご越しに向き合っていく。
 ご主人様以外の人間を久しぶりに見かけて、二匹はちょっと興奮しているらしく…
盛大に鳴いていた。
 
「お~こいつらがたまに片桐さんの言っていた天文丸と静ちゃんか…
なかなか可愛い奴らだな」 
 
「ピチュチュ…チュ…」
 
「チュチュチュ…!」
 
「ん、こいつの方は何か怒っているっぽいけど…おい、お前…何
不機嫌そうになっているんだ?」
 
 片桐は今、お茶とお茶菓子を用意してキッチンに残っている。その間…
本多は不機嫌そうなオカメインコ達に声を掛けていく。
 その様子は本多に鳥達が抗議して、こちらが必死にそれを宥めているような感じだ。
 そうしている間に用意が整えた片桐が、穏やかに微笑みながらお茶と
お茶菓子をお盆に乗せて、この部屋の方まで運んで来ていた。
 
「…あぁ、多分今…本多君が二匹の名前を間違えて呼んだからですよ。
この子達、自分の名前は違うって恐らく本多君に訴え掛けているんですよ。
えっとこっちのカゴの子がもんてん丸、こちらが静御前になります。
可愛がってやって下さいね」
 
「あ、そうなんすか。おう! お前等…悪かったな。悶々丸と静ゴレン…」
 
「本多君…もんてん丸と静御前です。ナシゴレンじゃなくて、静御前…源義経と
親しい仲だった白拍子の女性から名前を貰ったんですよ」
 
 自分の部下に、可愛いペット達の名前を立て続けに間違えられていても
片桐はニコニコと微笑みを絶やさなかった。 
 部屋の中には美味しそうな匂いが充満して、腹が盛大に鳴りそうだった。
 MGNに移籍した克哉にも声を掛けてあると聞かされて、本多は心を
湧き立たせていた。 
 
(久しぶりに克哉に会える…あいつ、MGNで元気にやっているかな…)
 
 本多の心は、かつて密かに片思いをしていた佐伯克哉に馳せられていった。
 といっても実際に行動に移したり、告白していた訳じゃない。
 ある時期から酷く蒼ざめた顔をしていたり…不安そうにしている克哉を
放っておく事が出来ず心配している内に、この気持ちはもしかしたら恋
なのではないか…と気づいてしまった。
 けど克哉は一環してこちらの事を「親友」としか見なしていなかった節があるし…
あまり空気が読める性分ではないが、本多もそれが判ってしまったから口に
出さずに秘めていたら…その内、御堂に見込まれて、MGNに移籍を決めて…
八課のオフィスから彼の姿は完全に見えなくなってしまっていた。
 
(本当に…克哉の奴がいなくなった頃は胸の中にぽっかりと大きな穴が
開いたような心境で…マジで毎日が辛かった。…それがいつの間にか
そんなに苦しくなくなったのって…やっぱり片桐さんの存在が大きいよなぁ…)
 
 克哉がいなくなって以来、片桐はこちらにさりげなく気遣いや…何気ない、
労わりの一言を掛け続けてくれた。
 八課の他の仲間たちも本多を励ましてくれていた。
 密かに想っていた克哉がオフィスからいなくなってしまった事…それは
本多にとって大きな痛手だったけれど、仲間がこちらを大切にしてくれている
事に気づいて…その痛みをいつまでも引きずっているのは失礼だと思った。
 だから本多は…今は振り切っている。
 克哉のことは言えずにウジウジしていた、行動に移せなかった自分が
悪かったのだし…親会社に抜擢されて出世コースを歩み始めている友人を、
自分の我侭で引き止める訳にはいかない。
 現在の本多にはそれくらいの割り切りは出来るようになっていた。
 
「本多君…良かったらお茶菓子でもどうぞ。鍋の準備が仕上がるまでもう
少し掛かりますから…」
 
「あ、わざわざありがとうございます! それじゃあ…頂きます!」
 
 どれだけ親しくなってきていると言っても、やはり上司と部下の一線だけは
崩せず…どうしても敬語になってしまう。
 そうして本多は片桐と一緒にお茶とお茶菓子を摘まんで一服し始めた。
 
「ん~やっぱり片桐さんの入れるお茶は絶品っすね。同じお茶っ葉を使って
いる筈なのに…どうして他の人の奴と味が違うんですかね?」
 
「…本多君、大げさですよ。僕はそんなにたいした事をしている訳じゃない
ですから…。前の日に汲み置きしてカルキを飛ばした水を使って、ちょっとだけ
温度に気を配っている。たったそれだけの事ですよ…」
 
 そうサラリと言うが、片桐が毎朝淹れてくれるお茶は味が落ちたりする事は
一度もなかった。
 毎日、美味しいお茶になるように気を配ってくれている…それを何でもない事の
ように言うがその気配りを毎日続けるのはかなり根気がいる事だった。
 その一言を聞いた本多は、内心で上司を尊敬していく。
 
(片桐さんのこういう処は本当に凄いよな…俺には真似出来ないもんな…)
 
 しみじみとそう呟きながら、暖かくて美味しいお茶を飲み進めていく。
 呼び鈴がその瞬間に鳴り響いて、来客の到着を伝えていった。
 
「あ、恐らく佐伯君ですね。本多君、ちょっと待ってて下さいね…」
 
「あ、イイっすよ。ここで待ってますから…」
 
 笑顔でそう上司を送っていくと、本多はお茶とお茶菓子に舌鼓を打って
幸せな一時を過ごしていく。
 こういう寛ぎの時間は、本当に気持ちがリラックス出来る。
 そう思った瞬間、全てが覆されていった。
 
「っ…!」
 
 廊下から複数の足跡が聞こえて、こちらの方に近づいてくる。
 それが二人ではなく三人の足跡であり、そして…もう一人、本多にとっては
歓迎したくない人物が混ざっていた事に気づくと、本多は目を剥いていった。
 だが、片桐と克哉の手前、どうにか声を押し殺していく。
 
(つか…何で御堂の奴がここに一緒に来ているんだよ! というかどうして
克哉はそんなに幸せそうな顔をしているんだよ~!)
 
 心の中でそんな叫びを挙げつつ、大波乱の寄せ鍋の会は…ゆっくりと
幕を開いていったのだった―
 
                      *
 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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