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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 2009年度 御堂誕生日祝い小説
(Mr.Rから渡された謎の鍵を使う空間に眼鏡と御堂の二人が
迷い込む話です。ちょっとファンタジーっぽい描写が出て来ます)

  魔法の鍵  
  

-あんな男の事などやはり信用するんじゃなかった
 
 佐伯克哉は目覚めた瞬間、謎の空間にいつの間にか移動させられている
現実を把握すると同時に心底そう感じていった。
 どうやらどこかの城の回廊か何かのようだ。
 異様に長く広い廊下には無数の扉と、鍵穴がズラリと並べられている。
 扉の数は優に50は超えていて、こうしてみているだけで圧巻ものだった。
 
「ちっ…一体、ここは何処なんだ…! …っ! 孝典、しっかりしろ…!」
 
 霞掛かった頭で、ぼんやりと周囲を見回していくと…自分のすぐ傍らには
御堂が倒れて意識を失っているようだった。
 慌てて駆け寄り、抱き起こしていくと…克哉の腕の中で小さく呻き声を
漏らしていく。
 
「…良かった、外傷等はないようだな…」
 
 その事実に心からの安堵を覚えていく。
 周囲は薄暗く、壁の高い所には蜀台が取り付けられていて…蝋燭の炎が
怪しく揺れている。
 本当に古い時代の貴族か…王族達が住む城、そういった雰囲気が漂う場所だった。
 
(あいつは一体…俺達をどこに連れて来たんだ…? まったく見覚えが
ない場所だぞ…?)
 
 あの男が絡むと超常現象や、有り得ないことが起こるのが最早当然になる
訳だが…意識を失う前までは自分たちは間違いなくオフィスにいた筈だ。
 果たしてどのような手段を用いて自分たちをここまで運んだのか疑問は
残るところだが、あの男に関することは深く考えないようにすることが精神衛生上
宜しい…とすぐに気持ちを切り替えて、克哉は現状の把握の方に重点を置いていった。
 無数の鍵穴と、扉…これはあの男から先日渡された鍵で恐らく開くものだろう。
 何が現れるか、出てくるか判らないという点では…確かにサプライズ感や
ドキドキは存在している。
 
(さて…鍵を使って開けてみたら…魑魅魍魎(ちみもうりょう)か…鬼か蛇が
出るかといった所だな…。さて、これからどうするか…)
 
 御堂の身体を軽く抱き上げていきながら周囲に目を凝らしていくと…
腕の中の恋人は小さく呻き声を漏らしていく。
 
「ん…ここは、一体…どこだ? 私はどうして…?」
 
 御堂もまた、現状の把握がイマイチ出来ていないようだった。
 しかし…本当の事を言って良いものか克哉は悩んでいく。
 Mr.Rに関係する事や、現状を説明したとしても相手に信用してもらうのは
かなり難しいことだろう。
 しかもここでこの後、どれだけ非常識なことが起こるのか予想もつかない。
 だから克哉は先手必勝とばかり…先にこう言っておいた。
 
「…御堂、どうやらここは夢の中らしい。そして俺達は…今夜に限っては偶然、
同じ夢を見て共有している。だから…どんな事が起こっても、夢の中だから
不思議はないとでも思っていてくれ…」
 
 そう、夢の中…これほど都合の良い、言い訳は存在しないだろう。
 漫画や小説、ドラマや映画の世界でもオチでこれが使われた作品は
無数に存在している。
 都合の悪いことや辻褄の合わないことだってこの一言が前置きにあれば
必要以上に突っ込まれないで済む一言を真っ先に克哉は言い放っていった。
 
「夢…? そうか、そうだよな…。さっきまで私は君と確かにオフィスで
一緒に働いていた筈だからな。どのような手段を用いろうとも…簡単に
大の男二人をこんな場所まで運ぶのは難しい。…納得いかない部分もあるが、
君のいう通り…知らない間に眠りに落ちて…夢を見ているというのが
確かにしっくりは来るな…」
 
 御堂の方も全てを鵜呑みにするのは納得がいかなそうだったが…とりあえず
半信半疑で克哉の言葉を受け入れていく。
 そうして腕の中から抜け出て、御堂がヨロヨロと身体を起こしていくと…
周囲を確認するように見回していく。
 
「…何でこんなに、無数の鍵穴が存在しているんだ…?」
 
「…どうやら沢山の部屋が用意されているらしい。一応…この鍵で5個まで、
扉を開くことが出来るらしいがな…」
 
 そういって克哉は先日、黒衣の男から渡された鍵を見せていく。
 御堂はそれを興味深そうに見つめていった。
 
「…五個まで、とそう制限があるのか…? なら、どちらかが二個、もう一方が
三個…選んで鍵を開けていくのが妥当なのか…? おや…?」
 
 相手から鍵を見せられた直後、突然…御堂の上着のポケットに何かが
入って来た感触がした。
 違和感を覚えて手を差し入れて確認していくと…其処には小さく折りたたまれた
手紙と、克哉が今持っているのと同じ鍵が入っていた。
 
『お誕生日おめでとうございます。貴方にとって今宵が楽しい一夜と
なりますように…心から祈らせて頂きます。   
                             当館の主 Mr.Rより』
 
 そう記されていた一文を読むと…御堂は怪訝そうに眉をひそめていった。
 
「何だこの手紙は…いつの間に入れられていたんだ…?」
 
「…御堂、だから言っただろう。これは夢の中だと…多少不可解なことでも
そう割り切ってしまえば大丈夫だ…」
 
 克哉は基本的に極めて現実主義者で、日頃ならば夢だ何だ言うようなことは
決してないが…Mr.Rが関わっている時のみ、非現実な事は当然と割り切るように
いつのまにか思考回路が出来上がっていた。
 もう招かれてしまったのならば仕方ない。
 開き直って現状をそれなりに楽しんでいくしかないと想い…もう一度、
そう説明していく。
 
「…うむ、納得はいかないがな。まあ…とりあえず試しにこの扉でも
開いてみるか…?」
 
 無数に並んでいる扉はどれも同じデザインをしていて外見上では
区別がつかない。
 だが、御堂は…一本だけ頭上の蝋燭が消えかけている、それが目印に
なるであろう部屋を選んで鍵穴に鍵を差し込んでいった。
 
「…開いたな、さて…中を確認してみるか…」
 
 その部屋は薄暗く、軽く覗き込んだだけでは様子が判らなかった。
 闇に目が慣れる頃までジっと見つめていくと…すぐに顔色が変わり、
扉を勢い良く閉めていく。
 
 バタン!!
 
 御堂に習って、自分もどの扉を試しに空けてみようか迷っていた克哉は
慌てて音がした方を振り返って声を掛けていった。
 
「御堂、どうした…? 大丈夫か…!」
 
 血相を変えて克哉が問いかけていくと、御堂は蒼白になりながら…
それでも気丈そうな様子を取り繕って返答していった。
 
「だ、大丈夫だ…予想外のものを突然目の当たりにしてびっくりしただけだ…。
とりあえずお互いに鍵の使用限度まで扉を開けて、どんな部屋があるのか
確認していこう…」
 
 そうして御堂が無理に微笑みながら答えるのを見て、胸騒ぎを覚えたが…
彼がこういう表情を浮かべている時はこちらにそれ以上、問いただされたくない
事だというぐらいはすでに判っている。
 
(これは…今は無理に聞かない方が良さそうだな…)
 
 そう判断し、克哉もまた何でもないような顔をして返答していった。
 
「判った…それなら、お互いに鍵を使って部屋の中身を確認していこう…」
 
 そう頷き、克哉は五つの扉を物色しながら…開いていくことにした。
 御堂が最初に辿り着いた部屋が一体何を暗示していたのか…まだ、この時点では
知る由もなく…この奇妙な回廊をゆっくりと探り始めていったのだった―
 
 
 

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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