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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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  『本多憲二』

  二週間前、片桐さんから深夜に連絡受けた時は…聞かされた内容が
最初は現実に起こった事なのか、信じられなかった。
 だって、嘘だとしか思えなかった。

 確かにその日、克哉が定時になっても連絡一つ寄越さないで…キクチ本社の
方に戻ってこなかったのはおかしいな…と思っていた。
 けど、あいつはこの一ヶ月間…引き上げられたプロトファイバーの目標値を
達成しようと人一倍頑張っていたからな。

 だから連絡がないのも、どっかの会社で…必死になって交渉を粘り強く続けて
いたからだと、俺と片桐さんは納得して…折り返し連絡しようと思っていなかった。
 大学を卒業してから三年、ずっとあいつを見てきたんだ。
 黙ってサボったり、手を抜いたりする奴じゃない事ぐらいは知っているからな。

 なのに…実際は、俺達も予想もしていなかった出来事が起こっていた。
 どうしてあいつが…白昼堂々と、大公園のど真ん中で腹部を刺されて危篤状態に
なんてならなければいけなかったんだ?
 一体、誰が克哉を刺したんだよ! 
 絶対にその犯人を見つけたら、俺はぶん殴ってやろうと心に決めた。

 俺が病院に駆けつけた時には…片桐さんはすでに集中治療室の前で待っていて。
 それから一晩…帰る事も出来ずに俺達はその前で待ち続けていた。
 幸い、金曜日の夜だったから…翌日は会社は休みだったからな。
 俺と片桐さんはそのまま…翌日も面会も叶わない状況の中…克哉の容態が
安定する事を祈り続けていた。

 御堂が顔を出したのは土曜日の夕方の事だった。
 …俺達は病院から離れなかったので知らなかったが…克哉が刺されたという
ニュースは当日の深夜と、翌日の早朝に一回ずつ大手のニュースサイトで放送されて
プロトファイバーの営業の関係で知り合った取引先に何人も問い合わせの電話が来たから
片桐さんに連絡をし、一応顔を出しに来たようだった。

 胸くそ悪くなる事に、片桐さんがせめて克哉が退院するまでは期限の延長を求めて
土下座までしたのに、あいつは平然とそれを撥ね付けやがって!
 御堂の奴、暖かい血は通っていないのかよ!
 片桐さんは泣きそうな顔をしていたのに…克哉は死にそうになっている状態なのに
延長を認めてくれなかった事は俺はハラワタが煮えくり返るくらいに憤った。
 本当にあそこまで冷たくなれるあいつという存在が信じられなかったぜ。 
 …ま、それも翌日にとんでもない数の受注を受けて目標値を達成したことで
多少は溜飲が下がったけどな。

 それから…四日目にして、克哉は個室の病室に移されて直接の面会が可能に
なった。克哉の意識は相変わらず戻らないままだったけれど…沢山のチューブに
繋がれて痛々しい姿ではあったけれど。
 穏やかな顔で眠り続けているあいつの姿を見れただけでも…俺は、あぁ…こいつの
命は助かってくれたんだなと実感出来て嬉しかった。
 高校時代に、良いリベロがいるな~とチェックをした事から…もう八年かな?
 大学中は三年生の始めの時にあいつがバレー部を辞めたことになって疎遠に
なっていたけど…三年も八課で一緒に過ごした大事な仲間だしな。
 こいつが死なずに済んだ事が、心から嬉しくて仕方なかった。
 助かってくれた事に、本気で神様仏様辺りにでもに感謝したい心境だった。

 それから二週間が経過して…今日も営業の帰りにフラリと立ち寄って克哉の
病室を訪ねていった。
 克哉の意識はまだ、目覚めないから…会話も出来ない状態ではあったけれど…
うん、あいつが安らかに寝ている姿を見れるだけでも安心出来たからな。
 それで十分くらい…傍にいて、すぐにキクチ本社の方に戻るつもりでいた。
 だが…俺は其処で、とんでもない光景に遭遇してしまった。

「…嘘、だろ…?」

 扉を少し開いた状態で、飛び込んできた場面に…俺はその場で硬直するしか
なかった。
 克哉の処にあんなに冷たい事を言い放っていた御堂が見舞いに来ていただけでも
驚きなのに…どうして、克哉とキスなんてしているんだ?
 
(ちょっと待て…何で御堂が、男の克哉にキスなんてしているんだよ…!)

 叫び声を上げたい心境だった。
 それでも…驚愕のあまりに声を出す事も忘れて、そのとんでもない情景から
目を離せずにいた。

 ドックンドックンドックンドックン…。

 心臓がまるで壊れてしまったかのように、荒い鼓動を刻み続けていた。
 それは…俺が今まで、考えた事もない現実だった。
 あんなにイヤミな御堂が、優しい顔をしながら…克哉を見つめていく。
 信じられなかった。
 御堂は克哉を嫌っていたんじゃなかったのか? 
 今までの振る舞いや態度は、俺の目から見てもそうだとしか思えなかったのに…
たった今見たモノは一体なんだというんだ?

「…っ!」

 その瞬間、俺の胸ポケットに収めていた携帯がバイブ設定で
振動を始めていく。
 ヤバイ! このままじゃ御堂に見つかる…! とやっと正気に戻れて
慌てて扉の前から立ち去っていった。
 そのまま全速力で病室の前から立ち去って…俺は携帯を取っていく。
 電話の相手は、片桐さんだった。

(今は仕事時間中だ…! 頭をしっかりと切り替えてなきゃ…な…)

 自分にそう言い聞かせて、今見た光景を一旦…頭の隅に追いやっていく。
 それでも…片桐さんと話している最中、俺の心臓の音はずっと荒く乱れ
続けたままだった―
 
 

 

 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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