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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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   『五十嵐太一』


 


 「う~目が疲れる…」

 俺は暗い部屋の中で、ベッドの上に横たわりながらパソコンを使って、今夜も
情報収集作業を続けていた。
 あの馬鹿親父が克哉さんを刺した日から二週間。
 その翌日から…四国に俺を連れ戻そうとする親父に反発して、最低限の身の回りの
物だけ持ってアパートの方を飛び出したんだ。
 それで俺は今、絶対に親父が探しに来ないだろう盲点の場所に隠れていた。

「…部屋に明かりを付けてパソコンを使えるなら、こんな目が痛い思いをしなくて
良いんだろうけどね。…この部屋じゃあ、今は使えないからな…」

 日当たりの良い部屋だから…昼間は太陽の明かりが差し込んでまったく問題
ないんだろうけどね。夕暮れ時期までは全然OK。
 けど夜になると…ノートパソコンのライトで画面を見る事は出来るけど…部屋が
暗いせいで余計に目に負担が掛かっているんだよね。

 えっ? 何で夜に明かりをつけられないのかって? だって…ねぇ、この部屋の
住人は今…入院中でね。
 ニュースが放映されたおかげで、アパート中の人がこの部屋には今…人がいない
事を良く知っている。ご近所の人だって同様だと思う。
 その中で必要以上に電気系統の類を使ったら、一発で不法侵入がバレるじゃん。
 …ここまで言えば判るよね? 俺…考えた末に、あの翌日から克哉さんのアパートに
潜伏しているんだよ。

 まさか親父も、自分が刺した男の部屋に息子が転がり込んでいるなんて…
予想出来ないだろうからね。
 そういう盲点を突く意味でも…ここは俺の考えられる限り、最高の場所だった。
 水道、電気の類は生きているし…トイレ、風呂、洗濯機もついている。
 音を立てないように細心の注意を払う必要があっても…手持ちの現金が乏しい
俺としては…最小限のお金で滞在出来るココは最適だった。
 一旦パソコンの画面から目を離して、ゴロンとベッドの上に仰向けになり…目薬を
点眼しながら、深い溜息を突いた。

(あ~あ…克哉さん、今…どうしているんだろ…)

 あんな酷い目に遭わされたというのに、俺の頭の中は…ずっと克哉さんの事で
一杯だった。
 …うん、思い出すとロイドの中であの人に良いようにされた事は…今思い返すと
ハラワタが煮えくり返りそうだけどね。
 けど…あの翌日、親父に介抱してもらった時…マジで、怖い目をしててさ。
 殺気って奴を瞳に漲らせて、憤る姿を見たら…克哉さんがヤバイって何か
思っちまって。気付いたら高熱に浮かされて苦しかった時に…親父の仕事道具を
隠していたんだよね。

 螺旋の刻まれた、細い針みたいな銀色の棒。一見するとバーベキューの串とか
針治療に使うんじゃないの? という感じなんだけど…これは立派に人を殺せる
道具なんだ。家を出た時についでに持って来ておいたんだけどね。
 これを胸に…心臓に突き刺す事によって、出血とかを最小限に抑えながら
確実に相手を仕留める事が出来る。

 俺は…大学に通うために東京の方に出て来て、一緒に働いている内に…親父の
裏の顔みたいなのを知ってしまった。
 その腕前があるから、あんな閑散とした喫茶店でも俺の給料を出しながらやれて
いたんだな…と。
 …まあ、知った時はショックだったけど…元々五十嵐の家自体が普通の一般家庭に
比べれば随分と変わった家だな、って自覚ぐらいあるし。

 …あのじーさんの下にいた時は、親父もその腕前を振るう必要性があったんだろ…と
言う事ぐらいは判るしな。
 けど俺は…土壇場で克哉さんを殺されたくないな、と思った。
 だからこれは…親父の手に当分戻すつもりはなかった。

「…ん~まだ、克哉さんらしき人は…入院中だっていう情報だけは入って来るん
だけどね。…都内の病院ってだけで、まだどこに搬送されたのか…特定出来て
ない状態なんだよね。本当、やりにくい時代になったな…」

 目の状態が落ち着いてから、俺はネットサーフィンを再開していった。 
 現在閲覧中のサイトは、某大手掲示板の…病院関係の記事スレッドだった。
 看護婦とか、医者とかのちょっとした噂話や…愚痴、不満。表立って言えない改善案とか
そういう類の話で成り立っている場所だ。

 其処に克哉さんのニュースが流れた翌日から、「結構美形の人がお腹を刺されて、うちの
病院に搬送されてきたんだけど…助かるかしら?」みたいな文章が書かれていたので
俺は一応、ここを一日一回はチェックするようにしていた。
 HNとかはない状態だけど、この女性の看護士さんと思われる人物は時々…克哉さんと
推測される人物の状態をここに書き込んでくれているので、どうにか…あの人が「一命だけは
取り留めたが…現在も意識不明状態」である事だけは知る事が出来ていた。

(本当…俺のパソコンを使えるなら、もっと情報収集の類はスムーズなのにな…)

 克哉さんは当然、一般人だし…あの人の雰囲気からして、俺みたいに危ない事や
非合法の事には手を出しそうにないから…仕方ないんだけどね。
 普通のパソコン以上の機能も、情報収集に役に立つ裏プログラムの類がインストール
されていないのでいつもの半分以下の速度でしか情報を拾えなかった。
 あれさえあれば…都内の病院関係の端末内に入り込んで、情報を一気に吸い出したり
出来るのに…。
 けれど俺のアパートはとっくの昔に五十嵐組の人間がマークをしているだろうから
戻れば一発で捕まる事は目に見えていた。
 だから俺は…歯痒い気持ちを抑えて、このパソコンで情報を集めるしかなかった訳だ。

(まあ…特定出来なくても、ここで待ってさえいれば…いつかは会えるんだろうけど…)

 眼鏡を掛けて、別人のようになった克哉さんに…俺は、犯された。
 あの時の事を思い出すとまだ腹が立つ。それでも…ふとした瞬間に思い出すのは
いつもの克哉さんの、あの…人の良さそうなぽややんとした笑みだった。

(会いたい…な…)

 親父に刺された、という事実を知ってから…飛び出して。
 少し落ち着いた頃に感じたことは、ただそれだけだった。
 もう一度…あの人に会ってちゃんと話をしたいと思った。
 だから…俺は、親父が四国に連れ戻そうとした時に全力で反発した訳だし…。

「会いたい、よ…克哉さん…」

 眼鏡を掛けた貴方じゃなくて、俺が気になって気になって仕方ない…放っておけない
雰囲気を持っている方の克哉さんに。
 あんなに酷い克哉さんと最後に会ったきり、俺の好きな方の克哉さんと会えないまま
終わる事だけは嫌だった。

 心の中にあるのは、「克哉さんに会いたい」という一心だけ。
 ―何かおかしいよね。これってまるで…恋みたいに、強くて…純粋な感情だ。
 それだから、俺は一日も早く知りたかった。
 あの人が今、どこの病院にいるのかを。
 見つけても…現在も意識不明状態が続いて、会話も出来ないかも知れない。
 でも、顔だけでも一目見たかった。
 
(…ちくしょう、今日もまた…収穫がないのか…?)

 目が悲鳴を上げるぐらいに必死に検索を続けても、今日も病院を特定出来る
情報は手に入らなかった。
 もう二週間以上経過している。そろそろ苦しい時期に差し掛かっていた。

(…克哉さん…!)

 強く強く…あの人の事だけを考え続けていたその時。
 いきなり俺のメールアドレスに…一通のメールが送信された。

「っ!」

 タイミングがタイミングだから、少しびっくりしてしまった。
 …あ、一応…俺が以前から使っているMSNのフリーメールの方ね。
 これは世界中どこの国からでもログインが出来るってメリットがあるんだけど…
まったく知らない宛先からの物だったので不気味に感じてしまった。

「…何々、え~と…「五十嵐様へ 貴方の望む情報をどうぞ Rより愛を込めて」…だって。何これ、
うっさんくさ…」

 題名だけ見て、凄い胡散臭さ大爆発のメールだった。
 何かファイルが添付されているみたいだったけど…もしかしたらパソコンウイルスの
類も一緒に入っているかも知れない。
 最初はそう考えて…さっさとスルーしようとした。
 だが…添付ファイルのタイトルを見て、誘惑に駆られてしまった。

『病室内の写真です』

 …今、俺が追い求めているのは病院の情報だった。
 だから人のパソコンでそんな怪しいメールを開くのはマナー違反だって事は
自覚があった。
 だが…俺は、何かに魅入られたかのようにそのメールを開いてしまっていた。

「…嘘、だろ…」

 俺は驚愕に目を見開くしかなかった。
 其処に記されていたのは病院名と住所、電話番号だけ。
 そしてそのファイルには…夜の病室に、ベッドの上で静かに眠り続けている
克哉さんの写真だった。

 ドクンドクンドクンドクン…!

 凄く怪しい写真と情報だった。
 何かの罠のようにすら感じられた。
 だが…克哉さんの写真がこうして添えられている時点で、俺に無視する事など
出来る訳がなく…散々、悩んだ末に俺は…この病院に一度、行って見る事にした。
 その先に待ち受けているものが、どんな結果なのか…まったく予測する事すらも
出来ないまま―に。

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プロフィール
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香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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