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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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第十八話 『俺…これから大丈夫かな』 『五十嵐太一』

 克哉さんにタクシーに押し込まれて、連れて行かれた先には結構立派な
造りの一軒家の前だった。
 確かにアパートの部屋よりも、こっちの方が広そうではあるけどね。
 …こっちの克哉さんは酷いし、冷たいし…滅多に笑ってくれなくて愛想は
なくても…でも、一緒にいたいって気持ちはあるのに、連れないよな。
 …ま、あっちの克哉さんみたいに優しくしてくれたのなら、もっと良いんだけど…
期待しない方が精神衛生上、良いんだろうな…はあ。
 
「ついたぞ。ここが…俺の同僚の本多の家だ。一応…お前一人ぐらいだったら
余裕で置けそうな感じの家だろ?」

「ん、それは認めるよ。けど…狭いアパートで二人でつつましく暮らすっていう
のも悪くなさそうだったんだけどね…」

「冗談は止せ。…ヤクザに追われているっていう事情を抜きにしたって
俺にはお前を置いてやる気などなかったがな。…俺の愛玩猫にでもなるって
いうのなら話は別だが…」

「…誰がそんなモンになるかよっ! あんたの言いなりになんて…俺は絶対に
なる気ないかんねっ」

 …何となくこいつの偉そうな口調にムカついてきた。
 大好きな人と同じ顔をしているのに、言動も行動も…俺が知っているあの人と
やはり全然違う。
 何かこういうのって、やっぱり二重人格っていうのかな?
 …そんなのドラマとか映画、漫画とかの中にしかないフィックションの事だと
思っていた。

「心配するな…俺だってお前みたいな、根本から調教し直さないといけない
手の掛かりすぎる奴を飼う趣味はない。まあ…反抗的な奴を嬲るのも
それなりには楽しめるがな…」

「…ン、だと…!」

 こいつの物言いに、一瞬カッとなりそうだった。
 けれどどうにか怒りを抑えて…手を出さないように戒めていく。
 …悔しいけれど、一ヶ月無断で勝手に部屋に上がりこんでいたという非は
確かにあるし…それで次の居候先を用意して貰えただけでも相当にラッキー
だという自覚ぐらいある。

「どうした? 随分と大人しいじゃないか…?」

「…あんた、絶対にその性格を直さないとその内…酷い目に遭うぞ。
まったく…」

 …コイツの反応を見て、今のは意図的にこちらを挑発していたんだなって
判ったら、少しだけ冷静になれた。
 …ほんっと、コイツ可愛くない!
 どうしてこんな奴とあのラブリーで可愛くて可憐な克哉さんとが同一人物なのか
本気で疑いたくなった。

「…俺は別に、自分のこの性格を気に入っているがな。アイツみたく…いつも人の
顔色ばかりを伺ってオドオドしているより、よっぽど良いと…」

「…自分で、自分の事を否定するなよ。聞いているだけで腹が立つから
止めてくれる。…俺は、そっちの克哉さんの方が大好きなんだからね!」

 それ以上、聞きたくなかった一心で強い口調で言うと…それに面を
食らったのか、珍しく驚いたような表情を浮かべていた。
 …コイツでもこんな顔するんだ、とちょっと意外な気がした。

「物好きだな…お前は…」

「えっ…?」

 …何か、そう口にしたコイツの表情は…いつもの傲慢さや意地の悪さが
殆どなく、どこか切なげなものだった。
 …どうしてだろう、そんな顔をされると…胸が少しだけ痛んだ。
 そのまま玄関での押し問答を止めて、俺に背を向けた状態で…良いや、
こいつにさん付けなんかしなくても。
 克哉がインターフォンを鳴らしていくと…暫く待ってみたけど、何の反応もなかった。

「もしかして、今出かけているのか…? あいつは…?」

 そのまま不機嫌そうな顔で、何度も呼び鈴を鳴らしていったが、やはり
中に人がいる気配はなかった。
 しかし…こいつはいない、と判断するとまったく迷う様子さえ見せずに扉を
開いて、中に身を滑り込ませていった。

「って! あんた…!一体何をしているんだよっ! 中に人はいないんだろ!」

「…料理の匂いがするから、もうじき帰って来るだろ。扉の隙間から微かに
濃厚な香りが漂っているからな…」

「匂い…? そんなの…あっ! 本当だ…これって、もしかしてトンコツとか
そういう系のスープの匂い!?」

 言われて見て気をつけてみると、確かにトンコツラーメン屋とかの前に漂う
濃厚なトンコツスープの匂いがムワっと襲い掛かってくる。
 一瞬、こっちが立ち尽くしている隙に克哉はさっさと家の中に上がりこんで…
勝手知ったる他人の家っつーの? 
 そんな感じでズンズカ奥へと突き進んでキッチンの方まで向かっていったん
だよね。そして…匂いの元になる鍋の前に立つと…。

 ザバァァァ!!!

 台所のシンクの中に、大きな網を設置したかと思うとあっという間にその中に
大きな鍋の中身を上げていった。

「あ、あんた…! 一体人の家の食いモンに何勝手に手を出しているんだよっ!」

「うるさい…黙れ! 俺の美学的にこんなモノは料理とは認めない! あれだけ
文句を言ったのにまた丸ごとカレー何て作るアイツのが悪い!」

「丸ごとカレー?」

 と言われて、はっとなった。
 網の中に上げられている具財の殆どは…豚足から、ニンジン、ジャガイモ、玉ねぎ等
全ての材料が殆ど原型のまま収められていた。
 おいおい!待ってくれよ! 普通カレーって皮むいたり、一口大の大きさにカットしてから
鍋の中に入れるもんじゃないの?
 ありえない物を見てしまって、アッケに取られている間に…玄関の方から非常に
勇ましい、というか暑苦しい声が響き渡っていく。

「ただいま~!」

 …何となくその声を聞いただけで、その人となりが全て判った気がした。
 しかしこんな恐ろしく大雑把なカレーを作る人ってどうなんだろ?
 幾らなんでもこれは俺もマジでびっくりしたんだけど…ね。

「カレーの調子はどうかな…っと。おっ! 克哉…来ていたのか! 丁度良かった。
後でお前の所にでもカレーを持って行ってやろうと…って、一体お前何しているんだー!
せっかくの俺の力作だったのに!」

「うるさい黙れ! 味は確かに悪くなかったが、丸ごとカレーは非常に食べにくいから
今度からはちゃんと具財くらいカットしてくれ! とちゃんと俺は言った筈だぞ!
お前個人で楽しむのならともかく…俺の所に持っていく物をこんなに荒っぽく
作るな。最早嫌がらせに近いぞ…これは…」

「男ならやっぱり豪快に行くのが本道だろっ! あ~! せっかく煮込んでおいた
スープを思いっきり捨てやがって! これが美味しいんだぞ!」

「どうみても具をドカドカ丸ごと入れていたせいで、アクと脂がムチャクチャ
浮きまくっていたんだが…。もう少し繊細な味とか、そういうのをお前は絶対に
学んだほうが良いと思うぞ…」

 深く溜息を突きながら、それからも二人の言い争いは暫く続いていた。
 …俺のことなんて、本気でそっちのけな感じだった。
 まあ、それは別に良いんだけど…俺、こんなに荒っぽくて暑苦しい人と一緒に
生活しなきゃいけない…訳?
 克哉さんの同僚だっていうし、他に親父のマーク対象に入っていない人で泊めて
くれそうな人の当てはないから…文句を言える立場じゃないっていうのは承知の上
なんだけど…さ。
 俺、本当にこれからこの人と…上手くやっていけるのかな。

(…ここで、本当に大丈夫かなぁ…)
 
 心底不安になりながら、俺は暫く…ガックリとした様子で…二人が低レベルな
口喧嘩をしているのを眺めていったのだった-
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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