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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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  ※この話は7月いっぱいに連載していた『在りし日の残像』の後日談に当たる話です。
  その為、克克の夏祭りのお話でありますが…その設定が反映された会話内容と
描写になっています。
 それを了承の上でお読みください(ペコリ)
 
  ゆっくりと買った物を食べる為に、二人は神社の外れの方へと移動
していた。
 この辺りは花火が見えない位置関係にある為、開催時間が近い今となっては
あまり人気が見れなかった。
 この神社の西側に流れている川を下っていけば、絶好の観覧スポットへと辿り
つくが…良い場所を求めて、今は沢山の人が移動している頃だった。
 鬱蒼と生い茂る樹木が、夜になって明かりが乏しくなると非常に怖く感じられる。
 小さな社の傍、裏山へと続く階段の手前に二人は陣取っていくと…先程買った
たこ焼きと、途中で購入した目玉焼きときくらげがいっぱい入った焼きそばを
広げていった。
 
「ん~美味しそうな匂い。けど…ここ、見事なくらい人がいないなぁ」
 
「山の上を相当登らないと、この周辺からは花火が見れないからな。
それでも随分と
遠くて小さくしか見れないし…。まあ、そのおかげで
こうして二人きりで過ごせる訳
ではあるがな…」
 
「ん、まあ…そうだね」
 
 何となく今の言い回しに含みがあるように感じられて、克哉の頬が
軽く染まっていく。
 裏山の社の前は、不気味で独特の空気が漂っているせいだろうか。
 余りに華やかな表通りに比べて、あまりに暗い。
 
「ほら、口を開けろ…」
 
「えっ…あ、うん…」
 
 気づくと眼鏡は…たこ焼きのパックを開けて、楊枝でその一つを
突き刺しながら
克哉の口元にそれを宛がっていた。
 それに気づいて、克哉は慌てて口を開いて頬張っていく。
 まだ充分に暖かいたこ焼きは大きめのサイズだったから全部を
口に納めるのは
ちょっと大変だったが…口の中でトロリと
蕩けるようで美味しかった。
 その中に、コリっとしたイイダコの食感と、うずらの卵のツルリとした舌触りが
良いアクセントになっていた。
 
「…ん、美味しい」
 
「そうか。良かったな…」
 
 そういって眼鏡の方も無造作に、たこ焼きを一つ…二つと
口の中に放り込んでいく。
 
「…せっかくだから、味わって食べろよ」
 
「…俺の金で購入したんだ。お前に文句を言われる筋合いはないな…」
 
「あ、そう…」
 
 と言いながらも、二人の顔には笑顔が浮かんでいる。
 どんなやりとりでも、克哉にとっては…こうしてこの男が傍にいてくれるだけで
今は満足なのだ。
 一度は、目の前で彼を失った。
 あの時の絶望と、強い喪失感。
 それでも…三年間、どうにか生きて来れたのはあいつが必ず帰って来てくれると
最後の瞬間に約束してくれたから。
 
―その約束がなかったら、きっとこの三年…克哉は生きていけなかった
かも知れなかった。
 
「そちらの焼きそばも食べさせろ…。正直、大きめのサイズと言っても
たこ焼きを
二人で半分こした程度では腹が膨れそうもないからな…」
 
「確かに…。もう一つぐらい、何かを買っておいた方が良かったかなぁ…
お好み焼き
とかじゃがバターとか…」
 
 一人分と考えれば、たこ焼きと焼きそばの二つあればお腹が膨れるが…二人で
食べるなら、もう1~2品あった方が良かったかも知れない。
 
(…5分くらい歩けば、神社の奥の方にあった屋台には辿り着けるかな…。
あぁ、でも…
どんな屋台があったかな…)
 
 記憶を探って、どんな店があったかを探っている克哉の耳元に…
いきなり眼鏡の
唇がそっと寄せられていく。
 
「ひゃっ…?」
 
「まあ、食欲が満たされないのなら…他のもので飢えを満たす手段もあるがな…?」
 
 チロ、と舌先で耳を舐め上げられながら、そんな内容を囁かれたら…
つい条件反射的に
喉が鳴ってしまっていた。
 克哉が引きつった顔を浮かべているのに対し…眼鏡の表情は、相変わらず強気で
実に楽しそうなものであった。
 
「ちょっ…もしかして、お前…ここで、その…」
 
「あぁ、神社の裏でというのも良いシチュエーションだな。心配するな…お前が後で
辛い思いをしないように…虫除けはちゃんと用意してやったから」
 
「用意してあるのかよっ!」
 
 つい、突っ込み口調で返してしまっていた。
 ニコニコと笑いながら、眼鏡は懐から…虫除けスプレーを取り出していく。
 克哉が昔、子供の頃に良く使った銘柄だ。
 確か腕に振り掛けると独特の匂いと…冷たい感触があって…。
 
「…もう、お前…信じられない。何で…そんな事考えて、そんな物を用意して
あるのかな…」
 
「…その方が忘れられない思い出になるだろう?」
 
「あぁ、そうだよ…。その通りだ。け、けど…ここに人が立ち寄らないとは…
とても思えないし…」
 
 恐らく、後…40分くらいしたら、花火も始まる。
 そしてこの上の山では遠いながらも…一応は観覧スポットになっている筈なのだ。
 人ごみに揉まれながら見るのは嫌だ、という人達が時間が近くなれば
立ち寄る可能性が
あるかも知れない。
 そんな中でコイツに抱かれるのは…やはり、抵抗があった。
 
「…その、お前に抱かれるのは…嫌、じゃないけど…まったく知らない誰かに…
それを見られるのは、ちょっと…」
 
「ほう…お前は見られた方が燃える性質なんじゃないのか…?」
 
 ペシン!
 
 まったくもって、いつもの意地悪で皮肉的な言い回しに、克哉は顔を
真っ赤に染めながら眼鏡を軽く叩いていった。
 
「…あんまりそんな発言ばかり言っていると、怒るよ?」
 
 克哉の方もニコニコニコ…と実に怖い笑みを浮かべながら返していく。
 幾ら惚れている男でも、言うべき処はちゃんと言わないと…こいつは歯止めが
効かなくなって、どこまでも手に負えなくなる。
 再会してからも…そんな事態に何度も見舞われているので、克哉も言う事は
言うようになっていた。
 
「…心配するな。俺も…お前のそそる姿を…安易に他人が介入してくるかも
知れない場所で晒すつもりはない。最初からな…?」
 
 ふいに、空気が変わっていく。
 すると…腕を掴まれて、冷たいスプレーを吹きかけられていった。
 
「冷たっ…!」
 
「我慢しろ…その方がお前の為だからな」
 
 突然の行動に、ビクっと克哉の身体が跳ねていく。
 だが眼鏡はまったく遠慮する様子すら見せずに…克哉の四肢、浴衣から露出
している大体の部分に虫除けをしていった。
 
 眼鏡の方は焼きそばをきっちりと半分残しておいてくれたらしい。
 しかも丁寧に、スプレーを掛けている間は輪ゴムで閉じていたようだ。
 そこら辺の抜かりのなさは流石だと思う。
 
「…良し、こんなものだな。ほら…お前の分の焼きそばだ。それを食べ終わったら
移動するぞ」
 
「へっ…?」
 
 突然のことに、克哉がポカンとした表情を浮かべていくと…眼鏡は自信たっぷりな
様子で微笑んでみせる。
 
「…お前が、浴衣を着てここに出かけたいと行ったのは一週間前。それだけの期間が
あって…俺が何も手を打っていないと思ったのか?」
 
「手を打つって…何、が…?」
 
 やはり展開についていけず、たどたどしい口調になると…男は可笑しそうに
笑ってみせる。
 
「…お前と、最高の夏の思い出を過ごす為のな…」
 
「あっ…」
 
 そして、唐突に腕を引かれて口付けられていく。
 唇を食むように甘噛みされて、背筋がゾクゾクしていく。
 最後にやんわりと舌を這わされていくと…。
 
「黙ってついて来い。すでに準備は整えてあるからな…」
 
 その強気で自信に満ち溢れている態度に、ドキドキする。
 そして克哉は…耳まで真っ赤にしながら、頷いていく。
 
「…うん」
 
 その答えを聞いた時、眼鏡は心底…満足そうな、楽しそうな…
そんな笑みを
口元に刻んでいった―
 
 


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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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