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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 ※4月24日からの新連載です。
 無印の眼鏡×御堂ルートのED.NO2…「因果応報」を前提にした話です。
 シリアスで、ちょっとサスペンス風味の強い話です。
 眼鏡×御堂ルート前提ですが、眼鏡なしの克哉も色々と出張ります。
 それでも良い、という方だけ付き合ってやって下さいませ。
 
 【過去ログ】

  咎人の夢  


  ―御堂孝典が次に目覚めた場所は、自分のマンションの寝室の
ベッドの上だった

「っ…!」

 何かから逃れるように、弾かれたように身を起こしていく。
 悪夢を見ていたのだろうか…全身から、冷や汗が滝のように伝い落ちて
動悸が激しかった。
 ドックンドックン…とまるで別の生き物のように心臓が荒く脈動しているのが
自覚できた。

「…あれは、夢、だったのか…?」

 先程までの凄惨な光景が脳裏に浮かんでくる。
 佐伯克哉を待ち伏せして、そして…手に掛けて嗤(わら)い続けていた
あの出来事は、とても夢とは思えなかった。
 相手の肉に、ナイフを突き刺した生々しい感触すら、しっかりと覚えているのに…
何故かそれらが、何もなかったかのように…自分はいつの間にか、ベッドの上で
いつものように眠っていた。

「ちょっと待て…私はいつ、自宅に…昨夜、戻って来たんだ…?」

 昨晩の記憶が、曖昧になっていた。
 身体の状態はさっぱりしていた。いつの間にかパジャマにも着替えている。
 しかしいつシャワーを浴びて着替えたのかまったく覚えがなかった。
 いや…夜だけではない。昨日一日の記憶が、綺麗に抜け落ちて空白に
なってしまっている。
 …違う、何かが欠落してしまっている。
 自分の中で、大きく占められていた何かが…消えてしまっている。
 奇妙な違和感が拭えなかった。
 そもそも…自分はどうして、佐伯克哉をあんな風に殺す夢を見たのか…
彼には思い出せなかった。

 それは動機の欠落。
 人を殺すには、何らかの要因がなければ基本的には無理だ。
 殺人を好む性質の人間でない限りは、普通の人間は同じ人間を殺すことに
嫌悪感を覚えていく。
 それに殺人者に課せられたペナルティは、それ以後の人生をフイにする程
重く厳しいものだ。
 だから人間は…一般的な常識を持っている人間ならば、殺人という禁を
犯す場合は…それに至るだけの憎しみなり、動機なりがなければ実行にまでは
移さない。 
 だが、どれだけ自分の心に問いかけても…その根本となるものが
見つからなかった。
 そのせいでさっきの場面の陰惨さを思い出しても…本当に単なる夢に
過ぎなかったのではないか…という想いの方が徐々に勝っていった。 

「…それに、どうして私が…佐伯を殺す、夢を…? 確かに彼は気に入らないし…
腹立つ言動が多いが、殺すまで…は、行かない筈…なのに…」

 そう、今の御堂は紛れもなくそう思っていた。
 あの夢を見ても、どうして…自分はそんなものを見たのか納得がいかない。
 そんな心境になっていた。
 確かにこの一か月、あの男に自分の仕事のリズムを乱されていた。
 そのせいで…自分らしからぬ失態を幾つも犯してしまって、大隅専務に厳重な
注意すら受けてしまった。
 だが…それはいわば、自分の至らなさと…あの男に対して必要以上に敵愾心を
燃やしてしまったからこそ招いた愚だった。 
 肩で大きく息をしてから、どうにか深呼吸をして…どうにか落ち着いていく。

「…いつになく、酷い目覚めだな…。それに私は、夢など滅多に見ない性質
なのに…久しぶりに見たと思ったら、これか…」

 苦笑しながら、御堂はベッドの上から…壁に掛けてある時計を眺めていった。
 朝、五時十五分。いつもの起床時間よりも若干早いぐらいの時間帯だ。 
 通常、4~5時間寝れば睡眠は充分だ。
 大体いつもならば、午前一時か二時前後まで起きていて…それから朝五時半から
六時ぐらいに起きるのがいつもの御堂のペースだった。
 昨日、何時に寝たのか…その記憶すら思い出せない。

「…私は、昨日…本当に何をやっていたんだ…?」

 確かに自分はワインを愛飲していて…一週間に何度も嗜んでいる。
 しかし、記憶を失うぐらいに多量に飲むことなどない筈だ。
 アルコールの類を過剰に摂取すれば一時的な記憶の混乱及び、喪失を
招くということは知識として御堂も知っている。
 だが…身体のコンディションは最悪ではあったが、これは二日酔いによる
症状ではないということは…流石の御堂でもすぐに判った。

(なら…あの夢は現実だったのか…?)

 だとすると、一つ…絶対的におかしい事がある。
 あの夢が現実だった場合…自分はMGNからそう遠くない距離にある公園で
倒れたことになる。
 そして…途中で目覚めることなく、この時間まで眠り続けていたのならば…
一体、誰が自分をこの部屋まで運んだのだ、という話になる。
 御堂が住んでいるマンションはセキュリティが万全に整えられた、
完全オートロック式となっている。
 カードキーのない人間は、絶対に立ち入ることが出来ない。
 意識を失った御堂をここまで抱えて、そして立ち去るなんて真似をすれば…
絶対に不審がられることは確実だ。
 しかも…あの夢が現実だった場合は…。

―御堂は、佐伯の返り血を浴びて血塗れであった筈だ

 そんな状態の御堂を連れ帰り、着替えさせて立ち去った存在がいると…
そう仮定しない限りは、この状況はありえない。
 とっさに自分の匂いを嗅いでいくと…自分が愛用しているフレグランスの
香りが軽く鼻孔を突いていった。
 それ以外の臭いは、存在しない。
 あの光景は、現実だったのか…それとも自分の悪夢に過ぎなかったのか。
 まず…それが問題だった。

(…幾ら考えても、答えは出ないな…)

 あれが現実なら、佐伯克哉は一体どうなったのだろうか…?
 恐らく、無事では済まない。
 腹部にあそこまで深くナイフを突き刺したのなら…あれは確実に
致命傷レベルとなる。
 素早く病院に搬送して、手当をしたとしても…生存出来る可能性は
極めて低いと言わざるを得なかった。
 現時点では、あれが現実だったのか…夢だったのか、解答を得ることが
出来なかった。
 しかし…あれが実際にあった事ならば、確実に…今朝か、昼ぐらいまでには
佐伯克哉の死体が公園で発見される筈だ。
 そうなれば…自分は仕事上での関係者になる。 
 あの一件の事が露見すれば…。

(…? あの一件とは、何だ…?)

 途中まで考えて、自分でも疑問に思ったことがあった。
 何かが、やはり自分の中から抜け落ちている。
 あの男に纏わる…重要なことが、思い出せない。

「何だ…この、何とも言えない…すっきりしない気持ちは…。私は、何を
忘れてしまって…いるんだ…?」

 御堂は、本気で頭を抱えたくなってしまった。
 思い出せなくなっているものが、これだけ多ければ不安に思っても
何の不思議でもない。
 しかし…今、自分は確かに佐伯克哉にとっては仕事上で深く関わっている
立場にあるのは事実だった。
 見方によっては…過剰すぎるノルマを割り当てて、理不尽な行為をした
親会社の人間…と見られるかも知れない。
 だが、その場合なら…佐伯克哉がこちらを、なら話が通るが…こちらから
彼を殺す動機には結びつかない。
 そう考えて…どうにか、思考を切り替えていく。
 まずは出社してみなければ始まらない。
 そう考えた瞬間…ふいに、何かが頭の中を過ぎっていった。

―貴方は……の、事なんか、忘れて……幸せに…なって、下さい…

 それは聞き覚えのある声で、言われた一言だった。
 今にも泣きそうな、悲痛な声で…誰かが、告げていた。
 だが…この言葉をいつ言われたのか、まったく記憶にない。
 けれど知らない声ではない。確実に何度か聞き覚えがある声である
ということは確信していた。
 …最後にこの声音を耳にしたのは、一体いつだったのだろうか。
 そういえばもう随分と長く…聞いていないようにすら感じられた。

(今の、声は…?)

 ごく最近に、聞いた気がするが…だが、それも思い出せない。
 自分を構成する為の『記憶』というピースが幾つも抜け落ちてしまっている
その事実は、御堂の心を大きく掻き毟っていった。
 だが、まずは…会社に向かわなければ始まらない。
 心の中は酷くモヤモヤして落ち着かなかったが…一旦頭を切り替えていく。
 身体を起こして、身仕度を整え始めていった。

―彼はまだ知らない。自分がいつの間にか大きな舞台に上げられてしまっている事に。

 そして無自覚なまま…誰かが紡ぎ出した脚本をなぞりあげていく。
 しかし彼は…舞台も、脚本もどちらも自覚しないまま…いつもと変わらぬ日常が
送れると信じて…出勤する為の準備を整え始めていった。

―御堂にとって今までの人生の中で、これから会社に向かうということが…
ここまで不安に駆られてしまったことは初めてのことだった…
 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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