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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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  暫く浴槽の中で行為の余韻に浸った後、二人で身体を拭い合って…そうして
清潔なパジャマに身を包んで、シーツの上に横たわった。
 流石にバスルームのように高温多湿な場所で…二回も求め合ったのが
効いたようだ。
 ベッドの上に横たわる頃には…二人とも心地よい疲労感を覚えながら
ぐったりと四肢を投げ出していた。

「…佐伯、身体の方は…大丈夫か?」

「あ…はい。一応…大丈夫、です…御堂さん…」

 呼び方が『佐伯』に戻っていたので、克哉もまたそれに合わせて彼の事を
御堂さんと呼び返していく。
 …付き合ってみて判ったのだが…御堂は案外、照れ屋で…心を通わせてから
すでに三ヶ月が経過しているというのに未だに素面のままではこちらを「克哉」と
呼べないらしい。
 彼が下の名を呼んでくれるのは、セックスの時とワインに酔っている時だけだ。
 最初はそれがもどかしかったが…今はそんな不器用な部分も愛しいと感じている
のだから、こちらも重症かも知れなかった。

(…まだ、オレも孝典さんも…鼓動が、荒いな…)

 湯上りの為か、肌はしっとりと汗ばみ…お互いに吸い付くようだった。
 重なり合う胸からは、相手の鼓動が感じられる。
 まだどこか忙しないリズムは、自分達が交歓しあった証だ。
 そう考えると照れくさいし、恥ずかしい…が同時に喜びもあった。

「佐伯…」

 静かに髪が掻き上げられて…頬が撫ぜられる。
 穏やかで優しい手つきに…凄く心地よさを感じた。
 最初に無理やり身体の関係を持たされた頃は…彼とこんな時間が持てるように
なるなど…想像もしていなかった。だからこそ余計に…幸福感を覚えた。

「…なんですか? 御堂さん…」

 静かに彼の方に眼を向けて…互いの視線が重なり合う。
 ふいに互いの間に流れる甘い空気が、濃密なものに変わる。
 無言で唇を寄せ合う。
 それはごく自然に重なり合った。

「ぅ…んっ…っ!!」

 最初は軽く唇を吸われるだけだったが、ふいに御堂から唇を噛まれて咄嗟に
身体を大きく震わせた。
 ジワリ、と血が滲んでいくのを感じる。
 それを御堂の熱い舌先で…そっと舐め取られていった。

「…思った通りだ。君の血は…凄く、甘いな…」

 他の人間の血なら、ただ生臭くて…とても飲めたものじゃないが大切に
思う人の血潮なら話は別だ。
 
「…美味しい、ですか…?」

「あぁ…」

 そう、短く返されて…丹念に唇を舐め取られていった。
 甘い痺れが、背筋に何度も走りながらも…克哉はその感覚に耐えていく。
 血が止まるまで、その行為は繰り返されて…その頃にやっと御堂は顔を
離して…低く囁きを落としていった。

「…克哉。君も…私のを…試してみるか…?」

「…良いんですか? …貴方を、傷つけても…」

「…たまには、君の方からも私に痕を刻むと良い。私ばかりが…君の身体に
刻んでいるのだからな…」

 御堂の身体に傷をつけると思うと、何か悪い気がして…今までどれだけ
彼から痕を刻み込まれても克哉の方から返す事は殆どなかった。
 しかし…彼からそう言われて、望まれたのなら…別だ。
 覚悟を決めて…もう一度唇を寄せて、強く歯を立てて唇を噛んでいった。
 ゆっくりと…御堂の血がこちらの口腔に滲んでくる。
 それを味わうように…克哉もまた、舌を這わせていく。

(不思議だ…本当に、甘く感じる…)

 ふと、血とワインは根っこに同じ味が潜んでいるように思えた。
 葡萄には沢山の鉄分が含まれているせいだろう。
 だから古来の人々は…ワインを人の血に例えたのだろうと…妙に納得しながら
御堂の唇から顔を離していった。

「…すみません。痛くなかったですか…?」

「…私が望んだ事だ。謝らなくても…良い…」

 こちらが御堂の頬に手を添えて、ゆっくりと触れていくと…もう一方の手を
捕らえられて指を絡まされていく。
 指と指の間の付け根を愛撫される、それだけの刺激でも感じてしまうくらい…
この人が好きなのだなと妙に実感出来た。 
 ぎゅっと手を握り合い、気持ちを確認しあっていく。

 そのまま御堂の…パジャマから覗いている首筋から、鎖骨に掛けて久しぶりに
こちらからも痕を刻み込んでいくと…酷く興奮した。
 彼の肌に所有の証を刻む度に、喜びを感じる。
 いつも沢山の痕をこちらに刻む御堂の気持ちが少しだけ判った気がした。
 そのまま手を降下させて…御堂の胸の中心に手と顔を寄せた。

(暖かい…孝典さんの…胸の中は…)

 そのまま、コテンとその上に頭を乗せて瞳を伏せていけば…その音が
コトンコトンと伝わってくる。
 それは…優しい子守唄のように今の克哉には感じられて、心地よい
安らぎを覚えていった。
 御堂がそんな克哉の髪をどこまでも静かに梳いていた。
 優しい時間の訪れに…そのまま、安息の方に意識が招かれていった。

「…今夜は疲れただろう。君も…そろそろ、休むと良い…」

「…はい。言葉に甘えさせてもらいます…孝典、さん…おやすみ、なさい…」

 本当は今の御堂に、こちらを克哉と呼ぶのは気恥ずかしくて駄目だろうと
半ば判っていたが…それでも、下の名前で呼びたくて敢えてそうしてみた。
 少しの間だけ、御堂が逡巡していく。
 照れくさそうに頬を染めて…少し考え込んでいた。
 暫しの間が生まれて…やっと御堂が身体を動かすと、そっと生え際を掻き上げられて
額に優しく口付けられていた。

「…おやすみ、克哉…」

 必死の想いで、照れくささを殺して…御堂が克哉にそう告げた。
 最初は驚いたけれど…すぐにじんわりと喜びがこみ上げてきて、克哉は
心底嬉しそうに微笑んでいく。

「はい…貴方も、どうか良い夢を…」

 そうして…二人の意識はまどろみの中に落ちていく。
 燃えるように真紅な、情熱的な時間は静かに幕を下ろして―
月光が静かに降り注ぐ部屋の中で…二人は寄り添い、安息に浸る。
 
 共に在れる幸福が胸を満たしていきながら…
 二人は夢の中へと静かに引き込まれる。
 どうかいつまでもこうして一緒にいられるようにと
二人の静かな祈りが…夜の闇の中に静かに溶けていった―

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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