鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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御堂孝典が自分のマンションに丁度戻った頃に、昨晩注文した
チョコレート作りの為の必要な材料一式が届いていた。
それを受け取ってから…緑のシンプルなデザインのエプロンを身に纏い
荷物を解いて中の道具を確認していくと…。
「これは一体…何なんだ…?」
御堂が注文したのは、『初めてのチョコレート作りセット』なる代物だったが
その中には製菓用のクーベルチュールチョコレート(ビター)と大小のボウルが
各一個ずつ、木ヘラ、絞り袋、ハートや星などを象った型や四角いバッド。
チョコレートを用した多彩なレシピが掲載された料理本などが一通り入っていた。
それと一緒にサービスなのか、随分と可愛らしい柄が印刷された弁当の
おかずを入れるのに使えそうな紙製の型や、アルミホイル…ピンク色の
ハートや花柄が印刷された透明なフィルムなどが同封されていた。
「…完全に女性向けなおまけだな。…私が使うには可愛らしすぎるな…」
その事実に、再び御堂の気持ちはヘコみそうになっていた。
だが…時間を無駄にするのは勿体無い。
帰宅途中に大手のスーパーに立ち寄って、動物性の生クリームやラム酒など
昨日御堂が…ネットで検索して調べたレシピで使用する追加材料などを購入して
おいた。
考え抜いた末に…御堂が選択したチョコレートのレシピは、ラム酒を使った
ややほろ苦い生チョコレートだった。
未経験の自分でもどうにか理解して作れそうな内容だった事と…克哉が
蒸留酒を好む辛党である事は…この二週間の他愛無いやり取りの中で
知っていた情報なので、これに決めたのだ。
上質のスーツの上着を脱ぎ去り、Yシャツの袖を捲りながら…システムキッチンの
前に立って調理を始めていく。
まず最初の難関は…チョコを刻む作業だった。
「え~…何々、まずチョコレートを予め刻んでおいてから…動物性の生クリームを
鍋で加熱して、その中に刻んだチョコを入れて…溶かす、か…」
チョコレートを均一に滑らかに溶かすには…細かく刻んでおく作業は
不可欠だ。
御堂は白いプラスチック製のまな板とステンレス製の包丁を用意しておくと
製菓用のチョコレートを其処に置いて…隅の方から丁寧に刻み始めていく。
「…なかなか、指先が痛くなりそうな作業だな…わっ!」
最初の内は丁寧にやっていたが、ふと力加減を間違えて隅の方がパキっと
割れていって動揺してしまった。
細かく削れたチョコレートの中に、ゴロンと大きな塊が転がってしまうが…それを
掬い取って、慎重に細かく削り続けていく。
こういう作業は地味で単調だ。
だが…こういう下準備を疎かにしては、良い物は作れない。
真剣な顔をしながら…御堂は丁寧にチョコレートを刻む作業に没頭していく。
(手作りというのは…案外、手間が掛かって大変な物だったんだな…)
15分くらい掛けて、半分くらい終えた辺りで…しみじみと溜息を突きながら
毎年手作りチョコなどを手がける人間を…凄いな、と素直に思った。
今までに何度も手作りチョコを受け取った経験があったが…以前の御堂なら
その事を伝える女性の押し付けがましさに辟易していただけだった。
あまり甘い物を好まない御堂にとっては、手作りだろうが…高級店のチョコだろうが
毎年どうやって処分するか悩ませる程度の物で…本命でもない女から貰う代物など
有難いと思った事は一度もなかった。
だが…こうして、本気で好きな男が出来て…自分で作ってみる態度に立ってみると…
こうやってチョコ一つを丁寧に刻むだけでもかなりの手間が掛かっている事に
気づいてしまった。
「…感傷だな。今更…悪いと思っても、最早どうにもならないからな…」
フッと溜息を突きながら、瞳を細めていく。
今の自分には好きな人間がいる。
だからどれだけ渡されるチョコレートに想いを込められていようとも…もう
応える事は無理なのだ。
過去の自分の態度に多少反省こそしたが…やってしまったことは仕方ない。
…ただ、もし…手作りチョコを今後貰う事があったら、その手間に関しては
労う気持ちを持つ事にしよう。
こうやって作る側に立つ事によって…慮る気持ちが少しだけ芽生えていた。
4分3程度刻み終わった頃を目安に、生クリームを加熱に掛かる。
それが軽く沸騰するのとほぼ同時に…刻んだチョコレートを入れて…ラム酒を
適量入れて丁寧に掻き混ぜていく。
ラム酒の芳醇な香りがキッチン全体に仄かに漂い…ドロリと液状になった
チョコを少し掻き混ぜて荒熱を取っていってから…ラップを敷いたバットの中に
丁寧に流し込んでいった。
「良し、これで冷めたら冷蔵庫に入れれば…完成だな…」
ほうっと一息を突いていきながら…綺麗にバットの中に流し込まれたチョコを
眺めて…御堂は満足げな笑みを浮かべていく。
鍋に残っているものを指で梳くって味見をしてみたが、味の方も上々だった。
これなら…アイツが驚く顔を見る事が期待できる、出来栄えだ。
そう確信して…御堂が満足げな表情を浮かべると同時に…マンションの
インターフォンが鳴り響いていった。
ピンポーン~!
「来客…か?」
今の御堂には突然、この自宅に訪ねてくるような知り合いは殆どいない筈だった。
一年前…克哉と一度決別してから前のマンションは引き払っていたし、克哉に
監禁されていた間に…MGNに勤めていた頃の知り合いはほぼ全員疎遠に
なっていた。
学生時代の友人達とも、そのおかげで顔を合わせる機会が激減していたので…
ここを知っている人間すらかなり少数な筈なのだ。
(また…訪問販売とか、何かの勧誘の類か…?)
一応、オートロック完備マンションで…24時間体制で入り口の処に警備員も
待機しているのだが…それでも、隙を突いて中に入って来てしまう輩も時には
存在してしまう。
御堂自身もそれで何度か捕まって、5~10分程度で切り上げて貰っていたが
過去に捕まった経験があるのだ。
いっそ無視してやり過ごそうとした次の瞬間…インターフォンのマイクを通して
予想もしていなかった人物の声が部屋中に響き渡っていく。
『御堂っ! いるのか…!』
「っ…佐伯っ! …どうしてあいつがこのマンションに…! まだ…ここを
教えた事は一回もないのに…っ!」
思ってもみなかった闖入者の登場に、御堂は慌てて玄関の方まで
駆けて向かおうとしたが…次の瞬間、部屋中に漂う強烈なチョコレートの
香りと自分の格好に、ハッとなって立ち尽くしてしまう。
「うぅ…今の状況ですぐに開けたら、絶対に何をしていたか…佐伯に
気づかれてしまうじゃないか…!」
思いっきり顔を赤くしながら、大慌てで緑のエプロンを脱ぎ去って…
チョコレートを一旦、冷蔵庫に隠していく…が…洗い場の処には
思いっきり作成に使用した器材の数々が山積みになっていて…
恐らくここを見られれば何をしていたかは一目瞭然だろう。
ピンポーン ピンポン! ピンポンピンポンっ…!
だんだんとインターフォンの音の間隔が忙しないものとなり
それを聞かされている御堂も少し焦りを覚えてきた。
「あぁぁ! もう…そんなに鳴らすなっ! 片付け終わったらすぐにでも
開けるから…! 本当、少しぐらい…私にこっそりとチョコレートを作る
時間の余裕ぐらいは与えてくれっ!」
本気でそう思いながら猛スピードで御堂は器材の類を洗い始めて
証拠隠滅作業を図っていく。
…その間、彼は恥ずかしさの余りに…自分の事しか今は考えられなく
なっていた。
扉の向こうで…今、克哉がどんな顔をしてインターフォンを何度も鳴らして
自分を呼び続けているのか。
今の切羽詰った御堂の方にも…其処まで相手の事情を汲み取る余裕は
なかったのだった―
チョコレート作りの為の必要な材料一式が届いていた。
それを受け取ってから…緑のシンプルなデザインのエプロンを身に纏い
荷物を解いて中の道具を確認していくと…。
「これは一体…何なんだ…?」
御堂が注文したのは、『初めてのチョコレート作りセット』なる代物だったが
その中には製菓用のクーベルチュールチョコレート(ビター)と大小のボウルが
各一個ずつ、木ヘラ、絞り袋、ハートや星などを象った型や四角いバッド。
チョコレートを用した多彩なレシピが掲載された料理本などが一通り入っていた。
それと一緒にサービスなのか、随分と可愛らしい柄が印刷された弁当の
おかずを入れるのに使えそうな紙製の型や、アルミホイル…ピンク色の
ハートや花柄が印刷された透明なフィルムなどが同封されていた。
「…完全に女性向けなおまけだな。…私が使うには可愛らしすぎるな…」
その事実に、再び御堂の気持ちはヘコみそうになっていた。
だが…時間を無駄にするのは勿体無い。
帰宅途中に大手のスーパーに立ち寄って、動物性の生クリームやラム酒など
昨日御堂が…ネットで検索して調べたレシピで使用する追加材料などを購入して
おいた。
考え抜いた末に…御堂が選択したチョコレートのレシピは、ラム酒を使った
ややほろ苦い生チョコレートだった。
未経験の自分でもどうにか理解して作れそうな内容だった事と…克哉が
蒸留酒を好む辛党である事は…この二週間の他愛無いやり取りの中で
知っていた情報なので、これに決めたのだ。
上質のスーツの上着を脱ぎ去り、Yシャツの袖を捲りながら…システムキッチンの
前に立って調理を始めていく。
まず最初の難関は…チョコを刻む作業だった。
「え~…何々、まずチョコレートを予め刻んでおいてから…動物性の生クリームを
鍋で加熱して、その中に刻んだチョコを入れて…溶かす、か…」
チョコレートを均一に滑らかに溶かすには…細かく刻んでおく作業は
不可欠だ。
御堂は白いプラスチック製のまな板とステンレス製の包丁を用意しておくと
製菓用のチョコレートを其処に置いて…隅の方から丁寧に刻み始めていく。
「…なかなか、指先が痛くなりそうな作業だな…わっ!」
最初の内は丁寧にやっていたが、ふと力加減を間違えて隅の方がパキっと
割れていって動揺してしまった。
細かく削れたチョコレートの中に、ゴロンと大きな塊が転がってしまうが…それを
掬い取って、慎重に細かく削り続けていく。
こういう作業は地味で単調だ。
だが…こういう下準備を疎かにしては、良い物は作れない。
真剣な顔をしながら…御堂は丁寧にチョコレートを刻む作業に没頭していく。
(手作りというのは…案外、手間が掛かって大変な物だったんだな…)
15分くらい掛けて、半分くらい終えた辺りで…しみじみと溜息を突きながら
毎年手作りチョコなどを手がける人間を…凄いな、と素直に思った。
今までに何度も手作りチョコを受け取った経験があったが…以前の御堂なら
その事を伝える女性の押し付けがましさに辟易していただけだった。
あまり甘い物を好まない御堂にとっては、手作りだろうが…高級店のチョコだろうが
毎年どうやって処分するか悩ませる程度の物で…本命でもない女から貰う代物など
有難いと思った事は一度もなかった。
だが…こうして、本気で好きな男が出来て…自分で作ってみる態度に立ってみると…
こうやってチョコ一つを丁寧に刻むだけでもかなりの手間が掛かっている事に
気づいてしまった。
「…感傷だな。今更…悪いと思っても、最早どうにもならないからな…」
フッと溜息を突きながら、瞳を細めていく。
今の自分には好きな人間がいる。
だからどれだけ渡されるチョコレートに想いを込められていようとも…もう
応える事は無理なのだ。
過去の自分の態度に多少反省こそしたが…やってしまったことは仕方ない。
…ただ、もし…手作りチョコを今後貰う事があったら、その手間に関しては
労う気持ちを持つ事にしよう。
こうやって作る側に立つ事によって…慮る気持ちが少しだけ芽生えていた。
4分3程度刻み終わった頃を目安に、生クリームを加熱に掛かる。
それが軽く沸騰するのとほぼ同時に…刻んだチョコレートを入れて…ラム酒を
適量入れて丁寧に掻き混ぜていく。
ラム酒の芳醇な香りがキッチン全体に仄かに漂い…ドロリと液状になった
チョコを少し掻き混ぜて荒熱を取っていってから…ラップを敷いたバットの中に
丁寧に流し込んでいった。
「良し、これで冷めたら冷蔵庫に入れれば…完成だな…」
ほうっと一息を突いていきながら…綺麗にバットの中に流し込まれたチョコを
眺めて…御堂は満足げな笑みを浮かべていく。
鍋に残っているものを指で梳くって味見をしてみたが、味の方も上々だった。
これなら…アイツが驚く顔を見る事が期待できる、出来栄えだ。
そう確信して…御堂が満足げな表情を浮かべると同時に…マンションの
インターフォンが鳴り響いていった。
ピンポーン~!
「来客…か?」
今の御堂には突然、この自宅に訪ねてくるような知り合いは殆どいない筈だった。
一年前…克哉と一度決別してから前のマンションは引き払っていたし、克哉に
監禁されていた間に…MGNに勤めていた頃の知り合いはほぼ全員疎遠に
なっていた。
学生時代の友人達とも、そのおかげで顔を合わせる機会が激減していたので…
ここを知っている人間すらかなり少数な筈なのだ。
(また…訪問販売とか、何かの勧誘の類か…?)
一応、オートロック完備マンションで…24時間体制で入り口の処に警備員も
待機しているのだが…それでも、隙を突いて中に入って来てしまう輩も時には
存在してしまう。
御堂自身もそれで何度か捕まって、5~10分程度で切り上げて貰っていたが
過去に捕まった経験があるのだ。
いっそ無視してやり過ごそうとした次の瞬間…インターフォンのマイクを通して
予想もしていなかった人物の声が部屋中に響き渡っていく。
『御堂っ! いるのか…!』
「っ…佐伯っ! …どうしてあいつがこのマンションに…! まだ…ここを
教えた事は一回もないのに…っ!」
思ってもみなかった闖入者の登場に、御堂は慌てて玄関の方まで
駆けて向かおうとしたが…次の瞬間、部屋中に漂う強烈なチョコレートの
香りと自分の格好に、ハッとなって立ち尽くしてしまう。
「うぅ…今の状況ですぐに開けたら、絶対に何をしていたか…佐伯に
気づかれてしまうじゃないか…!」
思いっきり顔を赤くしながら、大慌てで緑のエプロンを脱ぎ去って…
チョコレートを一旦、冷蔵庫に隠していく…が…洗い場の処には
思いっきり作成に使用した器材の数々が山積みになっていて…
恐らくここを見られれば何をしていたかは一目瞭然だろう。
ピンポーン ピンポン! ピンポンピンポンっ…!
だんだんとインターフォンの音の間隔が忙しないものとなり
それを聞かされている御堂も少し焦りを覚えてきた。
「あぁぁ! もう…そんなに鳴らすなっ! 片付け終わったらすぐにでも
開けるから…! 本当、少しぐらい…私にこっそりとチョコレートを作る
時間の余裕ぐらいは与えてくれっ!」
本気でそう思いながら猛スピードで御堂は器材の類を洗い始めて
証拠隠滅作業を図っていく。
…その間、彼は恥ずかしさの余りに…自分の事しか今は考えられなく
なっていた。
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香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
鬼畜眼鏡にハマり込みました。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
当ブログサイトへのリンク方法
URL=http://yukio0201.blog.shinobi.jp/
リンクは同ジャンルの方はフリーです。気軽に切り貼りどうぞ。
…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
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URL=http://yukio0201.blog.shinobi.jp/
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…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
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