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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※お待たせしました。
 6月25日から新連載です。
 今回のCPは御堂×克哉となります。
 テーマは酒、(「BAR」&カクテル)です。
 鬼畜眼鏡Rで、太一×克哉ルートで克哉が軌道が乗るまでアメリカで
BARで働いていたという設定を見て、御堂×克哉でもカクテルやバーを
絡めた話が見たいな~という動機で生まれた話です。
  その点をご了承で、お付き合いして頂ければ幸いです。

 秘められた想い  

 
 ―三人の男が舞台の上に立ち、ベーシストの合図が聞こえると
同時にポローンと、ピアノの音が店内に響き渡っていった

 それと同時にゆったりとしたテンポでジャムセッションが
開始されてく。
 ピアニストの指先から奏でられるのはしっとりとした雨の夜を連想
させるようなスローテンポの曲調だった。

「…ほう、なかなか悪くないな…」

「えぇ、綺麗な旋律ですね…」

 特に今の御堂は、新商品のCM曲を求めて「水」や「雨」を
連想させるような曲を、克哉が驚くぐらいの量を聴いている。
 曲のジャンルも多岐に渡っている。
 自分が全力で手掛ける新商品の売れ行きを大きく左右するであろう
『ベスト』の一曲を求める御堂の姿は貪欲すぎるぐらいだ。
 だが、それだけ細部においても人任せにしないで拘り続ける
御堂の姿に、克哉は感嘆を覚えているのも事実だった。
 演奏が本格的になっていくと、二人は完全に口を噤んでいく。
 ピアニストが奏でるメロディに集中する為だ。

(何ていうんだろ…しっとりとしている雨の夜…そんなイメージだな…)

 奏でられるメロディだけで、しっかりとその場面が頭の中に
鮮明に思い描かれていくようだった。
 そっと目を閉じてその音楽に聞き入っていくと…次第に店舗が
変わっていく。
 ドラムのフィルの音が変化していくと同時に…いきなり雰囲気が
大きく変化していく。
 ピアノの音楽が一旦止まり、ベースとドラムのソロの演奏だけが
始まっていく。
 トリオを構成している二つの楽器から生まれる音が、徐々にテンポアップ
していくと…ふいに鍵盤の高い位置から低い位置へと指先を流れるように
滑らせて…ジャーンという和音が高らかに響き渡った。

「わぁ…」

 その音調の切り替えの仕方は鮮やかで、店内にいた人間の口から
感嘆の声が漏れていった。
 次に聞こえて来たのは夏を思わせるようなきらびやかで華やかな、
踊るようなテンポの一曲だった。
 克哉は今までの人生で、ジャズなど殆ど聞いた経験がない。
 BARなどに行った時、店内のBGMとして有名な曲なら耳にしている
だろうが…曲名を詳しく言える程、接している訳ではなかった。
 だがピアノ、ベース、ドラムの三つの楽器から生み出されていくメロディは
アドリブが酷く聴いていて…聴衆の心を酷く踊らせていった。
 アップテンポのメロディがそのまま20分前後続き、その間は誰もが
聴き入っていて…チラっと周囲を見回しても聴く方に意識を集中させている。
 誰も余計な口を利かずに、彼らが紡ぎ出す心地よい音を楽しんでいた。

(…聴いていると、自然と身体が動きだすような凄い陽気な感じだ。
ウキウキしてくるみたいだ…)

 克哉自身は曲名を知らなかったが、紡がれているのはジャズやクラッシクの
定番でもある「A列車で行こう」を、かなりアドリブされて明るい曲調に
されているものだった。
 曲が切り替わったままの盛り上がりを残したまま…そのテンションの高さを
残して、ピアニストが全身に汗を浮かべながら必死にメロディを生み出していく。
 それに圧巻されながら、その場にいた誰もがその音の虜となる。
 そして唐突に曲が終わると同時に、割れんばかりの拍手がその場に
響き渡っていった。
 詳しくその音楽のジャンルに知識が持たないものでも、力がある演奏は
聴くものの心を大きく揺さぶっていく。
 今夜のコンサートには確かにそれだけのものがあった。

「…悪くない演奏だったな。聴いてて楽しめた…」

「えぇ、オレ…初めてジャズの生演奏なんて聴きましたけど凄い
迫力でした…。聴いてて、何かワクワクしてきたっていうか…」

「あぁ、軽い視察のつもりで来たが…思いの外、良いものを聞くことが
出来たな…。君がそんなに楽しんでくれたなら、誘った甲斐があった…」

「えっ…?」

 さっきまで、御堂は仕事モードの顔を浮かべていた。
 だが…ふいに笑みが浮かび、自分の恋人としての表情が滲み始めて
いくと同時に…克哉の胸は小さく高鳴っていった。

(…そんな顔を、いきなり浮かべるなんて…反則です。孝典さん…)

 ここは店内で他の客の目もあるというのに…思わず顔が赤く
染まってしまう。
 この時ばかりは店内の照明が控えめになっていることを心から
感謝していった。
 コンサートは一旦、一区切りがついたらしく…ベーシストを残してドラムと
ピアニストの二人は舞台から降りているようだった。
 僅かな小休止の時間、店の人間の何人かが回って…客に今夜の
リクエスト曲を聴いて回っているようだった。
 克哉が頬を染めて戸惑っている間に、彼らのテーブルにも店の人間が
次に聴きたい曲を尋ねてくる。
 だが、今までジャズに馴染みがなかったせいか…そう尋ねられてもとっさに
思い浮かばない。
 すると、御堂が小さく呟いていった。

「…Fly Me To The MoonかNight And dayを…」

 御堂が曲のリクエストを告げていくと、ボーイらしき男性は
「畏まりました」と小さく告げて一礼をして去っていった。

「…御堂さん、ジャズにも詳しかったんですね…」

 克哉が感心したように告げていくと、御堂は肩を竦めながら答えていく。

「…いや、私もそんなに詳しくはない。辛うじて…ジャズの曲だったと
覚えていた二曲を口に出しただけだ」

「けど、オレはまったく考えつきもしませんでしたから…」

 何となく今夜の気分は、初めて御堂にワインバーに連れていって
貰った時の心境に似ている気がした。
 普段、馴染みのない…自分の知らない世界へと足を踏み入れたことによる
不安と、ドキドキ感。
 だが、御堂の気まぐれで…今では良く顔出すようになったワインバーに
招かれた時と違い…今の自分と彼との間には確かな信頼感がある。
 知らない場でも何でも、この人と一緒にいるなら安心できると…そういう
頼もしい空気を纏ってくれている尊敬する上司であり、恋人でもある相手を
そっと見つめていきながら…克哉は嬉しそうに瞳を細めていった。

「…まったく、君は大したことでなくてもそうやって素直に驚いたり
感嘆出来るのだな…」

「えっ…そんな、事は…」

 御堂の眇められた目がとても優しくて、少し気恥ずかしくなって
相手から目を逸らしていく。
 その瞬間…予想もしていなかった展開になった。

「…あっ…」

 小さく、小声で呟いてしまう。
 木製の丸型のテーブルの下で…静かに御堂から指先を絡め取るように
手を繋がれていってしまう。
 驚きで克哉は言葉を失っていくが…こちらの戸惑いなどお構いなしとばかりに
手全体を愛撫されるように、しっかりと握られてしまって背筋に甘い快感が
走っていく。

「…ん、はぁ…」

 恋人関係になってからこの人に何度も抱かれた。
 時には甘く、激しく…様々な顔をベッドの上で見せられてきたおかげで…
今では克哉の身体は、こんな些細な事にすら過敏に反応するようになっていた。
 まだコンサートは終わっていないにも関わらず、こんな風に手を繋がれて
しまったら意識するなという方が無理だ。

「…お願い、です…御堂さん…その…」

「…克哉、手を繋いでいるだけで…何故そんなに拒むんだ…?」

「あっ…それ、は…」

 御堂に耳元で、囁きを落とされて…それでも背筋がゾクっとなっていく。
 こんな感覚、性質が悪過ぎて抗えない。
 心臓がバクバクと大きく音が立っているのを自覚しながら…克哉が
困惑している間にリクエストを聴き終わったらしい。
 いつの間にか全員が舞台上に戻っていて、演奏が再会されていた。

(どうしよう、こんな…)

 ただ手をしっかりと御堂に握られているだけ。
 なのに…自分の鼓動が破裂せんばかりになっているのを自覚しながら
克哉は、ピアノの音に耳を傾けて…絡んでいる指先から必死に意識を
逸らそうとしていったのだった―

 
 

 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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