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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 ※一日遅れですが、七夕の季節ネタSSです。
 2009年の7月7日は、月齢が満月だった事で
思いついたネタです。
 珍しく太一×克哉ですが(鬼畜眼鏡R本編経過後設定)
、この二人が一番マッチすると思ったのでチョイスしました。
 良ければ見てやって下さい。

 この作品を書く為に、以下のリンクページの内容を参考、一部引用
させて頂きました。
 予め、ここで伝えさせて頂きます。
 
「FLY ME TO THE MOON 歌詞訳」

 和訳の部分しか極力使わないようにして、構成してみました。
 結構、頑張りましたです。がお…。


―駆け落ちしてからこの三年間、がむしゃらに二人で働き続けていた

 そして七夕の夜、珍しく二人のオフ日は重なっていた。
 日本の東京を拠点にするようになってから早半年以上が気づけば
経過していた。
 
―克哉さん、一緒に月を見ようよ。満月の七夕なんて珍しいしね

 無邪気な声で、太一がそう克哉に提案した。
 だから克哉はそれに付き合って、ベランダに出て…二人で
満月を眺めていく。
  さっき、自宅に帰る途中…こっそりとミニチュアの七夕飾りセットを買って
二人で短冊に願いを書いていった。
 こんな風に穏やかな時間を過ごすのも随分と久しぶりの気がした。

 七月七日、夏の夜。
 今夜は風も随分と穏やかで過ごしやすい。
 目を瞑っているとさりげなく吹き抜ける夜風がとても心地よかった。
 ベランダに出て暫く…太一はさりげなく克哉の肩に腕を回して
引き寄せていた。
 お互いの肌が触れ合う場所から、温もりと鼓動が伝わってくる。
 …言葉を交わさなくても、こうして二人で寄り添っているだけで
幸せな気持ちが満ちていく。

(…何かここ暫くずっと忙しかったから、こんな風に太一と二人きりで
過ごすのは…随分と久しぶりだな…)

 太一の祖父、五十嵐寅一との一件があってから…太一は一皮剥けていた。
 それから日本で認められるように、ともかく二人で頑張り続けた。
 一緒のオフなの夜など、それこそ三か月ぶりぐらいかも知れない。
 仕事の合間に抱きあったり、気持ちを確認しあった夜は幾度もあったけど…
こういう穏やかな時間は、相当に久しぶりだった。
 黙ってこうして身を寄せ合っているだけで、幸せな気持ちがジィンと
滲んでいくようだった。
 そうしている間に、太一は…一つの曲を口ずさんでいた。

「あっ…」

 そのメロディは、克哉も良く知っていた。
「Fly Me To The moon」日本では某アニメの主題歌として知れ渡っている
一曲だが、元々はジャズの名曲だ。
 太一はしっとりとした声で、優しく歌っていく。
 それはまるで…とても優しい子守唄のように。
 思いがけず聞こえた太一の歌声に、克哉はうっとりとして聞き入っていく。
 あぁ、英語曲で歌う太一を見ると…アメリカで過ごしていた時代の事を
静かに思い出す。

(…太一が英語で歌うのを聞くの、随分と久しぶりだな…)

 自分はバーでバーテンダーを、そして太一はショットバーでもライブハウスでも
望まれれば何でも歌った。
 主宰しているバンドの曲だけでなく、客の心を掴む為に洋楽のリクエスト曲も
頻繁にギターで弾き語りしながら英語で歌っていた。
 ジャズでもソウルミュージックでもJーPOPでも、多岐に渡って太一は
懸命に歌い続けていた。
 その下積みの時代が、今の太一の確実に糧になっている。
 日本に戻って来てから多くの人間を惹きつけてファンを作ったのは…
長らく認められない時代でも、彼がずっと歌い続けていた…その基盤が
あったからだ。
  そうして、優しい目をしながら…太一は最後の「アイラブユー」の
フレーズを歌っていく。
 瞬間、胸がドキリと弾んだ。何となく相手が、この最後の部分を特に強調して
こちらに歌い聴かせているような…そんな気がしたからだ。

「…太一が自分のバンドの曲以外の英語曲を歌うの、久しぶりに聞いた…」

「…ん、これ何て馴染みのジャズバーで良く歌ったスタンダードナンバーだからね。
俺も久しぶりに歌った気がする…」

「うん、聞いてて凄くうっとりした。けど…どうして、この曲を歌ったの? 太一…」

「ん? あぁ…今夜って七夕だけど満月じゃん? だから…この曲しかないな~と
つくづく思った訳。俺から克哉さんに捧げるラブソングって事で…」

「えっ…えええっ?」

 いきなり、そんな事を言われて克哉は耳まで真っ赤に染まっていた。
 この三年間、行きつく処まで行っている上…散々セックスもしている。
 けれど突然、耳元でこんな事を囁かれたらやっぱり胸がときめいてしまう。

「…もう、克哉さんってば…イチイチ反応が可愛すぎ。けど…元々この曲って
和訳すると、結構可愛い歌詞になるの…克哉さん知っていた?」

「えっ…そうなの? 普通に…メロディが綺麗な曲だなって思って…歌詞の意味とか
深く考えないで聞いていたけど…」

「ん~俺ってやっぱり歌う奴じゃん。歌詞を覚えるとやっぱり意味とか知りたくなるんだよ。
それで向こうのジャズバーとかで歌っていた時、こっそりと歌詞の意味とか調べたんだけど
これって「私を月につれてって」って意味の曲なんだよ。私を月につれてって。
星々の間で歌わせて。火星や木星の春がどんな感じか、私に見せて。つまり…ねぇ、
手を繋いで、そして貴方、ねぇキスをして…」

「あっ…」

 そう、甘ったるい和訳の歌詞を口ずさんでいきながら、太一がそっと手を繋いで…
こちらの頬に口づけて来る。
 その優しいキスに、思わず肩を竦めてしまう。

「…ね? これって…優しく可愛いラブソングな訳。あまり難しい言い回しとかされていない
シンプルだけど、綺麗な歌詞っていうか。ロマンチックじゃない?」

「うん、そうだね…今まで歌詞の意味とか考えないで聴いていたけど…太一に
説明されたら、胸が甘酸っぱくなるようなラブソングだって理解出来たよ」

「でしょ? ならもう一回歌おうか?」

「えっ…?」

 そうして、克哉は強引に相手の腕の中に引き込まれていくと…今度は
低く掠れた、しっとりした声音で「FLY ME TO THE MOON」を囁かれた。
 先程が子守唄のような優しさならば、今度は本来の意味であるラブソングとして。
 酷く官能的な声音が、鼓膜を直接揺さぶって体温が、鼓動が上昇していく。

(う、わっ…耳元で歌われると、相当にキそう…!)

 克哉が耳まで真っ赤にしながら、その甘い攻撃に耐えていくと…太一は
「darling kiss me」の部分を、特に強調するように歌っていく。
 その瞬間、眩暈を感じた。太一の歌うラブソングに心を奪われていく。
 相手に視線を捕えられて、抗うことが出来なくなる。

「あっ…太一…」

「克哉、さん…」

 そして、満月の仄かな月明かりがそっと降り注ぐ夜。
 二人のシルエットは確かに重なっていった。
 啄むように、優しいキスを何度も繰り返し落とされる。
 まんまるの月の下、クスクスと笑いながら二人は何度も戯れのような
口づけを交わし続ける。

「…太一の、確信犯。絶対今、これを狙って…歌っただろ?」

「うん、たまにはこういうのも悪くないでしょ? 俺はいつだって…胸の中では
克哉さんに向かってラブソングを歌い続けているから…」

 そう呟いた太一の笑顔は凄く大人びていて…思わず鼓動が跳ねていった。

「…もう、本当に…太一って何をするのか予想がつかないよな。…おかげで
今でも振り回されているし、胸はドキドキするし…」

「けど、俺といると…絶対に飽きないでしょ? 克哉さん?」

 ニッコリと楽しげに微笑みながら、太一は問いかける。
 そんな風に言われると少しだけ反発したくなるが、嘘は言えない。
 少しためらった後、克哉は小さく頷いていく。

「…うん」

 顔を俯かせながら答えていくと、嬉しそうに太一は克哉の身体を
引き寄せていく。
 この温もりに、今だ慣れない。未だにドキドキする。
 腕の中に強く抱きしめられて、閉じ込められる。
 柔らかくて優しい目。
 それが月下で、静かにこちらに注がれていって…また小さく胸が跳ねる。

「…克哉さんと一緒なら、俺は月でも火星でも木星でも…どこまでも
行ける気がする。…本当、一緒に幽体離脱でも出来るっていうのなら…
二人で月までデートするのも悪くないんだけどな~」

「太一、それは幾らなんでも非現実過ぎるよ…」

「ん~良いじゃん。空想の世界なら、幾らでも非現実な事を考えたって。
これだって現実では有り得ないことを願っている歌詞だけど…だからこそ
優しくて、聞く人間の心をそっと和ませる訳だし。人間にとって…いつも現実の
枠に縛られ続けるよりも、空想の翼を羽ばたかせて綺麗な夢を見ることだって
必要だろ? 歌とか芸術とかって、その最たるものだし…」

「…うん、そうだね」

 その一言を太一が言うと説得力があった。
 彼の今の立場だって、彼本来の境遇を考えれば有り得ないものだった。
 なのに…太一はそれでも負けなかった。
 自分の夢を叶える為の努力は惜しまなかったし、他の人間だったら見果てぬ夢と
一笑するような大きな夢さえ、心の中に抱き続けて…それを徐々に実現させている。
 太一のそんな部分が、常識とか現実に雁字搦めになっていた克哉の人生を
解き放っていった。

「けど、俺…克哉さんとだったら、いつか月さえも一緒に行ける日が来れそうな…
そんな気がする。貴方とだったら…どんな夢も、必ず叶えられると思うから…」

 そう告げてきた太一の目は驚くぐらいに情熱的で、甘くて。
 克哉は嬉しそうに微笑みながら頷いていく。

「…うん、オレも…太一と一緒なら、不可能なんてないとさえ…思えるよ」

 そして、優しい月明かりの下。
 二人は静かに寄り添い…もう一度、唇を重ね合っていく。
 その幸福に身を委ねていきながら、克哉はさっき…短冊に書いたたった一つの
自分の願いをもう一度、胸の中に思い浮かべていった。

―これから先も、ずっと…太一と一緒にいられますように

 それが唯一の、克哉が強く望む夢。
 いつか死が二人を分つ日が来るのは仕方ないと判っているけれど…
その瞬間が訪れる日まで、こうして寄り添いながら彼と生きて行きたい。

 いつまでも、自分の傍らで歌を歌い続けて。
 想いを歌という形にして、紡ぎだして欲しい。
 そう心から願っていった。
 だが克哉は太一に説明されていなくて知らなかったけれど…「FLY ME TO
 THE MOON」の冒頭部分の歌詞にこんな歌詞が存在していたのだ。

―簡単な事を伝える為、詩人は色々な言葉を用いる
 その歌を囁く為に思案して、時間を使い、音に乗せる

 それはまるで、愛しい恋人である太一の事を歌っているような歌詞の内容。
 きっと克哉がこの部分を後日、改めて見たのならば…太一の事を歌って
いるようだ、と微笑んで頷くに違いなかった。
 だからきっとこのラブソングは、二人にとても相応しい一曲だ。
 太一は、そう思ったからこそ…この夜、静かに克哉に歌い聴かせたのだった。
 そしてもう一つ、ラスト部分で二人の心を歌っているかのような部分がある。

―貴方だけが私にとって何者にも代えられない
 あなただけが大切で尊い者です
 貴方に真実(ほんとう)にしてほしい事を言い換えると
 「愛しています」…となります 
 
 長く愛される、普遍的なラブソング。
 けれど…されど、恋人たちの心情を的確に、優しく綴られている曲。

 太一が、ラスト部分を愛情を込めて耳元で囁いていく。
 愛されていると心から実感していく。
 そして…彼がもう一度「I love you」の部分を口ずさんで伝えてくれた時。

―俺も、愛しているよ…

 と、克哉は静かな声でしっかりと相手に告げていったのだった―
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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