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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 お互いに寄り添った状態のまま、バスルームに向かうと…そこから仄かに香る匂いに
御堂は不思議そうな顔をしていた。

「…この匂い、は…?」

 初めて嗅ぐ匂いだが、根底は馴染んでいる香りだった。
 怪訝そうな顔をして…服を脱ぐよりも先にバスルームの扉を開いていくと、浴槽の傍らに
ワインボトルを象った容器が置いてあって、軽く眉を潜めた。
 容器は深いワインレッド色をしていて…本物のワイン瓶と違って、プラスチック製で
どこか安っぽい感じがしていた。

「…これは一体…?」

「先日、取引先から貰った…ワインの香りがする入浴剤です。最近、オレがワインの
世界に興味を示した事を知った人が…好きなら、こんなのもどうかって送って
下さって…。それで気に入ったから御堂さんにも試して貰おう、と考えたんです…」

 それを聞いて、御堂は興味深そうな顔を浮かべていた。
 御堂は基本的にシャワー党で、湯船の中に長時間浸かる事は滅多にない。
 長い時間湯船に浸かっていても生産的な活動は出来ないと思うし、何より時間が
勿体無いと感じるからだ。
 当然、湯船に浸かる習慣が無ければ入浴剤など使う訳がない。
 逆に…今まで触れる事がなかった物なだけに、こんな風に克哉が用意しているのが
新鮮に感じられた。
 
「…佐伯。君は一応、私が湯船に浸かる習慣がないっていうのは…この三ヶ月
付き合っていたのだから、知っていると思うがな…?」

「…えぇ。それでも…ワインの香りがするようなものなら、構わないでしょう…?
赤ワインとローズの匂いは…貴方は好ましく感じると…記憶していましたから…」

 お互いに何か含みを持たせたような表情で、見つめ合う。

「…これを適量使うと、ロゼっぽい色合いになりますが…オレなりに調べて
もう一つだけネットで購入した山梨のワイナリーが販売しているワインの入浴剤を
入れておいたんですよ。そうすると…色合いが濃くなって、本物の赤ワインの
ような深い色になります。
 …こういう趣向も、たまには悪くないと思いまして…」

「…そうだな。確かにたまには…悪くない…。入浴剤など、まったく未知の分野な
だけにな…? だが、どうせなら…本物のワインの入れるのも悪くないだろ…。
少し待ってろ…」

「えぇっ…って、ちょっと御堂さん?」

 克哉が驚いている間に、御堂は素早く自分専用のカーヴ(酒の貯蔵庫)に向かうと
其処から一本のボトルを持ち出して、コルクを開けてバスルームに持ってきた。
 それを湯船の中に盛大に注ぎ入れると…香料で作られただけでない、本物の
ぶどうの香りが混ざり、むせ返るような芳香が辺りに広がっていった。

「…今年の11月に、大隈専務の関係者から贈られたは良いが…私はこのメーカーの
ボジョレー・ヌーヴォーは飲む気はまったくないからな…。処分に困っていたので…
丁度良い…」

 御堂が勢い良く投入したのは…高額であるが、ワイン通からはあまり
評判が良くない代物だった。
 恐らくにわか知識で購入してこちらに贈ってきたのだが自分の上司の関係者でもあるし、
受け取らない訳にもいかなかったので…一年近く御堂のカーヴの中で眠っていた物だ。

 ボジョレー・ヌーヴォーは製造元によってはそれなりに飲める物もあるが…
基本的にその年の秋に収穫したばかりの葡萄を使って、急ごしらえで製造して
出荷する。
 初物を楽しむ、という意味合いでは良いが…言うなれば、ワインに必要な
熟成期間を設けられていない未成熟な飲み物と言える。
 だから、御堂も躊躇い無く…それを投入していった。

「…それで、克哉。私と一緒に入浴したい…とおねだりしたからには…
それなりに楽しませて貰えるんだろうな…?」

 御堂がシュル、とネクタイを緩ませながら問いかけてくる。
 佐伯から、克哉…に呼び方が変わった事で…御堂の気持ちが性的な方に
傾いているのが…判って、少し顔を赤く染めていく。

「…えぇ。そのつもり…です…」

 自分から、誘って…御堂がこうして興味を示して乗ってくれた事は嬉しいが
同時に…明るい処で、自らの裸身を晒すのは未だに恥ずかしかった。
 それでもぎゅっと自分のYシャツの袖を握りながら…告げていく。

「…貴方に、楽しんでもらうつもりで…誘いました、から…」

 ぎゅっと目を瞑りながら、頬を朱に染めて恥ずかしそうに口にしていく。
 …この克哉の恥じらいの表情が、御堂の嗜虐心を強く刺激していった。

「…あぁ、思う存分…楽しませてもらおう…」

 そうして、御堂は悠然と微笑む。
 ―それはベッドインしている時の、以前と変わらぬ…少し意地の悪い笑みであった―。


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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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