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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 友人と話している最中に「小さな頃、人魚姫の話が大好きで~」と
いう話題が出まして…それで何度も頭の中で思い浮かべて
いる内に頭の中で組みあがった人魚姫の話を聞かせたら、
「それ読んでみたい!」と言ってもらえたので今日から明日に
掛けてちょいとカタカタ打っておりました。

 鬼畜眼鏡の話じゃなくて申し訳ないですが…香坂って子供の頃から
人魚姫のお話って凄い思い入れがあるんですよ。
 子供の頃に、人魚が海の中で泳いでいる絵をずっと
飾り続けていたぐらいあの海の底に人魚達が住む風景って
凄く大好きで。
 それで今から10年くらい前から頭の中に存在していた
自分のオリジナルの人魚姫のお話、ちょっとだけ書き出してみました。
 興味ない方はスルーして下さいませ。

 けど、ちょっと小さな頃に思い描いていた物語を書いて
楽しかったです。
 興味ある方だけ目を通して頂ければと思います。

 小さな王子様と、人魚姫の出会いのお話です。

「マーメイド・ティア」

遠くからリンゴーン、と厳粛な教会の鐘が鳴り響いていました。
本日、天に召されて埋葬された女性への鎮魂の音色でした。
それを聞いたある夜、小さな王子様は寂しさを覚えて耐えられなくなり…
こっそりと一人で城を抜け出して泣きながら近くの海岸を歩いておりました。
寄せては返す波の音だけが周囲に響いています。
その日は、最愛の母を昼間に天の国に見送った…彼の10年間の
人生の中でもっとも悲しい日でした。
人の死というのはその人に二度と会えなくなる事だというのをこの国の王子―
リュカは理解しています。
けれどその悲しい別れが自分とあの優しい母との間に起こってしまった事を、
どこかで認めたくない気持ちがまだ強かったのです。

(母さま…眠っているようにしか見えなかったのに…もう二度と目覚めないなんて。
子守唄を唄って貰うことも、お話をしてもらうことも出来ないなんて…信じたくないよ…)

 幼い王子は、綺麗で病弱な母親を心から慕っておりました。
 この国の宰相でもある父には「母に会えなくなる日は近い」とは何度も
小さな頃から告げられておりました。
 けれど実際にその日をいざ迎えていると現実を受け入れたくない気持ちの方が
強く…夜の白浜を、母の面影を求めて彷徨い歩きました。

「母さま…母さま、どこにいるの…? もう一度、会いたいよう。母さまの
笑顔が見たいよう…」

泣きじゃくりながらフラフラと珊瑚や真珠が時々落ちている綺麗な浜辺を
歩いているうちに、とても綺麗な歌声が聞こえていきました。
その旋律はまるで天使のように透き通って美しい曲でした。
けれどそれ以上に王子に気になったのは、その歌詞の内容でした。
小さな頃、母にせがんで聞かせてもらった優しい調べの子守唄。それは
王子にとって二度と聞けない筈のものだったのに、実際にそれを耳にして…
軽い衝撃を覚えていきました。

「…この曲、それにこの声…母さまが歌ってくれた子守唄に似ている気がする…
ううん、これは…母さまの声とまったく同じだよ! どうして…?」

母を恋しがる王子は、その綺麗な声が聞こえる方角へ…確認したい
一心で大急ぎで駆け出していきました。
それはとても月が綺麗な夜でした。
秋の夜の空気は冷たくても澄んでいて…真円の月が煌々と空に輝いていました。
そして開けた岩場に一人の美しい少女がいました

「…母さま?」

最初は暗くて相手の顔が良く見えませんでしたが、じっくりとその顔を見て…
王子は信じられないといった風にそう呟きました。
そう、その少女は…亡くなった母に瓜二つでした。

ですが年齢だけは違います。けれど母の少女時代に描かれた肖像画…
そう、15~6歳の頃の母にその少女はそっくりだったのです。
長い金色の髪は柔らかくうねり、胸元は髪によって隠されています。
けれど髪の隙間から覗く四肢や素肌は真珠をまぶしたかのように眩しく、
しなやかでした。
少女は岩辺に座りながら、腰から下の部分を海水に浸けている格好で
華麗に唄を歌い続けていました。
 その見事な喉に感嘆しつつも王子は、母にそっくりな少女が彼にとっては
特別な一曲を歌っている姿に衝撃を覚えざるをえませんでした。

「やっぱり…この曲は母さまが昔、歌ってくれた曲と一緒だ…。どうして…?」 

それは王家に代々語り継がれている子守唄。
この国の王族の血筋か、もしくは幼い頃から世話役を任命されている
乳母ぐらいしか知らない特別な曲でした。
幼いながらに、母親が死んだことを王子様は理解してもう会えないと
覚悟はしていました。
けれど…目の前に母とそっくりの少女が現れて、とっさに彼は彼女に
向かって大声で呼びかけました。

「母さま!」

そう呼ぶと、小さな王子さまはつい人魚姫の方に駆け寄っていき。

ドッボーン!!

 
と、盛大に大きな水音を立てながら、勢いあまって人魚姫と王子様の
身体は海の中に転がり落ちてしまいました。
泳ぎが得意でない王子さまは思わずおぼれかけてしまいます。

「ブク…ブクブクブク…プハッ! た、助けてぇ! 溺れちゃうよ~!」

実際はそんなに深い場所ではありませんが、足がつかなかったので王子様は
軽くパニックになりました。
そんな王子様を、金髪の少女は優しく抱きしめながら言葉を掛けます。

「ダ、イ…ジョ、ブ…ヨ…」

たどたどしい感じで言葉を紡ぎながら微笑みかけます。
その笑顔があまりに亡き母にそっくりだったので王子様は安堵を
覚えていきました。
次の瞬間、フワっと何かが全身を包み込む気配を感じました

「うわっ! 何コレ!」

王子様の周りには、大きな空気の塊が彼を包み込んでいました。
その状態で人魚姫は王子の腕を掴まえた状態で勢い良く水の中に潜って、
彼を水中遊泳へと誘いました

「うわ~! 溺れるよ! 助けて~!」

 カナヅチな王子様は必死に助けを呼びましたが…少し経ってびっくりしました。
何故なら、海の中で普通に息が出来るからです。
そして水の中に入って気づきましたが…王子は大きな空気の泡に

包み込まれていたのです!
水中に少女の黄金の髪が揺らめき、その下半身が魚のものである事に
ようやく王子は気づきます。

「っ!」

 
それに驚いて声を失っているうちに…人魚姫は軽やかに泳ぎ始めて、
珊瑚が美しい海の中を王子と一緒に泳ぎ始めていきました…。
 そうして風に花びらが舞うように実に軽やかに…クルクルと人魚姫は
泳ぎ続けます。
あまりに水中で早く泳ぐので王子は相手から離れないように背後から首元に
しっかりと抱きついていきます。
初めて見る海の世界はとても美しく、色とりどりの様々な形をした珊瑚と鮮やかな
色の魚達、そして…大小さまざまな貝によって彩られていました。
その幻想的な世界に惹き込まれて王子は言葉すら失っていきます。
そして人魚姫が暫く泳いでいるうちに…とても不思議なものを見ました

「うわっ! 何あれ! 凄く大きい…!」 

それは王子がびっくりするぐらいに大きい、アコヤ貝(真珠が出来る貝)に
良く似た貝でした。
ですが大きさは尋常ではありません…海の中に大きなお城一つぐらいすっぽり
収まってしまいそうなぐらいに大きな貝が鎮座しているのです。
その光景にびっくりしていくと…人魚姫は言いました…。

「ワタ、シノ…オカアサン。ココカラ、ウマレタノヨ。ワタシタチ…」

と告げて、優しく微笑みました。どうやら、王子が「母さま!」と連呼しているのを
聞いて…「自分の母に会いたい」と解釈をしたようでした。

(違うんだけどな…君が母さまにそっくりだって言いたかったのに…)

王子は苦笑しながらそう思いましたが、目の前の笑顔はあまりに眩しくて
キラキラしていて…。
いつの間にか王子は泣いていたことを忘れて微笑んでいました。

その笑顔に満足したのでしょうか…人魚姫はそのまま王子を連れて、
ゆっくりとさっきまでいた岩辺の方へと一緒に戻っていったのでした。
 海中に上がった瞬間、王子様は叫びました。

「凄い! 凄いよ! あんなに綺麗な光景、初めて僕は見たよ!」

王子は興奮した様子でそういうと人魚姫にギュウっと抱きついていきました。
そうして彼女に包み込まれていくと本当に母の腕の中に抱きしめられているみたいでした。
このまま離れたくなくて…王子は泣きそうな声でこう呟きました。

「…僕の傍にいてよ。ずっと…」

それは叶わない願いだと承知の上で呟きました。
彼女は人魚、自分は人間。
王子の脳裏には以前、聞いたある昔話が浮かんでいました。
かつて祖父もまた金色の髪に紫の瞳をした美しい人魚に恋をした事が
あったそうです。
そして二人は両思いになり、彼女が人間になって追いかけて来てくれたのに…
当時、国の情勢が不安定で…祖父は隣国の王女と結婚するしか道がなかった。
そうして二人は引き裂かれて、人間となった人魚姫は他の男性の下へと
嫁いでしまったそうです。
そんな話を乳母から聞いていたことがありました。
跡取りの王子が、人魚を娶ることなど許されないと…幼いながらに理解して
いながらも、母にそっくりな少女と離れたくない一心でしがみつきながら
口に出してしまったのです。
その時、予想外にも少女は頷きました。

「イイ、ヨ…アナタノソバニ、イク…マッテテ…」

間違いなく、彼女は言いました。
思わず耳を疑いましたが了承してくれて、王子は天にも昇る気持ちになりました。
その瞬間、別の凛とした美しい声が聞こえていきました。
そちらの方角を見ると、少し離れた位置にもう一人の美しい人魚が浮かんでいました。
目の前の人魚姫とは面立ちも、身に纏う色彩も異なりました。
 けれどどこか憂い気がある美女でした。

「ただし…それには数年の時を要するわ。この子が貴方の家族として…
傍にいる為の準備期間よ…その間、待てるかしら…?」

「誰? 一体…貴方は…?」

「私はティティス…その子の姉。そして…貴方の叔母みたいなものね…。
大きくなったわね…リュカ…」

もう一人の亜麻色の髪をした美しい人魚は懐かしそうに瞳を細めていきながら…
王子を見つめていきました。
突然のもう一人の人魚が現れて、こちらを知っているような態度を示している事に
王子は言葉を失ってしまいます。

「ねえ…ティティスって、僕に会ったこと、あるの…?」

「えぇ、貴方の赤ちゃんの頃に…姉さんに見せてもらったのよ。
こんなに大きくなって…」

 
突然現れたもう一人の人魚にびっくりしながらも、王子もまた…遠い昔に
会ったことがあるような懐かしい気持ちを覚えました。
テティスの言葉に王子は疑問を膨らませていきました。

「テティスの姉さんって…誰?」

「貴方のおばあちゃんよ…黒髪の、あの元気な…」

「ええええ! あのおばあちゃんとテティスって姉妹なの! 

そんなの聞いたことないよ!」

黒髪のおばあちゃんは父の母親に当たり…この近くの港町で小さな酒場を
運営して切り盛りしている、男顔負けの非常に気風の良い豪快な女性です。
50代に差し掛かった豪快な父方の祖母と、目の前の可憐な人魚が姉妹と
知って王子は言葉を失いました。
今までの人生の中でもっともびっくりした事実だったかも知れません。

「嘘だ…そんなの嘘だ…」

現実を認識したくない気持ちでそう呟きましたが、テティスはにっこりと

微笑みながら言いました。

「事実よ、受け止めなさいね」

「うううう…判りました」

と、キチンとこちらに止めを差してくれました。

王子は暫く落ち込んでいましたが…テティスはふと真顔になりました。

「…まあ、その話はここまでにしておいて。…この子、ティアって言うんだけど…
この子は最近目覚めたばかりでまだ言葉もおぼつかないし、記憶の殆どを
失ってしまっている赤ん坊のようなものなの。そんな状態で…この国の王子で
ある貴方の元には向かわせられない。姉さんに協力してもらって、
貴方の侍女という形で傍にいられるようにしてもらうわ。けど…はっきり
言っておくわね。良い…? 『貴方とこの子は決して結婚出来ない』そして
『家族以上には決して見ない。想わない…』という二つの約束を今、誓えるかしら…?」

真剣な顔をしながらテティスが問いかけていきます。それは淡い恋心をティアに
覚えたばかりの王子にとっては辛い問いかけでした。

(ティアが傍にいるのに…僕とは、結婚出来ない…?)

それは、王子にとっては厳しい言葉でした。
けれど…何故か、母の瓜二つのティアを見て…一つの話を思い出しました。
それが頭に浮かんだ瞬間、何故結婚出来ないかを理解して…王子は頷きました。

「判りました。けど、僕はそれでもティアと一緒にいたいんです! お願いします!」

力強くいうと…テティスは切なげに、けれど嬉しそうに微笑みました。

「なら…約束するわ。二年後までに、貴方の元に置けるようにティアを
教育することを…。さあ、もうじき夜明けの頃を迎えるわ…そろそろ
おやすみなさい。リュカ…」

「はい、判りました。けど…どうかその約束を忘れないで下さい…」

「えぇ、必ず約束は果たすわ…待ってて」

そうしてテティスが優しく微笑むと…ティアもまた振り返りました。

「アナタノ…ソバニカナラズ、イクカラ…」

「うん、絶対だよ! ティア…!」

人魚姫と王子はそっと波打ち際で指切りを交わしていき、別れました。
そうして…二人の出会いの夜はあっという間に過ぎていって…そして、
二年後の月日が経過していったのでした…。

 

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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