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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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現在連載中のお話のログ

※この話は記憶を一部欠落した状態で生活している設定の
ノマと、真実を隠している眼鏡と閉ざされた空間で生きると
いう内容のものです。
 一部ダークな展開や描写を含むのでご了承下さいませ。

忘却の彼方に      


 訳も判らない内に、誰だか判らない男に一方的に抱かれて
行為が終わった後、克哉は混乱していた。
 お互いの荒い息遣いが、耳に入ってくる。
 身体の奥には相手が注ぎ込んだ熱が生々しく残っているからこそ
余計に恥ずかしくて仕方なかった。
 ベッドの上で寄りそうように抱きあい、お互いの顔を覗きこむような
体制になりながら…克哉は、さっきからずっと感じ続けている疑問を
もう一度相手にぶつけていった。

「何で、こんな事を…?」

「俺がお前を抱きたいと思って、お前がそれを心底嫌がって拒まなかった
からだろう? 終わった後で何をウジウジ悩んでいるんだ?」

「うっ…それは、確かにそうだけど…」

 克哉は一層、困惑した顔を浮かべていく。
 相手の指摘はある意味、事実だからだ。
 確かに…自分は心底嫌がって抵抗しなかった。
 何処かで流されて行為に応じてしまった一面もあるのを自覚して…
耳まで赤く染めていった。
 先程までの自分の乱れ方を思い出してしまって、死にたくなる
ぐらいの羞恥がすぐに襲ってきた。
 相手のに腕枕をされる格好で、行為の余韻に浸っていきながら…
まともにまだ働かない頭をどうにか動かして、考えを巡らせていった。

(此処は本当に…何処、何だろう…? 何で、色んな事が
思い出せなくなってしまっているんだろう…?)

 随分昔の事だ、と判る出来ごとは思い出せる。
 けれどここに来る直前の記憶らしきものが一切思い出せないと
いうのは充分異常事態と言えた。
 今の克哉は少しでも現状を把握する為の情報が欲しかった。
 其れには今…こちらを一方的に抱いたこの男に縋るしか手立てがないと
考え、もう一度質問をぶつけていく。

「…ねえ、お願いだから教えてくれよ。此処は一体…何処なんだ…?」

「………」

 克哉が真剣になって尋ねていくと、今までと違って相手の表情も少し
真面目なものに変わって来た。
 訴えかけるように真摯に眼鏡を掛けた相手の瞳を覗きこんでいくと…
少し譲歩してくれたのか、溜息を吐きながらポツリと答えていってくれた。

「…此処は、お前にとってのシェルターだ。それ以上でも、それ以下でもない。
その為に存在している場所だ…とりあえずこれだけは答えてやろう…」

「この場所が、シェルター…?」

「ああ、そうだ。此処はお前の為に存在している。今の時点で俺がお前に
答えてやれる事は此処までだ。後は追々…自分で掴んでいくんだな」

「ちょっと待てよ…! それだけじゃ何も判らないだろう! ならどうしてオレは
シェルターに何か入っていなきゃいけないんだ? その過程というのが
全く見えないのに納得しろなんて無茶過ぎるだろ!」

 そう、この場所が克哉にとってのシェルターというのなら…どうして自分が
そんな場所を利用するに至ったかの理由が、今の克哉には全く判らないのだ。
 だから食って掛かろうとした瞬間、相手に射抜くような鋭い眼差しで
睨まれていった。
 その瞳の鋭さに、克哉は一瞬言葉を失っていく。
 そして…こちらに言い聞かせるように凄味の聞いた声音でしっかりと
告げていった。

「…過程など、今は思い出すな。忘れるというのは一種の心を
守る為の反応でもある。…ようするに、今はお前は此処に来るに至るまでの
過程を思い出すべきじゃないって事だ。いずれ、時期が来ればお前も
自然と思い出すだろう…。それまで、此処で俺と一緒に過ごすんだ…良いな」

「えっ…あっ…」

 相手の瞳の奥に、真剣なものが宿っているのに気づいてしまった。
 その途端、克哉は口ごもるしか出来なくなる。
 素直に頷く事も、拒絶する事もどちらも出来なくなっていく。
 
(何で、こいつはこんな目をしているんだよ…!)

 克哉が突っぱねる事が出来ないのは、その瞳があまりに真っすぐ
だったせいだ。
 こちらを案じてくれているのが、伝わってくるような視線だったからこそ…
強引に突っぱねる事が出来ない。
 納得したくない気持ちと、拒めない気持ちが同時に湧き上がってくる。

「…時期がくれば、オレは思い出す事が出来るのかな…?」

「ああ、そうだ。いずれ思い出す。だから今は無理に思い出す事はない。
忘却は…救いだからだ。心を守る為に忘れている事を…まだ始まったばかりの
段階で無理に思い出す事はない。要はそういう事だ…」

「心を守る為に、忘れている事…?」

 その一言に、ヒヤリと何か冷たいものを感じていった。
 彼の言った事が事実なら…自分は一体、何を忘れているのだろうと
恐怖めいたものすら感じていった。
 だがそんな克哉の髪を、相手はまるで慈しみを込めるように
そっと梳いていく。
 不覚にもその動作だけで大きく安堵を覚えている自分が
確かに存在して…余計、克哉の中で混乱が強まっていく。

「…今は忘れていると良い…。いずれ思い出し、しんどい想いをするのは
目に見えているんだ…。忘れているが故に覚える事が出来る安息に
今は身を委ねているんだ…」

「う、うん…」

 本当は身を委ねていたくなかった。
 一刻も早く真実を知りたいと急きたてる心が確かにあった。
 けれど相手の指先があまりに優しかったから。
 其処から…こちらを案じてくれている気持ちが流れ込んでくるようだった
からこそ…克哉は仕方なく今は頷いていく。

(納得なんてしたくないけど…今は、きっとこの人は答えてくれない…。
なら、少し待とう…。この人の言う時期という奴がくるまで…)

 そう、自分の中で今は妥協する為にそう言い聞かせて…克哉はそっと
目を閉じていく。
 瞼を伏せた瞬間、一気に行為後の疲れが襲い掛かってくるようだった。

―そうして、なし崩しの状況のまま…克哉の奇妙な生活はこうして幕を
開けていったのだった―


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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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