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熱い交歓が終わってから、どれくらいの時間が過ぎたのだろうか?
身体の節々が軋むような感覚を覚えながら、ゆっくりと克哉はベッドの上で
意識を取り戻していく。
「ん…あれから、どれくらい…過ぎたんだろ…」
肉体に残るのは心地よい疲労感と、満足感。
御堂に愛されるといつも酷く啼かされて…喉が枯れたり、頬が涙の痕でカビカビに
なってしまう時もあるけれど…同時に毎回、満たされていた。
自分の両手首に残る赤い痕は…今夜が拘束されながら抱かれたという
確かな証だ。
「少し擦り切れているけど…これくらいなら平気、かな…?」
そう克哉が手首を眺めながらしみじみと呟いていくと…隣で眠っていた御堂が
身じろぎした。
「…起きたのか?」
「…孝典さん、こそ…。眠っていなかったんですね…」
「あぁ…まだ、君を抱いた興奮が過ぎ去っていないんでな。…恋人のあれだけ扇情的な
姿を見せられたら…なかなか脳裏から消えるものでは、ないな…?」
ふっと笑いながら、凄く際どい発言を言われて…瞬く間に克哉の顔は真っ赤に
染まっていく。
「せ、扇情的って…! そ、そんな…」
御堂からの一言で、先程の情事の記憶を鮮明に思い出してしまい…見る見る内に
克哉の顔は茹でダコのように赤く変化していく。
「…今夜の君は、凄く…艶っぽかったぞ?」
「…あっ」
そんな克哉が可愛くて、御堂はグイっと肩に腕を回して…自分の方に
彼を引き寄せて…唇を塞いでいく。
すぐにキスは深いものへと変わり…クチュ…という水音がお互いの脳裏に
響き渡っていく。
「…ん、はぁ…」
キスの合間に克哉は熱っぽい声を漏らし…自分からも懸命に熱い舌先を
絡めていった。
情熱的な、恋人同士しかしないであろう深い深いキス。
すぐにお互い、その行為に夢中になって…相手の口腔を貪りあっていた。
(もっとだ…)
付き合ってから、半年。
相手によっては飽きてきてもそろそろおかしくない時期だ。
なのに…克哉相手に至っては、未だにそんな兆候はない。
仕事場も同じで、私生活もかなりの時間を彼と共有している。
毎週欠かさずセックスして、週末ともなれば…一日中お互いにベッドから
殆ど出ない日すらあるぐらいだ。
なのに…克哉の全てを手に入れたような、そんな充足感はない。
(…克哉。どうして…これだけ君を抱いていても、まだ私は足りないと思ったり…
君を丸ごと手に入れられたような満足感がないんだ…?)
息が苦しくなるぐらいにキツク、相手の舌の根を吸い上げながら…そんな
逡巡をしていく。
克哉はこれだけ、自分に対して真っ直ぐな気持ちと眼差しを向けてくれて
いるのに。
恋人同士になってから、拗ねたり…笑ったり、照れたり…ただ仕事上の
付き合いだけしかなかった頃に比べて、沢山の表情を見ているのに。
ふとした時…思い浮かぶのは、初めて顔を合わせた時の…眼鏡を掛けた途端に
別人のような態度と口調になった…克哉の姿だった。
(あれは一体…君の、何だったんだ…?)
それは…この半年。誰よりも彼と同じ時間を共有してきたからこそ…思い浮かぶ
疑問でもあった。
初めて会った時以来、克哉のその変貌振りは目にしていない。
24時間以上一緒にいる日でさえ、あの日の片鱗すら…克哉の中には存在しない。
「っ…は、ぁ…孝典、さん…。どうしたんですか…?」
思考に夢中になっている最中、キスの方が疎かになってしまっていたらしい。
そっと唇を離して…克哉が怪訝そうに問いかけてくる。
綺麗で澄んだ、自分に全幅の信頼を寄せてくれている眼差し。
それを見て…御堂は、自嘲気味に笑った。
「いや…何でもない。先程のセックスが激しかったせいで…私も少し疲れて、
眠気が出てしまっているだけだ…」
「…そう、ですか…。それなら…良いんですけど…」
御堂の言葉や態度から、それが本心じゃない事は薄々と感じているのだろう。
それでもそれ以上の言及をせずに、克哉は大人しく引き下がっていった。
「…今夜はこれくらいで、寝ておこう。もう少し君を味わいたい気がするが…
途中で力尽きてしまったら、申し訳ないからな…」
「…そうですね、もうこんな時間ですし…」
時計の針をチラリ、と見れば…すでに午前二時を回っていた。
週末の夜、仕事明けにそのまま御堂のマンションに向かった訳だから…今夜は
一週間の疲れも残っている状態だ。
これ以上遅くなるのは確かにまずかった。
「…今夜も君は、可愛かった。おやすみ…克哉…」
「…もう、オレは可愛く、なんて…。はい…おやすみなさい、孝典…さん…」
可愛い、という単語に反論しようとしたが…敢え無く唇を再び塞がれてしまって
その言葉を吸い取られていってしまう。
触れ合うだけのキスだけでも、酷い幸福感で満たされていく。
さりげなく御堂に腕枕をされていきながら…布団を掛けなおして、お互いに眠る
体制を整えていった。
(…暖かい…)
瞼を閉じれば、御堂の体温と鼓動、息遣いが間近に感じられて…自然と胸が
ドキドキしてきた。
未だに、この人の傍にいると…どこか気持ちが落ち着かない。
一緒にいるだけで胸の鼓動が跳ねて、動悸が激しくなっていた。
(今…オレは紛れもなく幸せなのに…どうして、こんなに…不安があるんだろう…)
それは御堂と両想いになってからも、常に克哉の心の中にこびりついていた
不安感だった。
御堂と縁が出来たのは…例のプロトファイバーの営業権をもぎ取った時からだ。
その日の記憶が…未だに、自分の中では深い澱のように沈んでいて、決して
晴れる事はない。
(…この人は、あの日…オレがした事を知ったら…どんな顔をするのだろうか…)
付き合ってから、半年。
幸せになればなるだけ…あの日、記憶がない状態でしてしまった事が重く
自分の中に圧し掛かっていく。
御堂と出会う前日に、自分はMr.Rから眼鏡を受け取り…初対面の少年と
一夜を明かしていた。
それは眼鏡を掛けた自分が行った事。
しかし…あの日から九ヶ月が経過した今も、一言も誰にも明かす事が出来なかった。
そのせいで未だに…克哉の中には消えずに鮮明に残っている過ちの記憶でもあった。
(…貴方にだけは、あの事は知られたくない…。貴方に嫌われたら、オレは…)
多分、死んだほうがマシだからだ。
同時に…あの少年は、今はどうしているのだろうかと思う。
もう一度…眼鏡を掛けて、あの少年に会いに行って以来、自分は恐くなって…
ずっと例の銀縁眼鏡を封印したままだった。
自分の部屋の引き出しにしまい、ずっとこの九ヶ月…使われることがなかった眼鏡。
もう一人の自分も、それ以来…表に出ていない。
…これだけの時間が過ぎているのだ。
あの少年もきっと…こちらの事など、忘れている。
何度も、何度もそう考えて…頭の隅に追いやろうとしていた。
(ダメだ…気になって、仕方がない…)
けれど、探しに行く勇気もない。
もう一度…眼鏡を掛ける気にもなれない。
だからせめて…克哉は、祈るしかなかった。
眼鏡を掛けた自分が気まぐれに抱いたあの少年が…今は、元気でいるように。
そう祈りながら…一時のまどろみに落ちていく。
その瞬間…自分の心の奥底で、何かが脈動している感覚が…した―
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当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
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…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。