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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 この話は鬼畜眼鏡とセーラームーンをミックスさせたパロディものです。
 登場人物が女装するわ、必殺技をかまして怪しい奴らと戦い捲くります。
 無駄にお色気要素満載です。1話&2話目まではギャグ要素に溢れています。
 そういうのに不快になられる方はどうぞ回れ右をお願いしますです(ふかぶか~)

 克哉たちがMGNから、キクチ・マーケーティングに戻った頃にはすっかり日が暮れて

しまっていた。
 全員が戦いでヘロヘロになっている事もあったので本日は片桐が通常業務は
明日以降に回して、本多と片桐は帰って良いと命じてくれていた。
 本多と一緒に帰ろうかとも、チラリと考えたが変身を解いた途端、全身筋肉痛に
襲われた彼が身動きが取れるようになるには後、一晩は掛かるだろう。
 慣れないハイヒールを履いて戦う羽目になった上に、一人でビルを支えるような真似を
したのだから、ある意味当然の結果である。
 一旦、自分の家に帰りたい気持ちもあったので医務室で寝ている本多の全身に
ベタベタベタと湿布だけ貼り付けて克哉は一人、帰路についていた。

(本多にムーン・ヒーリング・エスカレーションをやってやるべきだったかな…)

 ふと、会社の外に出た瞬間…そんな考えが脳裏を過ぎっていく。
 しかしあの技を発動させるには、また変身しなくてはならない…と思うと少し
躊躇が生まれていく。
 すでに本多とて、自分の仲間の一人だ。
 あの例の恥ずかしいスカートヒラヒラの格好を見られるのもお互い様な部分が
あるが…どうしても、一旦…いつもの服に戻ってしまうと、あのコスチュームを
身に纏うのには抵抗があった。

「どうしようかな…」

 長年の付き合いの相手でもあるし、ここは一旦…恥ずかしさを堪えてでも
戻って回復させてやろうかな…と思った瞬間、声を掛けられた。

「克哉さん! お疲れ様…! ずっとここで待っていたんだけど…出て来るの
遅かったね」

 玄関付近に立って待っていたのは…太一だった。
 いつもの普段着に杏色のエプロンを身に纏って…人懐こく笑いながらこちらに
歩み寄ってくる。

「…太一。もしかして、ずっと待っていたのか…?」

「うんっ! 出来れば克哉さんと途中まででも一緒に帰りたいと思ったからね…。
駄目だった?」

「いや、そんな事ないよ…歓迎するよ。オレも…ちょっとまだ、事態についていけて
なくて混乱している部分あるし。太一なら…事情に通じているし、話しやすいからね。
…オレで良かったら、幾らでも一緒に帰るよ?」

「やりぃ! 良かった…ちょっと寒かったけど、ここで待っていた甲斐があって良かった!
という訳で決まったのなら…ささ、早く帰ろうって。行こ! 克哉さん!」

 そのまま無邪気な顔を浮かべていきながら…克哉の手をぎゅっと握り締めて
先導していった。
 秋の穏やかな夜に…二人はフラリと公園に立ち寄っていく。
 空には綺麗な円を描いた銀色の月が浮かんでいた。

「…ここは…」

「うん。昨日の公園…ここで俺、克哉さんと知り合ったんだな~と思ったら
ちょっと寄りたくなってね…?」

「…そういえばそうだよね。あれは…昨日の晩の話だったんだよね。
何か凄い…遠い日のような印象を感じる…」

 それは誇張でも何でもなく、克哉の本心からの言葉だった。
 この二日間があまりに密度が濃かったせいだろう。
 もっと長い時間が経過しているような錯覚すら感じていた。
 公園の噴水の前に足を踏み入れていくと、ふいに太一の指先が
離れて…軽やかな動作で噴水の周りを囲んでいる石の処に足を
乗せて、登り始めていく。

「太一っ! 危ないよっ?」

「もう、平気だってこれくらい…。怪我したりする程、鈍くないから…さ?」

 淡い月の光が、噴水の水を静かに照らし出し…酷く幻想的な雰囲気を
醸していく。
 そんな中で水か静かに落ちていく音だけが辺りに響き渡っていった。
 月を背にして…噴水の縁に立つ太一は、神々しさと…子供っぽさを両方
併せ持っていた。

「…克哉さんもおいでよ? 意外に視点が高くなってて気持ち良いよ…?」

 あんまりにもあっさりとした口調で無邪気に言うものだから…少し考えたが
突っぱねられず、もう…と呟きながら、克哉は差し伸べられた腕を取っていく。
 ほんの数十センチ程度、いつもよりも高い視点は…見慣れた公園をいつもよりも
違っているように感じさせてくれていた。

「…本当だ、夜風が…凄く、気持ち良い…」

 大人になれば、噴水の縁を歩く事もそんなになくなる。
 大抵、この公園に寄ってもお世話になるのは水のみ場か…ベンチ程度だったから
新鮮な気分だった。
 手を繋ぎながら大の男が、噴水の周りに乗り上げている姿を第三者が見たら
どんな風に思うのだろうか? 
 ふとそんな事を考えたが…繋がれている手の暖かさに、次第にどうでも良くなって…
二人で一緒に、暫く月を仰いでいった。

「ねえ…克哉さん。少しだけ…話聞いて貰って良い?」

「…何、かな…? オレ良ければ…聞くけど…?」

 まだ自分達は知り合って間もない間柄だ。
 それで一体…会社の前で待ち伏せしてまで…彼は自分に何を話したかったのだろうか?
 そんな事を考えながら…太一の次の言葉を待っていった。

「あのね…こんな事を言ったら、克哉さんを困らせてしまうかも知れないけど…
俺、貴方と一緒に戦う事になって良かったとおもっているよ? これは本心だから…」

「えっ…う、そ…だろ?」

 一瞬、太一の言った言葉が信じられなくて目を瞠っていく。
 しかし…相手の顔を凝視しても、その顔には穏やかな笑みだけしか見つけられず…
本心を読み取る事は困難だった。

「ううん、本当。だって…俺、初めて貴方を見かけた時から…こうやって話せたら
良いなってずっと思っていたから。確かにあの格好はちょっと…と思う部分もあるけどさ、
そのおかげでこうやって克哉さんと俺…知り合えた訳だし。
 だから…俺は逆に感謝していたりするんだ…」

「そう、なんだ…」

 太一の言葉は静かで、暖かくて嘘は感じられない。
 最初は信じられなかったけど、その顔と口調で…本心で言ってくれていると判って
少しして…克哉は柔らかく微笑んでいった。

「…ん、オレも…あんな格好するのは恥ずかしいけれど…太一と出会えて
良かったと思っている。昨日だって…今日だって、君がいなかったら…オレはどうなって
いたか判らないし…。今日、オレが敵に捕まっていた時に来てくれた時は、本当に
涙が出るくらいに嬉しかったから…」

 そう、自分一人だったら…昨日も今日も、恐らくどうにもならなかった。
 それを思えば…彼に幾ら感謝してもこちらは足りないくらいなのだ。
 克哉の言葉を聞いて、みるみる内に…太一の顔に喜びの色が満ちていった。

「そう、貴方の役に立てたなら…本当に、良かった。これからも宜しくっ!
克哉さんっ!」

 ぎゅっと手を握られながら、嬉しそうな顔をして…宜しくなどと言われたら
こちらも少し恥ずかしくて仕方なかったけれど…ジィンと何か、暖かいものが
胸の中に満ちていった。

(何か太一の傍にいると…励まされる気がするな。こんな事態に巻き込まれて
どうしよう…って思っていたのが、どうでも良くなってくる…)

「こちらこそ…宜しく、太一。…君がいてくれて、本当に…良かった…」

 はにかみながら、本心からそう気持ちを告げていくと…次の瞬間、太一の顔が
真っ赤に染まっていった。

「…っ! 克哉さん、それ…反則過ぎる! うっわっ…俺の方まで恥ずかしく
なってきたかもっ!」

「…っ! そんな事、言われても…! そんなに恥ずかしがられると…こっちまで
恥ずかしくなるじゃないかっ!」

 お互いに口を手で覆いながらも…繋いだ手の方は離す気配はなかった。
 どうして手を離す気になれないのか…自分でも不思議だったけれど、繋がれた手から
太一の温もりと手の感触が伝わってきて、酷く落ち着いていたにもまた事実だったからだ。

「…と、もかく…! うんっ! これだけ言っておくよっ! 貴方は絶対に…俺が
守るからっ! それは俺の中で決定事項だから…忘れないでっ!克哉さん…!」

「守るって…? えっ…!」

 顔を真っ赤にしながら、太一がふいに顔をこちらの方に急接近させていくと…
いきなり、頬に柔らかい感触を感じた。
 一瞬何か…と思ってその場に凍り付いていくが…少しして、頬にキスを落とされた
事に気づいていくと…克哉も耳まで火照っていく感じがした。

「えっ…! えっ…! 今の、何っ…!? 太一…?」

「…俺からの、気持ちだよっ! …それじゃ、今夜はそろそろ行くから! 
またねっ! 克哉さんっ!」

 お互いに顔を真っ赤にしながら…太一はパっと手を離して…その場から
物凄い勢いで立ち去っていく。
 突然の事態に、克哉は呆然とするしかない。
 一体今、何が起こったのか…と状況判断が出来ずに、つい頬を押さえて
立ち尽くす事しか出来ないでいた。

「い、今のって…一体、どういう…意味、だったんだ…?」

 何となく察してはいたが、まさか…という想いもあって、混乱するしかなかった。

「…まさか太一が…オレの事を…?」

 信じられない思いがいっぱいだった。
 自分達は昨日初めて知り合ったばかりで…男同士で。
 それなのに…太一からあんな事を言われて、頬にキスされていて。
 変身させられて戦う羽目になっただけでもとんでもないと思うのに…一日の終わりに
またこんな事が起こって、つい克哉は…その場にへたり込みそうになった。

「…どうしよう。展開速すぎて頭がついていかない…っていうか、次に会った時に
オレ…太一にどんな顔して会えば良いのか…判らない、かも…」

 噴水の縁に腰を掛けながら、深々と溜息を突いてうなだれていく。
 ふと…空に浮かぶ月を眺めていく。
 自分がこれだけグルグルしていても…月光だけは酷く澄み切っていて
清浄な空気が辺りを支配していく。
 白く煌々と光る月の姿は懐かしくて…同時に切なくて。
 全てのことをはっきりと思い出せる訳ではなかったけれど…ふと、一瞬の映像が
脳裏を過ぎっていく。

 月を見ると、今は何故か―涙が出るくらいに、懐かしい気持ちだけが溢れていた。

「えっ…何で、オレ…涙、が…?」

 自分でも、どうして泣いているのか…判らなかった。
 記憶は全て戻っている訳ではない。
 けれど…自分の心の奥深くで、紛れもなく…強い想いが湧き上がって来ていた。

―もう一度、君に会えて…本当に、良かった…!

「…オレ、太一とも…昔、何か…あったのか? だからこんなに…懐かしい
気持ちになっているの、かな…?」

 瞳からは透明な涙が溢れて、溢れて。
 水晶のような雫がポロポロと輝きながら地面に落ちていく。

「…前世で、オレ達に何があったの…? 誰か…教えて…」

 無意識の内に月に手を伸ばしながら、ただ…祈っていく。
 胸の中に溢れる感情は…喜び、だった。
 それを自覚して…ただ、白い月の元…克哉は一人、立ち尽くしていく。

(あぁ…オレにとって、太一は…遠い昔に…大切な人、だったのかも知れないな…)

 それがどういう類のものか、判らない。
 はっきりとした回答はまだ自分の中には存在していなかった。
 けれど…これだけは言える。
 自分は…太一にこうして会えて良かったと、心から思っている事を…。

 永劫とも言える長い時間が月と地上の間に流れていても
 降り注ぐ光だけはあの頃と何一つ変わらなかった。
 克哉がどれだけ心の中で問いかけても今は月は何の回答も齎さず
 どこまでも澄んだ光を讃えて、空に浮かび上がっているだけだ。

 ―俺、貴方に会えて本当に…感謝しているよ。カイヤさん…

 必死になって思い出そうとして、拾えたカケラはただ一つだけ。
 それは…遠い昔、花畑で…自分に向かって、笑顔でそう言ってくれた
かつての彼の…言葉だけ、だった―

(あぁ…そう、か…オレ、たちは…)

 以前に、うんと昔にも…一緒に、いたんだ。
 それを思い出して…克哉は静かに微笑んでいく。
 他の事はまだ思い出せないけれど…断片だけでも深遠から
拾う事が出来て、少しだけ克哉は嬉しい気持ちになっていった。
 
 そうして…彼らが再会して二日目の夜は更けていく。
 止まっていた彼らの運命の輪が緩やかに回っていた。
 その時計の針が指し示す未来に何が待ち望んでいるのか…
彼らは未だ、知らない。

 大切な記憶の断片を胸に抱き、克哉は月を仰ぐ。
 其処には何百年の月日を得ても変わる事がない…悠久の
月の姿だけが、紺碧の闇の中に静かに浮かんでいた―



  




 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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