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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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  御堂がデパートでラッピングを選んでいるのと同時刻―
  恋人に完全に撒かれてしまって…都会の雑踏の中で佐伯克哉は一人、
途方に暮れていた。

(…あんたは一体、どこにいるんだ…)

 新しい会社を立ち上げて、公私共に一緒の時間を過ごせるようになってから
たったの二週間しか経過していない。
 御堂を解放してから、再会するまでの空白の一年間を埋めるには…まだまだ
気持ち的に足りない時期。
 …克哉は、週末は御堂とどうしても過ごしたかった。
 仕事上のパートナーとして…一緒にいられる時間が増えただけでも、会えなかった
時期を思えば幸福だった。
 だが…そんなモノじゃ、まだ足りない。
 『恋人』としての御堂を求める心はとんでもなく貪欲で…いつか相手を喰らい尽くして
しまうのではないか。
 それくらい、強くて…凶暴な気持ちが自分の中に渦巻いていた。

(御堂…俺は、ただ…あんたと少しでも長く一緒にいたいだけなのに・・・!)

 同じ気持ちだと確信して、誘いを掛けたのに…あっさりと御堂に断られて
理由も話してもらえずに置き去りにされた事で…柄にもなく、克哉は焦燥していた。
 せめて自分と一緒にいる時間よりも優先すべき事をキチンと話してもらった上なら…
ここまで克哉も不安定にならなかった事だろう。
 沢山の人波が蠢く中、御堂の姿を必死になって眼を凝らして探していく。
 だが…それらしい髪型や、スーツの人物を見つける度に…違う、と落胆を
繰り返していた。

「御堂…」

 無意識の内に、彼の名を呟いていく。
 そして再び、携帯電話のコールを鳴らしていった。
 だが…最初の一回目は延々と呼び出し音が聞こえるだけだったが、二度目からは
すぐに「電波の届かない処におられるか、電源が入っていない為に掛かりません」という
アナウンスが流れるようになっていた。
 それが余計に…克哉の心を焦らせていく。
 …まるで自分が、御堂に拒絶されているように感じられてしまったから―

「…何で、電話にも出てくれないんだ…」

 …御堂からしたら、克哉にチョコレート作りの為の道具や…ラッピング用品を買い求めて
いる姿など恥ずかしくて見せたくないだけの話なのだが、そんな事は予想もしていない
克哉は…ただただ、不安な気持ちを持て余していく。
 夜の帳が静かに下りて、ネオンが輝き始める街の中で…克哉は途方に暮れていく。
 今夜は、恐らく朝まで離すつもりはなかったのに―
 現実にはただ一人…こうして取り残されていく。

「…あいつが向かいそうな場所は、一体どこだ…?」

 ふと、心当たりの場所でも赴いてみようと考えて…御堂が行きそうな店を
思い出していったが…知っているのは以前に連れていかれた事がある
ワインバーくらいな物だ。

 …後は彼が今住んでいるマンションのどちらか、と言った処だろう。
 空白の期間が長すぎた上に、御堂がMGNに在籍していた頃は…一緒に
出かけたり、食事を楽しむような間柄ではお世辞にもなかった。
 …弱みを握って、無理やり肉体関係を結んで追い詰めていくような…関わり方しか
していなかったせいで…未だに克哉は御堂がどんな行き着けの店を持っているのか、
どこに良く出かけるのか。
 そんな事すらも知らなかったことに気づいて…余計に歯噛みしたくなった。

「…良く考えたら、あいつが今…住んでいる場所すら、俺は良く知らないんだな…」

 御堂を捕まえるとしたら、彼の現在の住居が一番可能性が高い。
 だが…新会社を興してから二週間。
 基本的に週末は自分の方の部屋で過ごしていたので…克哉はまだ
御堂の現住所に行った事がなかった。

(ワインバーに先に向かうか? …だが、この近くの最寄駅からは結構乗り継ぎが
面倒だった筈だ。…御堂の今住んでいる場所に向かった方が可能性が高いが…
住所が書いてある物が…何かあっただろうか…?)

 必死に頭の中を検索して、情報を整理していく。
 一刻も早く、御堂を確実に捕まえる為にシュミレーションを繰り返し…自分が
現在の時点で所有している情報を纏め上げていく。
 それで、一つの考えに思い至った。

「…そうだ、二週間前。今の会社をあいつに初めて見せた二日後に…便宜上、
履歴書を提出して貰った筈だ。そこになら…今のあいつの住所もキチンと書いて
ある筈だな…」

 自分は最初から、あの会社を興す際に…御堂を片腕に登用するつもりでいた。
 だから…履歴書など、本来なら大した意味は持たない。
 だが…住所を知る為には有効な手段である事に気づいて…克哉は一旦、
自分の会社の方へと戻る決意をした。

「住所さえ判れば…タクシーでその付近まで連れてって貰えるからな。まずは…
俺の会社まで戻ろう…」

 必死に考え抜いて、どう動くべきかを見出していくと…克哉は迷いない足取りで
一番近くにある駅のタクシー乗り場まで向かい…まずは自社ビルを指定して
向かい始めていった。
 御堂を素早く捕まえる為には、多少の出費などにかまけている暇はなかった。
 
(…絶対に、お前からキチンと理由を聞かせて貰うまでは…諦めるつもりはないぞ…!)

 険しい顔をしながら、克哉はタクシーに乗り込んでいく。
 …ただ、今の彼の頭の中には…愛しい人間の事だけで占められて、それ以外の
事が入る余地は一切なかった―


 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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