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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 結局、あれから何度も意識が落ちて…目覚めると克哉に求められて。
 朝方まで喉がカラカラに枯れて、全身ぐったりとなるぐらいに貪られて
御堂がようやく…ベッドから離れる事が出来たのは昼近くになってからの
事だった。

「…まったく、こいつは…手加減というものを知らないのか…」

 ぐったりとなりながら…開口一番に突いた言葉はそれだった。
 色んな体位で抱かれたせいで、体中の筋肉と骨がミシミシと軋んでいたし
肌も汗と体液でベタベタだった。

「…コイツのせいで、ベッドメイキングもキチンとやり直さないといけないな…」

 ここまでグシャグシャになった上に汚れてしまっていては、そのままでは
到底寝れたものじゃない。
 一瞬…仕事を増やしてくれた相手が恨めしくて…つい睨んでしまったが。

「ふん…無防備な顔をして、眠って…まったく…」

 ―穏やかな顔をして、自分のベッドの上で気持ち良さそうに眠っている
克哉の顔を見ていたら…そんな憤りもどうでも良くなってしまって。
 溜息交じりに…そっと唇に―キスを落としていた。
 
                          *

 克哉が目覚めた時には、隣のスペースはもぬけの殻だった。
 一瞬不安になってしまったが…窓の外がすっかり明るくなっている事に
気付いて、仕方ないかと割り切っていく。
 昨晩は結局、御堂が可愛くて…朝方近くまで何度も求めてしまった。
 …それを考えたら、相手がシャワーの一つも浴びに行っていても何にも
おかしくはない。

(正直…流石にベタベタして、気持ち悪いしな…)

 昨晩の相手の乱れっぷりを思い出して、思わず…反応しそうになって
しまった事に苦笑していく。

「…やれやれ、俺も…若いな…」

 それでも朝っぱらから相手が隣にいないのに盛ってもどうしようもない。
 どうにか疼きを沈めて…ベッドから身体を起こして―自分もシャワーを
浴びに向かっていった。
 シャワー室には使用された形跡はあったが、御堂の姿は見られない。
 ある程度の時間が経過しているのか…浴室はすでに冷え切っていた。
 一瞬、先に御堂の姿を確認しておきたい…という気持ちに駆られたが
全身がベタベタしている状態をどうにかするのが先だろう。
 そう判断して、暖かいシャワーを頭から浴びていった。
 
 それだけで…生き返るような想いがした。

(気持ち良い…)

 熱いシャワーを浴びるだけで気だるかった頭がすっきりしていく。
 全身をさっぱりさせてから…バスローブ一枚を羽織って浴室を後にすると
台所の方で人の気配を感じていった。
 其処には…チョコレートを子鍋の中で掻き回して…芳醇な香りの洋酒を
そっと落としている御堂の姿があった。
 白いYシャツにスーツズボン、そして緑のエプロンというラフな格好だが
普段キチっとスーツを着ている時に比べて柔らかい印象を受けた。

 昨日も一回、練習として作っていたが…今、彼が作っているのは本番用に
用意しておいた高級なチョコレートを原料としたバージョンである。
 昨日に比べて、チョコ自体の香りも強く…こうしているだけで、胸が蕩けそうに
なるくらいに香ばしい香りがこちらに漂ってくるくらいだ。
 
「…っ!」

 御堂が自分の為に、昨日チョコレートを作ろうとしていたから…
誘いを断った事ぐらいはすでに知っている。
 だがその現場を実際に目の当たりにすると…あの御堂が自分の為に
手作りチョコを作ってくれているという事実に胸が熱くなっていった。

(以前からは信じられない光景だな…)

 まさか…御堂が自分の為にチョコレートを作ってくれている日が
こようとは予想もしていなかっただけに感慨も大きかった。

「ん、良い味だ…。洋酒の加減も上手くいったようだし…これなら、佐伯の
奴も満足してくれるかな…。甘さはちゃんと抑えてあるし…」

 それは、克哉の好みを考慮して作ってくれた…世界でたった一つの
愛しい人の手で作られたチョコレートだった。
 その現場に立ち会って…信じられないくらいに強い幸福感に満たされていく。
 もう、我慢は出来なかった。
 そっと足音を立てないように…静かに相手の背後に忍び寄り。

 ―相手を逃がすまいと、強い力で抱きしめて閉じ込めていった

 「うわっ! 佐伯っ?」

 突然、背後から抱擁されて御堂がぎょっとしていく。
 振り向いた彼の唇を、強引に克哉は塞いでいった。
 たった今、御堂が味見をしたばかりのせいか…昨日最初にキスした時よりも
濃厚に、ほんのりと苦いビターチョコレートの味と香りが感じられた。

「…あんたの唇、昨日よりも強く…チョコレートの味がするな…」

「…お前、が…突然、こんな時にキス…してくるから、だろうっ! 昨日から
お前の行動は強引で…身勝手過ぎるぞ! もう少し…私の都合とかを
考えたら、どうなんだ…?」

「…ちゃんと以前に比べれば、考えていると思うがな。…あんたが嫌だって
言うことは…無理強いはしていないだろ…?」

 強気の表情を浮かべながら、克哉がこちらの髪に頬ずりして…そっと
瞳を覗き込んでくる。
 昨日、弱気な態度を見せたのが嘘みたいな…自信満々の、自分が良く
知っている克哉の表情。
 それを見て…ふいに癪な気分になったので…つい照れ隠しに相手の頬を
引っ張って御堂は応戦していった。

「…君と言う男はっ! 本当に可愛げがなさ過ぎるぞっ!」

「こひゃ! 御堂…痛いから本気で引っ張るのは止めろっ!」

「えぇい…うるさい! 恥ずかしいから君が寝ている間に作り終えるつもり
だったのに…どうしてもうちょい寝ていなかったんだ~!」

 顔を真っ赤にしながら、克哉に筋違いな文句を言ってくる御堂は…問答無用で
非常に可愛らしくて。
 引っ張られる頬はかなり痛かったが、こんなやりとりも…克哉の心を幸福で
満たしてくれていた。

「それは…無理だな。あんたとこうして一緒にいられるのに…ただ寝て過ごす
なんて勿体無い時間の使い方、出来る訳がないだろう…?」

 そういって、今…自分の為に物を作り上げてくれていた…男にしては
綺麗な造りをした指先に口付けていく。
 たったそれだけの動作で…耳まで赤く染める御堂が本当に愛らしく
感じられた。

「…君は、どこまで私を…恥ずかしがらせれば、気が済むんだ…」

 本気で殴りつけてやろうかと思ったが、寸での処で踏み止まる。
 そうやって自分の指に口付けを落とす克哉の表情が…憎らしくなるくらいに
決まっていて、格好が良かったからだ。
 体温と脈拍が上昇して、ドクドクドクと鼓動が荒くなっていく。
 それを相手に悟られまいと…キっと強く睨んでいくが…克哉にはすでに
お見通しのようだった。
 クスクスクスと笑いながら…顔を寄せられ、結局…腕の中に再び
閉じ込められていく。

「さあな…あんたのそんな可愛い顔を見れるなら、一生…かな…?」

「君、という男は…んっ…」

 優しく髪を梳かれながら、どこまでも優しいキスを落とされて…
次第に腰から下の力が抜けて、その場に崩れ落ちそうになってしまう。
 悔しいけれど…克哉とする口付けは酷く気持ちよくて…たったそれだけでも
蕩けそうな心持ちになってしまう。

 サラサラサラサラ…。

 克哉の骨ばった指先が、御堂の髪をどこまでも穏やかな手つきで
梳き上げていく。
 キスして、抱き合って…こうして相手に触れられて。
 それがここまでの幸福に結びつく関係になれる日が来るなんて…
昔からはとても考え付かなかった。

「孝典…有難う。あんたが…俺の為に、こうしてチョコを作ってくれるなんて
予想もしていなかったから…本当に、嬉しかった…」

 そうして、もう一度…キスされる。
 幸福な接吻。
 愛されていると実感されている触れ合い。
 それを享受して…御堂はそっと、抵抗を止めて…ただ彼から
与えられる感覚に身を委ねていく。

「…ふん」

 口では、気に入らなそうに呟いてそっぽ向くけれど…赤い耳元が
今の彼の心情を何よりも如実に示していた。

「…私は、君の恋人なんだ。だから…チョコレートを贈る事など
当然の事だろう? バレンタインっていうのは…日本では女性から男性にが
基本だが…外国では、恋人同士がお互いにプレゼントを贈りあって愛情を
確認しあう日だと聞いた事があるからな…」

 そう、バレンタインは日本ではお菓子メーカーの最初の宣伝文句によって…
いつの間にか女性から男性にが定着しているが…海外では、恋人同士が想いを
確認しあう日というのが常識になっているのである。
 元々、戦地に向かう若者が結婚しても…相手がすぐに未亡人になる恐れがあるので
結婚してはならない。
 そういう条例が出された時、それでも結ばれることを願った恋人達の為に…処刑を
覚悟で式を挙げた神父の名前が…バレンタインデーの由来なのである。
 だから、本来は…男が男に贈るから恥ずかしいという事はない。
 異性同士でも、同性同士でも…恋人を大事に思う気持ちは基本的に一緒であるし。
 贈り物をして、時に想いを確認しあう事は…とても大切な事なのだから―

 口では、当然と言いながら…御堂の顔は凄く赤かった。
 そのギャップが酷く可愛く思えて…ギュウ、と克哉は愛しい相手を
抱きしめていく。
 
「…本当に、あんたという人は…最高、だな…!」

「こらっ! 克哉…! 今、私は…火を使っている、んだ…! そろそろ…いい加減に
離して…あぁ!!」

 ふと、二人が睦み合っている間に…ブスブスブスと香ばしいを通り越して
焦げた匂いが充満していく。
 そう―本来チョコレートとは焦げやすくデリケートな代物なのである。
 完成間際だった時に、イチャついて余計な時間を費やしてしまえば…こうなる事は
自明の理であった。

「…もしかして、焦げた…か?」

「もしかしなくても焦げているんだっ! どうしてくれるんだ…! せっかく手配した
高級チョコが台無しになったじゃないかっ!」

「…すまない。だが…それは結局は俺に贈られるべき物だったのだろう?」

「そういう問題じゃない! …せっかく、君に喜んで貰おうとこっちは頑張ったのに…」

 明らかに落ち込んでいる御堂を前にして、流石にこちらも申し訳ない気分に
なっていく。
 克哉なりに…必死に考えて、それで一つ思い当たっていく。
 フっと自信満々に微笑み…強引に相手を引き寄せて…そして。
 どこまでも甘い声音で囁いていった―

『チョコなんか無くても…あんたが傍にさえいてくれれば、それで俺は
充分に満たされるんだがな…』

「っ!」

 それを言った瞬間、殺し文句だったせいだろうか…。
 かなり憤っていた御堂が、瞬く間に大人しくなって…腰を抜かしていく。
 ヘタリ、と克哉の方に身を預けて…フルフルと震えながら…どこまでも深い
溜息を突いて睨んでいく。

「…君は、本当に…酷い男、だな…」

「それは褒め言葉なのかな…?」

「…悔しい、事にな…。まったく…私は本当に難儀な男に惚れてしまったんだなと
恨みたく…なる…」

 そうして、目線が交差しあって。
 深々と溜息を突いていく御堂の唇を塞いでいってやる。
 両者の舌が絡み合い、気持ちを確かめ合うような濃厚なキスが終わった後…
まるでタイミングを測ったように、二人の唇から同時に一つの言葉が漏れていく。

『…好きだ』

 それは相手に幸せを与える、魔法の言葉。
 基本的に世の中のものは与えれば減っていくのが基本だ。
 だが…気持ちと、好意だけは人に与えれば与えるだけ増えていく不思議な
法則が成り立っている代物なのである。
 かつては相手から奪うだけしか、頭になかった。
 だが克哉が「好き」という気持ちを与えた時から…自分達の関係は
うんとシンプルになったのかも知れない。
 気持ちを伝えて、想いを確かめて。

 今はまだ…過去に対してのわだかまりが全て消えたと言ったら嘘になる。
 だが、それも…プラスの感情を積み重ねていけばいつしか自覚する事もなく
流されて…遠いものへと変わる日が訪れるだろう。

 幸せで眩暈すら覚えるような週末の昼下がり。
 何度も何度もすれ違いを続けてきた恋人達は―
 甘いチョコレートの焦げた香りが漂う室内でお互いの想いを確かめ合い
その幸福感を噛み締めていったのだった―
 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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