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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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  『二十三話 良かったねご主人様』 『もんてん丸&静御前』

(本日はオカメインコ達の会話を翻訳してお伝えします。予めご了承下さい)

『ねえねえ、もんてん丸。今日…ご主人様、凄いご機嫌だよね~。何か楽しい事が
あったのかなぁ?』

『ん~最近、ずうっと…暗い顔ばかりしていたもんね~。こんなに嬉しそうなご主人様を
見れたの久しぶりだよねぇ、静御前』

 二匹がぴったりと寄り添ってさえずっていると、とても嬉しそうな顔を浮かべながら
片桐稔は二匹に餌をやり始めた。

「今日も遅くなってすみませんね~二匹共~。今日は君たちが大好きな新鮮な
小松菜を買ってきましたから許して下さいね~」

 何よりも愛情を注いで大切にしているせいか…片桐はオカメインコ達に与える食事に
関しては凄く気を使っていた。
 配合飼料や、市販のオカメインコ用の餌も組み合わせているが…出来るだけキャベツ、
レタス、ほうれん草、小松菜など生の野菜類も食べさせるように配慮を欠かさなかった。
 二匹は好物を用意されて凄く嬉しそうにカゴの中で飛び跳ねて、我先へと…野菜の方へと
飛んで向かっていった。

『わ~い! 僕の大好きな小松菜だぁ! って…何でキックしてくるんだよっ! 痛い…
痛いってば!』

『うるさいわね! 私だって小松菜大好きなのよ! あんた…普段私に餌の一つも
用意してくれない甲斐性なしなんだから…先に譲ってくれたって良いでしょ!』

『そんなぁ! 静御前が先に食べちゃったらお腹いっぱいになるまでいつも僕に
食べさせてくれなくなるじゃんか。僕だってこれは好きなんだから嫌だよ! 
せめて一緒に食べようよ…』

『ええぃ! うるさいわねっ! ただでさえ私はお腹が空いているのよっ!』

 もんてん丸がピーチクと鳴いて…静御前の理不尽な言い分に逆らっていくと
二匹のオカメインコは相手の顔をくちばしで突いたり、キックして威嚇したりと…
まったく譲り合う気配はなかった。
 人間でも鳥でも、好物に関しては拘ったり…より多く食べたがる所は一緒である。
 二匹の攻防は暫く続いたが…片桐はその様子を微笑ましげに眺めていた。

「二匹共、今日も仲良しさんですねぇ…。そんなに慌てなくても、足りないなら
小松菜のおかわりをあげますからケンカしなくても良いですよ…」

 それを聞いて、ちょっとだけ二匹は首を傾げる仕草をしていくと…大人しくなって
仲良く小松菜を啄ばみ始めた。
 どうやらケンカして相手を牽制しようという気持ちよりも…食欲の方が勝ったらしい。
 大好きなものを食べるとご機嫌になるのは鳥だって一緒なのだ。
 最初は牽制していた二匹も、いざ食べ始めてしまえば…すぐにそれに夢中になる。

「ふふ…今日は二匹とも、凄く沢山良く食べてくれますね。見ているだけで…嬉しく
なります…」

 自分の息子を幼い内に事故で亡くした事によって、妻にも離縁された片桐にとって…
この二匹のオカメインコだけが孤独を癒してくれる存在だった。
 もんてん丸と静御前が仲良く寄り添って、こうやって…美味しそうに自分の餌を食べて
くれる姿を見る事は、彼の元気の素でもあった。

「…ふふ、二匹共聞いてくれます? 佐伯君がやっと仕事に戻ってきて…八課も
抱えていた膨大な仕事が片付いたんですよ。僕たちが全力で取り掛かっても到底
片付かないぐらいの量だったのに…。眼鏡を掛けている時の彼は…以前とは別人の
ような時があるんですけど、本当にあの仕事ぶりは凄いなと感服しちゃいます。
 彼のような人が…八課にいてくれた事を、僕は誇りに思いますよ…」

 穏やかな顔をしながら、部下の事を語る口調は本当に穏やかで。
 逆に刺されてから克哉が退院するまでの期間は…落ち込みまくって、自分ばかり
責めている姿を見ていた二匹にとっては…その片桐の姿を見て、どこか安心したようだった。

『へえ~。何かご主人様が言っていた人…やっと戻って来たんだ。良かったねぇ~』

『そうだね~静御前。これであんまりご主人様の落ち込んだ顔、見なくて済むよね~』

『そうそう、私たちじゃ…落ち込んだ時、傍にいてあげるくらいしか出来ないしね。だから…
元気になってくれて本当に良かった~。私たち、ご主人様大好きだしね。ね? もんてん丸』

『うんうん、そうだよね。やっぱりご主人様が笑っている姿のが僕も好きだし』

 あらかた、小松菜を啄ばみ終えると…二匹は満足そうに餌の傍から離れて…代わりに
入り口のゲージ付近に近づいて、扉の端をクチバシで挟んで…上げ下げをするような
仕草をし始めていく。
 実際にクチバシで挟んで持ち上げた所で、鳥たちだけの力では逃げれる訳ではないのだが…
これは出たいから出してくれ、という彼らなりの意思表示であった。

「あぁ…二匹共、お外に出たいんですね。運動不足になっちゃうでしょうから…はい、
もんてん丸、静御前…どうぞ出て下さい」

 そうして、二匹のオカメインコを外に出していく。
 出た瞬間、バタバタバタと部屋中を飛び回り思いっきり羽を伸ばしていく。
 狭いカゴから解き放たれたばかりの鳥の姿は本当に壮観だ。
 自由に飛ばせると思いもよらぬ所にフンをしてしまったりと、案外大変だが…片桐は
短い時間だけでも家の中で好きなようにさせてやろうと、二匹を自由にさせていく。
 すると…暫く飛んだ事で満足したのか、ほぼ同時に二匹共…片桐の肩や腕に止まり、
頬ずりをするような仕草をして懐いていく。

「ん、静御前。くすぐったいですよ…今日は本当に甘えん坊さんですね…」

 自分の項の辺りにチョンチョン、という感じで啄ばんできて…そのくすぐったさについ
身を捩ってしまう。
 この一ヶ月、憂いを感じていた件がやっと落ち着いて…今の片桐は、愛すべき平和な
日常を感謝しながら過ごしていた。
 八課に克哉や本多がいて、プロトファイバーの売り上げの成果によって…リストラされる
のも時間の問題だった課が、今ではキクチ中の注目を集めるようになったエース的な
課にまでなった事で…今の片桐は非常に満足していた。
 主人の嬉しそうな顔を見て、オカメインコ達も嬉しくなったのだろう。
 ご機嫌の様子で片桐に懐き倒して、暫く暖かい時間が流れていく。

『良かったね、ご主人様』

『うん、笑顔が戻って来てくれて本当に良かった~』

 多分、鳥たちの気持ちは…片桐に正確に伝わる事はないだろうけれど。
 彼らがこちらの喜びを受け止めてくれている事だけは気配で察したのだろう。
 二匹の愛鳥を傍らに置いて、心底嬉しそうに彼は微笑んでいく。
 あの事件が起こったからこそ…こうやって平凡な日常をゆったりした気持ちで
送れる事に感謝しながら…。
 彼は、二匹の気が済むまで…部屋の中で自由に振舞わせていったのだった-
 

 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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