鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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『第三十二話 冷酷な衝動』 「五十嵐太一」
―克哉の事件が起こる少し前、彼はささやかな贈り物をしていた。
それは営業の成績が良くなるように…と願いを込めた緑の石が嵌められた携帯のストラップ
だったけれど…それが実はGPSで探知が可能だった発信機だった事を恐らく克哉は
気づいていないだろう。
…自分が同性の克哉に対して、本気になっていた事を自覚した時…自分の実家の
ゴタゴタに万が一彼が巻き込まれてしまった時の保険として渡しておいた物だった。
不本意ながら、男孫が自分一人しかいない為に…五十嵐組の後継者の筆頭に
祭り上げられた太一の身辺は、実家にいる間…お世辞にも穏やかとは言えなかったからだ。
…それがこんな形で役に立つなど、贈った時は予想もしていなかったけれど…。
(やっと…家を抜け出せた…)
嘆息しながら、夜中の3時半くらいに本多の家をどうにか抜け出して…太一は
自分の携帯のGPS機能を開いていく。
あれから、どうにか…追っ手を巻いて無事に二人で本多の家へと辿り着けたまでは
良かったが…元々人情に熱い(お節介とも言うが)本多は、必死になって…何故このように
なったのかを尋ねて来てこちらを心配して来たのだ。
幸いにも、「若」と呼び掛けられた事は耳に届いていなかったみたいだから…どうにか適当な
事を言って言い逃れは出来たが、その間…生きた心地がしなかったのは事実だった。
抜け出そうにも、心配され続けて…一旦、一緒に就寝するしかない状況に追い込まれたので
逸る気持ちを抑えてどうにか眠りにつき…目覚ましを使わないで先に起きて…そ~と抜け出して
やっと解放されたのである。
夜の住宅街は静まり返り、足音一つでさえも響いてしまいそうなくらい静かだった。
それから…太一はGPSを頼りに、徒歩で目的地に向かっていく。
…公共の交通機関周辺なら張られていても仕方ないが、こんな時間帯なら大手を振って
普通の道を歩いても問題ないだろう。
それに、今は電車が動いていない時間帯なので…歩いて向かうしかなかった。
おかげで…彼が一時間ほど歩いて目的地に辿り着いた時にはもうじき夜明けの頃を
迎えていた。
「…って、何でまた病院なんだよっ…! 克哉さん…もしかして、また怪我したのか…っ?」
其処は、克哉が一ヶ月入院していた病院と同じ場所だった。
だが…幸いな事に、以前に忍び込んだ事があるだけに…どこから入り込めば良いのか
熟知していた。
以前と同じく…車椅子用の非常用スロープの処から中に入り、外傷を負った患者が
入院する三階のフロアへと降り立っていく。
後は病室の前に患者のプレートが書かれている筈だから、それを確認して回っていけば
見つかる筈だ。そう思い、名前を確認していった。
「あった…以前と同じ、個室みたいだ…」
4人部屋と違い、個室は…キチンと扉で区切られていた。
まだ早朝である事を気遣って…そうっとドアノブに手を掛けて開いていくと…。
「えっ…?」
そこで、信じられない光景に遭遇する羽目になった。
(何、これ…?)
最初、それが現実である事を認識したくなかった。
だが自分の目の前で…予想もしていなかった展開が繰り広げられて…呆然と
太一は立ち尽くす事になる。
『んっ…ぁ…克哉、さん…ダメ…』
微かに空が宵闇から…太陽を覗かせて、青白く変わっていこうとしている頃。
まだ月はギリギリ…空に浮かび、夜と朝の狭間の気配が色濃い…朝焼けの光景を
背景にして、ベッドの上には二人分のシルエットが重なり合って、小柄な影の人物の方が…
絶え絶えになりながら、甘い声を漏らしていく。
『ダメじゃないだろう…もう、こんなにしている癖に…』
どうやら、もう一人の男の方は…服を捲り上げて胸の周辺を弄っている
らしい。硬くなった突起を弄り上げて、相手を煽り立てている。
(な、んで…克哉さんが病院にまたいるだけで…判らないっていうのに、どうして…
俺よりも先に、他の誰かがいるんだよっ…! しかも何で…そいつと、他の奴と
イチャついているんだよ…! 訳が、判らないっ…!)
その光景を目の当たりにして…胸がバクバク、と憤りによって荒ぶっていく。
この胸を焦がすのは嫉妬であり…怒り、だ。
自分の吐息すらも、そのまま焼け付いて炎となってしまうのではないかと疑うくらいに…
青年は、頭に血を昇らせていた。
(ふざけるなよ…! どれだけ俺が…心配、していたと…!)
昨日の夕方、声を上げて自分の前から姿を消した克哉をどれだけこちらが案じたと
思っているのか。組の人間に見つかって、彼が酷い目に遭っていないか…どれだけ
こちらが生きた心地をしていなかったのか…考えてもいないのだろう。
なのに、幾ら眼鏡を掛けた方の克哉とはいえ…他の人間を連れ込んで、イチャついて
いる場面に踏み込む事になって、太一は本気で…怒りたくなった。
同時に、嫌でも気づかされた。
自分の愛しい克哉さんとコイツは違う存在だと。
そう言い聞かせていたのに…この胸を焼け付かせるような感情は何だというのだ!
嫌でも、思い知らされた。
『自分はどちらの克哉であっても、他の人間になど取られたくない!』
そんな強烈な独占欲を…あちらの方の克哉にも抱いていた事を。
同時に…頭がスウッと冷え込んで…冷酷な思考回路が生まれていく。
他の人間とこれ以上、触れ合わせたくなどなかった。
だから…思いっきり扉を壁に叩きつけて大きな音を立てると同時に…太一は
駆け出して身を隠した。
バァァァァン!!
その瞬間、静寂を湛えていたフロア中にその音が響き渡っていく。
同時に不穏な空気を感じたのだろう。
ナースステーションから看護士が一斉に慌てて飛び出して、一室一室を
見て回って、音の出所はどこなのかを確認し始めていく。
(これで…これ以上、アイツとイチャついている事なんて…出来なくなったよね…)
それをいい気味だ、と思って愉快だった。
そうやって誘導すれば、克哉の部屋に看護士が踏み込んで確認を取っていくのも
時間の問題だろう。
そのまま太一は…非常口の方に駆け込んで、音を極力立てないように気をつけながら
素早くスロープを下っていく。
頭の芯はどこまでも冷えている。
…今までは、決して克哉の前では解放するまいと決めていた冷たい衝動。
それを…もう、今の太一には抑える事など出来なくなってしまっていた。
(…俺の気持ちを、思い知らせてあげるよ…! あんたが俺に…してくれたようになっ…!)
感情のタガが、今見た光景によってブチブチと壊れて外されていくのが判る。
それでも…もう、歯止めなど効かなくなってしまっている。
他の誰かにこのまま…眼鏡を掛けた方の克哉でも、取られる事など…自分には許せない!
もうその…自分の奥深くの欲望に、衝動に…青年は気づいてしまったのだから。
そうして彼は…その為の準備に奔走していく。
どこにいても、克哉が携帯を手放さない限りは…自分は彼がどこにいるかは
追えるのだから…。
己の本心に気づいたその時、彼の中にいた…『獣』は解放されたのだった―
―克哉の事件が起こる少し前、彼はささやかな贈り物をしていた。
それは営業の成績が良くなるように…と願いを込めた緑の石が嵌められた携帯のストラップ
だったけれど…それが実はGPSで探知が可能だった発信機だった事を恐らく克哉は
気づいていないだろう。
…自分が同性の克哉に対して、本気になっていた事を自覚した時…自分の実家の
ゴタゴタに万が一彼が巻き込まれてしまった時の保険として渡しておいた物だった。
不本意ながら、男孫が自分一人しかいない為に…五十嵐組の後継者の筆頭に
祭り上げられた太一の身辺は、実家にいる間…お世辞にも穏やかとは言えなかったからだ。
…それがこんな形で役に立つなど、贈った時は予想もしていなかったけれど…。
(やっと…家を抜け出せた…)
嘆息しながら、夜中の3時半くらいに本多の家をどうにか抜け出して…太一は
自分の携帯のGPS機能を開いていく。
あれから、どうにか…追っ手を巻いて無事に二人で本多の家へと辿り着けたまでは
良かったが…元々人情に熱い(お節介とも言うが)本多は、必死になって…何故このように
なったのかを尋ねて来てこちらを心配して来たのだ。
幸いにも、「若」と呼び掛けられた事は耳に届いていなかったみたいだから…どうにか適当な
事を言って言い逃れは出来たが、その間…生きた心地がしなかったのは事実だった。
抜け出そうにも、心配され続けて…一旦、一緒に就寝するしかない状況に追い込まれたので
逸る気持ちを抑えてどうにか眠りにつき…目覚ましを使わないで先に起きて…そ~と抜け出して
やっと解放されたのである。
夜の住宅街は静まり返り、足音一つでさえも響いてしまいそうなくらい静かだった。
それから…太一はGPSを頼りに、徒歩で目的地に向かっていく。
…公共の交通機関周辺なら張られていても仕方ないが、こんな時間帯なら大手を振って
普通の道を歩いても問題ないだろう。
それに、今は電車が動いていない時間帯なので…歩いて向かうしかなかった。
おかげで…彼が一時間ほど歩いて目的地に辿り着いた時にはもうじき夜明けの頃を
迎えていた。
「…って、何でまた病院なんだよっ…! 克哉さん…もしかして、また怪我したのか…っ?」
其処は、克哉が一ヶ月入院していた病院と同じ場所だった。
だが…幸いな事に、以前に忍び込んだ事があるだけに…どこから入り込めば良いのか
熟知していた。
以前と同じく…車椅子用の非常用スロープの処から中に入り、外傷を負った患者が
入院する三階のフロアへと降り立っていく。
後は病室の前に患者のプレートが書かれている筈だから、それを確認して回っていけば
見つかる筈だ。そう思い、名前を確認していった。
「あった…以前と同じ、個室みたいだ…」
4人部屋と違い、個室は…キチンと扉で区切られていた。
まだ早朝である事を気遣って…そうっとドアノブに手を掛けて開いていくと…。
「えっ…?」
そこで、信じられない光景に遭遇する羽目になった。
(何、これ…?)
最初、それが現実である事を認識したくなかった。
だが自分の目の前で…予想もしていなかった展開が繰り広げられて…呆然と
太一は立ち尽くす事になる。
『んっ…ぁ…克哉、さん…ダメ…』
微かに空が宵闇から…太陽を覗かせて、青白く変わっていこうとしている頃。
まだ月はギリギリ…空に浮かび、夜と朝の狭間の気配が色濃い…朝焼けの光景を
背景にして、ベッドの上には二人分のシルエットが重なり合って、小柄な影の人物の方が…
絶え絶えになりながら、甘い声を漏らしていく。
『ダメじゃないだろう…もう、こんなにしている癖に…』
どうやら、もう一人の男の方は…服を捲り上げて胸の周辺を弄っている
らしい。硬くなった突起を弄り上げて、相手を煽り立てている。
(な、んで…克哉さんが病院にまたいるだけで…判らないっていうのに、どうして…
俺よりも先に、他の誰かがいるんだよっ…! しかも何で…そいつと、他の奴と
イチャついているんだよ…! 訳が、判らないっ…!)
その光景を目の当たりにして…胸がバクバク、と憤りによって荒ぶっていく。
この胸を焦がすのは嫉妬であり…怒り、だ。
自分の吐息すらも、そのまま焼け付いて炎となってしまうのではないかと疑うくらいに…
青年は、頭に血を昇らせていた。
(ふざけるなよ…! どれだけ俺が…心配、していたと…!)
昨日の夕方、声を上げて自分の前から姿を消した克哉をどれだけこちらが案じたと
思っているのか。組の人間に見つかって、彼が酷い目に遭っていないか…どれだけ
こちらが生きた心地をしていなかったのか…考えてもいないのだろう。
なのに、幾ら眼鏡を掛けた方の克哉とはいえ…他の人間を連れ込んで、イチャついて
いる場面に踏み込む事になって、太一は本気で…怒りたくなった。
同時に、嫌でも気づかされた。
自分の愛しい克哉さんとコイツは違う存在だと。
そう言い聞かせていたのに…この胸を焼け付かせるような感情は何だというのだ!
嫌でも、思い知らされた。
『自分はどちらの克哉であっても、他の人間になど取られたくない!』
そんな強烈な独占欲を…あちらの方の克哉にも抱いていた事を。
同時に…頭がスウッと冷え込んで…冷酷な思考回路が生まれていく。
他の人間とこれ以上、触れ合わせたくなどなかった。
だから…思いっきり扉を壁に叩きつけて大きな音を立てると同時に…太一は
駆け出して身を隠した。
バァァァァン!!
その瞬間、静寂を湛えていたフロア中にその音が響き渡っていく。
同時に不穏な空気を感じたのだろう。
ナースステーションから看護士が一斉に慌てて飛び出して、一室一室を
見て回って、音の出所はどこなのかを確認し始めていく。
(これで…これ以上、アイツとイチャついている事なんて…出来なくなったよね…)
それをいい気味だ、と思って愉快だった。
そうやって誘導すれば、克哉の部屋に看護士が踏み込んで確認を取っていくのも
時間の問題だろう。
そのまま太一は…非常口の方に駆け込んで、音を極力立てないように気をつけながら
素早くスロープを下っていく。
頭の芯はどこまでも冷えている。
…今までは、決して克哉の前では解放するまいと決めていた冷たい衝動。
それを…もう、今の太一には抑える事など出来なくなってしまっていた。
(…俺の気持ちを、思い知らせてあげるよ…! あんたが俺に…してくれたようになっ…!)
感情のタガが、今見た光景によってブチブチと壊れて外されていくのが判る。
それでも…もう、歯止めなど効かなくなってしまっている。
他の誰かにこのまま…眼鏡を掛けた方の克哉でも、取られる事など…自分には許せない!
もうその…自分の奥深くの欲望に、衝動に…青年は気づいてしまったのだから。
そうして彼は…その為の準備に奔走していく。
どこにいても、克哉が携帯を手放さない限りは…自分は彼がどこにいるかは
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HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
鬼畜眼鏡にハマり込みました。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
当ブログサイトへのリンク方法
URL=http://yukio0201.blog.shinobi.jp/
リンクは同ジャンルの方はフリーです。気軽に切り貼りどうぞ。
…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
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