鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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『御堂孝典』
御堂孝典は、夜のオフィス街を愛車で走り抜けていた。
夕暮れは裏道を通ってもかなり混雑しているが…午後七時くらいになれば
一通り交通状態は落ち着いてスイスイと抜けられるようになっていく。
都内在住で、自家用車を持って仕事でも移動する機会が多い御堂にとっては…
渋滞の類は苛立たせる最たるものだが、ここまで遅くなれば話は別だ。
(今日は…話し合いがやや長引いたのが、幸いしたかな…)
本日最後にアポを取っていた会社の役員は、向こう側のスケジュールが押して
こちらの待ち時間が長かったせいか…その引け目を逆手に、MGN側にとって
有利な条件で契約を勝ち取れる結果となった。
待たされた時間もこちらは持っていた書類に目を通して無駄がないように過ごして
いたので…御堂にとって待機時間は左程、苦痛ではなかった。
(これから直帰するとして…本日の夕食はどうするかな…)
一人暮らしの御堂にとって、特に彼のように忙殺されている事が多い人物に
とっては休日以外に自炊をする余裕などない。
結果、どこの店で何を食べるかが…平日の夕食の悩みとなる訳だ。
本日は週末の夜だし、ワインの類を少々飲みすぎても問題ないな…という考えが
ふと過ぎった時、彼の行き先は決まっていた。
「良し。あのワインバーに向かおうか…」
自分の大学時代の友人たちと集まるワインバーは店の雰囲気も良いし…
何より少々マイナーな銘柄や、希少な物でも集めて…こちらの希望に出来るだけ
沿おうとしてくれる姿勢に好感を持って、良く通っていた。
その店に向かおうと、公園の裏側の通りに入って…車を走らせていた時。
「なっ…!」
いきなり、公園の中から人影が飛び出して来て…大慌てでハンドルを切っていく。
エリート街道を突っ走る御堂にとっては、人身事故など冗談ではない。
万が一相手を轢き殺したりしたら、一生消えない汚点となって己の人生に刻まれてしまう。
それを拒むかのように飛び出してきた人物に当たらないように車体を移動させて…
公園の植え込みの壁に前面が突っ込んでいく轟音が周辺に響き渡った。
(ちっ…これは後で修理に出さないと傷が目立つな…)
出していたスピードがそんなに速くなかった事もあって、衝突の際の衝撃もあまり
強烈なものではなかった。
エアバックが作動しなかった事を見ても、ガラスが割れていない事から見ても…
その辺は間違いないが、確実に愛車の前面の部分はひしゃげてしまっているだろう。
ドイツ製のセダン。外車であるだけに…修理代はそれなりに嵩む事は避けられないだろう。
だがそんな現実的な算段よりも、確実に相手を避けられたのかが不安だった。
車から出て、今…ぶつかりそうになった人物に声を掛けていく。
「君っ! 大丈夫か…っ!」
人影はどうやら、高校生くらいの少年のようだった。
派手な金色の髪が夜の闇の中でも静かに浮かび上がり、顔の作りもかなり派手な
ものである事が判る。
赤いパーカーが…この少年には良く似合っていたが…彼は身体を震わせながら
目を見開いて、こちらを凝視してきた。
「あっ…は、はい! 僕は大丈夫…ですっ! けど、克哉さんが…克哉さんがっ…!」
少年はかなり混乱しているようだった。
その視線もどこか落ち着きが無いし、声も身体も激しく震えている。
そしていきなり、余裕のない表情でこちらに縋り付かれて時には…御堂もどうして
良いのか判らなくなっていった。
「君、頼むから落ち着け…怪我とか、本当にないのか…?」
内心の苛立ちを押さえながら問いかけていくと、少年はコクンと頷いて…そして
言葉を続けていった。
「はい…ちょっと打ち身とかすり傷が出来たくらいです。…あの、初対面の方にこんな
事を頼むのはどうかって判っているんですが…お願いです。公園で僕の大事な人が
大怪我をして…かなり苦しそうにしているんです。近くの病院に、大急ぎで搬送して
貰えますか…? 図々しいお願いだって判っているんですが…」
「…どれくらいの容態なんだ?」
「僕には詳しくは判りませんですが…アチコチに怪我していて、胸の辺りを押さえて
本当に苦しそうにしています…」
「…判った。それじゃあ…見た上で判断させて貰おう…」
正直、厄介ごとに巻き込まれて嘆息したい気持ちの方が強かった。
だが…こちらにはこの少年をもう少しで轢きそうになってしまったという負い目があるので
この申し出を突っぱねる事は、この状況ではやり辛かった。
例え相手側が飛び出してきた事が原因でも、事故が発生した場合は…轢かれた方が
被害者となってしまうのだ。
変に恨まれない為にも…加害者として訴えられるのを避ける為にも…出来るだけこの
少年に恩を売っておいた方が良い。
そう計算して…彼に案内されるままに公園の奥に進んでいくと…。
「えっ…?」
信じられないものを見た想いがした。
其処に倒れていた人物は、自分の良く知っている奴だったからだ。
さっき、克哉さん…とこの少年が言っていた時、単なる同名だろうと思って気にして
いなかったが…まさか、佐伯克哉本人であった事など予想もしていなかった。
「…かなり酷い状態、だな…」
「はい…」
途方に暮れた顔をしながら、少年は項垂れていく。
佐伯克哉の状態は思ったよりも酷い状態だった。
どこかでケンカか、暴力沙汰にでも巻き込まれたのか…スーツのあちこちが切れて
血とかホコリで薄汚れてしまっている。
何より…心臓発作でも起こしているのではないか、と疑うくらいに今の彼は苦しそうで
尋常ではない状態なのは伝わって来ていた。
「…君、手を貸してくれ。私一人だけでは…骨が折れる」
「はい! 当然です。僕の手で良かったら幾らでも使ってやって下さい。克哉さんを
…こんな状態で置いてはいけないですからっ!」
(この少年は…佐伯にとって、何なんだ…?」
友人、というには年が離れすぎているような気がする。
それに大事な人、と言っていたのも何か引っ掛かっていた。
一体どのような間柄なのか…つい邪推しそうになったが、思考回路を一旦止めて
彼の介抱作業を始めていく。
余計な事を考えるのは後だ。まずは彼を病院に搬送するのが先だと判断した。
そして…名前も知らない少年と二人で協力して、御堂は自分の愛車の後部座席に
佐伯克哉をどうにか押し込めて…助手席に少年を乗せて、この付近にある病院へと
車を走らせていく。
(この辺りで一番近い病院は…彼が入院していた、あの大病院だな…)
そうして、病院までの道筋を思い起こして…夜の街を通り過ぎていく。
その間…ただの一度も、佐伯克哉の意識は…目覚めないままだった―
御堂孝典は、夜のオフィス街を愛車で走り抜けていた。
夕暮れは裏道を通ってもかなり混雑しているが…午後七時くらいになれば
一通り交通状態は落ち着いてスイスイと抜けられるようになっていく。
都内在住で、自家用車を持って仕事でも移動する機会が多い御堂にとっては…
渋滞の類は苛立たせる最たるものだが、ここまで遅くなれば話は別だ。
(今日は…話し合いがやや長引いたのが、幸いしたかな…)
本日最後にアポを取っていた会社の役員は、向こう側のスケジュールが押して
こちらの待ち時間が長かったせいか…その引け目を逆手に、MGN側にとって
有利な条件で契約を勝ち取れる結果となった。
待たされた時間もこちらは持っていた書類に目を通して無駄がないように過ごして
いたので…御堂にとって待機時間は左程、苦痛ではなかった。
(これから直帰するとして…本日の夕食はどうするかな…)
一人暮らしの御堂にとって、特に彼のように忙殺されている事が多い人物に
とっては休日以外に自炊をする余裕などない。
結果、どこの店で何を食べるかが…平日の夕食の悩みとなる訳だ。
本日は週末の夜だし、ワインの類を少々飲みすぎても問題ないな…という考えが
ふと過ぎった時、彼の行き先は決まっていた。
「良し。あのワインバーに向かおうか…」
自分の大学時代の友人たちと集まるワインバーは店の雰囲気も良いし…
何より少々マイナーな銘柄や、希少な物でも集めて…こちらの希望に出来るだけ
沿おうとしてくれる姿勢に好感を持って、良く通っていた。
その店に向かおうと、公園の裏側の通りに入って…車を走らせていた時。
「なっ…!」
いきなり、公園の中から人影が飛び出して来て…大慌てでハンドルを切っていく。
エリート街道を突っ走る御堂にとっては、人身事故など冗談ではない。
万が一相手を轢き殺したりしたら、一生消えない汚点となって己の人生に刻まれてしまう。
それを拒むかのように飛び出してきた人物に当たらないように車体を移動させて…
公園の植え込みの壁に前面が突っ込んでいく轟音が周辺に響き渡った。
(ちっ…これは後で修理に出さないと傷が目立つな…)
出していたスピードがそんなに速くなかった事もあって、衝突の際の衝撃もあまり
強烈なものではなかった。
エアバックが作動しなかった事を見ても、ガラスが割れていない事から見ても…
その辺は間違いないが、確実に愛車の前面の部分はひしゃげてしまっているだろう。
ドイツ製のセダン。外車であるだけに…修理代はそれなりに嵩む事は避けられないだろう。
だがそんな現実的な算段よりも、確実に相手を避けられたのかが不安だった。
車から出て、今…ぶつかりそうになった人物に声を掛けていく。
「君っ! 大丈夫か…っ!」
人影はどうやら、高校生くらいの少年のようだった。
派手な金色の髪が夜の闇の中でも静かに浮かび上がり、顔の作りもかなり派手な
ものである事が判る。
赤いパーカーが…この少年には良く似合っていたが…彼は身体を震わせながら
目を見開いて、こちらを凝視してきた。
「あっ…は、はい! 僕は大丈夫…ですっ! けど、克哉さんが…克哉さんがっ…!」
少年はかなり混乱しているようだった。
その視線もどこか落ち着きが無いし、声も身体も激しく震えている。
そしていきなり、余裕のない表情でこちらに縋り付かれて時には…御堂もどうして
良いのか判らなくなっていった。
「君、頼むから落ち着け…怪我とか、本当にないのか…?」
内心の苛立ちを押さえながら問いかけていくと、少年はコクンと頷いて…そして
言葉を続けていった。
「はい…ちょっと打ち身とかすり傷が出来たくらいです。…あの、初対面の方にこんな
事を頼むのはどうかって判っているんですが…お願いです。公園で僕の大事な人が
大怪我をして…かなり苦しそうにしているんです。近くの病院に、大急ぎで搬送して
貰えますか…? 図々しいお願いだって判っているんですが…」
「…どれくらいの容態なんだ?」
「僕には詳しくは判りませんですが…アチコチに怪我していて、胸の辺りを押さえて
本当に苦しそうにしています…」
「…判った。それじゃあ…見た上で判断させて貰おう…」
正直、厄介ごとに巻き込まれて嘆息したい気持ちの方が強かった。
だが…こちらにはこの少年をもう少しで轢きそうになってしまったという負い目があるので
この申し出を突っぱねる事は、この状況ではやり辛かった。
例え相手側が飛び出してきた事が原因でも、事故が発生した場合は…轢かれた方が
被害者となってしまうのだ。
変に恨まれない為にも…加害者として訴えられるのを避ける為にも…出来るだけこの
少年に恩を売っておいた方が良い。
そう計算して…彼に案内されるままに公園の奥に進んでいくと…。
「えっ…?」
信じられないものを見た想いがした。
其処に倒れていた人物は、自分の良く知っている奴だったからだ。
さっき、克哉さん…とこの少年が言っていた時、単なる同名だろうと思って気にして
いなかったが…まさか、佐伯克哉本人であった事など予想もしていなかった。
「…かなり酷い状態、だな…」
「はい…」
途方に暮れた顔をしながら、少年は項垂れていく。
佐伯克哉の状態は思ったよりも酷い状態だった。
どこかでケンカか、暴力沙汰にでも巻き込まれたのか…スーツのあちこちが切れて
血とかホコリで薄汚れてしまっている。
何より…心臓発作でも起こしているのではないか、と疑うくらいに今の彼は苦しそうで
尋常ではない状態なのは伝わって来ていた。
「…君、手を貸してくれ。私一人だけでは…骨が折れる」
「はい! 当然です。僕の手で良かったら幾らでも使ってやって下さい。克哉さんを
…こんな状態で置いてはいけないですからっ!」
(この少年は…佐伯にとって、何なんだ…?」
友人、というには年が離れすぎているような気がする。
それに大事な人、と言っていたのも何か引っ掛かっていた。
一体どのような間柄なのか…つい邪推しそうになったが、思考回路を一旦止めて
彼の介抱作業を始めていく。
余計な事を考えるのは後だ。まずは彼を病院に搬送するのが先だと判断した。
そして…名前も知らない少年と二人で協力して、御堂は自分の愛車の後部座席に
佐伯克哉をどうにか押し込めて…助手席に少年を乗せて、この付近にある病院へと
車を走らせていく。
(この辺りで一番近い病院は…彼が入院していた、あの大病院だな…)
そうして、病院までの道筋を思い起こして…夜の街を通り過ぎていく。
その間…ただの一度も、佐伯克哉の意識は…目覚めないままだった―
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女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
鬼畜眼鏡にハマり込みました。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
当ブログサイトへのリンク方法
URL=http://yukio0201.blog.shinobi.jp/
リンクは同ジャンルの方はフリーです。気軽に切り貼りどうぞ。
…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
当ブログサイトへのリンク方法
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