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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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―御堂は、克哉の姿を見たその日…どうしても眠ることが出来なかった。

 週末の夜だというのに、どれだけ飲んでも一向に酔いが訪れる気配すらなかった。
 以前住んでいたマンションよりも、新しい部屋は一回り狭い作りになっていたが
元より御堂一人で暮らしているので、それでも殆ど支障がなかった。
 特に克哉を連想させる家具、ベッド、ソファ、机…彼が長くいた部屋に置かれていた
物は全て処分してあったので、この部屋に越して来た時の御堂の荷物は少なくなっていた。
 上品な内装のマンションの一室は、エリートと呼ばれてきた御堂の性格を
現しているかのように、ハウスキーパーを定期的に呼んで常に整えられている。
 その室内のソファの上に腰掛けながら、御堂は一人…飲み続けていた。
 最初に開けたそこそこの値段のワイン一本では、今夜は酔えなかったので…
結局、とっておきの銘柄のを開封したにも関わらず、ダメだった。

(せっかくの高いワインを無駄にした気分だな…)

 今朝の出来事に混乱してしまっている。
 自分の全てを奪いつくした男との突然の再会。
 言葉を交わした訳ではない。
 ただ、顔を見ただけだ。
 それだけでこんなに動揺している自分がいた。

「…何であいつが、あんな時間にあの駅にいたんだ…?」

 幾ら考えても、その答えが浮かばない。
 彼が今でも自分の後釜について、MGNの部長職についているのならば…
あの時間帯に、あの通路にいる訳がないのだ。
 
「…まさか、私の姿を見に…何て理由じゃあないだろうな…」

 自嘲的に笑みながら呟いて、まさか…と自分で否定していく。
 だがどうしても、それ以外に当てはまる答えが存在しなかった。
 自分にあんな事をした男が、どうして?
 今の御堂は、惨めな状態から立ち上がって…かつての自分の姿をある程度は
取り戻していた。
 そんな御堂を見ても、あの男にどんなメリットがあるというのだろうか…?

―止めろ、止めてくれぇ…!

 上等のワインをまた一杯、喉に流し込んでいる間に…暗い記憶がどうしても
頭の中を過ぎっていく。
 この一年、どれだけ頭から振り払おうとしても…薄らぐ事がない記憶。
 あの男に乗馬鞭で打たれ…淫具を内部に埋め込まれてジワジワと追い上げられ、
拘束具で両手の自由を奪われた状態で犯され続けた過去。
 克哉を見た事で、思い出したくもない事が脳裏を過ぎって…御堂は苦しげに
顔を顰めていった。

(思い出したくない…!)

 脳内に喚起されると同時にブルリ…と身体の奥に熱が灯っていく。
 知りたくない。自覚したくない…。
 あんな酷いことをされ続けたのに…どうして思い出す度に、この身体は熱を
帯びて発情などしてしまうのか…。

「はっ…あっ…」

 酒の酔いも手伝って、ズボンの下で欲望が頭をもたげていった。
 無意識の内に…其処に手を伸ばし、自ら触れていく。

「こ、んな…」

 顔を赤くして、荒い吐息を零している御堂の表情は艶があった。
 ジッパーを下ろして、その中に手を忍び入れていくと…早くもギチギチに
張り詰めている己の性器があった。
 それを握り込み、幹をしっかりと握り込みながら己の先端の割れ目に指を
這わせていく。

―あんたは本当に淫乱だな。こんなに腰を振って…俺のモノを強請っている
みたいだぞ…?

 頭の中の、過去の克哉が…嘲るように告げていく。
 悔しかった、それでも…身体は反応してしまう。
 こんなに惨めな自分を、見たくなかった。
 だからあいつのことなんて思い出したくなかったのに…たった一度、顔を
見ただけで自分の心はこんなに大きくさざめき、揺れ動かされてしまっている。

「どう、して…!」

 御堂は悔しげに呟いていった。
 その声は、半分嬌声に近くなりつつある。
 夢中で追い上げていく。快感が迫る。
 けれど何度もあの男に貫かれた際奥が…その直接的な快楽だけでは足りないと
強請るように蠕動を繰り返していった。
 こんな処が疼くなんて、知りたくなかった。
 浅ましい自分の姿を、自覚なんてしたくなかった。
 何度も何度も、抱かれて貫かれて貪られた。
 それは…自分にとって屈辱に繋がる記憶の筈なのに…何故!

―そうだな…もっと早く、あんたの事を好きだって…気づけば良かった…

 その瞬間、最後に佐伯克哉が残したあの言葉が思い出されていく。

「あっ…!」

 不意に、涙すら出そうになってしまった。
 そうだ…あの一言を聞いたから…自分は、きっと…!

 夢中で性器を扱き上げて、御堂はただ…快楽だけを追い続けていく。
 こんなに惑っている自分を一時でも忘れたかった。
 だから頭が真っ白になるような感覚を求めて…無我夢中で、己の陰茎を扱き上げて
自らを慰めていった。
 
(あんな一言を最後に残して…消えた癖に、君は…卑怯だ…!)
 
 あの言葉がなかったら、自分はきっと心底…克哉を憎むことが出来た。
 自分の築き上げた全てを壊して奪い取った憎い男として見れたのに。
 最後の告白の時の優しい克哉の顔。
 さよなら、と残した寂しげな背中。
 それが…御堂の中に鮮烈に刻み付けられていて、憎かった筈の男を…
気づかない内に違うものに変質させてしまっていた。

―あんたの事、好きだって…!

「言うなっ…!」

 あの告白が、消えてくれない。
 気づけば御堂は…涙をうっすらと浮かべていた。
 知りたくなかった。見たくなかった。
 自分の心の本音を…!

「はぁぁっ…!」

 足りない、と心のどこかで訴える心があった。
 あの男が欲しい、と。
 克哉が与える快楽を求めている貪婪な心を自覚して…御堂は、肩で呼吸を
付き続けていった。

「佐、伯…」

 無意識の内に、その唇から悩ましい声と共にその名が零れ落ちていった。
 手の中には大量の白濁がこびり付いている。
 かなりの量だった。
 これは…こういう行為が久しぶりだったという理由だけではない。

―自分はあの男を思い出して、激しく興奮していたからだ…

「はっ…ははっ…知りたく、なかったな…」

 けれど、あの男の顔を見て…御堂は嫌でも気づかざるを得なかった。
 どうしてこんなに、一目見ただけで心がざわめいているのか。
 身体が熱くなってしまっているのか。
 その答えはたった一つしか存在しない…。

「そうか…私は、君の事が…」

 出来れば、気づかないままでいたかった真実。
 けれどもう出会ってしまった以上…目を逸らす事が出来ない。
 自分の心のどこかに、あの男を求めて叫ぶ部分がある。

―もう一度、会いたかったと…!

 最後に見た、あの優しく切ない顔で…自分を好きだと告げた、佐伯克哉に
会いたかった。
 そう望んでいる心が、紛れもなく御堂の中に存在していたのだ…。

「好きに、なっていたんだな…」

 どこか疲れたように、やっと気づけた答えを呟いていく。
 彼に、会いたい。
 あの…寂しげな背中をしながら去っていった、自分に慈悲を見せた佐伯克哉に。

 御堂の心の中で、あの日の去っていく克哉の幻が浮かんでいく。
 あの日…自分は解放されたばかりで、まともに身体を動かすことも声を発する
ことも出来ないでいた。
 だから追いかけられなかった。

(もし、あの日…私がすぐに身体を動かすことが出来ていたのならば…)

 きっと必死になって追いかけて、彼が告げた言葉の真意を確かめようとしただろう。
 あれが御堂を惑わす流言に過ぎなかったのか、本心だったのか。
 それを、今…知りたかった。

「会いたい…」

 知らない間に、その言葉は零れ落ちていた。
 快楽を極めて、ふと緩んだ状態だから出てしまったかも知れない一言。
 それを浮かべながら…御堂は一時のまどろみの中に落ちていく。

―脳裏に浮かんだのは、今朝の遠くで切なげな顔を浮かべている克哉の
姿であった…

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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