鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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人の心とは複雑で、常に大きな矛盾を抱えているものだ。
相反する感情が、時に同じ強さを持って反発し…心の中でせめぎあう。
愛と憎しみは特に、相手への関心が強いから生まれる。
他者への強い関心はプラスの方向に転じれば愛と呼ばれ。
マイナスの感情が伴えば憎しみと名をつけられるようになる。
なら、今…この胸に巣食う感情はどちらなのだろうか。
一人の男へと抱く想いは、愛か憎しみか。
それとも別の名前で呼ばれる気持ちなのか…未だに彼には
判らないままだ。
ただ、一つだけはっきりと言えるのは…。
その答えが知りたくて、自分は…あの男に会いたいと願っている事だった―
―季節はもうすぐ、冬を迎えようとしていた。
いつもと変わらない、都内近郊の駅の光景。
多くの人間が朝から行き交い、一つの大きな波のようになって流れていく。
御堂孝典は例の駅の中で、電車で通勤する日は佐伯克哉の姿を
ずっと探し続けていた。
だが、そんな日々を何週間も続けても…あの日以降、彼の姿を見かけることは
一度としてなかった。
「佐伯…」
知らない間に、探している男の名前を呟いていた。
朝の時間は、貴重だ。
物の本によれば活力が満ちている朝の時間は…夜の2~3倍は生産能力が
勝っているという。
そんな時間を割いてまであの男を探して何の意味があるというのか?
(私をあんな目に遭わせた男に…もう一度会いたいなど、一体何を考えている
んだろうな…)
自分でも、ついそんな自嘲的な想いに囚われてしまっていた。
それでも…逢えない期間、彼に会いたいと願う気持ちは募っていく。
静かに降り注ぐ雪が、いつしか厚い層を成すように…御堂自身が気づかない内に
彼への気持ちは、日増しに増していった。
(この辺りでつい足を止めて…あいつの姿を探すようになって、どれくらい
経ったのだろうか…?)
決して交差する筈のない、お互いの通勤圏内。
それを押してまで、御堂が彼に声を掛けるまであの男は恐らく朝早くから
この駅に足を向けて…御堂を遠くから眺めていた。
その行為の意味を、あいつの口からはっきりと聞きたかった。
そうしなければ、このすっきりしない気持ちは決して晴れないだろう。
何故、離れてもあの男はここまでこちらの気持ちを掻き乱すのか。
答えはもう、自分の中で殆ど出てしまっている。
…ただ、御堂自身が認めたくないだけだった。
「…ここまで待っても逢えないなら、これ以上は無駄だな。そろそろ…」
一応、御堂の中でここで立って克哉を待つ時間は15分…と決めてあった。
それくらいの時間なら、朝…喫茶店でモーニングセットを頼んで食べ終わるまで
の時間の範囲で済むからだ。
リミットはもう訪れていたので…踵を返して、その場を立ち去ろうとした瞬間。
信じられない声の主に遭遇した。
「…御堂さん?」
「っ…!」
あまりに懐かしい声だったから、声を掛けられた御堂自身が驚いた。
慌ててそちらの方に振り返ると…其処にはMGNに在籍していた時代に自分の
直属の部下であった藤田が立っていた。
そういえば藤田の自宅からMGNに行く途中に、確か彼も乗り換えでこの
駅を利用していたことを思い出した。
…MGNを強制的に退社させられてすでに一年以上が経過していたので
すっかりとその事は失念していたが。
「…うわっ! 本当に御堂さんだ! まさか…こんな処に会えるなんて思って
いませんでした…! お久しぶりです!元気でしたか?」
「あ、あぁ…君こそ元気そうで何よりだった。…君はまだMGNにいるのか?」
「御堂さんこそ今はどちらにおられるんですか? えぇ、こちらはまだMGNに
在籍して…御堂さんの後釜の佐伯部長の補佐についています」
「っ…! そうか…今の佐伯君の補佐は、君なのか…」
良く考えたら、あの男は自分の就いていた役職をそのまま奪ったのだ。
そうなれば…そのまま、藤田があの男の補佐役に就くのはむしろ当然だった。
それでも、佐伯という名前を聞くだけで自分の心は大きくざわめいてしまっている。
ドクンドクンドクン…。
自分のかつての部下と話しているだけなのに、どうしてこんなに緊張しなければ
ならないのだろう。
知らず鼓動は早鐘を打ち、うっすらと汗ばんで来てしまいそうなぐらいだった。
「はい…佐伯部長の下で、働かせて頂いていま、す…」
…瞬間、藤田の顔が著しく曇っていった。
何か悩みがあるような、そんな険しい表情を浮かべたのと…いきなり声のトーンが
下がったことに御堂は気づいていった。
「…佐伯の下で働いていて、何か問題でも起こったのか?」
「い、いえっ! そんな事ないです…! 気のせいですよ!」
そういって無理に笑顔を使って明るそうに振る舞ったが、どうしても不自然な
印象を拭えなかった。
御堂はそれに酷く引っ掛かるものを覚えた。
…今、佐伯克哉がどうしているのか。
まず…今の彼は、それを知りたいと思った。
ここで現れた藤田はまさに、その絶好の機会そのものでしかない。
「…藤田君。何か悩みがあるのなら…とりあえず口に出してみたらどうだ?
あまり重要な問題を人に吹聴するのは問題があるが、抱え込んでしまっていては…
精神の衛生上、非常に悪いと思う。すでに私は他社の人間であるし…一応は
君の直属の上司でもあった。かつての部下が悩んでいるのなら…無視は
出来ない。良かったら話して貰えるか…?」
MGNでの部長職時代に、こんなに自分の部下に対して親身になって
相談に乗ってやろうという姿勢を御堂が見せた事など一回もなかった。
自分でも良く言うものだ…と思ったぐらいだ。
だが、それでも御堂は必死だったのだ。
ほんの僅かでもあの男の情報を得たいと思った。
そしてその熱意は…藤田の方にも伝わっていく。
密かに憧れていた尊敬する上司。
その人物が真摯な表情を浮かべながら自分を案じてくれたのなら…どうして
申し出を撥ねつける事が出来ようか…。
「…本当なら、御堂部長に…このような事を漏らすのは…補佐、失格でしょうね…。
けど、俺には…どうしたら良いのか…判らなくて…」
上司の例の噂の件は、ここ半月ばかり藤田を深く悩ませていた。
本来は他社の人間になった御堂に漏らすべき問題じゃない事も承知している。
だが一人で抱えるのは正直…重すぎて、苦しすぎて…まだ歳若い彼には
辛いものがあったのだ。
暫くそれでも迷い続けていた。
だが、ようやく重い口を彼は開いていく。
―そして御堂にとって信じたくない衝撃的な内容がかつての部下の
口から静かに明かされたのだった―
相反する感情が、時に同じ強さを持って反発し…心の中でせめぎあう。
愛と憎しみは特に、相手への関心が強いから生まれる。
他者への強い関心はプラスの方向に転じれば愛と呼ばれ。
マイナスの感情が伴えば憎しみと名をつけられるようになる。
なら、今…この胸に巣食う感情はどちらなのだろうか。
一人の男へと抱く想いは、愛か憎しみか。
それとも別の名前で呼ばれる気持ちなのか…未だに彼には
判らないままだ。
ただ、一つだけはっきりと言えるのは…。
その答えが知りたくて、自分は…あの男に会いたいと願っている事だった―
―季節はもうすぐ、冬を迎えようとしていた。
いつもと変わらない、都内近郊の駅の光景。
多くの人間が朝から行き交い、一つの大きな波のようになって流れていく。
御堂孝典は例の駅の中で、電車で通勤する日は佐伯克哉の姿を
ずっと探し続けていた。
だが、そんな日々を何週間も続けても…あの日以降、彼の姿を見かけることは
一度としてなかった。
「佐伯…」
知らない間に、探している男の名前を呟いていた。
朝の時間は、貴重だ。
物の本によれば活力が満ちている朝の時間は…夜の2~3倍は生産能力が
勝っているという。
そんな時間を割いてまであの男を探して何の意味があるというのか?
(私をあんな目に遭わせた男に…もう一度会いたいなど、一体何を考えている
んだろうな…)
自分でも、ついそんな自嘲的な想いに囚われてしまっていた。
それでも…逢えない期間、彼に会いたいと願う気持ちは募っていく。
静かに降り注ぐ雪が、いつしか厚い層を成すように…御堂自身が気づかない内に
彼への気持ちは、日増しに増していった。
(この辺りでつい足を止めて…あいつの姿を探すようになって、どれくらい
経ったのだろうか…?)
決して交差する筈のない、お互いの通勤圏内。
それを押してまで、御堂が彼に声を掛けるまであの男は恐らく朝早くから
この駅に足を向けて…御堂を遠くから眺めていた。
その行為の意味を、あいつの口からはっきりと聞きたかった。
そうしなければ、このすっきりしない気持ちは決して晴れないだろう。
何故、離れてもあの男はここまでこちらの気持ちを掻き乱すのか。
答えはもう、自分の中で殆ど出てしまっている。
…ただ、御堂自身が認めたくないだけだった。
「…ここまで待っても逢えないなら、これ以上は無駄だな。そろそろ…」
一応、御堂の中でここで立って克哉を待つ時間は15分…と決めてあった。
それくらいの時間なら、朝…喫茶店でモーニングセットを頼んで食べ終わるまで
の時間の範囲で済むからだ。
リミットはもう訪れていたので…踵を返して、その場を立ち去ろうとした瞬間。
信じられない声の主に遭遇した。
「…御堂さん?」
「っ…!」
あまりに懐かしい声だったから、声を掛けられた御堂自身が驚いた。
慌ててそちらの方に振り返ると…其処にはMGNに在籍していた時代に自分の
直属の部下であった藤田が立っていた。
そういえば藤田の自宅からMGNに行く途中に、確か彼も乗り換えでこの
駅を利用していたことを思い出した。
…MGNを強制的に退社させられてすでに一年以上が経過していたので
すっかりとその事は失念していたが。
「…うわっ! 本当に御堂さんだ! まさか…こんな処に会えるなんて思って
いませんでした…! お久しぶりです!元気でしたか?」
「あ、あぁ…君こそ元気そうで何よりだった。…君はまだMGNにいるのか?」
「御堂さんこそ今はどちらにおられるんですか? えぇ、こちらはまだMGNに
在籍して…御堂さんの後釜の佐伯部長の補佐についています」
「っ…! そうか…今の佐伯君の補佐は、君なのか…」
良く考えたら、あの男は自分の就いていた役職をそのまま奪ったのだ。
そうなれば…そのまま、藤田があの男の補佐役に就くのはむしろ当然だった。
それでも、佐伯という名前を聞くだけで自分の心は大きくざわめいてしまっている。
ドクンドクンドクン…。
自分のかつての部下と話しているだけなのに、どうしてこんなに緊張しなければ
ならないのだろう。
知らず鼓動は早鐘を打ち、うっすらと汗ばんで来てしまいそうなぐらいだった。
「はい…佐伯部長の下で、働かせて頂いていま、す…」
…瞬間、藤田の顔が著しく曇っていった。
何か悩みがあるような、そんな険しい表情を浮かべたのと…いきなり声のトーンが
下がったことに御堂は気づいていった。
「…佐伯の下で働いていて、何か問題でも起こったのか?」
「い、いえっ! そんな事ないです…! 気のせいですよ!」
そういって無理に笑顔を使って明るそうに振る舞ったが、どうしても不自然な
印象を拭えなかった。
御堂はそれに酷く引っ掛かるものを覚えた。
…今、佐伯克哉がどうしているのか。
まず…今の彼は、それを知りたいと思った。
ここで現れた藤田はまさに、その絶好の機会そのものでしかない。
「…藤田君。何か悩みがあるのなら…とりあえず口に出してみたらどうだ?
あまり重要な問題を人に吹聴するのは問題があるが、抱え込んでしまっていては…
精神の衛生上、非常に悪いと思う。すでに私は他社の人間であるし…一応は
君の直属の上司でもあった。かつての部下が悩んでいるのなら…無視は
出来ない。良かったら話して貰えるか…?」
MGNでの部長職時代に、こんなに自分の部下に対して親身になって
相談に乗ってやろうという姿勢を御堂が見せた事など一回もなかった。
自分でも良く言うものだ…と思ったぐらいだ。
だが、それでも御堂は必死だったのだ。
ほんの僅かでもあの男の情報を得たいと思った。
そしてその熱意は…藤田の方にも伝わっていく。
密かに憧れていた尊敬する上司。
その人物が真摯な表情を浮かべながら自分を案じてくれたのなら…どうして
申し出を撥ねつける事が出来ようか…。
「…本当なら、御堂部長に…このような事を漏らすのは…補佐、失格でしょうね…。
けど、俺には…どうしたら良いのか…判らなくて…」
上司の例の噂の件は、ここ半月ばかり藤田を深く悩ませていた。
本来は他社の人間になった御堂に漏らすべき問題じゃない事も承知している。
だが一人で抱えるのは正直…重すぎて、苦しすぎて…まだ歳若い彼には
辛いものがあったのだ。
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香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
鬼畜眼鏡にハマり込みました。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
当ブログサイトへのリンク方法
URL=http://yukio0201.blog.shinobi.jp/
リンクは同ジャンルの方はフリーです。気軽に切り貼りどうぞ。
…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
当ブログサイトへのリンク方法
URL=http://yukio0201.blog.shinobi.jp/
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…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
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