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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※これは本多の親友ルート前提のお話です。本多×克哉? と表記して
ありますが…御堂さんとか他のキャラとかが絡んでくるノマ相モテ状態の
お話です。本多か、御堂さんか…他の人とくっつくかは現時点では正直
未定なので『?』マークを語尾つけておきます。
 初めての本多主役の話です。序盤は彼の視点がやや多めになります。
(他キャラの視点もチョコチョコ混ざります)
 ちょっとコメディ風というか、ギャグっぽい話です。
 それを承知の上でお読み下され…(ペコリ)

 それは11月の下旬、街中を吹き抜けていく風が若干冷たくなり始めた
頃ぐらいの話であった。
  本多はその年の秋の初めくらいから、子供の頃にお世話になり
慕っていた近所の実の祖父同様の人が倒れ…やや落ち込み気味であった。
 だが、血の繋がった家族に負けないくらいに頻繁にその人の下に
看病に行き…先日その死を見届けると、少しだけ成長したような表情で
キクチ・マーケティング内のオフィスに顔を出していった。

「…おはようございます」

 今までなら、朝から元気よく「おはようございます!」と大声で挨拶を
していた本多だが…やはりこの日だけは著しくテンションが下がって
しまっているようだった。
 無理もない。子供の頃から面倒を見てくれていた「じいちゃん」と
慕っていた人を失い…昨日、一昨日と会社を休んで通夜と葬式の
両方に顔を出していたのだから。

 本多は基本的に自分の私用を優先して、積極的に有給を使う方では
ない為に…入社してからの彼の有給休暇は余り気味の傾向にあった。
 その事情を聞いた片桐は、今は正直忙しい時期でもあったが
快く休む事を承諾し、本多が会社に出社するのは三日ぶりでもあった。
 八課の全員もその事情を知っている為、浮かべる笑顔は本多の
心中を慮っているせいか、どこか強張ったものになってしまっている。

「あぁ…本多君。おはようございます…。今、お茶を一杯持って来ますから
待っていてくれますか?」

「あぁ、ありがとうっす。いつも…すみません、片桐さん」

「いえいえ…これは僕が好きでやっている事ですから。それに…疲れたり
色々あった時はあったかいお茶の一杯も飲んで気持ちを休ませて
あげた方がずっと良いですからね…」

 そうして、恐らく悲しみに打ちしがれている本多に向かって…片桐は
いつもと変わらない穏やかな微笑みを浮かべてくれている。
 正直。今の彼には…それが凄く在りがたかった。
 本多も…すでに26歳に達していると言っても、人の死に立ち会う
経験は殆どついておらず…今回の事は大きなショックを覚えてしまって
いたからだ。

「…ありがとうございます。気持ち…ありがたく受け取っておきますね」

 そうして自分のディスクに座って、大雑把に机の上を片付けて仕事の前の
準備を始めていくと…隅の方に、チョコンと暖かいお茶の入った湯のみが
置かれていった。
 椅子に一旦座って、それを啜っていくと…ジィンと、どこか冷え切って
しまった気持ちが解れていくような気がした。

(…何かこういう時って、人の優しさって奴が物凄く…身に染みるよなぁ…)

 そんな事を思いながら、八課のオフィス内を何気なく眺めていって
お茶を飲み進めていく。
 時計の針が8時40分を指していくと…室内に、今…本多が一番顔を見たいと
望んでいた人物が飛び込んできた。

「おはようございます!」

 明るく、ハキハキとした態度で…本多の学生時代からの同級生であり
同じ職場で働く同僚でもある佐伯克哉が飛び込んでくる。
 その顔を見るだけでも…本多にとっては元気になるような気がしていた。

(あぁ…こういう時、惚れた相手の顔を見ると…少し、元気が出てくるよな…。
しっかりしなきゃな…とか、みっともない姿を見せれないとかな…)

 八課内のメンバーがその明るい挨拶につられて次々と朝の挨拶の
返事を返していくと…ゆっくりと克哉も自分のディスクの方へと歩いて
向かってきて…ばったりと顔を合わせていった。

「…あ、本多…おはよう。大丈夫…だった?」

 だが、こちらの顔を見るなり…少しだけ曇ったような表情になっていく。
 …まあ、今日に限っていれば皆…事情を知っている訳なのだから
仕方ないのだが…この腫れ物を触るような態度に少し寂しさを覚えていった。

「あぁ…大丈夫だ。あのじいさんももう90歳近くに達していたしな。天寿を
全うした訳だし…運良く、安らかに最後を迎えたしな。だから…そんなに
こちらに気を遣わなくても良いぜ、克哉」

「ん、それなら…良かった。けど…無理に笑ったりはしなくて良いからな?」

「あぁ、判っているって。そんなに無理なんてしないって」

「…うん、そういう時は無理をしちゃダメだからね。本多はいつだって自分
一人で抱え込んでしまうから。…辛ければ、愚痴や弱音ぐらいはオレに
吐き出しても良いからね…」

「…サンキュ、克哉」
 
 その他愛ないやりとりと、気遣う言葉が嬉しくて…片桐の時も嬉しかったが
今の克哉の一言の方がより、本多の心を温めてくれていた。 
 辛いことがあるからこそ、普段見落としがちになってしまう何気ない優しさを
見失いがちになる。
 …確かに、お世話になった人や深く関わった人との死や別離は寂しさと
痛みを伴うけれど…だからこそ、平常時には気づけなかったものを
見つけるキッカケにもなりうる。
 この日ほど…片桐と克哉のさりげない優しさをありがたいと思った日は
なかったように思えた。

(あぁ…本気で、克哉って優しいよな。…だから俺も…いつまで経っても
こいつの事を吹っ切れないんだよな…)

 机の上を片付け、九時の就業開始時間間際を迎えて…チラチラと隣の
克哉の席を見遣りながら、深々と溜息を吐いていく。
 プロトファイバーの営業の一件を担当した事をキッカケに、克哉と
親しくなったのは今から一年前の話だ。
 その件を機に、随分と克哉の本音を知ることが出来て親しくなれた。
 だが…同時に、それで本多の中には克哉への強い想いが宿る形と
なってしまったのだ。
 想いを自覚してからすでに一年以上が経過している。
 そして告白し、『本多はオレの親友だから』と振られてしまっている訳だが…
克哉は最近、艶めいて来たというかちょっとした仕草や表情が色っぽく
なっていた。
 隣の席の、克哉の横顔が…本多にはとても綺麗に映っていく。
 その度に…好きで好きで堪らない、という気持ちが溢れてくるようだった。

(あ~あ、俺はこんなに…今でもこいつの事を好きだっていうのにな…。
こいつにとってはあくまで…こっちは『親友』に過ぎないんだよな…)

 ここ一年は、キスや触れ合う事すらも許して貰っていない。
 そういう事を仕掛けようとすると、敏感に察してさりげなくかわされて
しまっているからだ。
 そこら辺の男のあしらい方をどこで覚えたんだ? と非常に問いかけたく
なってしまうが…見れば見るだけ、想いが募っていく気がした。

―そうしている間に、就業時間間近を迎えていく。

 そろそろ、悲しみをいつまでも引きずっていないで…仕事に専念しようと
決意していった。
 ここ暫くは自分のテンションが落ちてしまっている為に多少、それで
人に迷惑を掛けてしまっていた。
 だが、葬式に出た時点で一つの区切りはついたのだ。
 そういう時だからこそ…しっかりしなくては、と…惚れた相手の顔を
三日ぶりに見て発奮していった。

「よし、やろう!」

 そうして…久しぶりに明るい声を出してそう口に出した瞬間…八課のオフィスの
入り口の扉が開いていって、他の課の社員が顔を出していく。
 まだ年が若い、ハキハキした感じの20代前半の男性社員だった。

「あぁ…片桐さん! おはようございます! あの…一つ…年末に向けて企画が
立ち上がりましたので、宜しいですか?」

 男性社員は入り口付近で、片桐に向かってそう声を掛けていきながら部屋の中に
勢い良く入って来る。
 本多はこの時、まだ知らなかった。

―この男性社員の来訪により、自分が予想もしていなかった大きな出来事に
巻き込まれてしまう形になる事を…
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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