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御堂と眼鏡が…結ばれた後、という設定の上に執筆した眼鏡誕生日ものです。
ミドたんが佐伯の嫁状態になっています。(当サイトの作品『白銀の輪舞』の後です)
それを了承の上でお読みくださいv
二人分の体重が、ソファ全体に掛かって身体が揺れる度にギシギシと音が鳴っていた。
それでも構わずに身体と唇を重ねあい、お互いを求めていく。
「ん…あっ…」
今夜、積極的なのは御堂の方だった。
熱い吐息を零していきながら、克哉のスーツとYシャツを脱がしに掛かる。
それに対して、克哉の方も負けていない。
相手の身体を全身くまなく弄りながら…ゆっくりと御堂のYシャツを
たくし上げに掛かっていた。
「…あんたの身体、もう…こんなに熱くなってる…」
お互いに相手の首筋に顔を埋めると…所有の証を刻み込んでいく。
熱く火照り始めている相手の肌を、唇と舌で丹念に味わっていくと…眼鏡は
相手の胸の突起を弄り始めていく。
御堂の一喝と、自らの想いを体当たりでぶつけたおかげか…先程までの怯えは
払拭されていた。
ただ、今は…こうして触れ合っているだけで昂ぶって来るし…もっと御堂の
感じる顔が見たい。
苛めて、感じさせて…悶えさせて。ともかく、愛しい相手のそういう姿が
見たくて仕方がなかった。
「…ここもこんなに、堅く尖って…もう、期待しているみたいだな。俺の指をこんなに
弾き返して来ているぞ…?」
「…っ! あまり、そういう事は…口に出して、言うな…っ!」
「嫌だね。あんたの恥ずかしがる顔は…本当に可愛い、からな。もっと…俺は
見たくて…堪らないんだ…」
クスクス笑いながら、熱っぽくそう囁くとキュっと胸の突起を両方同時に摘み上げる。
…たったそれだけの刺激で御堂の身体はビクン、と大きく弓並みに反りあがっていった。
「…くくっ! 口では生意気な事を言っていても…身体は本当にあんたは正直だな…」
「…っ! 君は、本当に…意地が、悪すぎるぞ…!」
抗議するように真っ直ぐに相手を見据えていくと…両手で克哉の頬を包み込んで
思いっきり歯を立てるようにして口付けていく。
流石にこれは痛かったのか…克哉の方も少し眉を顰めた。
(…ったく、これなら…さっきの罪悪感を感じている時の方が可愛げがあったな…)
心の中でひっそりとそう思ったが、口に出さないでおいた。
それに自分は…この男が本当は物凄く意地が悪い事を承知の上で惚れて
しまったのだ。…優しい彼も嫌いじゃないが、そればかりだと気持ち悪いのも
事実だった。
「…随分とじゃじゃ馬じゃないか…」
ふいに腰を引き寄せられると、下肢に…克哉の昂ぶりが押し付けられた。
臀部の狭間にソレが来るように身体の位置をズラされたのだから…こちらは
溜まったものではない。
そのあからさまな欲望に、ビクっと震えながらも…期待で息を呑んでしまっていた。
「…あんまり、おいたが過ぎると…それなりのお仕置きをさせて貰うぞ…?」
こちらが積極的に求めれば求めるだけ、強気で応対すればするだけ…先程の
罪悪感に囚われた彼の顔ではなく…自分が良く知っている傲慢で、強気で…
意地悪な佐伯克哉の顔が覗き始めていく。
「…お仕置きじゃなくて、今夜は君の好きにすれば良いって…さっき言っただろう…?
もう私は…君のもののつもり、何だがな…?」
そのまま克哉のシャツのボタンを全て取り外していくと…肩からシャツを抜かせて
スルリと滑らせて脱がしていく。
克哉もまた、御堂の着衣を脱がすように手伝っていけば…すぐにお互い、上半身の
裸体を相手に晒していった。
自分の臀部付近にある克哉の昂ぶりを…腰を何度も揺らして、挑発していく。
こちらの尻肉と布地越しに触れ合う度にその欲望は育ち、痛いぐらいに御堂の下で
張り詰めていくのが判った。
「くっ…あんた、それ…本当に、クる…っ!」
御堂の腰使いに、克哉の方が抑えが効かなくなる。
そのまま乱暴な手つきで相手のスーツズボンを下着と一緒に剥ぎ取っていくと…
自分のスーツのポケットから携帯用のローションを取り出していって…それをたっぷりと
掌の上に取っていく。
それを性急に…相手の臀部に塗りつけていけば、蕾の周辺は…大量のローションで
ビチョビチョになっていく。
克哉の指が蕾の中に沈められて…敏感な箇所を的確に探り当てれば…今度は
御堂の方が翻弄される結果となった。
「くっ…! 君の…方、こそ…! いきなり、性急…過ぎる、ぞ! んぅ!!」
克哉の指が正確に前立腺の位置を擦り上げれば…背筋に走り抜けていく
強烈な快楽が襲い掛かってくる。
その度に呼吸を荒げて、身体を小刻みに痙攣させ続けると…克哉の方は
早くも相手を快楽で支配し始めている事に満足そうだった。
「…あんたが煽るから、悪いんだろ…? あんな風にあんたに身体の上で
腰を揺らされて…俺が冷静でいられるとでも、思っていたのか…?」
「思っている、訳ないだろ…。むしろ、冷静で何かいたら…君を、思いっきり
恨むだろうな…」
ククッ、といたずらっ子のような笑みを浮かべながら…克哉の身体をぎゅっと
強く抱きしめていく。
もう触れ合う場所のどこもかしこも、熱くなっているのが伝わってくる。
どこか冷たさを感じる外気の中、お互いの汗が気化して…自分達の周り
だけが濃密な空気で包まれているように感じる。
「…早く、私だって…君を、感じたいんだ…佐伯…」
耳元で、耳朶を唇でくすぐられながらそんな殺し文句を言われれば…限界
寸前だった克哉の欲望は更にはち切れそうになっていく。
「…くっ! バカ…が。もう加減…してやれない。抱くぞ…っ!」
今夜の御堂は魅力的過ぎて、挑発的過ぎて…克哉の方もすっかりと
主導権を握られっぱなしだった。
相手の中から指を引き抜けば…両腰に手を添えて、御堂の奥まった箇所に
熱い猛りを押し当てていく。
接合部の付近が…お互い、燃えるように熱を帯びているのを感じ取りながら
息をゴクン、と呑みあっていた。
「み、どう…っ!」
「ふあっ!」
そのまま、一気に深い場所まで刺し貫かれていけば…耐え切れずに
御堂は克哉の身体に縋り付いていく。
十日ぶりに感じる、相手のペニスは…受け入れた場所から、御堂を
そのまま蕩けさせていくようだった。
御堂の方も負けてはいない。
狭い隘路を強引に押し開いていく相手の情熱の塊を…必死になって
受け入れて…貪るように収縮を繰り返していく。
まだ挿れたばかりだというのに…早くも貪婪に克哉を求めていくのを
自覚して、それだけで羞恥で死にそうになる。
「んっ…あっ…はっ…! 凄く…君の、熱い…っ!」
「あんたの、だって…燃えている…みたいだ…。凄くキツくて…
良い締め付け…加減、だな…」
「…っ! だから、言うなってば…バカっ…! ひっ!!」
いきなりペニスを掌で握りこまれながら、容赦なく内部を掻き回されたもの
だから溜まったものじゃない。
受け入れているだけで痺れそうになるくらいにイイのだ。
それで…ギンギンに張り詰めているペニスまで弄られたら、こちらとて
正気でいられる訳がないのだ。
克哉の手が蠢く度に、御堂の性器はまるで駄々っ子のように暴れて大量の
蜜を零し始めていく。
グチャグチャグチュ…と部屋中に、接合音と相俟って淫らな水音が
響き渡るのがどうしようもなく恥ずかしい。
全力で頭を振って、逃れようと試みていくが…克哉もすでに容赦がなかった。
「だ、ダメッだ…! 其処まで、弄られたら…おかしく、なるからっ…!」
必死に克哉の手を引き剥がそうと抵抗していくが、あまりに強烈な快感の
せいかその力はどこか弱々しかった。
逆に今度は、克哉が主導権を握る番だ。
先程のどこか迷っているような影は払拭され、いつもの…御堂が良く
知っている強気で傲慢な笑みを浮かべている克哉の顔がそこにはあった。
「おかしく、なれよ…あんたが乱れる姿を、俺はもっと見たい…」
熱っぽい眼差しを向けながら、克哉が囁いて…深く唇を重ねて、吸い上げていく。
その舌のねっとりした熱さと甘さに…御堂の鼓動と吐息は更に忙しなく
乱れたものになっていく。
「…っ! 君のその眼差しの、方が…反則だっ! あまり…見ない、で…くれ!
恥ずかしい、から…っ!」
部屋中に自分達の厭らしい水音が響き渡っているだけで憤死ものなのに、
こちらの顔を真っ直ぐ見つめてくる克哉の顔が真摯過ぎて…真っ赤になって
快楽に染まっている今の顔を見られるのが恥ずかしくて仕方なかった。
克哉の腰使いが一層早いものへと変わり…あまりに的確に御堂の
弱いポイントを突き上げていけば…その度に内部はキツく収縮し
彼のペニスを搾ろうと締め付けを強めていく。
「断る。あんたの…そんな色っぽい顔なんて、こんな時ぐらいしか
たっぷりと拝め…ないんだ。堪能させて…もらうぞ…」
「んっ! あっ! 本当に…君は、意地、悪な…男っ、だっ! あぁ!!」
精一杯抗議の言葉を吐いていくが、すでにまともな言葉になって
なかった。何度も途切れ途切れになりながら訴えていくが…男が
与える熱い楔の感覚にすでに意識が翻弄されていく。
御堂のペニスもまた熱く張り詰めて、はしたなく蜜を溢れさせている。
足を大きく開きながら克哉の上に乗り上げて…必死になって克哉の
身体に縋り付いてくる様は…いつもの冷然とした御堂の態度からは
想像出来ない程の乱れっぷりだった。
「そんな事は、承知の上だろ…あんた、は…! イク、ぞ…!」
克哉もまた、そんな御堂の狂態を見て…限界近くまで欲望を
高めていた。
相手の中でドクドクドクと荒く脈打ち…最大にまで膨張して
頂点が近い事を訴えていく。
相手のペニスをギュっと掌で握りながら、最後の渾身の一突きを
最奥目掛けて、突き上げていく。
「やっ…ぁ!! さ、えきっ…! ああっ―!」
その瞬間、御堂も大きく啼いて…克哉の背中に縋りつきながら
達していく。
あまりの強烈過ぎる感覚に意識が一瞬、浚われていく。
(あ、熱い…っ!)
ドクンドクン、という乱れた鼓動に合わせて…内部の相手のモノが
震えて…熱い欲望が注ぎ込まれていくのを感じた。
頭が真っ白になるほどの強い快感が走りぬけ、その余韻にお互い
浸っていく。
ふと、自分の指先に視線を向けた。
…白銀の指輪が、キラリと輝いているのが視界に飛び込んでくる。
いつもと同じ情交なのに、ただ…自分が贈った指輪と同じものが
相手の指にも嵌められている。
その違いだけで…十日前に抱かれた時よりも、ずっとずっと深く
相手と繋がれたような…そんな錯覚に陥った。
克哉もまた同じ事を考えたのだろうか…?
ふと視線が合うと…彼もまた、自分の指輪の方を暫く見つめて
それからこちらに小さくキスを落としてくる。
唇に重なる、柔らかい感触だけで…幸福感が込み上げてくる。
呼吸が整って、吐息が重なると同時に…ふっと意識もまた、緩やかに落ちていく。
相手の鼓動と息遣いを感じながら…一時、御堂の意識は…心地よい
まどろみの中へと落ちていった―
イベント前でアワアワしていたり、気力が落ちていたりを理由に十日以上
溜め捲くってて本当にすみません!
けど皆さんからのメッセージを支えにどうにか雪幻を完結まで持っていけたり
ヘロヘロでも誕生日ものをやらなきゃ! と気力振り絞れました。
本当にありがとうございました!!
071223から でんじろうさん
二度目のコメント、どうもありがとうございます!
続きを楽しみにして下さって感謝です。どうにかこうにか、雪幻を完結まで
持って来れました。連載期間中にこの話を面白いと言って下さって凄い励みに
なりましたよ! 少しでも楽しんで頂けたなら幸いですvv
mikageさん
初めまして! コメありがとうございます!理想の克克とまで言って下さって…アワワ、
恐縮です(アセアセ) 私も雪幻は設定も話も、眼鏡も克哉もものごっつ自分の趣味を
詰め込み捲くりました。それを気に入って貰えたなら良かったです~v
日参大歓迎ですよ。むしろこれからも気軽にお立ち寄り下さい。お待ちしておりますv
071223 12:21の方
いえいえ、こうして一言メッセージを残して下さるだけでもこちらは相当な励みになって
おりますよ。大好きって言葉もどうもです。キモくなんてないのでこれからも宜しくですv
秋乃さん①
初めまして! コメント&リンクの方、どうもありがとうございます!
うちのサイト…絵チャット等に参加しないでリンクを向こうから貼ってもらったの
秋乃さんが初めてだったので凄い嬉しかったですよv
作品気に入って貰えたようで良かったです! 私も秋乃さんのイラスト好きですよ。
あの…オフィスの克克絵は…うわっ! 萌えだ! と無駄にインスピレーションを
感じてしまいました…(ドキドキドキ) これからも宜しくです~!
071224 1:42~1:48の方
雪幻の感想、どうもありがとうございました。実際に記憶喪失と、真っ白い世界観を
リンクさせてこの話を作り上げたので、そういって頂けると作り手として凄い嬉しいです。
話の終盤と冬コミ原稿が重なっていたおかげでかなりヘロっていましたが…どうにか
どちらも終わらせる事が出来ました。暖かいお言葉、どうもでしたv
071226 1:40の方
克克は私も大好きなので同士ですね! 毎日、こんな自分の趣味丸出しの話を読んで
下さっていてありがとうございます! これからも克克は頼まれなくても書いていく予定なので
お気軽に立ち寄って下さいませ!
071226 4:37&071227 2:47の方
いえいえ、最初…話が途中で抜けてる! といわれた時はぎょっとなりましたが…
誰にでも勘違いとか間違いはやるものです。実際に私自身、かなりおっちょこちょいなので
言われて直した事も結構数多くあります。あまりお気になさらずに(^^)
071227 7:35の方
この話は切ない&シリアス傾向の強い話ですが楽しんで頂けたなら良かったです。
良い意味でそちらを泣かせられたのなら、書いて良かったと本当に思えますよ。
感想、どうもありがとうございましたv
071227 22:49
光に飲まれる寸前、克哉の方は実は眼鏡を引っ張っていこうとして
手を伸ばしたんですけどね。
眼鏡の方がそれを拒否しているので引っ張られなかったんですよ。
とりあえず現在は完結しましたが…満足出来る終わりだったでしょうか?
コメありがとうございましたv
071228 17:02
とりあえず日々、にゃ~にゃ~言いながら…当面の目標である三ヶ月はほぼ毎日更新
していこうと頑張っております。毎日楽しみにして下さってありがとうございます。
そういう方がいるのを励みにしているから、続けられるのですよ(^^) 感謝ですv
友人Y様
おお! 約束果たしてくれてどうもありがとう! 確かに君のアドを受け取りました!
遅れてすみませんでしたが、私の方からもメール送りましたのでご確認下さい。
拍手は送るメッセージ少ないですよ。確か50文字? 不便な思いさせてしまって
すまんねぇ。またいずれ顔合わせた時は宜しくです。ではでは!!
071230 9:21の方
冬コミ、無事に行って帰って来れましたよ。新刊もどうにか発行出来ました!
ちょいと29日分は休ませて貰う形になりましたが…やっと雪幻も完結まで
持ち込む事が出来ました。お待ち下さってどうもありがとうございました(ふかぶか~)
071230 12:07の方
雪幻、身体を休めた事でどうにか満足する形で完結させる事が出来ました。
楽しみに待っていて下さって感謝です。そういう声を皆さんから頂けたから
こちらもやらなきゃ! と気力振り絞れたのですよ。暖かい言葉どうもですv
071231 1:51~1:57の方
この話は結構重いメッセージ性を最終話は込めていましたが、何かを感じ取って
下さったのなら良かったです。眼鏡が消えて克哉の一部になる…という終わり方は
人によっては不満が残るかな、という迷いはありましたけどね(汗)
けれど…だからこそ読後感は良くしようとバランスを考えました。危機が訪れる
からこそ、周りの人の有り難味が判るというのは今年の私自身が実際に体験
した事でもあったりします。…まあ、毎日更新に関しては出来れば三ヶ月くらいは
力試しにやってみよう、という感じで始めた事です。(実はやるのこれが五度目)
3~4ヶ月程度なら今までも毎日書いたりとかはやって来れたのでそこまでは
このジャンルでもやっていく予定です。これからもどうぞ宜しくお願いしますv
071231 2:53の方
私も書いてて、何度も「眼鏡~!」と叫んだり泣いたりしながら書いていましたよ(笑)
雪幻は当初の予定に反して、凄い切ない展開が続いたので…最後くらいは前向きに
明るく仕上げました。少しでも楽しんで頂けたなら幸いですv
たかねさん
おおぅ! 新年の挨拶、わざわざありがとうございました(恐縮!)
こちらこそ開始がギリギリになってしまって申し訳ない。自分が以前に
書いた話の続編って形で企画に参加するのどうかなって思っていたんですが
楽しみと言って頂けてほっと致しました。頑張って御堂さんの襲い受け話を
書いていくのでどうか見守ってやって下さい。本年も宜しくお願い致しますv
秋乃さん②
いえいえ、こちらこそリンクとメッセージ凄い嬉しかったですよ。
一応現実なので、正しくそれを認識して下さいませ(笑) 雪幻の感想も
どうもありがとうございます。雪幻は私も書いていて切ない気分になる事が
多かったですが…この世界の中で二人の恋が成就したら、それは閉ざされた
世界で生きる事になる訳ですからね。悲恋は必然だったと思ってます。
その代わり…ある意味、誰も入り込めない形で一つになった訳ですから
永遠の恋人…というのは正しいですね。本当に好きな相手と一つになれるって
実現しようと思っても出来る事じゃないですから。
とりあえず体調の方は回復しました。暖かい言葉、感謝です。ではではv
阿佐海さん
先日は短い時間でしたが、こちらこそ絵チャットでどうもありがとうございましたv
白銀の続き、楽しみにして下さってどうもです。そしてリンクの方も確認しましたので
こちらも近日中には貼って、挨拶に伺いますので宜しくお願いします。
そして…はい、白銀の絆3では眼鏡がヘタレ風味ですね。えぇ、だってこの企画は
「御堂さん襲い受け」ですからね!(力説) 通常EDの眼鏡だったら御堂さんが
襲う前に自分から襲い掛かって仕掛ける余地ないじゃないですか!(BY装着版の
トラック6参考) という訳で白銀~の続き設定になったのでした(テヘ)
多分ここから巻き返します。頑張れ眼鏡…とでも祈ってやって下され…(笑)
KOTONEさん
こちらこそ某所ではいつも構って下さってありがとうございます。
例の一件でも快くイラストを提供して下さって感謝です。頭が上がりません。
私の方こそ、本年も宜しくお願いします。またどこかで顔を合わせたりしたら
遊んでやって下さいねv 大好きですよ~(と告白してみる)
いう訳で…返信完了です。
こんな奴ですが、それでは本年もどうぞ宜しくお願いしますです(ペコリ)
御堂と眼鏡が…結ばれた後、という設定の上に執筆した眼鏡誕生日ものです。
ミドたんが佐伯の嫁状態になっています。(当サイトの作品『白銀の輪舞』の後です)
それを了承の上でお読みくださいv
御堂からの思いも寄らぬ言葉と口付けを受けて、とっさに眼鏡は
反応出来ないでいた。
一瞬、何を言われたのか理解出来なかったという方が正しいだろうか。
それでも相手の唇と舌先の熱さに…次第にこちらも酔いしれていく。
こちらからも相手の身体をしっかりと抱きすくめていき…背骨のラインを
優しく指先で辿ってけば…御堂の身体が、ピクリと震えていく。
克哉の方からもたっぷりと御堂の唇を貪っていくと…珍しく、不服そうな
表情で…囁きを落としていった。
「…あんたの誕生日に、俺の方からプロポーズする予定でいたんだがな…
先を越されたか…」
「…ふふ、それは嬉しいけどな。しかし…今から私の誕生日まで、九ヶ月も
先じゃないか? それまで…お預けにするつもりだったのか…?」
御堂が挑発的に笑いながら、ゆったりとこちらの膝先に腰掛けていく。
身長180を超える男同士がこうやって密着しあう様はかなりの迫力だが…
こちらとて、相手の体重が少し掛かったくらいで崩れる程、柔ではない。
「いや…そういう訳ではない。しかし…あんたは、本当にそれで良いのか…?」
「…今更、何を。確かに…一時はあんなに酷い真似をした君を憎んだ。だが…
私が壊れてからも君はずっと私の傍にいて面倒見てくれていたんだし…今は
心から想ってくれているのを実感している。
それとも、私の人生全てを押し付けられるのが重いというのか? それなら
撤回させてもらうけどな…」
「冗談じゃない。むしろ…大歓迎だ。だが…一度受け取ったら、絶対に俺の方からは
あんたを手放してやったりはしないぞ? それでも…?」
「…むしろ手放したりしたら、盛大に君を恨ませて貰うぞ。私にここまで言わせて
受け取らない…何て事はないよな? 佐伯…?」
クスクスクス、と楽しげに笑いながら…御堂はこちらの唇を、ゆっくりと舌先で
舐め上げていく。
そのまま御堂の方から唇を重ねて、やんわりと吸い上げていくと…今度は
克哉の背中がピクリ、と震えていく。
お互いの吐息が、体温が徐々に熱を帯びてくるのが伝わってくる。
御堂の手が愛しげに克哉の頬に、首筋に触れ…カリ、と唇を甘噛みなんて
されたらもう駄目だ。
降参だ、と訴えんばかりに…克哉は御堂の肩を掴んで、軽く唇を引き離しながら
余裕のない顔で告げていった。
「…御堂っ! もうこれ以上されたら…あんたをこの場で押し倒し兼ねない。
続きは、寝室で…」
「…私は、ここでしても…一向に構わないぞ…? 佐伯…?」
瞳を蟲惑的に細めながら、御堂が艶やかな声音で告げていく。
最上のシャンパンを唇移しで与えられて、それだけで酩酊しそうなのに…
更に御堂孝典という魅力的な存在まで、与えられたら…こちらは正気でなど
いられる訳がない。
そうしている間に、御堂の手がゆっくりと克哉のボタンを一つ一つ…丁寧に
外し始めていく。
整った指先が、克哉の露になった首筋から胸元までゆっくりと撫ぜ擦って…
興奮して堅くなり始めた胸の突起を掠めていく。
「くっ…! 御堂…せめて、ソファー…に…」
「あぁ…私も、同じ事を…思って、いた…。最早…ベッドに移動する…時間すらも、
惜しい、からな…あっ!」
御堂の腰を抱きながら、どうにか食卓の椅子から立ち上がっていくと…互いの
身体を支えあうような形で性急にリビングの方へと身体を移動させていって、御堂を
黒革のソファの上に組み敷いていく。
御堂の頭の位置に、クッションが来るように身体の位置を整えていってやると…
ふと、初めて御堂を抱いた時の記憶が脳裏を過ぎった。
(そういえば…御堂を初めて『接待』したのは、このソファの上でだったな…)
あの時の自分と御堂の関係は、お世辞にも友好的とは言えなかった。
殆ど嫌がらせに近い感じでプロトファイバーの売り上げ目標値をメチャクチャな
数字に引き上げられて…それの抗議に行ったら、私を接待しろと言ってきたのだ。
当然、御堂はその接待をキッカケに優位に立つつもりだったのだろうが…その件に
関しては克哉の方が一枚上手で、薬で一服を持って身体の自由を奪い…近くに
あったビデオで陵辱場面を録画した。
その事を思い出して、ふと…克哉の中に引け目が蘇っていく。
エリートコースを邁進して、誇らしげに生きていたこの人を…自分のエゴで追い詰め
そして、一度は廃人にまで追い込んでしまった。
そんな自分が今でもこうして御堂の傍にいる事が許されて、相手はこれから先の
人生まで与えてくれようとしている。
それはまるで…夢のようで、逆にあまりに現実感がないように思えた。
「…どうした? 佐伯…? せっかくのお前の誕生日で…私がここまでしているのに
酷く浮かない顔をしている…じゃないか?」
「いや…少し思い出した、だけだ…。そういえばあんたを初めて抱いたのも…
このソファの上、だったな…って思って…」
こちらが少し戸惑いを感じてしまっている事など、御堂にはお見通しだろう。
その言葉を聞いて…少しだけ御堂の眉間に皺が寄っていく。
確かに…克哉と初めて関係を持った時は、合意ではなく半ば騙されて強姦された
ようなものだ。
あの時は克哉の事はむしろ嫌っていたし、あんな真似をしでかしたこの男を
絶対に許すものか…と憎んでさえいた。
「…そうか、君がさっきから非常にノリが悪いのも…心を通わせてから、なかなか
私を抱かないのも…罪悪感って奴が邪魔しているから…何だな…」
深く溜息を突きながら、御堂が身体を起こしていく。
その顔を見て…克哉の方は居たたまれないような顔をしていく。
そう、両思いになってから早二週間が経過しているが…その期間中に、二人が
セックスした回数はたったの二回だった。
あの雪が鮮やかに舞っている中にキスした日と…十日ほど前の休日の前夜。
それ以外は仕事が忙しいを理由に、なかなか触れようとしなかったのだ。
「いや…そうだな。確かに…あんたに、俺は…罪悪感を抱いているな…」
だからこそ…先程の御堂の言葉を心から嬉しいと思う反面、本当に自分がこの人の
手を取って良いのだろうかという迷いが克哉の中に生まれていた。
こんなに及び腰になっているのなんてみっともないし、自分らしくないと思う。
しかし…今の克哉にとって、御堂はとても大切な存在だった。
もう二度と失いたくないし、あんな人形のような状態に戻したくないのだ…。
己の御堂に対する執着心やエゴが、また暴走する日が来るのではないか。
その恐怖心が…克哉を未だに竦ませていたのだ。
「…ったく! いい加減にしたまえ! いつまでそうやって…私の前で怯え
竦んでいるつもりだ!」
克哉の想いは、御堂にだって充分にわかっている。
その罪悪感があるからこそ、自分が壊れてもこの男は一年も自分の面倒を
見て決して離れなかった事ぐらい判っている。
しかしもう自分はとっくの昔に…二週間前に許したし、もう気にしていないと
その間に何回も伝えて来ているのだ。
それでも…伝わりきっていない事に…御堂は焦れて、怒りすら覚えていた。
「私は…君にこれからの人生全てを捧げても構わないと考える程に…
君を想い、愛しているんだ! だからいつまでも…過去の罪に君も囚われるな!
そんな事、私は一切望んでなんか…いないんだ!」
感情が昂ぶりすぎて、瞳にうっすらと涙すら浮かべながら…相手の襟元を
引っつかんで御堂は訴えていく。
相手の誕生日だからこそ、抑えようと少しは思ったが…一度、堰を切った
気持ちは留まらず、溢れてくるばかりだ。
「み、どう…」
克哉は、相手の真っ直ぐすぎる怒りと…想いを前にして、唇を震わせていく。
しかしその瞳の奥に宿る光は真剣そのものだ。
「私は…佐伯克哉を愛している。君をこれからの…生涯の伴侶として、
一生を歩んでいけたら…! それくらいの覚悟で私は先程…君に気持ちを
伝えた。…それは、佐伯。君にとって…単なる重荷でしか、ないのか?
それとも…嬉しい事なのか、キチンと答えて欲しい…」
自然と、御堂の方から…今度は克哉の身体の上に乗り上げる形となった。
相手の腰に、己の身体を重ねて…お互いに吐息が伝わるくらいの近さで
見つめあう。
「…嬉しいに、決まっているだろ。…俺にとって、人生を賭けてまで
欲しい相手なんて…御堂孝典、あんた以外には存在しないんだ。
…最高の誕生日プレゼントだよ。だから…」
相手の目をまっすぐ見つめながら、御堂自身が己の薬指に嵌めた
銀色のリングをそっと口付けていく。
自分の指にも…同じ証が、今は輝いている。
結婚指輪というのは元々…継ぎ目のない円を心臓に一番近いとされる
薬指に嵌めることで、永遠不滅の愛を願うという処から生じている風習だ。
それをどんな想いで、御堂は贈ってくれたのか。
どれだけ強い気持ちで、今気持ちを伝えてくれているのか。
…克哉はしっかりとその想いを受け止めて…今度こそ迷いない声で
告げていく。
「あんたを心行くまで…今夜は貪らせてもらう。あんたは、今夜から…
これから先、ずっと…俺に人生を…捧げて、くれるんだろ…?」
「…あぁ、もう…私は、君のものだ。…だから、好きに…すれば良い。
…何をされても、今夜は…受け入れる、から…」
そんな甘い言葉を、愛しい人間に耳元で囁かれて…こちらも冷静でなど
いられる訳がない。
「…くっ! 今夜のあんた、本当に…反則、過ぎるぞ…っ!」
そうして、自分の腰の上に乗り上げている御堂の身体をこちらからも
引き寄せて、荒々しくキスを施していく。
お互いに身体は燃えるように熱くなっていた。
もう、止められない。
そう確信しながら…二人は、噛み付くように…唇を重ねあっていった―
この話は本編のED№3「嗜虐の果て」にを迎えた後、どうにか立ち直った
御堂と眼鏡が…結ばれた後、という設定の上に執筆した眼鏡誕生日ものです。
ミドたんが佐伯の嫁状態になっています。(当サイトの作品『白銀の輪舞』の後です)
それを了承の上でお読みくださいv
御堂が用意したご馳走の全てを平らげていくと…克哉は満足げな笑みを
浮かべながら、讃える言葉を継げていった。
「今日の夕食は…本当に美味かった。お前がこれほどまでの味を作り出せる
腕前の持ち主とは知らなかったな…」
「…まあな。満足出来たか?」
「あぁ…大満足だ。お前の愛情がたっぷりと詰まっていたからな…」
「なっ…バカ、真顔でそういう事を言われると…どう反応すれば良いのか、
判らなくなる…だろ…」
御堂が赤くなりながら、拗ねた顔を浮かべていくと…克哉はククっと
喉の奥で笑っていく。
本当にこういう意地の悪い処は、困ったものだと思った。
「…素直に受けておけ。俺は…本当に思った事しか、言わないからな…」
「っ!!」
途端に、自分の耳まで赤く染まっていくのが判って、机をバンッ! と
叩きながら勢い良く椅子から立ち上がっていく。
「…どこに行くんだ?」
「…今日の為に用意しておいた、極上のシャンパンを…取ってくる。君の
ような男に振舞うのが勿体無いくらいの一品だがな…」
御堂が本日用意したシャンパンの銘柄はクリュグ=「グランド・キュヴェ」
シャンパンの中のシャンパンとも言われている極上品である。
一本18000円から、20000円はする代物なので…一般のサラリーマンでは
なかなか飲めない高級品だ。
御堂が優美な動作で…ソムリエナイフを使い、コルクを抜いていくと早くも
部屋中にシャンパンの芳醇な香りが広がっていく。
細長いフリュート型のシャンパン用のグラスに…程よく冷えた液体を注げば
綺麗な琥珀色の底の方から…細かい綺麗な泡が水面に向かって緩やかに
立ち昇っていく。
「…俺は基本的にビールや蒸留酒の類ばかり飲むのでシャンパンは初めてだが…
綺麗なものだな…」
「あぁ、この泡一つ一つが…芸術品みたいなものだ。味わって飲むと良い…」
二つのグラスに、慎重に液体を注ぎ終わると…相手の顔を深く覗きこむように
しながら、手渡していく。
お互いの視線が、絡み合えば…御堂は相手の手に…己の手を重ね、先に
相手のグラスの液体を口に含んでいく。
克哉の目が柔らかく細められると同時に…唇を重ねて、相手の口内に
極上のシャンパンを送り込んでいった。
「ん…ふっ…」
甘い声を漏らしながら、相手の口腔に舌を忍び込ませて…やんわりと
熱い舌を絡ませあっていく。
鼻腔を突く、シャンパンの心地よい香りと…相手の唇の甘さに、それだけで
酔いしれてしまいそうだ。
「…美味いな。お前が用意してくれたシャンパンも…お前の唇の味も…」
「…だろう? 気に入ったか…?」
「あぁ、当然だ。これ以上の贈り物は…そうあるものじゃないからな…」
強気に微笑んだ克哉の腕が、御堂の腰に絡まっていくと…こちらからも
相手の首筋にぎゅっとしがみ付いていった。
眼鏡の視線がグラスの方に注がれているのに気づくと…強気な笑みを
浮かべながら、御堂がもう一度液体を口に含んで…相手の口腔に
注ぎ込んでいく。
そのまま…お互いの情熱に火が突いて、次第に抱きしめあう腕の力も
強まり、絡めあう舌の動きも性急なものへと変わっていった。
「さ、えき…今夜は、もう一つ…贈り物があるんだが、受け取って貰える、か…?」
声の振動が伝わるくらいの至近距離で、御堂が囁いていく。
「…これだけでも、充分だがな。…それで、何をくれるんだ…?」
お互いの熱に浮かされた眼差しが、ぶつかり合う。
相手の真意を読み取ろうと…ジっと克哉の怜悧で鋭い眼差しが
御堂の瞳の奥に注がれていった。
それだけで…御堂の背中には甘い痺れが走り、ゾクゾクと悪寒めいたものを
感じながら…甘い吐息と共に言葉を紡いでいった。
「…これを…」
ふっと瞳を細めて、克哉の左手を掬い取っていくと…その指先に口付けた。
丹念にその指先を唇で愛でて…チュっと小さくキスを落としていくと…己の
スーツズボンのポケットに忍ばせていた銀色のリングを、そっと相手の指先に
つけていく。
…そして、眼鏡が言葉を失っている間に…フッと不敵に微笑みながら
自分の指先にも同じようにシルバーリングをつけていった。
その間、克哉は何も言わない。
御堂からどんな言葉が紡がれるのか…真摯な表情を浮かべながら、
見つめていく。
そんな彼の表情が酷く愛しくて…ふっと、穏やかな笑みを浮かべながら
御堂は高らかに告げていく。
「…私のこれからの人生全てを、君に…」
そう告げながら、相手の唇に…深く深く口付けていった―
そして気づいたらいつの間にか20000HIT超えておりました!
…二ヶ月ちょいでこの数字行くとは、本人も予想していなかったので
結構ガタガタ震えていましたが…。
(サイト開設前は一日50~100HIT回れば良いかな…とか思っていました…)
いつも見に来て下さっている方々、どうもありがとうございます!!
新年更新を…と行きたい処ですが、現在珍しく知恵熱出しています。
頭痛と発熱(37℃程度ですが…)がします。風邪? の割には食欲あるし
セキや鼻水も一切ないんで…うん、多分知恵熱と思われます。
…年末、毎日一日3~4時間ペースでパソコン打ち込んでいましたからね。
多分、オーバーワーク気味の反動です。
…ま、雪幻と冬コミ原稿が終わってほっとしたのが一番の理由ですが。
本日の更新と…遅れ捲くっている拍手返信は夕方から夜に掛けてやります。
体調不良と、軽い無気力状態になっているせいで…遅れがちですが、
もうちょい待ってやって下され。(無気力症に関しては全力で物事を取り組んだ
証みたいなものなので、数日無理しなきゃ回復するので心配なさらずに)
それでは本年もどうぞ宜しくお願い致します(ペコリ)
御堂と眼鏡が…結ばれた後、という設定の上に執筆した眼鏡誕生日ものです。
ミドたんが佐伯の嫁状態になっています。(当サイトの作品『白銀の輪舞』の後です)
それを了承の上でお読みくださいv
眼鏡との間の確執が取れてから二週間後。
心から結ばれてから、初めての相手の誕生日が訪れようとしていた。
ここ暫くはまだ身体のリハビリも兼ねて、日中は働いている相手の代わりに夕食は
御堂の方が担当していた。
だが…本日は一際力を入れて、料理を作る事に当たっていた。
「…フフフフ、これを食べたらあいつもきっと驚くに違いない…」
異様な気合を込めながら、グツグツと煮立つ鍋の中身を丁寧に掻き回していく。
大きな鉄製の鍋の中に入っている物は…数日前から仕込んで、丹念に
煮込み上げていたビーフシチューだった。
まだ時間の融通が利いた学生時代ならともかく、社会人になってエリートコース
になってからは忙しくて料理を作る暇などなかったので…実際に作って見たのは
十数年ぶりになっていたが…渾身の料理の出来栄えに御堂は酷く満足げだった。
塊のままの牛肉のブロックを数日掛けて野菜と一緒にトロ火で煮込み続けた。
肉が蕩けるように柔らかくなってから、ホールトマトとローリエ等の香辛料の類を
一緒に投入し、仕上げに高級なワインと市販の高級なビーフシチューの元を使った
それは…芳醇な匂いを称えて、こうしているだけでも食欲を掻き立てる程だった。
一口味見をしてみると、その完成度の高さに自分でも満足げの笑みを浮かべた。
元々御堂は完璧主義者である。
やるからには徹底的にやらないと気が済まない性分だ。
本日は相手の誕生日に当たる訳だし、どうせなら盛大に祝ってやりたい。
上質なライトグレイのシャツに、すっきりとしたラインのスーツズボン。
それにカーキーのエプロンを身に纏いながら…時計の針を確認して
ポタージュスープとサラダ、カリっと焼いたフランスパンの用意をしていく。
「…そろそろ佐伯が帰ってくる頃だな…」
本日の克哉は、来年から始動するプロジェクトの前準備の為に
出勤している。
今年中にやるべき事は二日前には全て終えた、と言っていたが…取引先
よりも先んずる為や二重の確認の為に昨日も今日も、MGNに赴いていた。
今日が終われば、年明けから七日くらいまでの一週間は休んでも何の
問題ない…と言っていたのだが。
「…本当にあの男は。今日は自分の誕生日だっていうのに…わざわざ
働きに出るなんて…一体何を考えているんだ…」
こちらは十日ほど前にこいつの誕生日が、今日だと知った時から…その日は
盛大に祝うつもりで準備をしてきたのに…直前になって31日まで働くと聞かされた
時には、呆気に取られた。
しかし御堂もかつてはエリートコースを邁進していた仕事人間だ。
相手が仕事をすると言っているのに、自分との時間を優先しろだなんて…口が
裂けたってそんなみっともない事は言えない性分だった。
「…早く、帰って来い…。せっかく…用意、したんだぞ…」
午後七時、定時に終わった場合は…眼鏡が必ず帰って来る時間が近くなって
ガラにもなく心臓がドキドキしていた。
作っている時は夢中で気にしなかったが…自分の方から手料理を振舞って
相手の誕生日を祝ってやるなんて行為は生まれて初めての経験だ。
そんな事を自分がやる日が来るなんて以前はまったく想像していなかったし…
その相手が克哉である事も…信じられなかった。
用意した全ての料理が頃合に仕上がり、皿の上に盛り付けて…食卓の上に
二人分の用意を並べていく。
そして…本日、ガーヴから取り出して丁度頃合に冷えているシャンパンの用意を
していく。
シャンパン・フリュートと呼ばれる全体的に細めで背が高い、スラリとした
シルエットのグラスを二個用意していく。
全ての準備が整い、時間を眺めていく。
午後七時まで後…1分を切ろうとしていた。
その時間になってまで、まだ帰って来る気配がない事に御堂は…少し不安を
覚えていく。
(もしかして…今日は遅れる、のか…?)
昨日も一昨日も、佐伯は七時までには確実に帰って来ていた。
それなのに…肝心の今日に限って、その気配はない。
せっかく一番美味しい状態で食べて貰おうと頑張っていただけに…普段なら
何でもない事でも、少し相手が遅れるのだろうかと考えるだけで落胆してしまう。
「…あいつに、限って珍しいな…」
ボソリ、と呟いた瞬間…ガチャと扉が開く音が聞こえた。
顔を上げると、時計の針は丁度ジャスト7時。
それと同時に…上質の黒いスーツとカシミアのコートを身に纏った眼鏡の
男が室内に入っていく。
「ただいま、御堂…。今夜も美味そうな料理を用意してくれているな…。
この匂いはビーフシチューか…?」
コートを脱いで、リビングのハンガーにつるしていきながら…自分をこれだけ
やきもきさせた男は何でもない事のように、不敵な笑みを浮かべている。
「あぁ…そうだ。数日前から仕込んで用意してあったのを…今日完成させた。
多分、君が食べたら驚くレベルでの最上の仕上がりだ…。楽しみに
していると良い…」
御堂もまた、先程までの不安を全て隠して…いつも通りの、強気な態度で
彼と会話を交わしていく。
「君は先に席に座っていてくれ。…今日は君が主役だ。私の方で全ての
準備をして…祝わせて貰いたい。良いな…佐伯?」
そうして、相手を歓待する為の準備を御堂は始めていく。
その間、彼の胸は…いつになく高揚し、早鐘を刻み続けていた―
流石に25日から、また更に冬コミ原稿気に入らなかったんで三回目の書き直しに入って
朝4時半に起きて雪幻書いた後に、往復の電車の中で冬コミ原稿を書くという日々を
イベント前にやっていた反動が本日、思いっきり来ました。
多分、このコンディションだと今日はもう雪幻一本書き上げるだけで精一杯です。
30日は拍手返信と…冬コミ原稿のURLペタっと貼り付ける(表紙挿絵担当の子に
アップして見せる約束していたんで…)で、それを本日の更新分にします。
今後から、イベント参加したり…遠征した場合のみ最初から一日、お休みする
「ほぼ毎日更新」てスタンスで運営していく形にします。
つ~訳で来月の13日はインテックスに旅立つ予定なのでその日の更新は
お休みします(もう最初に言っとく)
今日はもう少し休みます。身体にマジで力が入らない…。(けど風邪は引いてない)
メガミドの企画物は明日、克哉の誕生日当日からスタートします。
無理すりゃ本日中に始められるけど、多分これ以上無理したら…逆に
毎日書いて楽しい、と感じられなくなる気がするので抑えときます。
気持ち的にはう~う~何ですけどね(汗)
開始日時が遅れ気味になってすみません…企画者様(汗)
どうにか雪幻、完結まで持って来れました。
一番最後の話が難産でした。イメージはキチっとあるのに、ちゃんとその通りに
なかなか書き出せないので三時間掛かりましたが…30日中に書き切れてマジで良かった。
やれる限りはやったので満足。けど雪幻…1P 40文字×36行設定で総P数が
78とか行ってました。今までの人生の中で書き上げた作品の中で三番目に
長い物になりましたよ。わ~いわ~い!(一番目のが恐らく300P前後、次が208Pです…)
これから夜に掛けて返信作業やりますです。また沈みます…(ブクブクブク)
※ この話はN克哉が事故で昏睡して記憶を失っている間、夢の世界で眼鏡と
十日間を過ごしていたという話です。それを了承の上でお読みください(やっと完結です!)
『…報告は判った。後の事は君の判断で行ってくれ。…佐伯、任せたぞ』
「はい…全力でやらせて貰います。…孝典さんも、出張先でどうか身体を崩さないように
して下さいね…」
『っ…! うむ、判った。君も…体調管理はしっかりとな…克哉…では…』
そうして、慌ただしく恋人は携帯電話を切っていった。
その様子に克哉はクスクスと楽しそうに笑いながら、こちらからも通話を切っていく。
「…相変わらずあの人は可愛いな。未だにセックスの時以外でオレが下の名前で呼ぶと
恥ずかしそうにするんだから…付き合ってもう、5ヶ月目に入ろうとしているのにね…」
一旦、会議室の机の上の隅に携帯電話を置いていくと…ファイリングされた資料や
契約書の内容を入念に確認し、安堵の息を突いていった。
あの事故から二ヶ月が経過し、今では克哉の身体も完全に回復し…休んでいる間に
空いてしまった仕事の穴を必死になって埋め続けていた。
努力の甲斐があって、どうにか遅れも取り戻し…現在ではMGN内で、御堂が
出張期間中の留守を任されていた。
プロトファイバーに続く新製品の新しいラインを確保する為に、御堂が遠方の地に
出張してから早一ヶ月。昼間は仕事の打ち合わせの為に、夜は恋人としての
ラブコールという形で…御堂との関係は緩やかに続いていた。
「…でも、事故の時から…あんまり克哉って呼ばれる機会もなくなっていたから…
ちょっと嬉しかったかな。よし、これで確認も終わったし…一息入れるかな…」
全ての書類を入念にチェックし終えて、記載漏れや内容の齟齬がない事を確認すると
大きく伸びをしながら椅子から立ち上がっていく。
自動販売機で缶コーヒーの一本でも買って、休憩を入れようと会議室を出て…廊下を
ゆっくりと歩き始めていく。
季節はすでに冬から、桜の花が舞い散る時期へと変わっていた。
二月の初めに事故に遭ってから、丁度今日で二ヶ月くらいだろうか。
窓の外に見える見事な桜並木に、ヒラヒラと舞う桜の白い花ビラ。
その白い花が風に舞う様は…一瞬だけ、雪が舞い散る光景に重なって見えて…
チリリ、と克哉の胸を苦く焦がしていった。
「…やっぱり、まだ割り切れていないな。今なら…あの時のあいつの選択肢が正しかったって
理解出来るけれど…」
今の克哉には、白い雪は…あの夢の世界を思い出す鍵へと繋がる。
徐々にあの夢の中で起こった事を思い出し始めたのは一ヶ月程前…御堂が出張に出て
身近にいなくなった頃辺りからであった。
そして、つい数日前に…心を通わせて結ばれた事も、泣いて傍にいたいと縋ってしまった
事も…眼鏡に白い光の中に突き飛ばされた事も…全て蘇った。
「バカ…本当に、お前は…勝手過ぎるよ…。オレの気持ちなんてお構いなしに物事を
運んで…。おかげでどうすれば良いのか…未だに答えが出ないじゃないか…」
すでに声の届かない相手に、文句を呟いてみるが当然の事ながら…答えはない。
昏睡状態から目覚めた時から、以前よりも…自分の心の奥に広がっていた空虚なものが
小さくなっているのは自覚していた。
しかしそれが…あいつが、自分の中に溶ける事で齎された安定である事を知って、酷く
切なくなったのも本当だった。
(…もう一度で良いから、オレはお前と話したい…のに…)
窓ガラスに手を突いて、そっと窓を見つめていく。
硝子の中に透明な自分の面影が浮かび上がっていく。
見慣れた自分の顔。そしてその向こうに…怜悧な印象を持った、もう一人の
自分の顔を思い描いていった。
忘れられない。もう忘れたくなかった。
言いたい言葉も、憎まれ口になるのか…どうして? という問いかけの言葉なのか
それとも感謝や好意を伝えたいだけなのかも、判らない。
けれどともかく…もう一度だけ会いたいと願う気持ちだけが、思い出せた日からずっと
膨らんでいく。
「…もう一人の自分自身とは言え、他の男にこんなに会いたいと思っているのを考典さんに
知られたら…怒られる、かな…?」
自嘲気味に微笑みながら、窓の外の桜が静かに風に吹かれて散る様を眺めていった。
ヒラリヒラリと白い雪が舞う景色を、あの十日間はずっと…ロッジの中で見ていた。
冷たい空気も、白い息も…春を迎えた今ではすでに遠かった。
「…それでも、兄さん…オレは、貴方に…もう一度で良いから…逢いたい…」
記憶が過ぎると同時に、頬から涙がすっと伝い始めた。
今の時間帯はこの廊下に人が通りかかる事は滅多に無いことは判っている。
だから…人目をはばからずに一粒、一粒と雫を瞳から零していく。
ずっと胸に秘めていた本心を呟くと同時に…克哉の胸の中に、二ヶ月前の自分が
目覚めたばかりの時の記憶が鮮明に蘇っていった。
―起きたか! 本当に良かった! 克哉!!
―佐伯君! 良かった…こうして目覚めている君の姿をまた見る事が出来て…。
―君が目覚めてくれて、ガラにもなく私は感謝したよ…神という存在、にな…。
目覚めた直後に、それぞれ…本多、片桐、御堂に言われた言葉を反芻していった。
事故で昏睡状態になってからの十日間、この三人は毎日のように早朝と仕事明けに
克哉の元に通い、それ以外の…MGNの顔見知りの社員や、元の八課の同僚たち
そして栃木県在住の両親やご近所の人たち。
他にも高校や大学時代の友人といった、すでに何年も連絡を取り合っていない間柄の
人間も…話を聞きつけて、何人か尋ねて来てくれたりしていた。
普段、普通に生きている時は克哉は自分自身はそんなに人に愛されたり、傍にいる事を
望まれたりするに値する人間ではないと思い込んでいた。
しかし…このような事態になって、どれだけ多くの人間が自分の事に関心を持って
思い遣ってくれていたのか…初めて実感出来たのだ。
許せない、と思う気持ちが残っているけれど…今なら何故、眼鏡が自分を突き離してまで
現実に戻らせたのか理解出来た。
ようするに…現実の、自分と関わりのある全ての人間か…眼鏡ただ一人だけを取るか。
あの夢の中に残るという選択肢は、そういう意味合いを帯びていたのだ。
『お前か…俺か、どちらかがこの光の中に入って…現実に戻らない限り、佐伯克哉は
決して目覚める事なく…生きたまま、死んだのと同然の存在に成り果てる。
当然…病院の入院費その他は、俺たちの親か…御堂のどちらかが払い続ける事と
なるだろうし…生きているだけで負担を掛けるだろう。俺はそんな人生は…御免だ』
その言葉を最初に眼鏡に言われた時は、ショックだったけれどそこまで実感は
伴っていなかった。
しかし今なら…あの言葉がどれだけ重い意味合いで言い放った言葉だったのか
克哉にも理解出来ていた。
あの世界で…二人きりで生き続ける事を選択していた場合、自分の下に駆けつけて
くれたり見舞いに来てくれた人達の全てを切り捨てる事とイコールだったのだ。
理性でその事は理解している…判っているのに、全てを思い出した以上…平静では
いられなかった。
あいつにぶつけるなり、伝えるなり…感情に決着をつけない限りはこの強い感情は
自分の中で燻り続けるだろう。
「バカ…本当に、お前は勝手で…傲慢で…けれど、まだ…オレは…」
お前を、好きなんだ…と呟こうとした。
しかしすぐに…胸ポケットに収めていた携帯が震えて、新着のメールが届いた事を
告げてくる。メールフォルダーを開いて確認していけば…送信主は御堂からだった。
『週末には仕事に一区切りをつけて…必ず君の処に戻る。どうか待っていてくれ…』
それは御堂らしく、簡潔で一見…素っ気無いくらいの文面だった。
けれど仕事の鬼と言われているあの御堂が、就業時間内にわざわざ自分に向けて
メールを送ってくれる事など、関係を持ち始めた最初の頃からは想像出来ない事だった。
…文章を見て、ふと…蘇りかけた恋情を密かに収めていく。
そう、自分はまだ…眼鏡の事を忘れていないし、想う気持ちが残っている。
しかし…現実に戻った今、自分は御堂の恋人という立場のままだし…この世界に
戻って来た以上は二度とあの世界に帰る事は出来ないのだ。
大きな溜息を一つ突いて…どうにか、荒ぶりかけた己の心を宥めていく。
「…貴方は、それでも…こんなオレを気遣って…必要としてくれているんですね…
孝典、さん…」
現在の自分の心の半分は、眼鏡の事で占められている。
だから優しくされると、どうしようもなく苦い思いも同時に吹き上げてくる。
けれどそれと同時に…あの事故をキッカケにこの人と気まずい思いになりながら
別れる羽目にならなくて良かったと思う気持ちもあった。
あの事故が起こる直前から、春先から御堂は一ヶ月間の長期出張に出る事になる事は
聞かされていた。
いつも一緒にいる事に馴染んで来たばかりの頃だった為に、最初はショックで…。
モヤモヤしていた時期に、御堂の運転している車に乗っている時に事故に見舞われた。
だからふと思うことがある。
あの時期…記憶を失ったままで目覚めているか、もしくは…あの夢の中での記憶を
抱いたまま御堂と体面していたら、自分達の関係はどうなっていたのだろうか…と。
会えなくなる時間が長くなる時期に、自分が御堂の事を忘れたまま過ごしていたらと思うと
ぞっとした。
そういう意味ではあの十日間は自分にとっては必要なものだったと思っている。だが…。
「…けじめ、くらい…つけさせてよ…。もう、傍にいたいとか…この想いを成就させたい、
なんて…望まないから。一度だけでも…会いたい、よ…。じゃないとこのまま…」
罪悪感と後ろめたさで…御堂の好意を素直に受け取れないまま、顔を合わせる事になる。
廊下で、こんな風に一人泣きじゃくるなんて…みっともない事だって判っている。
それでも一度…堰を切ったように溢れる想いは止まらない。
涙をポロポロと零し、掌で口元を覆って顔を隠していくと…ふと、脳裏に聞こえる声があった。
『…こんな処で、泣くな。誰かに見られたら…どうするつもりなんだ…?』
「えっ…?」
驚愕に目を見開く。
すると次の瞬間…克哉の意識は、ふいに誰かに引っ張られるようにして…
白昼夢―幻想の世界へと一時招かれていく。
自分の意識が、ストンと…どこかに落とされたような不思議な感覚だった。
そして…瞼を開けば、其処に広がるのは…緑が萌ゆる大地に眩い光の粒子が…
キラキラと舞い散っている光景だった。
それは今の克哉の心の心象風景を映し出していた。
かつて記憶を失っていた時は木々にも葉は一枚もなく剥きだしになっていて
冷たい空気と雪で覆われていて、他者の拒絶を表していた。
しかし今の克哉は事故をキッカケに、他者の好意を嬉しく思い…感謝するように
なっていた。だから大地からは雪の姿が消えて、これだけ鮮やかな緑芽吹き、
晴れ渡るような青い空が広がっている。
その景色の中に舞う光の雪は思わず目を奪われるくらいに…幻想的で綺麗だった。
「うわぁ…!」
『綺麗なものだろう…? お前の為にわざわざ用意してやったんだ…感謝しろ…』
そして、その大地に…懐かしい、もう一人の自分の姿が立っている。
ただあの時と違うのは、きっちりとスーツと上質そうなコートを身に纏っている
姿であるだけだ。
最後に見た時とまったく変わらぬ不敵な微笑みを見れたことが、やっと声を聞けた事が
嬉しくて嬉しくて仕方なくて、地を蹴って…相手の胸に飛び込んでいく。
「兄さんっ!」
久しぶりに相手をそう呼ぶと…苦笑めいた笑みを浮かべながら、克哉をしっかりと
受け止めてくれていた。
夢の世界で、ほんの短い時間だけ逢瀬し…抱き合う。
『相変わらず…お前は涙腺弱いな。記憶を失くしてからお前が俺の前で泣いたのは
一体何度目だ…?』
「…悪かったね。けど…貴方がオレを泣かすような真似ばかりするんじゃないか…
最後の、時だって…」
恨み言を思いっきり言ってやろうと思って相手の顔を睨んだが…眼鏡の方が
思いがけず、優しい眼差しをしていたので…止めることにした。
代わりに唇を寄せて、小さいキスを落として…自らの文句を封じる事にする。
「…止めた。せっかく貴方に逢えたんだから…伝え損ねていた言葉をちゃんと
言っておくことにする…。いつまで、こうして顔を合わせていられるか判らないし…」
「…あぁ、そんなに時間はないぞ。今日はたまたま俺の調子が良くて…単独で
存在していられるがな…。で、伝えたい事とは…何だ?」
そう聞き返すと同時に、ふふ…と小さく笑って相手の耳元で囁いていく。
『貴方が、大好きでした…』
『っ…!』
耳朶にキスを落とすと同時に、正直な気持ちを…過去形にして、眼鏡に伝えていく。
それに眼鏡は思いっきり驚愕したが、すぐに平静に戻って…初めて、言ってくれた。
『あぁ…俺も、お前を愛していたよ…』
眼鏡もまた、過去形にして…想いを告げていく。
それ以上は語らなくても、判った。
「…やっと、言ってくれましたね…。これで…思い残す事はないです…。貴方と過ごした
日々の事を忘れる事はないけれど…これで区切りをつけて…ちゃんと御堂さんの手を
オレは取る事が出来ます…」
相手に、最後に過去形にして思いを告げる事。
眼鏡にただ一度で良いから…好きでも、愛しているでも良いから思いを告げて欲しかった事。
それが克哉がつけたいと思っていた、この恋の「けじめ」だった。
『そうか…気は済んだか…?』
「えぇ…後は貴方は約束通り…オレの中にいてくれた。それが判っただけでも…もう、充分です…」
透明な涙を浮かべながら告げると…今度は眼鏡の方から口付けてくれた。
唇を重ねた処から、ゆっくりと溶け合う感覚が走っていく。
そのまま…眼鏡の身体はゆっくりと透明になり…そして、この世界の中に舞う光の粒子の
一部となっていった。
その儚い逢瀬の時間を噛み締めながら…ゆっくりと克哉の意識は現実の方へと波長が
重なっていった。
(…夢? ううん…けど、判る。さっきよりも…しっかりと…あいつがオレの中に
溶けているというのを感じ取れる…)
ドクンドクン、と心臓が別の意思を持ったかのように脈動していた。
間違いない。今なら確信出来る。
この心の中に、紛れもなくもう一人の自分が存在し…今、自分の意識の中に
溶け込んでいる事を―
「…約束を、守ってくれてありがとう…兄さん…」
感謝の気持ちを込めながら、窓の外を見つめていく。
それと同時に、三時の休憩時間を告げる鐘の音が会社中に響き渡り、克哉は
慌てて自動販売機が設置されているフロアへと向かっていった。
「うわっ! 急がないと…自販機の前が混み始めてしまう!」
元々、自分は飲み物を買いに廊下を歩いていたのだという事を思い出して、全力で
自販機の前に向かって、愛飲しているメーカーの缶コーヒーを購入していく。
ふと、携帯電話を開いていくと…克哉の方から、短く御堂に対して…返信の
メールを打ち込んでいく。
今はもう、御堂に対して罪悪感はない。
自分の中であの夢の中での恋に関してのけじめはつけたし、その相手は自分の
中に溶けて…一部となっているのだ。
迷いなく文字を打ち込んで、相手に送信していく。
『オレも貴方と逢えるのを楽しみにしています。孝典さんもどうか仕事、頑張って下さい』
そう、素直な気持ちを打ち込んで…外の風景を眺めていく。
あの事故で、仕事上に大きなロスが生じてしまった事は事実だけども、それ以上に
得たものも大きかったと思う。
平穏は得がたいものだが、それが続くと人はその有り難味を忘れてしまう。
苦難は、痛みを伴うけれど…自分自身を磨き上げてくれたり、今までは見えなかった
視点に気づかせてくれる一面もある。
御堂がこんなに自分の事を必要としてくれている事を実感出来たのも、
この事故に遭ってからの事だ。
あの夢の中で過ごした十日間は…同時に、眼鏡の方に抱いていた畏怖や不信感を
拭い、もっとも自分の中で彼を信頼出来る存在へと 変えてくれた。
今は…眼鏡が、自分の一部となってくれた事…息づいている事が、頼もしいし…
嬉しく思っている。
その変化が一番の収穫であったかも知れなかった。
「さて…結構な時間、サボってしまったし…また本腰入れて仕事をしないとな…。
孝典さんに任されたんだから、キチンと信頼に応えないとな…」
缶コーヒーを飲み終えて、それをくずカゴの中に放り込んでいくと…克哉は
御堂の部屋へと真っ直ぐ向かっていく。
自分がやらなきゃいけない事はまだまだ沢山ある。
幻想の世界ではなく、現実の世界をしっかりと生きて…人と関わってこれからも
自分は歩いていかなければならないのだ。
自分が成すべき事。
必要とされている事。
やれることがある事。
思い遣って見守ってくれる人がいる事。
胸の中に、切ない形で終わった恋の記憶も一つの糧にして。
自分よりも遥かに物事を見渡せるもう一つの自分に見守られながら…。
今、この世界に自分に生きる場所にある事を感謝をしていきながら、しっかりと克哉は
現実の中でこれからも生きていくだろう―
あの雪の世界は幻となって消えても、その思い出は克哉の中で消える事はない。
その記憶を抱きながら、克哉は歩み続けていく。
これから先に広がっていく、自分自身の未来へと―
本日取り付けました。(作業時間5分以内でした)
友人Yさん、それをクリックするとOPの曲と映像が流れたり、LINKの処を
押せば公式サイトに行けるので宜しく(私信)
そして本日もめっさ切羽詰っています。
拍手返信は最早個別でする暇ありません。29日から30日のどちらかの日程で
纏めてしますのでそれまでお待ち下さい。
冬コミ用の新刊原稿、本日どうにか仕上がって印刷出来る段階まで持って
いきましたが、問題が一つ…。
表紙と挿絵がまた手元に届いていません!(実話)
…何ていうんですかね。年末のクロネコさんの忙しさを考慮しないで
締め切り設定した私のミスだったりします。
ギリギリまで待って届かなかったらなしのバージョンで十部だけ刷るという
形にしてイベントに間に合わせる形にしたけど…がう~という感じです。
後、連載小説も今晩から明日に掛けてちょっと外泊するので明日の最終話の
更新は夜遅くになると思います。
つか、日付変更までに間に合えば良いんですけど…ね(遠い目)
とりあえず、雪幻は眼鏡側の結末は書き切りました。
後、最終話はどんな形で纏めるのか…待っていてやって下さい。
どんな話であろうとも…最後まで読んで「こんな話を読むんじゃなかった」という
気分にさせるものは書かない。
それが私の基本スタンスなので。
んじゃ…また修羅場の海に沈んで参ります。明日、どこかで見かけましたら宜しく
お願いします。多分、鬼畜眼鏡スペースで色んな方の本を買い漁っていると
思います。ではん!
※ この話はN克哉が事故で昏睡して記憶を失っている間、夢の世界で眼鏡と
十日間を過ごすという話です。それを了承の上でお読みください(クライマックス!)
眼鏡の脳裏にふと、この世界で克哉が最初に目覚めた時のやりとりが浮かんだ。
ロッジの中までどうにか運んで、ソファの上に横たえていくと…手の中にしっかりと何かを
握り込んでいた事に気づいたのだ。
―こいつは一体、何を握り込んでいるんだ…?
ふと気になって、一本一本指を丁寧に外していきながら…その握り込んでいた物を
出していく。それは綺麗な楕円を描いた水晶のような石だった。
―…何だこれは? 何でこんなものを…?
不思議に思いながら、それを暫く眺めていくが…特に何かある訳でもないただの
水晶のような石みたいだった。怪訝に思いながらそれをポケットに収めていくと…
ようやく、さっきから寝ぼけていた克哉の瞼が開かれていく。
―…あの、すみません…。ここはどこで、オレは誰ですか…?
視線が合って、向こうが発した第一声は…記憶喪失の人間が言う定番のあの
言葉だった。それを聞いて、一気に体中から力が抜けていくような感じがした。
本当に自分は十日間も、こんなのと一緒に過ごさなくてはならないのか?
そう自問しながら…ぶっきらぼうに答えていってやる。
―ここは俺もどこだか、正確には知らん。で…お前の名は佐伯克哉だ。
それくらいも覚えていないのか?
―す、すみません…オレ、本当に何にも…覚えて、いなくて…
申し訳なさそうに顔を伏せて、まごついている姿はまるっきり迷子のようだった。
―ん、えっと…それじゃ、貴方は…オレの兄さん、ですか…? さっき何か頭の中に
妙な声が響いていて…目覚めた時に最初に会う人が、オレの兄さんだって…何か
そんな風に言っていたんですけど…あの、本当…でしょうか?
その台詞を聞いた時、本当にあの男はそんな事を吹き込んでやがったのかと瞬間、
猛烈な殺意を覚えた。
しかしどうにか己の内側に秘めて、せいぜいコメカミに青筋を浮かべる以上は表に
出さずに少し考え込んでいく。
(…まったく、面倒な事を。しかし…良く考えれば、そっちの方が良いのかもな。
俺とこいつは同じ名前だし…お互いを同じ名で呼び合うよりは、こいつが『兄さん』と
俺を呼ぶほうが適当な名前を名乗るよりはややこしくなくて良いかも知れんな…)
そう、この世界で一緒に過ごすのだから…相手に名前を聞かれるのは必須だ。
しかし自分とて紛れもなく「佐伯克哉」なのだし、それ以外の名前を名乗るのは何となく
気が引けた。
―あぁ、そうだな。お前がそう信じられるのなら、そう呼べば良い。どうする…?
―判りました。宜しくお願いします! 兄さん!
何も覚えていない状態でも、肉親と思える人間が傍にいた事で向こうの方は何故か
安堵したらしい。こちらは曖昧に返答したにも関わらず、まったく疑う事なく信じ込む相手の
単純さに一瞬、呆気に取られた。
(こいつの頭…本当に大丈夫か?)
真剣に今の克哉の精神や頭の状態を心配したくなったが、相手の方は変わらずに
ニコニコと無邪気に笑っているだけだ。
この感情表現の素直さも何だと言うんだ? これじゃあまるっきり子供だ。
不安そうな顔したり、いきなり嬉しげに笑ったり落差が激しすぎてこちらの方が
先に疲れそうだった。
―あぁ、宜しくな。で…お前、これに心当たりは無いか? お前がしっかりと握り込んで
持っていたものだが…?
さっきから気になっていた水晶のような石を相手に見せていくと…克哉の方はまったく
心当たりがないようだった。きょとんとした顔をしながら…ジッと石を眺めていく。
―…いえ、まったく。…それ、本当に…オレの持ち物…何ですか?
あまりに不思議そうな顔をして言うので、一気に返す気を失くした。
それに今の危なっかしい状況で持たせたら、何かの拍子で失くしたりしそうなので…
一応自分が保管する事にして、もう一度ポケットに収めていく。
―…今のお前に持たせては危なそうだな。オレが一応持っておく。…というか
そんなにビクビクした態度を取るな。…オレを怒らせたいのか?
―えっ、あの…す、すみません!
こちらがあまりに不機嫌そうな態度で応対していたからだろう。
克哉の態度が次第に怯えたようなものに変わっていく。
それに気づいて、更に眼鏡の機嫌は悪くなっていったが…それもまた克哉の
恐怖心を一層育ててしまっていた。
―ったく…仕方が無い。暖かいものでも持って来てやるから少し待っていろ…
一旦、気分の仕切りなおしでもしようと…ソファの上から立ち上がって、キッチンで二人分の
飲み物を淹れて来てやる。
紅茶の中に、ブランデーを数的垂らしたものだ。本当ならロックのままで煽って憂さ晴らしでも
したい処だが、今の処蒸留酒の類はこれ一本しか見つかっていない。
自分が本気で煽りたい時の為に温存しておく事にして…克哉の元に淹れたばかりの暖かい
紅茶を手渡していってやる。
―ほら、淹れて来てやった。とりあえずこれでも一杯飲んで…気を落ち着けろ。
―は、はい…ありがとう、ございます…
顔を引きつらせながらもどうにか笑って、克哉はマグカップを受け取っていくと…ほんのりと
ブランデーの香りが立ち昇っている紅茶の味が気に入ったらしい。
ようやく強張りが溶けて、人懐こい表情を顔に浮かべていく。
―美味しい…
満面の笑みを浮かべながら、こちらに微笑みかける様子を見て…何となく、少しは
優しくしてやっても良いかなという気持ちが生まれた。
苛立ちながら、子守をするような気持ちで接していた最初の日の思い出が…頭の中を
過ぎって、眼鏡は自嘲的に笑っていった。
「…あの日、あいつとこの世界で初めて言葉を交わした時には…こんな心境になるなんて
まったく予想もしていなかったがな…」
多分…あの日に自分の中に芽生えた感情は、父性的なものだったのかも知れない。
だから…克哉を見送った後も感傷めいた気持ちはあるけれど…後悔はなかった。
自嘲の笑みが次第に穏やかなものへと変わっていく。
本当に最初から五日間ぐらいまでの克哉は何かあるとこちらの顔を伺ってばかりで
すぐにビクビクするくせに、少し優しくすると無邪気な笑顔ばかり返してきた。
20歳以後の記憶を取り戻したばかりのあいつも、基本的に感情表現がストレートで
自分を心から慕って、懐いてくれているのが判った。
この十日間に沢山触れた克哉の笑顔を浮かべながら…真白い雪の中、一人で眼鏡は
立ち尽くしていた。
気づけば、白い光は完全に消えて…辺りには雪の結晶が舞い散っていた。
何もかもが純白で覆われた世界。
冷たい外気に晒されながら…眼鏡は一人、空を仰ぐ。
もう元の世界に戻る為の扉は完全に閉ざされたようだった。
それを確認していくと…その場で目を瞑り、己の心の奥底へと意識を集中させていく。
「…お前との、約束を…今、果たしてやろう…」
自分達の意識の垣根を取り除き、一つになる為の儀式を…眼鏡は始めていった。
己の深層意識へ潜っていくと…其処に一つの、黒い真珠のような…感情の結晶が
息づいているのが判った。
それは…かつて、親友に裏切られ、欺かれていたという真実を知った際に生じた
佐伯克哉の純粋な形での、憎悪の結晶だった。
この憎悪の結晶こそが…佐伯克哉の心が二つに分かれた、最大の理由だった。
それを自分の心の中から見つけ出すと…一言、高らかに告げていく。
「お前への憎しみを、全て捨てて…俺は、許す。もう…お前の事は全て忘れて
水に流してやるよ…」
そう、自らの心に言い聞かすように告げた瞬間…自分の中で息づいていた結晶に
変化が起こった。それを見計らうと同時に、己の手の胸の内に手を突き入れて…
その結晶を引きずり出した。
…眼鏡の掌に、黒い真珠のようなものが…握り込まれていた。
これこそが、眼鏡の核となるもの。12歳の時の克哉が抱いていた…ただ一人の
人間への憎悪と、裏切られていた事の悲しみが形になった結晶だった。
これが、佐伯克哉の心を二つに引き裂いた原因だった。
優秀で何でも出来た頃の自分のままでいた為に、一番身近な人間に
強い劣等感を与えていた。
それに憎悪して、表面上は親友の振りをして…自分がクラス内で孤立して
虐められるように仕向けていた…大事な親友だった少年。
その少年に抱いていた執着も、憎悪も…悲しみも、友情も…全て自分の中から
流す事を決意して、眼鏡は黒い真珠を…己の手の中で握りつぶしていった。
「くっ…!」
流石にその瞬間、強い衝撃が全身に走った。
その瞬間…克哉と、眼鏡を隔てていた最後の障壁が…音を立てて崩れていった。
「…あるべき、形に…戻るだけ…だ。あの男の掌の上で踊ってそのレールを辿るだけの
人生なんて…俺には、御免だからな…」
―克哉とこの世界で結ばれた日。
彼が眼鏡と結ばれた事で、殆どの記憶を思い出したように…眼鏡もまた、その瞬間に
自分達が二つに分かれた事の発端の記憶を鮮烈に思い出していた。
そして、気づいたのだ。あの時点で…自分達を隔てている三つの壁の内の二つは
壊れてしまった事に。
佐伯克哉と眼鏡を別れさせていた三つの要素。
それは12歳までの以前の記憶を克哉は所有せず、捨て去っていた事。
克哉は眼鏡をどこかで恐れ、眼鏡は克哉のバカさ加減に苛立っていたせいでお互いを
快く思っていなかった事。
そして…胸の奥に純粋な形での憎悪を、眼鏡の方だけが所有していた事。
これらが自分達を別個の意思を持つ存在にしていた最大の要素だった。
この十日間で佐伯克哉はそれ以前の封じていた記憶の殆どを思い出し
自分達はいつしか…心から惹かれあって、嫌悪感も忌避感もまったくなくなって
しまっていた。
だから眼鏡は最後の一つを、手放した。それが…自分という存在を単独で
存在させる為の核であった事を承知の上で…。
『貴方がそのような結末を選び取るとは…私にとっても、予想外でした…』
ふいに、あの男の声だけが脳裏に響き渡る。
こんな芸当をしてくる奴など、Mr.R以外には存在しない。
「…そうか。それなら、俺の勝ちだな…。お前の予め用意しておいたレールの
どれにも存在しない…選択肢、だろうからな…」
強気に微笑みながら、あの男に対して勝ち誇っていく。
恐らく…Mr.Rは御堂と克哉が結ばれて、眼鏡が意識の底に眠り続けている状況を
つまらない、と感じていたのだろう。
だから交通事故をキッカケに、御堂と克哉の二人を引き裂くべく…眼鏡の意識を
起こして無垢な状態になった克哉を任せていったのだ。
克哉が御堂の事を忘れている間に、眼鏡がその間に割り込み…欲望の虜にするか、
恋心を抱かせるようにして…御堂との間に亀裂を生じさせる。それが男の筋書きだった。
奴が言っていた、克哉が現実に戻るか…眼鏡が戻るか、二人ともこの世界に閉じこもるか、
もしくは二人とも現実に戻るか。
結ばれた後で告げられた四つの選択肢は、どれを選んでも…御堂と克哉との間に
いずれか、亀裂が生まれていただろう。
だから眼鏡は選んでやった。五つ目の…この男が想定していない、選択を。
自分達をあるべき形へ戻して、あいつを見守り…記憶を一時、克哉から奪う事で
御堂との仲を守ってやるという…Mr.Rの想定になかった筋書きを―
『おやおや…もしかして、私の考えは…読まれていた訳ですか。だから…貴方は、
このような選択肢を選ばれた訳ですか…?』
心底楽しそうに、男がクスクスと笑っているのが判った。
「…当然だ。俺が…お前の掌の中でいつまでも操られているだけだと思っていたのか…?
俺は…お前の思い通りに操られるのは、不愉快だからな…」
『…不愉快だ、という理由だけで…このような馬鹿げた真似をされた訳ですか? 貴方が
そのような短絡的な方だとは…予想外でしたね…』
「…違うな。俺達が二人に分かれた理由そのものが、お前の敷いたレールだった。
本来あるべき形に…正しただけ、だ。俺達は元々一つの存在だった。それに気づいたから
お前の思惑など跳ね除けた。それだけの話だ…」
消え入りそうになる意識を必死に繋ぎとめながら、己の運命を弄んだ謎の男に
一言、一言、しっかりと自分の意思を告げていく。
親友に裏切られた日、この男が銀縁眼鏡を手渡して…12歳までの記憶と憎悪の感情を
意識の底に沈めさせた事が、眼鏡の意識が生まれた発端だったのだから。
『なるほど…ようするに貴方たちは、私の手に余るだけの資質と…心の強さを持っていた
存在であった。ただそれだけの事ですね…。克哉さんと言い、貴方と良い…ここまで
最後まで私の予想を裏切るような真似をなされるとは…ね』
「…そうだ。俺もあいつも…お前が用意した運命などには屈しない。これからは
俺が一つになって…しっかりとあいつを守ってやる。今後…お前に付け入る
隙など、決して与えてやるつもりは…ない…!」
強い意志を持って、はっきりと告げていく。
それは一人の男としての想いと同時に、自分の身近な存在を必死になって守ろうとする
家族愛に似た感情なのかも知れなかった。
子供のようになった克哉と接している間に、あいつを守りたいという気持ちがいつしか
芽生えていた。だから…眼鏡はそれを選択した。
損な役割だと、馬鹿な真似だと承知の上でも…自分はこの男から、あいつを守って
やりたいと…現実から戻って来た際に思ったのだ。
『それは…それは、楽しみです。ククッ…本当に貴方達は私を退屈させませんね…。
そして本当に残念です。それだけの強い意志に、高潔なお心。まさに私の主になるに
相応しい素質を貴方は持っておられたのに…もうじき、消えてしまわれるんですね…』
「違うな…俺は、あいつの元に還るだけだ。お前に分けられる前の…本来の
心の形に、な…」
消えるつもりも、死に絶えるつもりもない。
あいつの中で、憎しみとか悲しみとかそんな感情を全て捨てて…守る為に
今後は生きていくだけの話だ。
『そうです、か…。なら、そろそろお別れの時間のようですね…貴方の存在が
少しずつ弱まっているのを感じますから。ごきげんよう…もう一人の「佐伯克哉」さん…』
そう歌うように告げて…男の声は一切、聞こえなくなっていく。
耳に届くのは…吹き荒ぶ吹雪の音とゴウゴウという、風の音。
そして…この世界が大きく揺れ動いて、緩やかに崩壊していく轟音だけだった。
(もう…この世界も、終わるようだな…)
克哉が現実に戻った以上、この世界もまた終焉を迎えようとしている。
それに気づいて…掌の中の、克哉の中にあった…この十日間の記憶の結晶を
緩やかに転がしながら眺め始めた。
それは御堂との記憶の結晶よりも少しいびつな形であったけれど…同じくらいに
キラキラと輝いていた。
大切な記憶だけが、このように人の心の中では結晶化されて宝石のような輝きを
放っていく物なのだから。
それを見て…眼鏡は満足そうに微笑んだ。
あいつの中では、このような結晶が出来るくらいに…この十日間をとても大事に
想ってくれていた。これはその証のようなものであった。
それをしっかりと胸の中に握り込んで、眼鏡はそっと目を閉じていく。
外の世界で…克哉が、御堂や八課の仲間達と言葉を交わして…喜びの涙を
流しているのが伝わってきた。
「…ったく、あいつは本当に…良く、泣くな…」
つい憎まれ口が突いてしまうが、その顔は穏やかだった。
この記憶は…何週間か、自分の胸の奥だけに秘めておくつもりだった。
そして御堂との仲が安定した頃にでも、夢の中でこんな事があったのだと…それくらい
思い出してくれれば良いと思った。
誰かの敷いたレールの上に乗せられる事も。
身近な人間に負担を掛けてまで、この世界の継続を願わなかったのは眼鏡の意地でもあり
矜持でもあった。
それを選択する事によって、この恋が成就する事が叶わなくても…眼鏡は自分の意思を
折り曲げる事よりも、己を貫く事を選んだのだ。
真っ白い世界の中に、凛として眼鏡は一人…大地を踏み締めていく。
その様子は、まるで一匹の気高い獣のようでもあった。
もうじき、この辺りも崩壊し…この世界と共に自分の意識もまた、佐伯克哉の中に
溶けていく事を承知の上で…その場から一歩も動かず、祈るように瞳を閉じていく。
「…約束を果たそう。お前の中で…ずっと、俺は見守っていてやるよ…」
そう最後に呟いた声には、一片の迷いもなかった。
これは自らの意思で選んだ選択肢。
その最後に後悔する事などみっともない以外の何物でもないのだから。
だから彼は静かな笑顔を浮かべながら、受け入れて―白い世界の
消失に飲み込まれていく。
白い雪が舞い散る中、幻のように眼鏡の身体は消えて―克哉の心へと
還っていった―
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
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当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
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…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。