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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 こんばんは、香坂です!
 本日は太一の誕生日当日ですね! 
 という訳で昨晩、こっそりとお祝い絵チャットの方に参加してきました~!
 ついでに誕生日お祝い小説もアップしました!!

 『大切な気持ち』(太一誕生日お祝い小説 太一×克哉 甘々)

  後、拍手の方にも昨晩の深夜に絵チャット内で出たネタモノのあらすじを
期間限定で掲載してあります…(遠い目) 11月25日いっぱいでこっそりと
削除しますのでそれまでに興味ある方はどうぞ(ヤケ)

 昨日の絵チャットは…人数は終わりの方まで十人以上いましたし、
何か知っているサイト様の管理人様がわんさか参加していて、ひっじょ~に
緊張しまくりました。
 出来るだけ場を乱さないように大人しくしながらコソコソ~と参加して
ましたよ!

  けど豪華なメンツの手によって…あみだくじによって公平に振り分けて
絵が描ける人達同士が合作して太一×克哉を描いていくって企画が
ありまして…。
 総勢12人の絵描きさんの手によって、豪華な太一×克哉の
イラストが絵チャット内で生まれました…圧巻でした。
そんな中に自分の絵が入っているのがマジで恥ずかしいんですけど…(汗)
本当はその場にいた皆さんの絵をど~ん!! とここに載せたいですが全員の許可は
もらってないのでとりあえず私が関わった部分のだけでもここに貼り付けておきますv

 

  …右の太一が私です。ホンマにへっぽこな絵ですみませんでしたMさん。
 けど隣の克哉、マジ可愛いです! 合作出来て本当に幸せでしたよ!!
 
 11月23日になった瞬間に、皆で太一おめでとう! のお祝いコール。
 その後、チラホラと帰る人たちに「良いメガ夢を!」と声掛けをしていると
思わぬ展開に…。

「メガ夢ってやっぱりキラキラしているのかな?」
                ↓
「必殺技みたいに光り輝いているのかな?」
                ↓
「必殺技ならやっぱり戦隊ものかな?」
                ↓
「戦隊ものならやっぱりセー○ームーン?」

 みたいな会話の流れで、気づいたら鬼畜眼鏡のキャラクター達に
コスプレをさせて、パンチラさせていくって流れになりました。
 皆さん、お祝いの瞬間に酒飲んでいる人もいて程よく出来上がって
いたんでしょうね。非常に素敵過ぎる展開が待っていました。

 本多のパンチラが!!
 御堂さんやN克哉がスカートヒラヒラさせてる!!
 タキシードマスターがしぶくて格好良い!!
 気づいたら黒太一とセーラーノーマル(克哉)とでラブロマンスが展開されてる!!

 …という流れで、気づいたら絵描き様Cと、私の合作相手M様の二人の手によって
セーラーノーマルと黒太一(ラスボス)との切なく悲しい最終話が紡がれました。
 あれぞ神業です。
 良くお二人とも、あんなに素早く紙芝居のように絵チャットで描いて、ストーリーを
展開させられるものです。
 それに某有名な字書きのH様と、R様のナレーションが時々ついて…異様な
盛り上がりを見せました。極上の楽しい時間でした!
 しかし残念な事に合作相手様も睡魔に負け、C様も家族が起きて来られたとのことで
楽しい時間はあっという間に終わりを迎えました。

  H様とR様に、皆さんが字で書いてくれることを望んでいたので…どっちかが書くようなら
私は大人しくしておくかな~と思っていたんですがね。
 C様が本当に悔しそうに「この続きを誰か書いて下さい…」と残されていたの見て、
書く能力あるのに…黙っているのもズルいかな、と思ったんで…残り三人になった時に
H様に「私が書いても良いですか?」と申し出た結果…一時間後に拍手に掲載した
あらすじを書き上げておりました、とさ(こらこら)

 その場にいたH様にも短いSSを、絵描きのK様に挿絵お願いしま~すとずうずうしく
勢いで言ってしまったので…責任持ってやりますよ。
 年内中に仕上げるのを目標に頑張ります!!
 …本当に、私…その場のノリと勢いで生きている奴ですな。がふっ(吐血)
 


 

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 夕食を無事に終えた後に…すぐ入浴を済まして自室に戻り、ベッドの上に
身体を投げ出していくと…克哉は深い溜息を突いていた。
 もう自分を抑えるのは限界だと、心底感じていた。

 御堂を致命的に壊した日から一年近く。
 抱いても反応を返さない彼をいつしか抱く事も性愛の対象にする事はなくなっていた。
 愛してはいたが…何をしても眉一つ動かない人形のような彼を抱いても、決して満たされる
事はないと思い知らされていたからだ。
 しかし目覚めた日から…徐々に以前の姿に戻っていく御堂を見て、克哉は心から
愛しいと感じ始めていた。

 ―愛しいから触れたい。抱いてどこまでも啼かせて自分に縋り付かせたい

 そんな凶暴な欲望と、二度とあんな風に壊したくないという想いがこの一ヶ月…
克哉の中で渦巻いていた。
 さっき、自分の為に夕食を作っている姿なんて反則だ、といっそ呪いたくなった。
 キスした時、本当はその場で組み敷いてその身体を貪りたかった。

「くそっ…!」

 御堂の温もりと僅かな時間だけ触れた唇の感触がどうしても忘れられない。
 あれから何度も身体が滾って、風呂場で一人で沈めた。
 それでも燻りは消えず、むしろ酷くなっていた。
 自分の中の凶暴な獣が、解放を求めて暴れ狂っているのが判る。
 ベッドの上で何度も寝返りを打ちながら、少しでもその欲望を逃がそうと
試みていく。

「…こんな夜は、一杯引っ掛けて…眠るに限るな…」

 アルコールは血管の拡張作用があり、飲んだ当初は体温を急激に上げていく。
 それから暫くすると一気に体温が下がっていく為に…眠れない時の睡眠の導入には
確かに効を成す。
 しかし同時に飲む事で4~5時間後には眠りの浅くなる周期を呼び込み、熟睡の妨げに
なる一面もある。
 しかしこのままでは眠れない…という時には、眠りが浅くなっても少しは寝た方が
身体の為ではある。そう判断し…ベッドから起き上がって台所を目指し始めた。

 面倒に思って、電灯はつけないまま…手探りで薄闇の中を動いていく。
 御堂の身の回りを面倒見る為にいつしかここで寝泊りするようになっていたが…
暗い中で動いても問題ない程度にはいつも片付けてある。
 闇に目が慣れたこともあって、スイスイと台所の方まで向かっていくと…何か
声が聞こえた。

「………っ!」

 それは微かな呻き声だった。
 何かを必死に耐えているような切羽詰ったものを感じさせる。
 怪訝に思って…微かに開いていた御堂の部屋の扉の前に立ち、中の様子を
伺っていく。
 ベッドの上の布団が、ゴソゴソと蠢いて…僅かな衣擦れの音を響かせていた。

「ぁ……っ…」

 僅かに漏れる声は微量で、夜の静寂の中でなければ耳に届かないほど
か細かった。
 こんな声を漏らす行為は、心当たりは一つくらいしかない。
 先程自分が風呂場でしていたように…御堂もまた、同じように思って
今…そこで自らを慰めているんだろうか?

 ドクン、ドクン、ドクン、ドクン…

 己の心臓の音が、うるさいぐらいに高まっていく。
 宵闇が全てを覆い尽くしているせいか…想像ばかりが大きく膨らんで
制御を見失いそうだ。
 
「ぁ…さ、え……っ…き…!」

 暫くその場に立ち尽くしていると、今までよりも少しだけ大きな声が
ベッドの上にいる御堂の唇から漏れていく。
 それが決定打、だった…。

「………御堂…っ…」

 もう、我慢が効きそうにない。
 己の中の獣が鎖を食いちぎって…解き放たれたのが判った。
 暫く誰の温もりにも触れていない、という理由もあった。
 御堂が壊れてからは、MGNの人間も八課で一緒だった人間も全て
彼の面倒を見ることを優先して…一切の付き合いを絶っていた。
 誰とも深い交流をする事も、バカ騒ぎをする事もなく過ぎていた一年間。

 その孤独もまた…彼の中の凶暴な衝動を育てる一因となっていたのだ。
 大事にして二度と傷つけるような振る舞いはしない。
 克哉がこの一ヶ月、ずっと抱いていたその戒めも今は何の意味も成さない。
 ただ、御堂を思うが侭に貪り尽くしたい。
 その強烈な欲望に突き動かされながら、御堂の部屋の扉を乱暴に開け放って
いったのだった―。

 

   御堂が正気に戻ってから…一ヶ月の月日が過ぎた。
  どれだけ苦しくても、必死になって身体を使い…身の回りの事は自力でするように
努力したおかげで、驚異的なスピードで回復していた。
 指先の感覚がきちんと戻り、長時間立っていても…足先から力が抜けるような事は
もうない。
 その為…御堂は克哉が使用している和食メインの料理本を開きながら…本日は夕食作りに
チャレンジをしていた。

「ふむふむ…包丁をこう使ってニンジンは大きめにザクザク切って…と…」

 本に書いてある通りの調理法を忠実に守りながら、肉じゃが用に
ジャガイモ、タマネギ、ニンジン、シラタキ等を丁度良い大きさに切っていく。
 一応一人暮らしをしていた期間が長い為、御堂は一通りの料理は
作る事が出来ていたのだが…イタリアンやフレンチ系のレシピが多かっただけに
肉ジャガなどは…殆ど作った事がない。
 あったとすれば…学生時代の調理実習でくらいだろう。

「見てろよ…佐伯。今日は私が夕食を予め作っておいて…びっくりさせてやろう…」

 何とも凶悪な笑みを浮かべながら、肉じゃがに必要な材料を全て切り終えていく。
 克哉は日中は…御堂の分の朝食と昼食は用意しておいて…自分が帰宅してから
二人分の夕食を作っていた。
 いつまでも克哉に食事を作って貰っている状況に、いい加減に焦れたので
本日…久しぶりに御堂が包丁を握っている訳だ。

 克哉への対抗意識が、今はみなぎる程のやる気に繋がっている。
 子なべに火を掛けて、ゴマ油を落としていって…それを軽く熱していく。
 少し湯気が出て来たくらの頃にブタ肉を切ったのを入れて丁寧に炒めていき
一通り熱が通ったら…ニンジン、ジャガイモ、タマネギの順に投下して火を
通していった。

 手順は完璧だ、と動くようになった自分の手先に満足しながら…仕上げに
麺ツユや日本酒、みりん等を入れてシラタキも投入していく。
 これで一煮立ちさせて…蓋を閉じて、暫く蒸らして置いておけば美味しい
肉じゃがの出来上がりだ。
 仕上がりを想像しながら…次は何を作るか頭を巡らしていると…ふいに
背後から抱きすくめられて、ぎょっとなった。

「なっ…!」

「ただいま、御堂…良い匂いだな…?」

 …十数分間、作る事に没頭していたおかげで…いつの間にか克哉が帰って来ていた事に
気づいてなかったらしい。
 御堂の髪にそっと顔を埋めて、項に軽く唇が触れていく。
 その感触に、思わずぎょっとなって…叫んでいた。

「さ、えき…それ、くすぐったいから…離れ、ろ…」

「嫌だね。俺の為にせっせと料理してくれている可愛い姿なんてみたら…
あんたを抱きしめたくなって、当然だろう…?」

「だ、誰がお前の為なんか、に…!」

「違うのか?」

 背後から御堂を抱きすくめた状態のまま、意地の悪そうな微笑を浮かべて
克哉が問いかけて来る。
 それに対して顔を真っ赤にしながら…御堂はぶっきらぼうに答えた。

「…いつまでも、お前に食事の世話になっているのが嫌なだけだ。これは私の
分だけを作っているだけだ…」

「へえ? その割には…子鍋いっぱいにあって…どうやっても二人分以上は
ありそうだけどな…?」

 図星を突かれて、御堂はぐっと答えに詰まっていく。
 彼の予定では…克哉が帰宅する頃を見計らって夕食を用意しておいて
びっくりさせるつもりだったのだ。
 私は、お前の世話ばかりになっている訳じゃないぞ。
 ここまで回復したんだぞ、と…そう訴えたくて、料理する事に踏み切ったのだ。
 しかしその製作途中に相手に見つかっただけじゃなくて…こんな風に背後から
抱きしめられたら、まるで新婚夫婦みたいである。
 それを自覚して、更に顔が火照り始める。

「…別に、一度に沢山作っておいても良いだろう…? その方が手間が省けて
面倒ではないし…」

「…くくっ、いい加減…認めろよ。俺の分も…作ってくれていた事実をな…」

「そんな事…っ!」

 と、相手の方を振り返った途端…唇を塞がれていた。
 一瞬…状況が理解出来なかった。
 しかし…視界いっぱいに相手の顔が移り、柔らかいものが唇に触れている事を
自覚した瞬間…御堂の頭は真っ白になり、抵抗も反論も一切出来なくなっていた。

「ん、んっ…」

 やんわりと唇を舐め上げられて、甘く吸い上げられる。
 わざと御堂の口内には侵入させず…唇の裂け目の浅い処や、輪郭を
辿るようにしながら…舌を這わせていく。
 その感触に鳥肌が立つくらいに…感じていく。
 相手のスーツの袖を咄嗟に掴んで…その感触に耐えなければ…そのまま
膝から崩れ落ちそうになるくらいに…感じてしまっていた。

「あっ…」

 久しぶりにされる甘いキスに…酔いしれそうになる。
 この一ヶ月…克哉は御堂の世話は欠かさずやっていたが…性的な意味で
触れてくる事はしなかった。
 最初の頃は入浴も少し手伝ってもらっていたが…二週間を過ぎる頃には
一切手を借りる事もなくなっていたし…肌を見せる事もなくなっていた。
 同時に…こうやって触れられることもまったくなかった。

「やっ…だ…さ、えき…や、め…」

「嫌、か…?」

 声の振動が唇に伝わってくる距離で、低い声で囁かれる。
 一瞬…眼鏡の奥で目を細めていた相手の瞳と目が合って…言葉に
詰まっていく。
 こんなキスをされたら、そこから腰から下が蕩けそうになって…力が
入らなくなる。
 それに…今、自分を支えている…彼への怒りや憎しみ。そういった感情が
綺麗に消え去ってしまいそうで…困惑した表情を浮かべていく。
 克哉はそれを拒絶と取ったのだろう。
 …ふっと目を伏せると腕を解いて…御堂から身体を離していく。

「嫌…なんだな。悪かった…御堂…」

「えっ…あ、あぁ…」

 つい、頷いてしまっていたが…こうあっさりと相手から解放されて、御堂の方も
困ったような表情になる。
 以前の彼であったのなら…自分が嫌だと言おうが泣き叫ぼうが、このまま行為に
及ばれていた事だろう。
 しかし今の克哉は違う。
 こちらが答えに詰まっているだけでもそっと腕を離して、解放してくれる。
 あまりの態度の違いに…御堂の方も、呆然とするしかなかった。

(いや、じゃないから…困っているんだ。…判ってくれ。それくらいは…)

 声にならない叫びを胸の奥に宿しながら、御堂は視線を戻していく。
 手に持っていた鍋の状況を見てぎょっとなった。

「わっ!! 佐伯の馬鹿! 火を使っている時に妙な事をしたから…肉じゃがが
少し焦げたじゃないか!! それに私が手を滑らせて鍋をひっくり返したりしたら
どうするつもりだったんだー!」

 慌てて火を止めて、ガスコンロから子鍋を開けていったが…中身の下の方が
うっすらと焦げて何とも香ばしい匂いが部屋中に漂っていく。
 危なかった…後、30秒も放置していたら香ばしいではなく、焦げた匂いになって
味も著しい劣化を免れなかっただろう。

「…すまない」

「判れば、良い。後…お前は座っていろ。今夜は私が夕食を作る。いつまでも
お前の世話になっているのは御免だからな」

「…あぁ、楽しみにしている。あんたの手料理なんて…初めてご馳走になるからな。
心して食べさせてもらおう…」

「あぁ…」

 そうして、相手の身体が遠ざかり…背面の状態のまま、克哉が部屋に
消えていく気配を感じ取った。

「…急に、あんな風に抱きしめるな…バカ…」

 短く、相手に向かって文句を言っていく。
 まだ心臓がバクバクと鳴っているのを自覚して、悔しそうに御堂が呟く。

「…一ヶ月も、私に何もしなかった癖に…」

 背中に少しだけ残っている相手の温もりを思い出し…それを振り払うように
頭を何度か横に振った後…御堂は夕食の準備に戻っていく。
 微かに残った相手の残り香が…余計に寂しさを強く感じさせる。
 何故、克哉が以前のように自分を抱かない事を…切なく思うのか
自分でもその理由を掴み切れず、御堂はギュっと瞼を閉じて…その感情を
抑えていくしかなかったのだった―

  昨日…夜に返信します、と言っておいて何ですが、気づいたら
朝でございました(ガガーン)
 え~と…昨晩、ちとショックな事あったもんで…(アセアセ)
 本日分の小説更新はもうちょい後になりますがまずは拍手返信だけ
先に行かせてもらいます!!   

 
たかぎ様

 初めての名前入りでメッセージ残して下さったお客様ですv  わーいわーい!
 まだ本編プレイしてない状態でこんなネタバレ満載サイト見て、楽しみ
半減しなかったですか(汗) けれど…一応、ゲームをクリアした人がもっと
鬼畜眼鏡の物を読みたい! という欲求が満たせたら良いな~という
コンセプトでやっているので読み返して楽しいと言って貰えて嬉しいですv

071119  21:53-55分様

 こちらこそ初めまして! 眼鏡御堂小説とか、風邪っぴき小説…気に入って
貰えたなら良かったです! タマゴの感想もどうもありがとうです。
 タマゴは元ネタは某BLゲームのおまけゲームなんですが…これも一応
眼鏡×克哉モノの一種だったりします(本当か?)  これからも日参して
頂けると凄く嬉しいです。感想どうもでしたv

 
という訳で本日は早朝じゃなくて朝からお昼に掛けての更新に
なります。今日明日はお休みだから…他のものの更新も少し
頑張ります。

 あ、報告遅れましたが佐伯克哉生誕アンソロジー計画様に
こっそり参加することになりました。
(11月中旬に飛び入りで名乗り上げた為にまだ執筆者リストに
名前掲載されてないですが…)

 CPに偏りが出ない為に、編集担当の方からCPを割り振られましたら
私は眼鏡×克哉担当する事になりました。
 …どんどん、このサイト…眼鏡×克哉がメインになってきてますね。
 ま…御堂さんも愛しているけど、一番好きなのは佐伯克哉ズなのは
確かなので…。
 アンソロジー原稿も頑張ります! ではでは!
 

  とりあえず、今回の3から『白銀の輪舞』の本編突入です。
  え~と…とりあえず、この話は自分なりにED №3の「嗜虐の果て」の後に
どうやって克哉が御堂に償いをしていくか、というのをテーマにしています。
 結構、暗い部分も書きます。痛い展開も出て来ます。
 けど…そういう闇の部分も書かないと、罪の清算だの…許しだのそういう結果には
結びつかないと思うので…敢えて、それを書かせてもらいます。
 途中、読むの嫌だと思ったら暫く間置くのも一つの手でございます。
 大体、8~10回くらいの掲載になる予定で書いていきます。
 最後まで付き合って貰えたら幸いでございます。

 後、拍手の返信は今夜やります。
 そろそろ出勤しなきゃなので…待たせて御免なさい。
 では行ってきます!!
  御堂が意識を取り戻してから、十日が経過していた。
  あの日から…克哉と御堂は、一応平穏を取り戻していた。
  腫れ物に触るような…お互いの態度に、表面上は意見を違えて
怒ったり、文句を言ったりする事もない…一見平穏そうな生活。
 しかしそれは…微妙なバランスで成り立っている事は、二人とも
良く自覚していた―。

「御堂…ここに、今朝の分の食事を置いておく。…机の上には昼の分も
用意しておいた。それじゃあ…俺は、行くぞ」

「あぁ…」

 会社に行く準備を終えて、克哉が声を掛けてくる。
 自室のベッドの上から、相手の方を振り返りもせずに御堂は短く、
返事だけしていく。
 短い、やりとり。
 それでも一言だけでも言葉が返って来てくれる事に…克哉は笑みを浮かべて
そのまま会社へと向かっていった。

 床の上に、今朝の分の食事が置いてある。
 そうするように最初に頼んだのは…自分だ。
 今日も筋肉痛で軋む身体をどうにか動かして…ベッドの上からぎこちなく降りていって
膝と手をつきながら…ハイハイするような動きで、おにぎりの皿が乗せられている
お盆の方へと向かっていく。

 一年以上、自らの意思で身体を動かしてなかったせいで…御堂の身体は今は極限まで
筋肉が低下していた。
 そのリハビリの為に…御堂は必死に、出来る事は自分でやろうとしていた。
 ほんの数メートル…床の上を這うだけでも…汗がどっと吹き出してくる。

「はぁ…ぁ…も、う…少し、だ…」

 みっともない姿を晒していると、自分でも思う。
 しかし御堂の目は…ギラギラと輝いて、強い意志を宿している。
 一日も早く、かつての自分に戻りたい。
 その強烈な願いが、彼の身体を突き動かしていた。

 克哉が作ったおにぎりに手を伸ばすと…それに夢中で齧りついていく。
 まだほんのりと暖かい舞茸入りの炊き込みご飯で作ったそれは…非常に美味しくて
御堂の味覚を満足させていく。

「うまい…」

 ポツリ、と呟きながら…ぎこちなくおにぎりを齧っていく。
 ボロボロと何度かご飯を零すのは歯痒かったが、今はまだ指先も完全に以前の
ようには動かせないのだから…仕方ない、と割り切る事にした。

(…みっともないな…我、ながら…)

 それでも最初、自分の意思で動かした日よりは随分マシになっていた。
 おにぎりと一緒に、用意されたのはトン汁だった。
 細かく切った豚肉に、大きめにカットされたニンジン、タマネギ、ジャガイモに
ゴボウが具沢山に入っている。
 ダシも煮干でキチンと取られていて…味噌の加減も丁度良い。

 佐伯克哉という人間が、意外に料理が上手かったことを知ったのは…意識が
覚醒してからの事だ。
 以前、陵辱されていた頃にはまったく知らなかった一面ばかり…この十日間は
見せ付けられていた。

(…佐伯。君は一体…何なんだ…?)

 零さないように細心の注意を払いながら、トン汁を飲み進めていく。
 おにぎりは上手くいかなかったが、こっちはどうにかなりそうだ。
 暖かいトン汁に、胃をポカポカさせながら…ほうっと溜息を突いていった。
 ―この十日間は、信じられない事ばかりだった。

 自分の意識を破壊される程、酷い行為を繰り返していたあの男は…目が覚めた途端
とても優しくなっていた。
 この十日間、一度もあの男に抱かれていない。
 無理強いをする事もなく…自分の我がままで、食事、排泄、入浴等をやって…酷く
床やトイレ、風呂場を水浸しにしたり汚してしまっていても…一言も文句を言わずに
毎日片付け、自分の世話を焼いてくれていた。

 それは…かつての克哉の姿からは、まったく想像もつかないものだった。
 同時に、壊れていた自分の傍に一年もいた事も…信じられない。
 価値がなくなったら、さっさと自分を捨てていなくなる男だと思っていた。
 なのに…彼はいた。目覚めるまでずっと待っていたと言っていた。
 有り得ない現実に、御堂は…困惑を隠せないまま…十日を過ごしていた。

「…佐伯、ど、うして…お前は、そんなに、私、に…優しく、する…? かつてのように
酷く、扱わ、れれば…私も、憎む…事が…出来る、のに…」

 御堂は力なく、呟くしかなかった。
 嬉しい、という気持ちもあまり湧いて来ない。
 逆に…胸の中に存在する、この複雑な感情をどう処理していけば良いのか
戸惑うしかなかった。

 以前のように扱ってくれれば、こちらも相手を憎む事が出来る。
 拒絶して…この家から出ていけと追い出せる。
 しかし…こんな風に献身的に世話を焼かれて、優しくされたら…どうしても
『私の家から出て行け!』という一言を言うことが出来なかった。
 行き場のない感情は、御堂を混乱させ…どう対応していけば良いのかという
正解をひどく遠くに追いやっていた。

「お前、が…本、当…に…判ら、ない…私、には…」

 克哉が作ってくれた食事の全てを平らげて、御堂は床の上に身体を投げ出した。
 たったそれだけの動作でも、暫くは身体を休めなければ…辛くて動けない。
 そんな身体にした原因は、あの男が作った。
 なのに―憎み切る事が出来ず、胸の中に湧いた…情のような気持ちに御堂は
深い深い溜息を突いて、それを紛らわす事しか出来ないでいた―。
 
 
  ―克哉の願いが通じたのか、御堂は…冬に差し掛かった寒い朝の日に
初めて言葉を取り戻した。

『ずっと…そこにいたのか?』

 最初は、たった一言。
 それでも…虚ろだった瞳が少しだけ焦点を取り戻して自分を見てくれた時
彼の目はこんなに綺麗だったのかと、思い出せた。

「御堂…」

 泣きそうになる。
 たったそれだけの事に、瞳から雫が浮かび上がって…静かに頬を伝っていく。
 駆け寄って、ベッドの上に力なく身体を起こした御堂を抱きすくめる。
 しかし…その身体は、カチカチに強張っている。
 現状が理解出来ない。
 そんな困惑の表情を浮かべていた。

「…どうして、お前が…ここ、に…?」

 目覚めたばかりの御堂には、ここが自分の部屋だという認識はある。
 しかし…どうして、彼が『今も』この一室にいるかが…判らなかった。
 どれくらい時間が過ぎたのか、まだ把握出来ていない。
 それでも長い―長い間、自分は心を閉ざして…夢の世界に生きていた。
 うっすらとそれくらいは判っていた。

「…あんたを、ずっと…待っていた…」

「ど、う…して…お前は、私を…抱く、価値も…ない、と…」

「弱気で愚痴っぽいあんたよりも、いつもの高慢で生意気なあんたの方が
俺は好きだからな…」

「そ、れ、なら…どう、して…」

 御堂の声は切れ切れで、掠れるような小さな声だった。

「俺は…あんたを、好きだから…」

「…………嘘、だ………」

「嘘じゃない。じゃなければ…壊れたあんたの面倒を…一年近くも
する訳がない…だろう…」

「い、ち…ねん…っ!?」

 何ヶ月か、くらいは覚悟していた。
 しかし…そんなに長い時間が経過していた事に御堂は驚きを隠せない様子だった。
 その肩と指先はワナワナと震えて、内心の動揺を現している。
 
「…ずっと、あんたを待っていた…御堂孝典…」

 その頬に優しく触れて…愛しげになぞり上げていく。
 御堂は瞠目し、信じられないと眼差しで訴えかけていた。

「そ、んなの…」

 壊れる間際の地獄が、一瞬だけ脳裏を過ぎる。
 あんなに自分に酷い仕打ちをして…今まで築き上げてきた全てのものを
奪い取った男が、自分を愛しているという。
 そんなの…有り得る訳がなかった。
 愛しているのなら、何故…あんなに酷い事を自分にし続けたのか。
 あれ程の地獄を、自分が泣いて叫ぼうとも止めてくれなかったのか。

―心を閉ざす程の、痛々しい記憶の数々が…意識が目覚めると同時に
蘇り、御堂の心を侵食していく―

「嘘だ、嘘だ…嘘だ…どこ、まで…お前は…わた、しを…」

 御堂は必死になって自分を抱きしめてくる克哉の腕から逃れようと
身を捩って抵抗していく。
 しかし一年以上、自らの意思で動かす事のなかった身体は鉛のように重く
満足に動かす事すら出来ない。

「嘘じゃない。これは紛れもなく…俺の本心、だ…」

「……ふっ…ぅ…う、そ…だぁ…」

 克哉はこの一年で、強く感じていた御堂への愛情を口にしていく。
 しかし御堂は信じない。受け入れようともしない。
 嫌いなままでいれば…余計な期待もしないで済む。
 あれだけの仕打ちをされても…不思議な事に、御堂は佐伯克哉という
傲慢な男の事を嫌いになり切れなかった。
 けれど、信じたくない。これは自分にとって都合の良い幻とか空想に
過ぎないのだと…必死になって言い聞かせた。

「お前が、こんなに…優しい訳がない。夢なら…早く覚めて、くれ…
こんな夢を見て…また、あんな酷い事を…され、たら…私は、もう…
耐えられ、ない…!」

 御堂の目から、滂沱の涙が溢れてくる。
 痛々しい表情だった。
 しかし…ここまで、彼を追い詰めたのは自分だ。
 その罪の重さを感じ取り、克哉は突き刺さるような胸の痛みを覚えていく。

「御堂…っ!」

 それでも、強く強く抱きしめていく。
 御堂から、抱き返される事がなくても…腕に力を込め続ける。

(それでも…あんたは、帰って来てくれた。どんな憎しみの言葉も
拒絶の言葉も…引き受ける。だから…どうか…どうかっ…!)

 自分の罪は、自らの手で贖うしかないのだ。
 そう心に秘めて…二人の影は朝日の差し込む中―重なり合う。
 それが…新たな、関係の始まりでもあった―。
  こんにちは、香坂でございます!(シュタッ!)
 とりあえず…作品倉庫の方に連載終了した眼鏡×克哉小説を二本アップさせて貰いました~。
 開設してから早二十日…とりあえず四本、話を仕上げられてちょっと一安心(ほっ)
 鬼畜眼鏡小説も、次で五本目に差し掛かります。
 …本編のED №3「嗜虐の果てに」の後って設定の眼鏡×御堂ものです。
 エロ成分は控えめの切なくシリアスな話になりますが…お付き合いして下されば
幸いでございます。

 後、遅れましたが拍手の返信でございます~。
 メッセージくれた方、ありがとうです! ここ数日は拍手数も増えていたので…
言葉なしの方も、こちらはそれだけでかなりの励みになっていますv 

 071116  1:27~1:32の方

 はい、この話はちょっぴり眼鏡の方がヘタレっていうか…N克哉の方に押され気味で
ございます。私自身も書いてて…眼鏡、可愛いじゃんとか思っていたのは内緒です(笑)
 結構この話は甘いテイストだったので私自身も書いてて楽しんでおりました。
 眼鏡に振り回されて、啼かされている克哉も好物ですが…今回のようないたずらっ子の
ような克哉も良いな~とか、私の方も少し目覚めました。
  多分克哉が看病に回った時に奴は絶対にこの仕返しをする事でしょう!(断言)

071118 15:36~38の方

 ノーマルのはにかむような笑顔や、とびっきりの笑顔をラストに書きたくて
この話を書いたようなものです。反応して下さってどうもありがとうございました(笑)
 私自身も克哉の笑顔に照れる眼鏡を書いていた時は楽しゅうございましたよv
   これからもどんどん、N克哉はこのサイトで可愛がられることでしょう(なむ~)

071118 16:52の方

 そういって下さって本当にありがとうございます。
 いつも楽しんで下さる方がいるだけで…こちらにとっては書く動力源になります。
 これからも…やれる限り、話を書いていくつもりなのでお付き合い下さると
嬉しいですv

  という訳で、無事返信完了! 
 それでは今宵は寝ますです。おやすみなさ~い(タッタカタ~)

 

 

 
 
  愛している、と心から思った唯一の相手を壊してから
一年近くが経過しようとしていた。
 気位がとても高くて、傲慢で…プライドの塊のようだったかつての姿が
今となっては嘘のようだった。

 彼は…自分を拒絶して、心を殺す事を選んでしまった。
 その日から、瞳から気丈な光は消えて…ガラス玉のように
無機質な目となってしまっていた。
 その日から一年。かつて住んでいた自分のアパートは引き払い
御堂のマンションで克哉は寝泊りを続けて、真摯に…彼の面倒を
見る日々を重ねていた。
 
「御堂…痛くないか…?」

 佐伯克哉はいつものように、人形のようになってしまった御堂考典を
風呂に入れて…丁寧にその身体を拭いていた。
 上質の手触りの大きなバスタオルを使って髪を拭ってから…全身くまなく
タオルを滑らせて…丁寧に雫を取っていった。
 
「ほら…腕を上げて。早くやらないと…お前が風邪を引いてしまうからな。
協力…してくれ…」

 声を掛けても、何も相手が反応しない事など…とっくの昔に判っている。
 それでも普通に接する事を、克哉は止めなかった。
 お互いにこうして…裸になっていても、今は…欲望は何も感じない。
 ただ、糸が切れた操り人形のようになってしまった…御堂を見て、止む事のない
鋭い胸の痛みを覚えるだけだ。

「…………」

 こちらの成すがままに、御堂は腕を上げて…虚空に視線を向けていく。
 決して、こちらを映さなくなった眼差し。
 それを悲しいと思う感傷さえも…今の克哉は失ってしまっていた―

                          *

 初めて会った時、何て傲慢で高圧的な人間だと思った。
 人を見下すような態度が、気に食わなかった。
 だから…徹底的に立場の違いというのを思い知らして、屈服させてやろうと
思って…強引に肉体関係を持った。
 自分達の関係は、そんな動機から始まっていた。

 そんな事を思い出しながら、お互いにバスローブに身を包み…上質なベッドの上に
横たわっていく。
 御堂は…自分で寝返りを打つ事も滅多にない。
 気をつけていなければ、克哉が取らせた格好のまま…一日を過ごして皮膚が
鬱血してしまった事も数え切れないくらいあった。
 だから寝る時も…克哉は2、3時間ごとに起きて…御堂の体制を変えてやっていた。
 最初の頃はきつかったが…今となっては毎日の事だ。
 身体はすっかり慣れて、夜中に2回…目覚めながら寝るのが当たり前になって
しまっていた。

(…俺はこんな事になっても…こいつを手放せないくらいに…
御堂孝典という人間が欲しくて…堪らなかったんだな…)

 御堂は、自分の隣で横たわって…安らかな寝息を立てていた。
 食事も排泄も、身の回りの世話も…全て自分がやらなければ、
今の御堂は一日だって生きてはいられないだろう。
 だからと言って、他の人間を雇って世話してもらう事はもっと
嫌だった。
 ―その為に克哉は、この一年で…飲みに誘ってくれる人間関係の
全てを…このただ一人の存在の為に、失っていた。

「御堂…」

 月光が白いシーツの上に降り注がれて、愛しい人が闇の中に
静かに浮かび上がっている。
 伏せられた表情は…どこかあどけなくて、まるで子供のようだ。
 無防備で、弱々しい…自分が手を貸さなければ生きていけない。
 そんなモノに、彼を変えてしまった自分の罪が…許せなかった。

「御堂…」

 飽く事なく、呼び声を掛けていく。
 しかし起きる気配も、反応すらもない。
 そんな御堂の手をそっと掬い取って…その指先に優しく口付けていく。
 殆ど身体を動かす事のない御堂の身体は、どこに触れても…冷たく
暖めようとそっとその掌を強く握りこんでいく。

「…………」

 声に出せない強い願いを込めて、強く強くその手を握り締めていく。
 暫く手を繋いだままだったおかげで…少しずつだが、氷のように冷たかった
御堂の手に体温と血が通い始めていく。

「いつか…で、良い…帰って来て、くれ…御堂…」

 振り絞るような、切ない声を克哉は漏らしていく。
 今…この万能の能力を持った男が望んでいる事は、出世でも
世界に自分の力を示す事のどちらでもなかった。
 ただ…御堂の閉ざされた心が、いつか氷解して…自ら身体を動かして
話す姿を見たい。それだけしか…望みはなかった。

「…憎しみでも、俺を罵る言葉でも…何でも良い。ただ…俺は…
あんたの声を、もう一度…聞きたい、んだ…」

 声に出さず、静かに克哉は涙を零していく。
 搾り出すような祈りの言葉に…御堂は相変わらず、反応する事さえない。
 こんな夜を、何回繰り返していたのか…すでに数える事も面倒だった。

 涙はいつしか、哄笑に代わり…乾いた笑い声が喉を突くだけだった。

「はっ…ははは…! 俺は、本当に…バカ、だったんだな…。あんたの事を
これだけ…想っていたのに…あんたの心が壊れる前は…ただの一度だって
本心を…言わずに、痛めつけるような真似しか…してこなかったんだからな…」

 自嘲の笑みを浮かべて…御堂に覆い被さり、触れるだけのキスを落として
その頬を撫ぜていく。
 触れた頬も、唇も何もかもが作り物のように冷たく…マネキンのように
身動き一つしなかった。

「帰って、来てくれ…!」

 願いを込めて、強くその身体を抱きしめていく。
 冷たい身体に、それでも確かな鼓動を感じることが出来る。
 まだ、心は死んでしまっていても…身体は生きていてくれている。
 それなら…希望は消えていないのだと、克哉は自分にそう言い聞かせていた。

 それは傲慢な男が作り上げた絶望的な結末。
 どれだけ悔やんでも、一度壊してしまったものが元通りになる事などなく
修復したとしても…その疵は痕を残し続けるだろう。
 
 それでも…清冽な夜の大気と、月光がそんな二人を静かに包み込み
見守っていく。
 折れるくらいに強く御堂の身体を抱きしめながら…いつしか克哉も
深い眠りの淵に落ちていく。

 ―いつか御堂が戻ってくる筈だ―

 克哉はその希望を胸に刻み、今宵も深い闇の中に身を落としていく。
 そう信じる事だけが今の克哉のただ一つの救いでもあった―。

  翌日の早朝。
  克哉はコンビニの袋を片手に、自分の部屋の扉の前で携帯を
片手に会話をしていた。

『ん、今日は…会社に行けると思う。昨日休んだ分の埋め合わせは
するから…宜しくな。じゃあ、後で会社で…」

 本多からの電話をそういって切っていくと、克哉は玄関のドアノブに
手を掛けて自分の部屋の中に入っていく。
  
―そこには、恨めしそうな顔をした眼鏡を掛けた自分がベッドの上で
身体を起こして待っていた。

「…あ、起きていたんだな」

「…おかげさまで、な。お前が移してくれた風邪のせいで…こちらは
安眠を妨げられたぞ。どうしてくれるんだ…?」

 じっとりと、射殺されそうな眼差しで見つめられるが…今朝の克哉は
それに動じる様子はなかった。
 
「そんなの、自業自得じゃないか。俺が風邪引いているって知ってて
好き放題やらかしてくれた天罰じゃないのかな?」

「…イイ根性しているじゃないか。お前…誰に向かってそんな事を
言っているんだ…?」

「ん~けど…昨晩、 お前に俺の風邪を移してやるって…散々、言って
いただろ? その上でオレを…お前は抱いたんじゃなかったのかな?」

「……まあ、な。だが何で、お前の方はピンピンしているんだ。この風邪は
元はと言えばお前が引いていたものだろうが…」

「さあ? 風邪って人に移すと治るっていうからね。…お前に移したから
治ったのかも知れないね…?」

 そういって、不敵に克哉は笑っていく。
 昨晩の死にそうだった容態が嘘のように、今朝は身体が軽かった。
 むしろ…昨日一日、高温が出ていたからこそ…克哉の風邪は全快
したとも言えた。

 風邪というのは、ウイルスが大量に体内に侵入してきたり…疲労物質
などの老廃物が過剰になっている時に起こる体内の浄化反応である。
 身体に害があるものを鼻水や痰などで体外に排出し、発汗して燃やし
尽くす事で完治する。
  
 昨晩、眼鏡に好き放題されて…克哉の身体は興奮でかなり長い時間
高温状態になっていた。
 その状態で大量に発汗したせいで…結果的に風邪の原因だった老廃物を
出し切ったので治った…が正解なのだが、二人にそこまでの知識はない。
 理不尽な結果に眼鏡は心底不機嫌そうにしていたが…相手のそんな顔を
初めて見れた事で克哉の方は愉快そうに笑っていた。

「…理不尽だな。どうして俺がお前ごときに風邪を移されて、寝込まなければ
ならないんだ…」

「ほらほら、拗ねないで。一応…コンビニでレトルトのお粥とか、弁当とか
買ってきておいたから…お腹空いたらこれ食べてて。今日は出来るだけ
早く帰ってくるから…な」

「…ちょっと待て。お前…俺に風邪を移しただけじゃなくて、俺を一人にして
会社に行くつもりか…?」

 かなり眼鏡は不機嫌そうな表情で尋ねていく。

「うん…そのつもりだよ。昨日は当日に欠勤して迷惑掛けてしまったし。
自分の分の仕事はちゃんと片付けに行ってくるよ」

 それがまったく悪びれる様子もなく、ニコニコ笑いながら言ってのけられた
ので…眼鏡は瞬間、相手に殺意を覚えていた。
 自分自身でも、何故こんなに苛立たしいのか…原因はまったく
判らなかったが。

「帰って来たら、ちゃんと昨日…お前がしてくれたみたいに、俺も
お粥作るからさ。今朝はちょっとギリギリだから…これで勘弁して
くれな。昨日の残りの粥と、レトルトの粥二食分あれば足りるだろうけど
足りなかったらカルビ弁当も食べてて良いから」

「…お前はバカか? 病人がカルビ弁当なんぞ食える訳がないだろうが…」

 ワナワナと震えながら、シーツを握ってとりあえず怒りを逃していく。
 気に入らない。
 いつもなら自分の方が相手を手玉に取って翻弄し続けてきたというのに
今回に限っては、克哉の方にいつの間にかリードを取られてしまっている
状態が非常に気に食わなかった。

「ん? カルビ弁当は元々オレの夕食のつもりで買ってきているんだけどね。
足りない場合は…ってちゃんと言ったろ?。それじゃ台所にはお湯ですぐに作れる
生姜湯とかホットレモンとかあるから…好きに飲んでてくれ。じゃあね!」

 会話をしている最中も、克哉はバタバタと身支度をして…会社に行く
準備を進めていく。
 よっぽど、無理やり組み敷いて会社に行くのを阻止してやろうかとも
考えたが…悲しい事に、熱で身体がダルくて、イマイチ動くのも億劫に
なっている状態だった。

「あ、そうだ…」

「まだ何か…あるのか…?」

 玄関を出る手前、思い出したように立ち止まって…眼鏡の方に
振り返っていく。
 玄関のドアから微かに差し込む朝日が…克哉の顔で反射して
白く輝かせていた。

「今日、絶対に早く帰ってくるから…待ってて…な?」

「っ!」

 一瞬、心臓が止まるかと思った。
 滅多に見た事がない、はにかむような可愛い表情を浮かべられて
眼鏡はあっけに取られていた。
 自分とこいつは、基本的な顔の造作はまったく一緒の筈なのだ。
 それなのに、思ってもいなかった予想外の表情を浮かべられて…眼鏡は
相手から顔を背けて…咳払いを一つして、答えていった。

「…絶対だな。…約束はキチンと、守れよ…」

「うん、じゃあ…行って来る。じゃあね…<俺>」

 そうして、克哉はとびっきりの…子悪魔のような魅力的な笑顔を浮かべて
朝日が降り注ぐ中、出勤していったのだった―。


 
 

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香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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