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これから編集作業&見直しに入ります!
うっうっ…朝の三時から頑張って、文章書き続けた甲斐が
あったよ…とりあえず、予定より大幅に長くなった気がしましたが
これで事故か大きなトラブルが起こらない限りは確実に二冊目も
発行出来ると思います。
う~本気で良かった~!!
…企画立ち上げた当初、最初は28Pで作ってもまだ
澤村って実際にゲームには回想でしか出てないキャラだからな~
本気で埋まるのかしらん…という危惧がありましたが、ゲーム雑誌の
特集記事に載っている澤村情報と、キチメガRの冒頭部分の描写を
舐めるように何度も見返して、鬼畜眼鏡本編の澤村に関する回想シーンを
何回も何回も見直して頭の中でくみ上げていったら…あらびっくり。
気づいたら本文だけで40P超えていました(汗)
…まあ、二段組で編集するのでちゃんとゲスト様の原稿を混ぜつつ
表紙込みで44Pの本の中に収めますけどね…。
何か御克エロあり、澤村にノマが襲われたりラスト周辺で眼鏡が活躍しまくったり…
まあ、そんな感じのお話になりました。
ドシリアスです。切ない系まっしぐらって感じです。
そして澤村が非常に出張りました。…Rが発売したら口調が大幅に違っていたら
どうしようって不安があって最初は非常に動かしづらかったんですが…キチメガ1の
回想をベースに口調を作っていったら、かなり動いてくれて助かりました。
これから最後の仕上げに入ります。
…これで残りの原稿は克哉の誕生日アンソロのコメントと、別ジャンルの本
一冊分になりました。ゴールは一応間近です…。
全部終わるまで、頑張ります。ではでは~(逃走)
しまったので書けませんでした(汗)
…まあ、それだけ疲労が溜まっていたのだと判断します。
そしてそのおかげで昨日は全然作業出来なかったので本日の
製作状況もカッツカツです。
…明日が印刷所の入稿締め切りなので、今日頑張らないと
確実に本が落ちる状況なので…心苦しいですが、本日も
休ませて頂きます(ペコペコ)
本音言うと、サイトの更新を二日続けて休むのは心苦しいですが
こういう事が起こるって事は相当…身体に負担掛かっているって
事ですし、今…本格的に倒れたら勤め始めたばっかりの会社にも
迷惑が掛かってしまうので本日は原稿の方に専念します。
本日分は早めに原稿が仕上がって余力があったら…という形に
します。厳しい状況の場合は、今日も続けて休ませて頂く
形を取らせて貰います。
現在の製作状況は1Pが36行×40文字設定で全部で
35~40P程度になりそうな予感ですが、その内の22~3Pまでは
出来上がっています。
…とりあえず後、15P前後かな。とりあえず頑張りまっす!
(追記。正午現在で32Pまで仕上がりました。完成までもうちょい)
…先週末ぐらいから、メールとかメッセージ下さっている方…
今は切羽詰っているのでちょっと返信作業等遅れます。
終わったら出来るだけ早く返信しますのでもうちょいお待ちを!
後、某アンソロ主催者のK月様…今週末にはコメント分を完成
させて早急にそちらに発送させて頂きます。
ちょい私信ですがここにて失礼!
じゃあ修羅場の海へ行って来ます! ブクブクブク…(潜る)
…原稿、切羽詰っているので今週は休みがちになったり
遅れたりとすみません。
けど、もう一冊の方の締め切りは13日なもので…(苦笑)
せめて二日に一度くらいのペースで一本は投下したいので
本日は夜になります。
澤村本は現在、全体の半分よりちょっと超えたぐらいです。
明日休みを貰ったのでそれでラストスパートを掛けます。
精一杯頑張ります!
克克新婚本「Innocent Blue」をデーター入稿する為の
手続きに追われておりました。
初めてデーター入稿をした為に、判らないことが多くて
アワアワしていたんですが…印刷所の公式サイトと睨めっこをして
ようやく無事に送りました!
諸手続きとか、メール連絡とかもばっちりやった…! 筈…(ちょっと小心)
という訳で一冊目の克克新婚本は確実に出ます!
ですが…本日はぶっちゃけ、その作業に追われていて
ギリギリになってしまった為に一本を朝の内に書き下ろす余裕が
ないので…本日は連載お休みします。
その分、1Pでも2Pでも澤村本の原稿進めておきますので!
おしげさんとか、YまさんとかK月さんとか…思いっきり巻き込んで
いるので…こっちの本も絶対に出す!
発案者の私が落とすような真似はやるもんか~!!
…という訳で澤村本の進行の方がカッツカツなので…今日は
ごめんなさいです!
おしげさんも挿絵脱稿おめでとう!
本気で今回…貴方に迷惑掛け捲っているので頭が上がりません。
ここにちょこっと、メッセージ残しておくわ。
では潜ります…(ズブズブズブ…)
ありますが…御堂さんとか他のキャラとかが絡んでくるノマ相モテ状態の
お話です。本多か、御堂さんか…他の人とくっつくかは現時点では正直
未定なので『?』マークを語尾つけておきます。
初めての本多主役の話です。序盤は彼の視点がやや多めになります。
(他キャラの視点もチョコチョコ混ざります)
ちょっとコメディ風というか、ギャグっぽい話です。
それを承知の上でお読み下され…(ペコリ)
それは11月の下旬、街中を吹き抜けていく風が若干冷たくなり始めた
頃ぐらいの話であった。
本多はその年の秋の初めくらいから、子供の頃にお世話になり
慕っていた近所の実の祖父同様の人が倒れ…やや落ち込み気味であった。
だが、血の繋がった家族に負けないくらいに頻繁にその人の下に
看病に行き…先日その死を見届けると、少しだけ成長したような表情で
キクチ・マーケティング内のオフィスに顔を出していった。
「…おはようございます」
今までなら、朝から元気よく「おはようございます!」と大声で挨拶を
していた本多だが…やはりこの日だけは著しくテンションが下がって
しまっているようだった。
無理もない。子供の頃から面倒を見てくれていた「じいちゃん」と
慕っていた人を失い…昨日、一昨日と会社を休んで通夜と葬式の
両方に顔を出していたのだから。
本多は基本的に自分の私用を優先して、積極的に有給を使う方では
ない為に…入社してからの彼の有給休暇は余り気味の傾向にあった。
その事情を聞いた片桐は、今は正直忙しい時期でもあったが
快く休む事を承諾し、本多が会社に出社するのは三日ぶりでもあった。
八課の全員もその事情を知っている為、浮かべる笑顔は本多の
心中を慮っているせいか、どこか強張ったものになってしまっている。
「あぁ…本多君。おはようございます…。今、お茶を一杯持って来ますから
待っていてくれますか?」
「あぁ、ありがとうっす。いつも…すみません、片桐さん」
「いえいえ…これは僕が好きでやっている事ですから。それに…疲れたり
色々あった時はあったかいお茶の一杯も飲んで気持ちを休ませて
あげた方がずっと良いですからね…」
そうして、恐らく悲しみに打ちしがれている本多に向かって…片桐は
いつもと変わらない穏やかな微笑みを浮かべてくれている。
正直。今の彼には…それが凄く在りがたかった。
本多も…すでに26歳に達していると言っても、人の死に立ち会う
経験は殆どついておらず…今回の事は大きなショックを覚えてしまって
いたからだ。
「…ありがとうございます。気持ち…ありがたく受け取っておきますね」
そうして自分のディスクに座って、大雑把に机の上を片付けて仕事の前の
準備を始めていくと…隅の方に、チョコンと暖かいお茶の入った湯のみが
置かれていった。
椅子に一旦座って、それを啜っていくと…ジィンと、どこか冷え切って
しまった気持ちが解れていくような気がした。
(…何かこういう時って、人の優しさって奴が物凄く…身に染みるよなぁ…)
そんな事を思いながら、八課のオフィス内を何気なく眺めていって
お茶を飲み進めていく。
時計の針が8時40分を指していくと…室内に、今…本多が一番顔を見たいと
望んでいた人物が飛び込んできた。
「おはようございます!」
明るく、ハキハキとした態度で…本多の学生時代からの同級生であり
同じ職場で働く同僚でもある佐伯克哉が飛び込んでくる。
その顔を見るだけでも…本多にとっては元気になるような気がしていた。
(あぁ…こういう時、惚れた相手の顔を見ると…少し、元気が出てくるよな…。
しっかりしなきゃな…とか、みっともない姿を見せれないとかな…)
八課内のメンバーがその明るい挨拶につられて次々と朝の挨拶の
返事を返していくと…ゆっくりと克哉も自分のディスクの方へと歩いて
向かってきて…ばったりと顔を合わせていった。
「…あ、本多…おはよう。大丈夫…だった?」
だが、こちらの顔を見るなり…少しだけ曇ったような表情になっていく。
…まあ、今日に限っていれば皆…事情を知っている訳なのだから
仕方ないのだが…この腫れ物を触るような態度に少し寂しさを覚えていった。
「あぁ…大丈夫だ。あのじいさんももう90歳近くに達していたしな。天寿を
全うした訳だし…運良く、安らかに最後を迎えたしな。だから…そんなに
こちらに気を遣わなくても良いぜ、克哉」
「ん、それなら…良かった。けど…無理に笑ったりはしなくて良いからな?」
「あぁ、判っているって。そんなに無理なんてしないって」
「…うん、そういう時は無理をしちゃダメだからね。本多はいつだって自分
一人で抱え込んでしまうから。…辛ければ、愚痴や弱音ぐらいはオレに
吐き出しても良いからね…」
「…サンキュ、克哉」
その他愛ないやりとりと、気遣う言葉が嬉しくて…片桐の時も嬉しかったが
今の克哉の一言の方がより、本多の心を温めてくれていた。
辛いことがあるからこそ、普段見落としがちになってしまう何気ない優しさを
見失いがちになる。
…確かに、お世話になった人や深く関わった人との死や別離は寂しさと
痛みを伴うけれど…だからこそ、平常時には気づけなかったものを
見つけるキッカケにもなりうる。
この日ほど…片桐と克哉のさりげない優しさをありがたいと思った日は
なかったように思えた。
(あぁ…本気で、克哉って優しいよな。…だから俺も…いつまで経っても
こいつの事を吹っ切れないんだよな…)
机の上を片付け、九時の就業開始時間間際を迎えて…チラチラと隣の
克哉の席を見遣りながら、深々と溜息を吐いていく。
プロトファイバーの営業の一件を担当した事をキッカケに、克哉と
親しくなったのは今から一年前の話だ。
その件を機に、随分と克哉の本音を知ることが出来て親しくなれた。
だが…同時に、それで本多の中には克哉への強い想いが宿る形と
なってしまったのだ。
想いを自覚してからすでに一年以上が経過している。
そして告白し、『本多はオレの親友だから』と振られてしまっている訳だが…
克哉は最近、艶めいて来たというかちょっとした仕草や表情が色っぽく
なっていた。
隣の席の、克哉の横顔が…本多にはとても綺麗に映っていく。
その度に…好きで好きで堪らない、という気持ちが溢れてくるようだった。
(あ~あ、俺はこんなに…今でもこいつの事を好きだっていうのにな…。
こいつにとってはあくまで…こっちは『親友』に過ぎないんだよな…)
ここ一年は、キスや触れ合う事すらも許して貰っていない。
そういう事を仕掛けようとすると、敏感に察してさりげなくかわされて
しまっているからだ。
そこら辺の男のあしらい方をどこで覚えたんだ? と非常に問いかけたく
なってしまうが…見れば見るだけ、想いが募っていく気がした。
―そうしている間に、就業時間間近を迎えていく。
そろそろ、悲しみをいつまでも引きずっていないで…仕事に専念しようと
決意していった。
ここ暫くは自分のテンションが落ちてしまっている為に多少、それで
人に迷惑を掛けてしまっていた。
だが、葬式に出た時点で一つの区切りはついたのだ。
そういう時だからこそ…しっかりしなくては、と…惚れた相手の顔を
三日ぶりに見て発奮していった。
「よし、やろう!」
そうして…久しぶりに明るい声を出してそう口に出した瞬間…八課のオフィスの
入り口の扉が開いていって、他の課の社員が顔を出していく。
まだ年が若い、ハキハキした感じの20代前半の男性社員だった。
「あぁ…片桐さん! おはようございます! あの…一つ…年末に向けて企画が
立ち上がりましたので、宜しいですか?」
男性社員は入り口付近で、片桐に向かってそう声を掛けていきながら部屋の中に
勢い良く入って来る。
本多はこの時、まだ知らなかった。
―この男性社員の来訪により、自分が予想もしていなかった大きな出来事に
巻き込まれてしまう形になる事を…
したので最後の編集に入ったんですよ。
美麗挿絵も絶賛作成中です。
行っちゃっているので宜しくです。
報告のみで…お休みさせて頂きます。
一話完結の短い話を何本か投下するスタイルでやっていくと思います。
―冷静になって考えたら、あいつにラブメールみたいなのを
送るのなんて初めての事かも知れなかった…
結婚前は、どうやって連絡すれば良いのか判らない状況が
続いていたので…当然メールなどした事がなく。
結婚して、年が明けた頃辺りからこの携帯はごく自然に部屋の中に
置かれていて…自然と、克哉はこの青い色合いの機体を使うように
なっていた。
だが、基本的に…この携帯で家族にも、友人にもそんなにメールを
する事もなく二ヵ月半が経過してしまっていた。
他愛無い日常。そしてあいつに何を買って来て欲しいとか…遅くなった時に
何時くらいに帰宅するのか問い合わせるぐらいで、自分から用件もなく
打診をする事もなかった。
「…どうしよう。いざ、あいつにメールをしようと思っても…実際に携帯を
持ってみると、イマイチ文面が浮かばないよな…」
元々、克哉はそんなに人に積極的に関わる方ではなかった。
永い付き合いである本多でさえ…用件もなくメールしたり、誘いを掛けた事は
殆どなかった。
仕事上で必要な事なら、幾らでもメール出来る。
特に克哉のメールは文面が綺麗で、用件が判りやすいと取引先でも八課の
仲間達の間でも定評はあった。
なのに、あいつへの想いをメールで伝えてみようとか柄にもない事を考えて
いくと…悔しくなるぐらいに、文章が浮かんでこなかった。
「えっと…『こんにちは、俺…元気かな? そちらは良い天気だったかな?
それとオレが作った弁当、ちゃんと食べてくれた? こっちの方は…』…う~ん…
何かありきたりのものしか浮かばないよな…」
まずは当たり障りのない内容を軽く書いてみたが、自分でもしっくり行かない。
こんな事が言いたい訳でも、聞きたい訳でもない。
けれど…照れ臭さとか、そういうのが邪魔してしまって…どうしてもこんな内容しか
書けない自分が少し歯がゆくなった。
自分の本心は、もっとこう…露骨で率直なものが渦巻いている。
ふと、ジワリと自分の心の中にそれが浮かび上がっていくのを感じ取って…
無意識の内にゴクっと息を呑んでいく。
―例えば、お前が欲しくて堪らないとか…
その欲望を自覚した瞬間、顔が真っ赤になった。
けれど…それが嘘偽りない自分の本音でもあった。
―お前の事を考えると、身体が疼いてどうしようもなくなって…お前の温もりが
恋しくて仕方ないとか…
そんな事を考えている内に、耳まで赤く染まってドクドクドクと…胸が荒く脈打って
いくのを自覚した。
「な、何を考えているんだ…そんな、事ばっかり…。オレってこんなに…エッチ、
な人間だったのかな…」
けれど、あいつの事を考えると…気づくとそんな事ばかり考えてしまっている
自分に嫌でも気づかされていく。
欲望、だけじゃない。恋しいから、好きだから…ほんの少し離れているだけでも
酷く切なく感じてしまう。
いつの間にか、自分の心の中にはあいつの事ばかりでこんなに占められて
しまっていた。
―いつの間にか、お前がこんなに自分の中に存在してしまっていたなんて…
今夜、こうして離れてみなければ判らなかった。
…明日になれば、お前が帰って来てくれるのは判っている。けれど…終わったら
少しでも早く帰って来て欲しい…そして…
そこまで、胸に湧き上がる想いを自覚して、本気で頭の天辺から湯気でも
噴き出してしまいそうだった。
今、心の中に思い浮かんだ言葉の数々を実際に携帯で打ち込んで…画面の中に
表示されているのを見ると、思わず恥ずかしくなって全削除をしたい欲求に
駆られてしまった。
けれど、それでも言いたい。もう一人の自分に…お前がいない夜はオレはこんなに
寂しいんだよって。恋しく感じて早く帰って来て欲しいと望んでいるんだって事を…
我侭だと承知の上でも、伝えたかった。
(もしかしたら…あいつに、我侭な奴だなとか…一晩くらい我慢出来ないのかって
呆れられたり、バカにされちゃうかも知れないけれど…)
あいつは素直な性格をしていない。
一緒に暮らしてみて初めて判ったが…凄く照れ屋で不器用な男だった。
セックスの時はこちらを翻弄するような際どい発言をポンポン言う癖に、こっちが
たまに素直に好意を伝えるとそっぽを向いて顔を赤くして…黙ってしまう事もしばしばだ。
けれど同じ屋根の上に暮らしている内に、もう一人の自分のそういう性格を徐々に
克哉は理解出来るようになった。
だから自分が率直な気持ちをメールという形で伝えたら、悪態の一つや二つぐらい
飛んでくるかも知れない。
「…けど、それが…あいつだから仕方ないか。それでも、これを…送ろうっと…」
もうちょっと少しぐらい、「愛している」とか「好き」とか言う言葉をキチンと
伝えてくれれば良いのにという欲もあるけれど。
会えなくても会えなかった頃を思えば、今の状況は信じられないぐらいに
幸せなのだ。
たった今…挙式をして、一緒に暮らす前の自分の気持ちを思い出して
しまったからこそ…はっきりと言える。
好きな人間に求められて、こうして共にいられる事はとても幸福な事なのだと…。
「オレの正直な気持ちを…あいつに伝えよう。相手に要求するばかりじゃなくて…
ちゃんと自分から、動かないとな…」
そう呟きながら克哉は覚悟を決めて…そのメールの最後の部分を打ち込んでいく。
きっと後から読み返したら羞恥で居たたまれなくて、もしかしたら意地悪なあいつの
事だからずっとからかいの種にしてくるかも知れない。
それでも良いと…半ば納得していきながら想いを込めて、文面を打ち込んでいった。
―オレを全力で愛して、いつも以上に可愛がって欲しい。だから…お前が帰宅するの
心待ちにしているから。身体にどうか気をつけて。…好きだよ。 克哉より
それを入力し終わった後、克哉は…頬を赤く染めていた。
とても素面では読み返せないぐらいに恥ずかしすぎるメール内容だ。
第三者に読まれたらバカップル丸出しとツッコミを受けても致し方ないと諦めが
つくぐらいに甘ったれた内容だった。
けれど…自分達は恋人同士で、新婚なのだ。
…本当にたまにくらい、こういう甘いやり取りをメールでしたって構わない筈だ。
(うわ…死ぬほど、恥ずかしい…!)
全てを打ち終わり、送信ボタンを押せば転送完了だ。
だが…暫くフルフル両肩を戦慄かせていきながら克哉はこの期に及んで
迷ってしまっていた。
けれど…その瞬間、メールを受信していった。
克哉がEメールの編集画面を開いていたのでそれは一旦、サーバー側に
預けられてすぐに閲覧出来ない状況になっていたけれど…それに気づいて
一旦編集内容を保存して、受信ボタンを押して…その内容を眺めていく。
メールの送り主は、眼鏡からだった。
そこにはそっけない文面で、一言だけ書かれていた。
『明日は出来るだけ早く家に帰る。良い子にして俺を待っていろ』
あいつらしい、簡潔な内容。
けれど恐らく…今の克哉が一番望んでいる言葉を相手は伝えてくれていた。
それを見たら、ジワっと嬉しくなって来た。
言葉が足り無すぎて、時に迷わされることがあるけれど…こうして時に想いを
伝えてくれるのが、その分…愛おしかった。
そして相手もまた、自分と同じように眠れぬ夜を過ごしていると判った
だけでも…気が楽になった。
相手を求め、恋しがっているのは克哉だけじゃない。
その一通のメールは…そう証明してくれている気がして、だから迷いを
吹っ切って…克哉はやっと送信ボタンを押す事が出来た。
ドキドキドキドキ…。
胸がそれだけで高鳴っていくのが判る。
相手が、こちらの率直な言葉をメールで読んで…どんな反応が返ってくるか
気が気じゃない時間がゆっくりと過ぎていく。
だが、3分も経たない内に即効で返信が届いていった。
克哉はそれに驚きつつも急いでその内容を確認していくと…。
『俺もお前を好きだ。愛している』
と…実にシンプルかつ、短く纏められた一言だけが記されていた。
こちらがあれだけ長々と気持ちを書いたのに比べればあまりに短すぎる一文。
けれど…それだけで、思わず歓喜の涙が滲むぐらい…克哉は嬉しくなった。
「ありがとう…『俺』…すぐ、返信してくれて…」
それは時に離れる事になった夜が生じたからこそ、出来たやり取り。
いつもべったりとしているだけじゃなく…距離が出来る事で、離れてみる事で
相手の重大性みたいなものを人は気づける時がある。
克哉は愛おしそうにその携帯を胸に抱いていくと…柔らかく微笑みを
浮かべていく。
―このたった一言のおかげで安心して、今夜は良く眠れそうな気がした
そして克哉は…電灯を消していくと、布団を掛け直してベッドの上に
改めて横たわっていく。
「大好きだよ…」
それは相手には届かない一言。
けれど明日、あいつが帰って来たのなら真っ先に伝えて、そして胸に
飛び込んでいこう。
きっとこちらが積極的な行動に出たら、眼鏡はきっと驚くだろうけれど…
その姿を想像するだけでも克哉は嬉しくて、嬉しくて堪らなくなっていた。
―早く明日になりますように。あいつが帰って来てくれますように…
小さく祈りながら、克哉はそっと瞼を閉じていく。
そうして安らかな眠りは…間もなく、克哉の元へ訪れていったのだった―
夜を過ごしていた。
今夜は一人で家事をこなして、夕食を食べてお風呂を済まして就寝の準備を
整えた訳だが…物足りなさみたいなものを感じていた。
こんなに順調に予定通りのスケジュールをこなしたのは、結婚以来初めての
事だったのかも知れない。
いつもは必ずどこかで、もう一人の自分にチョッカイを掛けられて邪魔をされるのが
当たり前になっていたからだ。
昨晩、もう一人の自分が纏っていたクリーム色のパジャマに身を包んでいくと…
ベッドの上にポスン、と乗りかかって横たわっていった。
毎晩のように抱かれているから、ベッドシーツや布団カバーの交換も克哉の
毎日の日課の一つだ。
だから結婚して二ヵ月半も経過しているのに、このベッドの上には…お互いの
匂いはあまり残っていない。
けれど…パジャマからは、ほんの僅かだが…もう一人の自分の残り香を
感じて、少しだけホっとした気分になった。
(あいつの匂いがする…)
基本的に同一人物だから、身体の匂いの違いなど本当は無いのかもしれない。
けれど眼鏡は…喫煙の習慣があるから、いつもほんの僅かだが煙草の香りや…
キスをした時にその味を感じる事があった。
最初は煙草の匂いは少し苦手だった。だがそれも…愛しい人間のものだったら
気にならなくなるものだと…改めて、克哉は実感していった。
「…何か、夜にあいつがいないのって久しぶりで変な感じだな…。前はそれが
当たり前だった筈なのに…」
良く考えてみると、夜に一人寝をするのは結婚してからは初めての
ような気がした。
こちらが体調を崩しているか、熱でも出していない限り…基本的にセックスを
してから寝るのが当たり前で。
…おかげで、家の家事を全部終えてヘトヘトの筈なのに…ベッドにこうやって
横たわっていても全然眠気がやってこない。
(…エッチしないで眠った日って、数えるぐらいしかなかったからな…)
無意識の内に、自分の乳首に指を這わせているのに気づいて…ハっとなっていく。
だが…今朝、一回抱かれている筈なのに身体の奥に妙な疼きがあって…
悶々としたものが次第に強くなっていく。
「はぁ…ん…」
ついに耐え切れなくなって、今朝…もう一人の自分に触れられたように
己の乳首に両手を添えていく。
本来、男の自慰は性器だけで充分だ。あいつにここまで抱かれるまでは
克哉だってそうだった。
だが…結婚してから、散々あいつに開発されたおかげで…乳首までが
敏感になってしまった。
もう一人の自分がしていたように…無意識の内に、ゆっくりと乳首を
摘んでクリクリと弄り始めていく。
最初は優しく…そして、徐々に力と熱を込めて。そうしている内に…
次第に熱っぽい吐息を零し、強請るように腰が動き始めていく。
「んっ…あっ…『俺』…」
脳裏に、もう一人の自分がどんな手順で昨晩、こちらを抱いたのか
鮮明に思い描きながら胸を弄っていく。
(確か昨晩は…息が苦しくなるぐらいに激しいキスをされながら此処を弄られ続けて、
もう我慢が出来ないって処まで焦らされたな…)
その事を思い出した瞬間、グチャグチャ…というもう一人の自分の舌が
こちらの口腔を犯していたリアルな感覚すらも思い出していく。
それが一層、克哉の性感を煽り…制御を奪っていった。
指先の動きは次第に大胆さを増していって…次第に、耐え難いほどの
快楽が生じていく。
だが…どれだけ自分で弄っても、もう一人の自分が触れてくれている時の
ような鋭い快感は訪れてくれない。
それがもどかしくて…つい、徐々に下肢に手を伸ばしていって…。
「ふっ…んんっ…」
くぐもった声を零していきながら、克哉は半勃ち状態になっていた
己のペニスに触れていった。
先端からはすでに先走りが滲んでいる。それを塗りこめるようにしながら
裏筋の部分からゆっくりと擦っていき…。
(こうやって…自分でスルのなんて、どれくらいぶりだろ…)
頭の隅で、そんな事を考えていきながら…もっと強い快楽を得ようと夢中で
克哉は性器を扱き上げていった。
だが、どれだけやっても自分で齎す快感には限界がある。
もう一人の自分がシテくれている時のような底抜けの感覚は決して訪れず、
どこか物足りないような感じすらしてきた。
「はっ…こ、んなんじゃ…足りない…もっと…」
挙式をした日から毎晩のようにあいつがいてくれたから忘れていた。
かつては…こうやって寂しい夜を、毎晩のように過ごしていた事を。
たまにしかやって来ないあいつを求めて…焦がれて、どれくらい気が狂いそうに
なっていたのだろうか。
…久しぶりに自慰なんかしたせいで、あの時の…あいつに次、いつ会えるのか
判らない不安感を思い出してしまって、胸が切なくなってきた。
―いつの間にか、こんなに強く…オレの中に、お前が存在している…
一晩くらい、あの会えなくて狂いそうだったあの永い夜の日々を思えば何て事が
ないと思っていた。
けれど、まだ…こんなにも生々しく、あの頃の痛みと寂しさが自分の中に存在している。
好きになればなるだけ、もっとと…欲深い心が叫んでいく。
「あっ…はぁ…オレを、こんな…身体に、して…。バカ…お前、何て…」
この痛みを思い出して、知らぬ間に…克哉はうっすらと涙を浮かべていた。
いつの間にか、自分の中にあいつへの想いが存在していた。
好きで、好きすぎて…一度は本気で狂気に身を落としそうになってしまった
事すらもあった。
その切ない日々の痛みを忘れてしまうぐらい…あいつと結婚して一緒に暮らすように
なってから、毎晩のように自分を抱きしめて寝てくれるようになってから幸せな気持ちで
いたのだと…彼がいない夜を久しぶりに過ごしたからこそ、強く感じていた。
そのまま自分の感じるポイントを刺激するように、一心不乱に手を動かし続けて
ペニスを扱き上げていく。
先端の部分が小刻みに震えて、溢れんばかりの蜜が滴っているのが自分でも
嫌でも判った。
胸の中に巣食う切なさも、愛しさも、寂しさも…何もかもを吐き出したかった。
「くっ…うぁ…!」
だから克哉は息を詰めながらくぐもった声を漏らし…その感覚に身を委ねていく。
瞬間、ドバっと克哉は大量の白濁を掌の中に吐き出していった。
強烈な快楽が走って、頭が真っ白になっていく。
荒い呼吸を繰り返していきながら…仰向けの状態で再びゴロンとベッドの上に
横たわっていき、息が整うまで暫くボウっとして休んでいった。
「…はあ、あいつ…今頃、どうしているんだろ…」
つい、そんな呟きが漏れてしまっていた。
あいつも…今夜は、自分と同じようにやりきれない夜を過ごしているのだろうか?
そんな事をつい考えてしまったら…ベッドサイドに置いてある携帯にふと目が
行ってしまった。
自慰ぐらいでは、何か物足りなかった。
身体は疲れているのに…気持ちはモヤモヤしたままで、何かしないままで
布団に横になったってとても眠れそうになかった。
あいつへの思慕が、強い思いが湧き上がって苦しいぐらいだった。
だから、克哉はふと…らしくない考えが浮かんでしまっていた。
(あいつに…メールでも、してみようかな…?)
彼らはいざという時の為に携帯はお互いに一台ずつ所有していた。
だが基本的に毎日顔を合わせている為、この携帯はちょっとしたお使いや買出し、
用件の為に使われているだけだ。
声が聞きたいから、電話を掛けてみようかなとも少し思ったが…今の時刻はすでに
23時を指している。
仕事の為に出張しているのだから、宿泊先で早めに休んでいる可能性も考慮したら
迷惑が掛からないのはメールの方だろう。
そう考えた克哉は、一旦テッシュで掌を拭い…ウエットティッシュを四角い容器から
一枚抜き出して手を清めていった。
それから携帯に手を伸ばして克哉はディスプレイと睨めっこを始めていった。
―たまには、率直な気持ちを…携帯という手段であいつに伝えても
良いかも知れない…
克哉はゆっくりと衣類を整えていくと、携帯を片手にベッドの上にうつぶせに横たわって
もう一人の自分へ送るメールの文面を考え始めていったのだった―
傍から見たら滑稽以外の何物でもない。
だが片方は、最愛の人間から初めて作ってもらった弁当は一欠けらだって
相手に渡したくはないと思い。
もう片方は…自分が想っていたもう一人の自分がそれを作った事を
本能的に察しているので、卵焼きの一つぐらいは与えて貰いたい。
第三者が客観的に見たら、お互いに譲るのが大人だろう…と確実に
ツッコミの一つもしたくなる状況だが、両者は限りなく本気だった。
漫画的な表現に例えれば、今の眼鏡と本多の二人はバチバチバチ…! と
熱い火花を散らしているようなものだ。
先程も本気で睨み合っていたが、こちらの方が真剣みは上かも知れない。
…滅多に表に出さないし、克哉本人にそこまで頻繁に愛していると口に
している訳でないが…現在の眼鏡の、克哉に対しての執着心は半端ではない。
特に以前から、すでに結婚して自分と相手は契りを交わしている間柄だとしても
まだ…克哉は指輪を受け取るまでの決断は下していない状況なのだ。
…悔しいから、あまり認めたくはないのだが…まだ、眼鏡には克哉を
100%手に入れてはいないのだ。
九割以上は、確信が持てる。だが…残念な事にほんの僅かだけ、不安
要素がまだ存在しているのも確かだ。
克哉が自分を選んでくれて、彼が支払うである代価も込みで受け入れてくれた時、
その段階になって初めて、眼鏡は安心が出来る。
毎晩のように、一日に何度でも抱く日すらあるのは…その不安の裏返しでもある。
克哉が何だかんだ言って拒まないで、自分を受け入れてくれて…こちらの腕の中で
甘く啼いているその姿を見て…眼鏡は安定を保っているに過ぎないのだから…。
「…克哉、もう一度言うぜ。卵焼きの一つぐらいはくれたって良いだろ?
お前…そんなに食う方じゃないんだから、その弁当の大きさだと多すぎるだろ」
「…生憎だな。確かにこの大きさは普段の俺の食事量からしたら若干は
多いかも知れないが、今日は東京から四国まで飛行機でやって来て…午前中に
一仕事を終えて腹が空いているんだ。今の俺なら…これぐらいは余裕で
平らげることなど余裕だ。そういうお前こそ…そろそろ外に移動して食事を
取る店を探さないと…メシを食う時間すらなくなるぞ」
「えっ…? そういえば時間は…! うわ、もうこんな時刻なのかっ?」
眼鏡は本多を追っ払う名目で時間という口実を打ち出したのだが…その一言を
聞いて本多が慌てて胸の上着のポケットに収めてある携帯電話を取り出して
時間を確認していくと…物凄い目を剥いていった。
自分達が話している間に、余裕で20分以上は過ぎてしまっているらしい。
元々、営業の仕事など自由裁量の部分が多くて…何時に食事や休憩を
取るかとかは結構、融通が利く。
だが…本日は出先にいるのだから、休憩や昼食時間その他はこの会社の
スケジュールに合わせるようにした方が良いだろう。
そうすると…残り時間は、やはり20分程度しかない。
この時間ではこの近隣の食事処に駆け込んでも…その店が混雑していた
場合は即アウトになってしまう。
「あぁ…だから、さっさと…」
「克哉、すまない! 時間がない。お前の言う通り…これから店を探して
食べに行っても時間には間に合わない。だから…お前の弁当を半分
くれないか?」
―ピキピキピキ!!
さっきよりも眼鏡の額に浮かぶ青筋の数が格段に増えていった。
同じ八課内の同僚が、本多のことをKY…ようするに今、流行の『空気が読めない奴』
と称していた事を小耳に挟んだことがあったが、この時程…その言葉に深く
頷いた瞬間は存在しなかった。
「…お前は、一体何を聞いているんだ? これは俺にとって大切な人間が
初めて作ってくれた大切な弁当なんだ? それを事欠いて…半分くれだと?
馬鹿も休み休み言え…」
「…でも、俺達は友人だろ? こっちが困っているのなら…少しぐらいは…」
「却下だ。そもそも、俺はこれから弁当を食べる為にこの屋上に赴いて
ゆっくりとランチタイムを堪能する予定だったんだ。それをお前が勝手に乱入して
邪魔をした挙句に…これだけ長くこちらの時間をロスさせたんだ。
それはお前側の都合だろう? それなのに…こちらの弁当を要求するなんて
図々しいにも程があるだろうが…」
「うっ…そ、そうだけど…」
思いっきり正しい指摘をされまくって、本多はしょげていった。
だが…たった今、克哉に振られて…しかもすでに大切な人間がいると聞かされて
彼は深いショック状態だった。
振られたのならば仕方ない。けれどせめて…克哉から、暖かい気持ちでも
それを感じられる物でも…ちょっとだけでも何かを貰いたかったのだ。
だから、眼鏡の言うことが正論だって判っている。
しかし…駄々っ子は手に負えない。追い詰められた人間は気持ちに余裕がないから
聞き分けが格段に悪くなる…という法則に乗っ取って、今の本多は簡単に引く
気配がなかった。
「けど…俺は、お前から…ほんの少しでも、気持ちを貰いたいんだ!
確かにお前と恋人になれなかったのは悔しいけど…せめて、ダチとして
大切にしてもらっているって…それぐらいの優しさは見せてくれたって
良いじゃないかよ!」
「…友人として、か…」
一瞬、お前の事など友人ではない。
そう冷たい一言を言ってやっても良かったのかも知れなかった。
克哉にとっては本多は親友でも、眼鏡にとっては本多は…もう一人の自分を巡る
『ライバル』以外の何者でもなかった。
今まで同じ会社内に働いていても、一緒に食事をしたり飲みに言っても…良く考えて
みれば自分の方からこの男を「友人」として扱ったことは一度もない気がした。
「…俺にとっては、お前は…大切な、大切な存在、なんだ…。だから…
振られてしまったことは徐々に諦めるよ! けど…ここ数ヶ月のお前…
冷たすぎるぞ! せめて…友人として優しくしてくれる事ぐらい…
してくれたって良いだろ! そんなに…お前にとっては俺は、どうでも良い
存在になっちまったのかよ…。『親友』だって、以前は確かに…お前は
言ってくれたじゃねえか!」
「…そう、だな。…確かに『オレ』にとって…お前は、親友だな…」
本多にはきっと、今の眼鏡の呟きの一人称が…もう一人の自分のことを
指している事など気づきはしないだろう。
だが…この男の口から改めて聞かされて、ようやく気づいた。
これから先、社会的に「佐伯克哉」として生きるのは自分の方である事を。
そしてキクチに在籍する限りは…この男は自分の親友であり、仕事上の
パートナーなのだ。
(…いつまでも、こいつに対して…妙な敵愾心を持っていても仕方ないの
かも知れないな…。他の会社に移籍するというのなら、こいつの気持ちを
幾ら傷つけたって関係ないがな…)
だが、営業八課は…もう一人の自分にとって『仲間』と認識している
人達が在籍している場だ。
自分一人だけなら、こんな安月給でやりがいのない職場などさっさと
飛び出して新しい会社の一つや二つぐらい興している。
けど、それをしなかったのは…せめて、あいつが大切に思っている『場』
くらいは守ってやりたい。
そういう…気持ちから発生した事だ。
ならば、目の前の男を『親友』…もしくは、友人として扱ってやるぐらいは
しなければならないのではないか…? と眼鏡はふと思った。
(…やれやれ、俺も随分と甘くなったものだな…)
きっとあいつと結婚をしていなかったら、こんなに自分が変わることも
なかっただろう。
…それでも、この弁当の中身をほんの少しでも本多に譲るのは却下だが…
代わりの物を与えてやるぐらいは妥協してやろうと思った。
お互いの間に、沈黙が落ちていく。本多の瞳は…剥きだしの本音を語った
感情の昂ぶりのせいで…うっすらと涙すら滲んでいた。
…どんな類の感情であっても、こちらを本当に想っていたり好きでなければ
こんな風に激情に駆られたりはしないだろう。
それを見て…眼鏡は溜息を大きく突いていくと…一旦弁当に蓋をし直して
代わりに自分のカバンの中から、カロリーメイトのチーズとフルーツ味を
各一本ずつとウィダーインゼリーの各種ビタミンが配合されているバージョンのを
手渡していった。
「…弁当の中身はやれない。だが…代わりにこれをやる。時間がない時に
俺が栄養補給と軽く腹を満たす為に持ち歩いているものだ。大食漢のお前に
とっては足りないだろうが…それでも何も食わないでいるよりかはマシだろう。
…これで、弁当を食べるのは諦めてもらうが、良いな?」
「…克哉。あぁ、これで良い。悪い…我侭を言っちまって! けど…俺、すげぇ
嬉しいよ。ありがとう…!」
そうして、本当に心から嬉しそうな笑みを浮かべながら克哉から渡されたバランス
栄養食品の数々を受け取っていく。
それを見た時、眼鏡は限りなく居たたまれない心境に陥っていった。
本当にこの男は単純だな、と想った。だが…この人の良さとおめでたさは半端では
ないと思った。
…そして、もう一人の自分がこのうざくて暑苦しい男を何故、心から信頼して
『親友』と認めていたのか…ちょっとだけ理解出来た気がした。
(…この単純さと、お人好しさは特筆すべきものがあるな…)
そう思いながら、眼鏡は軽く…フレームを押し上げる仕草をしていった。
「…とりあえず、そろそろ飯を食わせて貰うぞ。…まったく、お前のせいで…
ゆっくりとあいつの弁当を味わって食う時間がなくなったぞ…」
「あ、うん…御免な。けど…その、もうお前の弁当を欲しいとかは今日は言わないから
一緒に飯を食べても良いか?」
「…好きにしろ」
そうして、眼鏡は屋上に備え付けられていたベンチに改めて腰を掛けていくと
弁当の蓋を外して食べ始めていった。
この男に中断されたが、改めて他の弁当の具材を口に運んでいくと…どれも
眼鏡の口に合っていた。
(旨いな…あいつも、結婚した当初から随分と上達したものだ…)
愛情、というスパイスも入っているからだろう。
その弁当は物凄く美味しく感じられた。
それを黙々と食べ進めていくと、本多もまた無言で…じっくりと眼鏡から貰った
カロリーメイトを味わうように食べていた。
双方、言葉はないままだった。
だが…今までと違って、眼鏡と本多との間にも少しだけ暖かいものが
生まれつつあった。
そして…静かな昼食時間が終了する間際、本多ははにかむように笑いながら
こちらの顔を真っ直ぐ見据えながら、こう告げていった。
「…克哉、ありがとうな…」
「…改めて礼を言う程の事じゃない。気にするな…」
あまりに率直にこちらに礼など言うものだから…つい、照れくさくなって
ぶっきら棒な言い方になってしまった。
だがその口元に暖かい微笑が浮かんでいるのを見て…本多は嬉しくなった。
「…良いや、今日は俺…すげぇ、嬉しかったから。お前とこうやって…飯を食えて
本気で、良かった…」
そんな言葉を、尚もこの男は臆面もなく続けていくものだから…眼鏡は軽く
相手の頭を叩く仕草をして抑制していった。
瞬間、この出向先の会社の昼休み終了のチャイムが鳴り響いていく。
―そうして、二人の弁当を巡る一時は終わりを迎えたのだった―
書いてみて、本多を通して眼鏡が…挙式をするぐらい克哉を
想っているんだ…というのを出したいので。
この話は離れている日に相手をどう想っているかを書きたいので
ちょい時間掛けてやります。
収録する話がただ二人がべったりとラブラブしあっているだけじゃなくて
ちょっと酸いも甘いも、ほろ苦いのもあるみたいな造りにしたいんで。
携帯の方でも最終話に当たる「指輪編」も着々進んでいます。
明日の夜におしげさん宅に合宿(直接顔を合わせながら最後の調整等は
やりたいので)するまでに本文までは仕上げておきたいっす。
とりあえずどっちも完成は見えている。頑張ります!(ムン)
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当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
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…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。