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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※4月1日からの新連載です。
それぞれ異なる結末を迎えた御堂と克哉が様々な
謎を孕んだまま出会う話です。
 彼らがどんな結末を辿った末に巡り合ったのかを
推測しながら読んでください。
 途中経過、結構ダークな展開も出て来ます。
 それらを了承の上でお読み下さいませ。

   GHOST   


―何も残さないでこの世から消えたくなかった
 
 この物語はそんな強い想いから引き起こされたシャッフルの結果。
 佐伯克哉という人間が辿る無数の可能性と結末。
 その中の二つが、謎多き男の気まぐれによって繋がれて混ざりあったが故に、
本来出会う訳のない二人が巡り会う。
 少なくても、この「佐伯克哉」と御堂孝典が顔を合わせる事だけは有り得ない。
 それはこれから始まる狩りを面白くする為の余興。
 奇跡を起こした男にとって、奇跡とさえ呼べる行為でさえも…
その程度の認識しかなかった。
 だが、それでも彼は足掻き続ける。
 男が定めた予定調和を少しでも乱して、壊す為に…。
 
            *
 
 白い霧で覆われた四月の夜。
 御堂孝典は唐突に現れた男に対して強い警戒心を抱きながら対峙していった。
 
―そんなに警戒しなくて大丈夫ですよ。私は貴方に危害を加える気
などないですから…
 
 黒衣の男はそうして、微笑んでいく。
 だが御堂の胸のざわめきは一層深まっていくだけだった。
 本来、笑みというものは相手の警戒心や敵愾心を緩和する効果がある筈だが、
目の前の相手のそれを見ても心が和むなど絶対にありえなかった。
 むしろ得体の知れない感情が一層強まるだけだ。
 
(一体、この男は何なんだ…)
 
 人から恐れられる事は沢山あっても、御堂の方から相手に畏れを
抱く事は滅多にない。
 その極めて珍しい事を前にしながら、険しい顔をして向き合っていった。
 
「…一体、私に何を頼みたいというのだ…。君のような男と今まで会ったことも
言葉も交わした記憶もない。そんな人間に何かを頼まれるような筋合いは
まったくないのだが」
 
―えぇ、私と貴方は今日が初対面ですからね。けれど私の方は貴方を以前から
存じ上げておりました…。それにこれは貴方様じゃなければ頼めない事ですから…
この方を暫く面倒を見てやって欲しいのです…
 
「この、方…だと?」
 
 そうして男が一歩引いていくと白い霧の中から一人の人物が現れていく。
 その姿を見て御堂は思わず驚愕した。
 
「佐伯、君…?」
 
 そう、其処に立っていたのは佐伯克哉だった。
 だが御堂の記憶に鮮明に残っている彼とは大きく印象が異なっていた。
 目の前に立っている彼は…そうだ、初対面の時のような弱々しく、
オドオドした雰囲気を纏っていた。
 御堂が多く接していたのは、眼鏡を掛けて傲慢ともいえる態度をとっていた
自信満々の姿だっただけに、二重の意味で衝撃を覚えていった。
 
「お久しぶりです…御堂さん…」
 
「どうして、君が…。君は数ヶ月前に失踪したんじゃなかったのか…?」
 
「失踪? ああ、そういうことになっているんですか…」
 
「…?」
 
 相手の言葉に御堂は違和感を覚えていった。
 だがその疑問を指摘するだけの材料を今は持たないので口を噤んでいく。

(この佐伯は…どこかおかしくないか?)

 相手の様子があまりに御堂の記憶にある彼と異なり過ぎている。
 だが、どうやってそれを切り出せば良いのか迷っている間に…黒衣の男は
話を進めていった。

「…すみません、この方は現在色々ありまして…記憶が一部混乱して
いらっしゃるので…ここ最近の記憶をはっきりと覚えていらっしゃらないのです。
行方をくらませている間も…戻ってくる事が出来なかったのもそのせいですから。
そうして数カ月、失踪している間に住んでいる場所は片づけられてしまったので…
現在、この人には宿泊するお金も身を寄せるべき場所もない状況です。
そして貴方が知っている通り、「八課のこの方が頼れそうな方たち」は
すでに同じように姿を消されてしまっています。厚かましい願いだと
思いますが…どうか暫くの間だけ、この方の身元を引き受けてやって
下さいませんか…?」

「記憶が混乱、しているだと…?」

 御堂が疑わしそうに二人を見つめていくと、男は愉快そうな笑みを
たたえたまま表情を変えず、克哉の方はいたたまれなさそうに肩を
すくめていった。
 それは記憶の中にある佐伯克哉とはあまりに態度が違いすぎる。
 だが、逆にそれ故に信憑性があるようにも感じられた。
 
(本当に現実にそんな事がある事なのか…?)

 八課に所属していた片桐稔と、本多憲二の二人は一カ月程前に
ほぼ同時期に失踪していた。
 その原因はいまだ不明で、八課や身内の人間は全力でその行方を
探し求めているが…未だに手掛かりがないままと風の噂で聞いていた。
 プロトファイバーの営業が終わった後はそこまで関わりを持っていた訳ではなく
それでも大きな事件であったから、たまたま御堂の耳に入った程度の事だ。
 だが、それでも自分が関わった人間が相次いで…数が月の内に三人も
失踪したというのは多少は気に掛かっていた。
 御堂は大いに迷いながら…佐伯克哉を見つめていく。
 目線が合うと克哉は一瞬、おびえたような色を見せていった。
 だが…少しして、すがりつくような眼差しをこちらに向けてくる。

(迷子の子供か…捨てられた小動物のような弱々しい目だ…)

 自分の知っている佐伯克哉は、もっと自信に満ち溢れていて…見ていると
こちらがイライラしてくるぐらいに傲岸不遜な男だった。
 あまりに違いすぎる様子に、御堂は困惑していく。
 何かとんでもない事に巻き込まれてしまいそうな…そんな嫌な予感が
ジワジワと湧き上がっていきそうだった。
 だが、御堂が迷っていると…克哉は必死な顔を浮かべながら口を
開いていった。

「…本当は、御堂さんにこんな事を頼むのは筋違いだって判っているんです…。
けど、本当に数日で良いんです…。どうか、貴方の傍に置いて下さい…!」
 
 真摯な様子で訴えかける相手に、奇妙な事に心が揺らぎ始める。
 頭の隅で警鐘が鳴り響いていくのが判る。
 だが、相手の目が軽く潤んでいるのに気付くと…いつものように
一刀両断出来ない。

(私は…一体どうしてしまったんだ…!)

 そしてザワザワと心が乱れていくのを感じていきながら…再び
黒衣の男がまるで役者のように、流れるような口調で言葉を
紡ぎ始めていったのだった―
 
 

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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