鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※お待たせしました。3月23日から連載再開しました。
御堂さんの日の企画に参加して間が開いてしまったので過去のリンクも
貼っておきますね。
夜街遊戯(克克) 1 2 3 4 5 6 7
―夜の街には様々な人の思惑が交差している。
その中にある幻想は脆く儚いものなのに、それでも人は
刹那の愛を求めて、歓楽街へと身を浸らせていく
それはドロドロと醜い感情を、上辺だけを塗り固めた虚飾であったり
戯れの中に本心を隠して見えないようにしたり…様々な駆け引きが
横行している。
それでも、その中に…『愛』と呼べるものは潜んでいるかどうかに
気づくには…何が、果たして必要なのだろうか…?
ユキは一通り、これから自分がどうするかを克哉に説明し終えると
悪戯っ子のような表情を浮かべて、耳元から顔を離していった。
「聞こえたかい?」
「はい…その、ありがとうございます」
「…礼を言われる程じゃない。俺も同じ気持ちだから乗っただけだよ…。
ま、当分この店には顔出せないぐらいは覚悟しておいてくれな?」
「そ、それは…はい、覚悟してます」
「了解、それじゃあ…二人して、出入り禁止になるぐらいの気持ちで…行こうか?」
「は、はい…」
そういって目の前の男性は、ニッコリと綺麗に微笑んでいった。
二人の距離が、完全に遠いものになっていく。
ユキは一足先にスツールから立ち上がっていくと…ひどくスマートな動作で
もう一人の克哉と、リョウが座っている席の方へと移動していき。
『リョウ』
と、確かに彼は想い人の名を呼んでいった。
瞬間、多くの人間の視線が…ユキに注がれていく。
だが青年は、予め覚悟していたのでそれぐらいでは動じなかった。
「…ユキ、どうしたの? 俺…人と話している最中なんだけど…?」
リョウもまた、相手の突然の行動に目を白黒させていた。
今まで二人とも何度もこの店を愛用してきた。
だから…こんな風に店内に一緒にいても、お互いに先に会話相手やその夜の相手が
見つかったのなら、絶対にこうして割り込むような真似などして来なかった。
今夜だって同じだ、と彼は思い込んでいた。
だからこそ…ユキがこちらに声を掛けて来たことに驚きを隠せないようだった。
「あぁ、相手が見つかっている最中に申し訳ないが…今夜、俺と先約あっただろ?
忘れたのか…?」
「えっ…? あぁ、ユキとは確か明日、約束していたけど…」
「今夜、だろ?」
相手が本来の正しい約束の日時を口に出すのと同時に、念押しするように
『今夜』である、と告げていく。
当然の事ながらこれはユキの嘘であり、ハッタリだ。
「俺が勘違いして、お前との約束を明日だと取り違えてしまった。そうだろ…?」
「えっ…そんな、事は…」
違う、と言いたかったがあまりにはっきりとユキが言い切るので…リョウは
否定仕切れずに、くぐもった声を出していく。
その隙を、男は見逃さなかった。
しっかりとその腕を掴み、リョウの腰を上げさせていく。
その様子に、有無を言わさぬ迫力のようなものがあった。
「という訳でおにーさん、悪いね。今夜は俺の方が先約なんで…失礼するよ。
恥かかせた詫びに、飲み代ぐらいは持たせて貰うよ…」
そういって、眼鏡の前に五千円札を一枚、そっと差し出していく。
「…顔も知らない相手から、金を貰う趣味はない。持って帰ってくれ」
興味のなさそうな顔で、眼鏡は冷たく言い放ち…そのお金を突き返していった。
今まで話していた相手を取られることにも、ユキが割り込んできた事にも
何にも興味がなさそうな態度を貫いていく。
ユキは引き下がって、せめて飲み代ぐらいは支払おうとしたが…相手の
あまりに冷酷な眼差しに引き下がっていく。
(…絶対にこれは受け取りそうにないな…)
その表情と視線から、その事実を察して…一度出した札を代わりに、
すぐ近くに立っていた克哉のポケットにねじ込んでいく。
「えっ…?」
すぐ後ろに立っていた克哉は、突然の事態に呆けた顔を浮かべていく。
「飲み代、代わりに支払っておいて。それじゃ俺は行くから…」
そうして愉快そうな笑みを浮かべていきながら、男は「グッドラック」と短く
呟いて…リョウの手を強引に掴んで、店の外に出ていく。
しかしその動作に、誰も言葉を挟めないまま…そのまま、ユキとリョウの
二人を見送り…そして扉の奥に消えていった。
「あっ…」
そのまま暫く克哉は茫然と立ち尽くしていく。
相手のスムーズさに比べて、克哉は展開についていけずに…すぐに
動けずにいた。
今、もう一人の自分の連れはいない。絶好の声を掛ける機会だ。
そう思っているのに…店内の人間の目が一斉に残された自分に
注がれていることに気づいて、その場で硬直してしまっていた。
(ど、どうしよう…すぐに『俺』に声を掛けないと、せっかくユキさんが
作ってくれたチャンスが…)
けど、無数の視線に晒されるというのは一種の暴力にも近かった。
思うように頭と身体が動かない。
心臓はバクバクいって、うるさいぐらいだった。
そうして克哉が躊躇してしまっている間に…眼鏡の方に目をつけて声を
掛けようとしている若い男が、席を立ち始めていくのが見えた。
(ダメだ、このままじゃ…同じことの繰り返しだ!)
そうして、破れかぶれで慌ててもう一人の自分の元へと距離を詰めていった。
「おい、『俺』…!」
顔を真っ赤にしながら、ついそんな呼びかけをしてしまう。
そうしてから、しまった! と叫びたくなった。
いつもの癖でそう呼んでしまったが、恐らくこんな呼びかけ…第三者が
耳にしたら、異様なものにしか聞こえないだろう。
途端に店内のざわめきが大きなものに変わっていく。
ザワザワザワ…と人が何か密かに言葉を交わしあう声が余計に克哉の
緊張感を上げていってしまった。
薄暗い店内でも、何人かの人間は眼鏡が店に入ってきた時点で克哉が
良く似た風貌の持主であることに気づいていた。
それでただでさえ最初注目を集めてしまっていたのに、こんな奇妙な呼び方を
してしまったら余計に人の興味を煽ってしまうのは明白だった。
(うわ~オレの馬鹿~! いつもの癖で…人前でも、こいつを『俺』って
呼んじゃった!)
克哉は目をシロクロとさせながら、脇から背中に掛けて冷や汗が伝っていくのを
感じ取っていった。
嗚呼、もう…一体どうすれば良いのだろうか。
場数を踏んでさえいればきっとユキのようにスムーズに店内から
相手を連れ出すことが出来ただろう。
けれど自分にはそんな器用な真似など絶対に出来ない。
気分はまさに一人百面相だ。ただ、眼鏡を前にして対峙しているだけで
克哉の顔は赤くなったり青くなったり、様々な色に変化している。
しかししどろもどろになっている克哉に対して、眼鏡はひどく冷たい眼差しを
向けていくと…。
「…一人百面相は済んだのか?」
と、冷淡な態度であっさりと返すのみだった。
その態度に、克哉はつい腹が立っていく。
彼に会いたい一心で、色々と複雑な心境になりつつもここまでやって来て
衆人環視の中でも、勇気を振り絞って声を掛けたのだ。
それなのに、こんなに冷たい態度で出迎えなくても良いじゃないか! と克哉は
思いっきり叫びたくなった。
「お前なぁ! オレがどんな思いでここまで来たと思っているんだよ!」
「…お前が俺に会いたいと、うるさいぐらいに想っているからこうして機会を
与えてやったんだろうが。お前に責められる謂われはないが」
「そ、んな事…ないっ! 何だよ、うるさいぐらいに想っているって…!」
「言葉の通りだ。あぁ、もう…やかましい。少し黙れ」
克哉がつい感情的になって声を大きくしていくと、相手は本気でうるさそうな
表情を浮かべていった。
そして、強引に克哉の腕を引いていくと…。
「うっ…!?」
多くの人間の視線と注目が集まる中、いきなり…克哉はもう一人の自分に
深く唇を奪われる羽目となったのだった―
御堂さんの日の企画に参加して間が開いてしまったので過去のリンクも
貼っておきますね。
夜街遊戯(克克) 1 2 3 4 5 6 7
―夜の街には様々な人の思惑が交差している。
その中にある幻想は脆く儚いものなのに、それでも人は
刹那の愛を求めて、歓楽街へと身を浸らせていく
それはドロドロと醜い感情を、上辺だけを塗り固めた虚飾であったり
戯れの中に本心を隠して見えないようにしたり…様々な駆け引きが
横行している。
それでも、その中に…『愛』と呼べるものは潜んでいるかどうかに
気づくには…何が、果たして必要なのだろうか…?
ユキは一通り、これから自分がどうするかを克哉に説明し終えると
悪戯っ子のような表情を浮かべて、耳元から顔を離していった。
「聞こえたかい?」
「はい…その、ありがとうございます」
「…礼を言われる程じゃない。俺も同じ気持ちだから乗っただけだよ…。
ま、当分この店には顔出せないぐらいは覚悟しておいてくれな?」
「そ、それは…はい、覚悟してます」
「了解、それじゃあ…二人して、出入り禁止になるぐらいの気持ちで…行こうか?」
「は、はい…」
そういって目の前の男性は、ニッコリと綺麗に微笑んでいった。
二人の距離が、完全に遠いものになっていく。
ユキは一足先にスツールから立ち上がっていくと…ひどくスマートな動作で
もう一人の克哉と、リョウが座っている席の方へと移動していき。
『リョウ』
と、確かに彼は想い人の名を呼んでいった。
瞬間、多くの人間の視線が…ユキに注がれていく。
だが青年は、予め覚悟していたのでそれぐらいでは動じなかった。
「…ユキ、どうしたの? 俺…人と話している最中なんだけど…?」
リョウもまた、相手の突然の行動に目を白黒させていた。
今まで二人とも何度もこの店を愛用してきた。
だから…こんな風に店内に一緒にいても、お互いに先に会話相手やその夜の相手が
見つかったのなら、絶対にこうして割り込むような真似などして来なかった。
今夜だって同じだ、と彼は思い込んでいた。
だからこそ…ユキがこちらに声を掛けて来たことに驚きを隠せないようだった。
「あぁ、相手が見つかっている最中に申し訳ないが…今夜、俺と先約あっただろ?
忘れたのか…?」
「えっ…? あぁ、ユキとは確か明日、約束していたけど…」
「今夜、だろ?」
相手が本来の正しい約束の日時を口に出すのと同時に、念押しするように
『今夜』である、と告げていく。
当然の事ながらこれはユキの嘘であり、ハッタリだ。
「俺が勘違いして、お前との約束を明日だと取り違えてしまった。そうだろ…?」
「えっ…そんな、事は…」
違う、と言いたかったがあまりにはっきりとユキが言い切るので…リョウは
否定仕切れずに、くぐもった声を出していく。
その隙を、男は見逃さなかった。
しっかりとその腕を掴み、リョウの腰を上げさせていく。
その様子に、有無を言わさぬ迫力のようなものがあった。
「という訳でおにーさん、悪いね。今夜は俺の方が先約なんで…失礼するよ。
恥かかせた詫びに、飲み代ぐらいは持たせて貰うよ…」
そういって、眼鏡の前に五千円札を一枚、そっと差し出していく。
「…顔も知らない相手から、金を貰う趣味はない。持って帰ってくれ」
興味のなさそうな顔で、眼鏡は冷たく言い放ち…そのお金を突き返していった。
今まで話していた相手を取られることにも、ユキが割り込んできた事にも
何にも興味がなさそうな態度を貫いていく。
ユキは引き下がって、せめて飲み代ぐらいは支払おうとしたが…相手の
あまりに冷酷な眼差しに引き下がっていく。
(…絶対にこれは受け取りそうにないな…)
その表情と視線から、その事実を察して…一度出した札を代わりに、
すぐ近くに立っていた克哉のポケットにねじ込んでいく。
「えっ…?」
すぐ後ろに立っていた克哉は、突然の事態に呆けた顔を浮かべていく。
「飲み代、代わりに支払っておいて。それじゃ俺は行くから…」
そうして愉快そうな笑みを浮かべていきながら、男は「グッドラック」と短く
呟いて…リョウの手を強引に掴んで、店の外に出ていく。
しかしその動作に、誰も言葉を挟めないまま…そのまま、ユキとリョウの
二人を見送り…そして扉の奥に消えていった。
「あっ…」
そのまま暫く克哉は茫然と立ち尽くしていく。
相手のスムーズさに比べて、克哉は展開についていけずに…すぐに
動けずにいた。
今、もう一人の自分の連れはいない。絶好の声を掛ける機会だ。
そう思っているのに…店内の人間の目が一斉に残された自分に
注がれていることに気づいて、その場で硬直してしまっていた。
(ど、どうしよう…すぐに『俺』に声を掛けないと、せっかくユキさんが
作ってくれたチャンスが…)
けど、無数の視線に晒されるというのは一種の暴力にも近かった。
思うように頭と身体が動かない。
心臓はバクバクいって、うるさいぐらいだった。
そうして克哉が躊躇してしまっている間に…眼鏡の方に目をつけて声を
掛けようとしている若い男が、席を立ち始めていくのが見えた。
(ダメだ、このままじゃ…同じことの繰り返しだ!)
そうして、破れかぶれで慌ててもう一人の自分の元へと距離を詰めていった。
「おい、『俺』…!」
顔を真っ赤にしながら、ついそんな呼びかけをしてしまう。
そうしてから、しまった! と叫びたくなった。
いつもの癖でそう呼んでしまったが、恐らくこんな呼びかけ…第三者が
耳にしたら、異様なものにしか聞こえないだろう。
途端に店内のざわめきが大きなものに変わっていく。
ザワザワザワ…と人が何か密かに言葉を交わしあう声が余計に克哉の
緊張感を上げていってしまった。
薄暗い店内でも、何人かの人間は眼鏡が店に入ってきた時点で克哉が
良く似た風貌の持主であることに気づいていた。
それでただでさえ最初注目を集めてしまっていたのに、こんな奇妙な呼び方を
してしまったら余計に人の興味を煽ってしまうのは明白だった。
(うわ~オレの馬鹿~! いつもの癖で…人前でも、こいつを『俺』って
呼んじゃった!)
克哉は目をシロクロとさせながら、脇から背中に掛けて冷や汗が伝っていくのを
感じ取っていった。
嗚呼、もう…一体どうすれば良いのだろうか。
場数を踏んでさえいればきっとユキのようにスムーズに店内から
相手を連れ出すことが出来ただろう。
けれど自分にはそんな器用な真似など絶対に出来ない。
気分はまさに一人百面相だ。ただ、眼鏡を前にして対峙しているだけで
克哉の顔は赤くなったり青くなったり、様々な色に変化している。
しかししどろもどろになっている克哉に対して、眼鏡はひどく冷たい眼差しを
向けていくと…。
「…一人百面相は済んだのか?」
と、冷淡な態度であっさりと返すのみだった。
その態度に、克哉はつい腹が立っていく。
彼に会いたい一心で、色々と複雑な心境になりつつもここまでやって来て
衆人環視の中でも、勇気を振り絞って声を掛けたのだ。
それなのに、こんなに冷たい態度で出迎えなくても良いじゃないか! と克哉は
思いっきり叫びたくなった。
「お前なぁ! オレがどんな思いでここまで来たと思っているんだよ!」
「…お前が俺に会いたいと、うるさいぐらいに想っているからこうして機会を
与えてやったんだろうが。お前に責められる謂われはないが」
「そ、んな事…ないっ! 何だよ、うるさいぐらいに想っているって…!」
「言葉の通りだ。あぁ、もう…やかましい。少し黙れ」
克哉がつい感情的になって声を大きくしていくと、相手は本気でうるさそうな
表情を浮かべていった。
そして、強引に克哉の腕を引いていくと…。
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HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
鬼畜眼鏡にハマり込みました。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
当ブログサイトへのリンク方法
URL=http://yukio0201.blog.shinobi.jp/
リンクは同ジャンルの方はフリーです。気軽に切り貼りどうぞ。
…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
当ブログサイトへのリンク方法
URL=http://yukio0201.blog.shinobi.jp/
リンクは同ジャンルの方はフリーです。気軽に切り貼りどうぞ。
…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
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