鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※これはいつもお世話になっている某管理人様に捧げる克克話です。
その方の誕生日の季節に合わせたネタを書かせて頂きました~。
お誕生日、おめでとう~!
『春雷』
―何故か桜が苦手だった。
皆が綺麗だ、と言って花見をしたり浮かれる季節。
けれど毎年、自分はその言葉に賛同出来ないで曖昧に笑って
誤魔化し続けていた。
三月中旬、関東ではもうじき桜の開花の時期を迎えようとする間際。
その夜、静かに…春雷が訪れていた
すでに暖房に頼らなくても夜を過ごせるようになった頃。
決算時期を迎えて、夜遅くに克哉は自宅に辿り着いた。
傘を差して帰ったが、それでも長く小雨が降り注ぐ中を歩いて帰れば
全身はうっすらと濡れてしまっていて。
「…ビショビショという程濡れてないよな…。どうしよう…干しておいて明日も
着ていくか、クリーニングに出すことにして…明日は別なのを着ていくか
どっちにしようか…」
そう、濡れ加減が微妙なラインなので克哉は少し考え込んでしまっていた。
とりあえず部屋の敷地内に上がっていった瞬間…ゴロゴロ、と雷鳴音が
聞こえ始めていた。
それに意識を取られて、つい電気もつけないままで…ベランダの方まで
足を向けていってしまう。
その時、克哉のマンションの近辺では、幾度か鮮やかに夜空に稲妻が走っていった。
ピカッ!! ゴロゴロ!!
どうやら近くに雷が落ちたらしく、それから少しだってドカン! という派手な
音が周囲に鳴り響いていった。
雨音がザーザーと鳴り響いている中、その爆音は妙にこちらの心を
ざわめかせていった。
(どうして…こんな夜に、大雨と雷が鳴り響いているんだろう…)
自分の自室内で、ガラス越しに外の光景を眺めていきながら克哉は
しみじみとそう思った。
桜が咲く頃やその間際になると、胸の奥からザワザワと何かが競り上がって
くるようで本気で落ち着かなかった。
だが、何が原因でこんな心境になるのかはっきりと思い出すことが出来ない。
そのせいで克哉は、毎年…この時期になると必死にそれを押し殺して平静を
取り繕って過ごす羽目に陥っていた。
漆黒のガラスの表面には鏡のように克哉の顔をくっきりと映し出している。
その向こうに一瞬だけ、もう一人の自分の面影を見出して…そっと無意識の内に
黒いガラスに映っている自分の虚像に指を添えていた。
「『俺』…」
今の克哉は、不安だった。
だから無意識の内に、誰かにいて欲しいと願ってしまった。
そうして静かに求めていたのは…傲慢で身勝手な、もう一人の自分だった。
(…何、考えているんだろう…。何もなく、あいつがオレの前に現れることなんて
ないって判り切っているのに…)
少し経って、自分でもそう突っ込みたくなった。
けれど…胸の奥に大きな不安が、闇が存在していた。
だからそれを紛らわしたくて…無意識の内に、温もりを求めてしまっていた。
「会いたい、な…」
それは、相手に届くことはない呟きだという自覚はあった。
だからこそ…ごく自然に克哉の唇から零れていった。
その瞬間、一際大きく周囲に閃光が走り抜けていく。
バァァァァン!!
そして、本当にすぐ間近で雷が落ちたかのような一層激しい爆音が
轟いていった。
「うわっ!!」
二十代後半になる大の男が、雷が鳴っているぐらいで今更怯えたりはしないが
これだけ近ければ流石に大声ぐらいは出てしまう。
克哉は大きく肩を揺らしながら、その音をやり過ごしていくと…ふいに
背後に気配を感じていった。
「な、何だ…?」
そうして、慌ててそちらの方向に振り返ろうとした瞬間…ふいに、
後ろから誰かに抱きすくめられている感触を覚えていった。
「えっ…?」
先ほどまでこの部屋の中には自分だけしかいない筈だった。
しかし…気づけば、克哉はガラスと…その相手の身体の間に閉じ込められる
格好になっていた。
冷たいガラスの感触と、顔も判らない誰かの温もりに挟まれて克哉は
一瞬パニックになりかける。
「だ、誰だよ…!」
「…ほう、『俺』が判らないのか…?」
「へっ…?」
耳元で囁かれる、低く掠れた…尾骶骨まで響く声。
たったそれだけの事で背筋がゾクゾクしてしまった。
聞き間違える訳がない、これは…紛れもなく…。
「どうして、『俺』が…? 柘榴は、食べてない筈なのに…?」
「お前がさっき、呼んだんだろう…? 俺に会いたいって、心の中で強く願った筈だ。
だから…来てやったんだが…何か、悪かったのか…?」
そう呟かれながら、首元に小さくキスを落とされていく。
チュッという音が微かに聞こえて、克哉は頬を赤く染めていった。
相手の体温と息遣いを闇の中でしっかりと感じてしまって…嫌でも意識せざる
得ない状況だった。
「ううん、悪いってことはないけど…。ただ、少しびっくりはしたかな…。
まさか、今夜…お前に会えるなんて思ってもみなかったから…」
「ほう? あれだけ心の中で強く俺を呼んでいた癖にそんな事を言うのか…?
良い根性をしているな…」
「…そんなに、オレ…お前を強く呼んでいた…?」
「あぁ…うるさいぐらいに、な…?」
そうして、あっという間に相手の声のトーンがねっとりと甘いものへと変わっていく。
自分の胸元から腹部の周辺で組まれていた両手が、怪しく布地越しに…克哉の
身体を這い回り始めていった。
「あっ…はっ…」
両手で胸元周辺を弄られ始めて、克哉はビクンと身体を跳ねさせていく。
けれど相手の手は更に大胆さを増していって、ボタンをゆっくりと外して…今度は
直接触れ始めて―
「って。ちょっと待ってよ! いきなり…何を…!」
「何を今更…お前とオレがこうして暗闇で一緒にいるのに、何も仕掛けないで
健全で終わると思っていたのか…?」
「そ、そんな事を堂々と言い切るなよ~! あっ…こら、そんな所、んんっ…
触るなって、ば…」
口では文句を言いつつも、眼鏡の手がゆっくりと下肢に触れて…性急な動作で
フロント部分を寛げさせて直接性器を握りこんでいけば、克哉の意思とは反して
其処は硬く張り詰めてしまっていた。
「…こういう時は正直になった方が身の為だぞ…? お前の此処なんて、俺の指に
吸い付いて来ているみたいじゃないか…?」
「やだ…言う、なよ…はっ…!」
相手の指がいやらしくこちらの鈴口をくじくように…執拗に親指の腹を擦り付け
続けていく。その度に克哉の半開きの唇から、絶え間なく喘ぎ声が漏れていく。
相手の指先が尿道付近や…ペニスの先端の割れ目周辺を攻め続けていくと…
克哉の全身はフルフルと震えて、そして大きく跳ねていった。
「やっ…もう、ダメだ…! 止め…! 『俺』…!」
克哉は瞼をギュウっと伏せて懇願していくが…その願いは聞き遂げられる
事はなかった。
代わりに耳朶を痛いぐらいに食まれて、扱く指の動きを激しいものに変えられていく。
耐え切れないぐらいの強烈な快感が、電流のように走り抜けていく。
「イケよ…お前の淫らな顔が、黒い窓ガラスの中に…くっきりと映し出されて
いるぞ…?」
「えっ…あっ…あぁー!!」
そう呟かれた瞬間、相手の視線をようやく克哉は意識した。
黒いガラスを通して、背後にいる相手に自分の淫靡な顔が見られてしまっていた
という事実が…克哉の神経を焼いていく。
耐え切れない、こんな強い羞恥と快楽に…だから僅かに残っていた抵抗心とか
そういうものが完全に粉々にされていく。
そして、勢い良く相手の手の中で…熱い精を迸らせていった。
ピカッ!!
そして、世界が瞬間…真っ白に染まっていく。
頂点に達することで脳裏に感じるホワイトアウトと、稲光が連動していった。
その時、何もかもが遠くなり始めていく。
けれど…もう一人の自分の荒い呼吸音と、忙しくなった脈動だけはその状態でも
はっきりと感じられていった。
「アッ・・・ハッ…」
心臓が壊れそうなぐらいに激しく鼓動を刻んでいるのが判る。
達した直後は何となく心の中に大きな空洞が出来てしまったような錯覚を
感じてしまう。
そんな時…誰かの胸に包まれているのは、とても安心出来た。
(あったかい…いや、熱いぐらいだな…『俺』の身体…)
荒い吐息を繰り返していきながら、克哉は暫し…相手の胸に身体を凭れさせていく。
さっきまで感じていた不安が、晴れていく。
桜の時期を迎えて、意味もなくざわめいた心が。
暗い夜と雨、そして春雷に意味もなく乱されていた心が…もう一人の自分の
気配に包まれて、緩やかに安定していくのが判る。
無意識の内に、相手の指先を求めて克哉は…己の指を蠢かしていく。
相手の指にそっと自分の手が触れた瞬間…。
―勢い良く相手に下肢の衣類を引き摺り下ろされて、強引に身体の奥に
ペニスを挿入されていった
「あぁぁー!!」
突然の衝撃に、心も肉体もついていけなかった。
大声を挙げて大きく全身を戦慄かせて、目の前のガラス戸に手をついていって
どうにか倒れないように自らを支えるのが精一杯だった。
何度も、春の嵐が夜空に走り抜けていく。
けれど…もう、怖くなかった。
否、もう不安や恐怖が入り込む余地がないくらいに…全てがもう一人の
自分の存在によって満たされていく。
最奥を深々と貫かれることで、克哉は彼に支配されていった。
「余計な事など、考えるな…」
「んっ…はっ…」
「…不安になるぐらいなら、何も考えるな。それぐらいならお前は俺のことだけを
感じて啼いていれば充分だろう…?」
「はっ…あぁ…う、ん…判った…くっ…ぁ…!」
身体の奥が、熱くて仕方なかった。
もう一人の自分に貫かれて、気持ちよくて頭の芯すら痺れてしまいそうだ。
克哉の感じる部位を執拗にこすり上げて、的確に快楽を与えられる。
その感覚に全てを奪われる。
だからもう…先程のような焦燥感や空虚な想いを、感じる暇など…なかった。
克哉が手を突いているガラス戸がガタガタガタと大きな音を立てて軋んでいく。
漆黒の鏡に映るのは、自分と寸分変わらぬ容姿を持つ酷い男。
けれど…繋がっている部位から、快感と共に…確かに身体が繋がっている
喜びもまた溢れ出ていて、克哉を満たしていく。
「んっ…あっ…お前で、オレを…いっぱいに、して…!」
無意識の内に、嬌声交じりにそんな事を懇願していた。
克哉のその言葉を聴いた瞬間、こちらを犯している男は満足げに
微笑を浮かべていく。
そして…春雷が変わらず鳴り響く中で、告げていく。
「あぁ…お前の望み、叶えてやるよ…。雨も雷も…深い闇も、そんなものが
何でもなくなるぐらいに…強く、お前の中を俺だけで満たしてやる…」
その一言を聞いた時、克哉は知った。
―もう一人の自分は、こちらの不安と恐怖、そして呼び声を聞いた上でこうして
姿を現してくれた事実を…
(本当に、こいつは…!)
率直に優しいことを言ってくれない奴だなと感じた。
けれど…その遠まわしで判りにくい気遣いに、やっと気づけた克哉もまた…
微かな笑みを口元に湛えていった。
瞬間、相手がこちらの内部を一層深く抉っていく。
互いの体液が深く絡まり…グチャグチャと粘質の水音を立てながらこちらを
深い悦楽へと容赦なく叩き込んでいった。
「ふっ…あぁー!!」
そして、克哉は何も考えられなくなる。
ただ相手の与える感覚だけを全身で享受していった。
もう、何もかもがどうでも良い。
彼だけがこうして傍にいてくれれば…あんな風に無闇に桜を怖いとか、
何とも形容しがたい不安感も、感じずに済むから…
(せめて、今夜だけでも…お前にずっと、いて欲しい…)
一人が寂しくて、何となくぽっかりと胸に空洞が空くようなそんな
気持ちになる夜は、誰にだって存在する。
けれどそんな夜に、誰かが傍にいてくれれば。
その心を癒してくれれば…恐怖も傷も、薄れてくれる。
再び閃光が走って、世界が白く染まっていく。
立て続けに強烈な感覚を与えられ続けたせいか…ついに克哉は
限界を迎えて、意識が遠くなるのを感じていった。
(ダメ、だ…もう、本当に…これ以上は、意識が…)
ガクリと全身から力が抜けていく。
白天から黒い闇に、一気に突き落とされていくような感覚。
けれどすっぽりと相手の体温を背中に感じているから、その
急降下されているような感覚もあまり怖くなかった。
「…夜明けまでは、いてやろう…」
完全に眠りに落ちる寸前、もう一人の自分がぶっきらぼうに
そう呟いていった。
その一言が、今の克哉には少し嬉しかった。
だから、微笑を湛えながらそっと告げていく。
―ありがとう、『俺』…
ただ傍にいてくれるだけで、心強く感じられる夜もある。
こうやって一方的に…というか問答無用に犯されてしまうのだけは
頂けないけれど、けれど会えて嬉しかったのは事実だから…
そう告げた瞬間に、やや苦しい体制を取らされながら…相手から
唇にキスを落とされていく。
―それを幸福そうな顔で受け止めていきながら、克哉はその春雷の夜、
静かに意識を手放していったのだった―
その方の誕生日の季節に合わせたネタを書かせて頂きました~。
お誕生日、おめでとう~!
『春雷』
―何故か桜が苦手だった。
皆が綺麗だ、と言って花見をしたり浮かれる季節。
けれど毎年、自分はその言葉に賛同出来ないで曖昧に笑って
誤魔化し続けていた。
三月中旬、関東ではもうじき桜の開花の時期を迎えようとする間際。
その夜、静かに…春雷が訪れていた
すでに暖房に頼らなくても夜を過ごせるようになった頃。
決算時期を迎えて、夜遅くに克哉は自宅に辿り着いた。
傘を差して帰ったが、それでも長く小雨が降り注ぐ中を歩いて帰れば
全身はうっすらと濡れてしまっていて。
「…ビショビショという程濡れてないよな…。どうしよう…干しておいて明日も
着ていくか、クリーニングに出すことにして…明日は別なのを着ていくか
どっちにしようか…」
そう、濡れ加減が微妙なラインなので克哉は少し考え込んでしまっていた。
とりあえず部屋の敷地内に上がっていった瞬間…ゴロゴロ、と雷鳴音が
聞こえ始めていた。
それに意識を取られて、つい電気もつけないままで…ベランダの方まで
足を向けていってしまう。
その時、克哉のマンションの近辺では、幾度か鮮やかに夜空に稲妻が走っていった。
ピカッ!! ゴロゴロ!!
どうやら近くに雷が落ちたらしく、それから少しだってドカン! という派手な
音が周囲に鳴り響いていった。
雨音がザーザーと鳴り響いている中、その爆音は妙にこちらの心を
ざわめかせていった。
(どうして…こんな夜に、大雨と雷が鳴り響いているんだろう…)
自分の自室内で、ガラス越しに外の光景を眺めていきながら克哉は
しみじみとそう思った。
桜が咲く頃やその間際になると、胸の奥からザワザワと何かが競り上がって
くるようで本気で落ち着かなかった。
だが、何が原因でこんな心境になるのかはっきりと思い出すことが出来ない。
そのせいで克哉は、毎年…この時期になると必死にそれを押し殺して平静を
取り繕って過ごす羽目に陥っていた。
漆黒のガラスの表面には鏡のように克哉の顔をくっきりと映し出している。
その向こうに一瞬だけ、もう一人の自分の面影を見出して…そっと無意識の内に
黒いガラスに映っている自分の虚像に指を添えていた。
「『俺』…」
今の克哉は、不安だった。
だから無意識の内に、誰かにいて欲しいと願ってしまった。
そうして静かに求めていたのは…傲慢で身勝手な、もう一人の自分だった。
(…何、考えているんだろう…。何もなく、あいつがオレの前に現れることなんて
ないって判り切っているのに…)
少し経って、自分でもそう突っ込みたくなった。
けれど…胸の奥に大きな不安が、闇が存在していた。
だからそれを紛らわしたくて…無意識の内に、温もりを求めてしまっていた。
「会いたい、な…」
それは、相手に届くことはない呟きだという自覚はあった。
だからこそ…ごく自然に克哉の唇から零れていった。
その瞬間、一際大きく周囲に閃光が走り抜けていく。
バァァァァン!!
そして、本当にすぐ間近で雷が落ちたかのような一層激しい爆音が
轟いていった。
「うわっ!!」
二十代後半になる大の男が、雷が鳴っているぐらいで今更怯えたりはしないが
これだけ近ければ流石に大声ぐらいは出てしまう。
克哉は大きく肩を揺らしながら、その音をやり過ごしていくと…ふいに
背後に気配を感じていった。
「な、何だ…?」
そうして、慌ててそちらの方向に振り返ろうとした瞬間…ふいに、
後ろから誰かに抱きすくめられている感触を覚えていった。
「えっ…?」
先ほどまでこの部屋の中には自分だけしかいない筈だった。
しかし…気づけば、克哉はガラスと…その相手の身体の間に閉じ込められる
格好になっていた。
冷たいガラスの感触と、顔も判らない誰かの温もりに挟まれて克哉は
一瞬パニックになりかける。
「だ、誰だよ…!」
「…ほう、『俺』が判らないのか…?」
「へっ…?」
耳元で囁かれる、低く掠れた…尾骶骨まで響く声。
たったそれだけの事で背筋がゾクゾクしてしまった。
聞き間違える訳がない、これは…紛れもなく…。
「どうして、『俺』が…? 柘榴は、食べてない筈なのに…?」
「お前がさっき、呼んだんだろう…? 俺に会いたいって、心の中で強く願った筈だ。
だから…来てやったんだが…何か、悪かったのか…?」
そう呟かれながら、首元に小さくキスを落とされていく。
チュッという音が微かに聞こえて、克哉は頬を赤く染めていった。
相手の体温と息遣いを闇の中でしっかりと感じてしまって…嫌でも意識せざる
得ない状況だった。
「ううん、悪いってことはないけど…。ただ、少しびっくりはしたかな…。
まさか、今夜…お前に会えるなんて思ってもみなかったから…」
「ほう? あれだけ心の中で強く俺を呼んでいた癖にそんな事を言うのか…?
良い根性をしているな…」
「…そんなに、オレ…お前を強く呼んでいた…?」
「あぁ…うるさいぐらいに、な…?」
そうして、あっという間に相手の声のトーンがねっとりと甘いものへと変わっていく。
自分の胸元から腹部の周辺で組まれていた両手が、怪しく布地越しに…克哉の
身体を這い回り始めていった。
「あっ…はっ…」
両手で胸元周辺を弄られ始めて、克哉はビクンと身体を跳ねさせていく。
けれど相手の手は更に大胆さを増していって、ボタンをゆっくりと外して…今度は
直接触れ始めて―
「って。ちょっと待ってよ! いきなり…何を…!」
「何を今更…お前とオレがこうして暗闇で一緒にいるのに、何も仕掛けないで
健全で終わると思っていたのか…?」
「そ、そんな事を堂々と言い切るなよ~! あっ…こら、そんな所、んんっ…
触るなって、ば…」
口では文句を言いつつも、眼鏡の手がゆっくりと下肢に触れて…性急な動作で
フロント部分を寛げさせて直接性器を握りこんでいけば、克哉の意思とは反して
其処は硬く張り詰めてしまっていた。
「…こういう時は正直になった方が身の為だぞ…? お前の此処なんて、俺の指に
吸い付いて来ているみたいじゃないか…?」
「やだ…言う、なよ…はっ…!」
相手の指がいやらしくこちらの鈴口をくじくように…執拗に親指の腹を擦り付け
続けていく。その度に克哉の半開きの唇から、絶え間なく喘ぎ声が漏れていく。
相手の指先が尿道付近や…ペニスの先端の割れ目周辺を攻め続けていくと…
克哉の全身はフルフルと震えて、そして大きく跳ねていった。
「やっ…もう、ダメだ…! 止め…! 『俺』…!」
克哉は瞼をギュウっと伏せて懇願していくが…その願いは聞き遂げられる
事はなかった。
代わりに耳朶を痛いぐらいに食まれて、扱く指の動きを激しいものに変えられていく。
耐え切れないぐらいの強烈な快感が、電流のように走り抜けていく。
「イケよ…お前の淫らな顔が、黒い窓ガラスの中に…くっきりと映し出されて
いるぞ…?」
「えっ…あっ…あぁー!!」
そう呟かれた瞬間、相手の視線をようやく克哉は意識した。
黒いガラスを通して、背後にいる相手に自分の淫靡な顔が見られてしまっていた
という事実が…克哉の神経を焼いていく。
耐え切れない、こんな強い羞恥と快楽に…だから僅かに残っていた抵抗心とか
そういうものが完全に粉々にされていく。
そして、勢い良く相手の手の中で…熱い精を迸らせていった。
ピカッ!!
そして、世界が瞬間…真っ白に染まっていく。
頂点に達することで脳裏に感じるホワイトアウトと、稲光が連動していった。
その時、何もかもが遠くなり始めていく。
けれど…もう一人の自分の荒い呼吸音と、忙しくなった脈動だけはその状態でも
はっきりと感じられていった。
「アッ・・・ハッ…」
心臓が壊れそうなぐらいに激しく鼓動を刻んでいるのが判る。
達した直後は何となく心の中に大きな空洞が出来てしまったような錯覚を
感じてしまう。
そんな時…誰かの胸に包まれているのは、とても安心出来た。
(あったかい…いや、熱いぐらいだな…『俺』の身体…)
荒い吐息を繰り返していきながら、克哉は暫し…相手の胸に身体を凭れさせていく。
さっきまで感じていた不安が、晴れていく。
桜の時期を迎えて、意味もなくざわめいた心が。
暗い夜と雨、そして春雷に意味もなく乱されていた心が…もう一人の自分の
気配に包まれて、緩やかに安定していくのが判る。
無意識の内に、相手の指先を求めて克哉は…己の指を蠢かしていく。
相手の指にそっと自分の手が触れた瞬間…。
―勢い良く相手に下肢の衣類を引き摺り下ろされて、強引に身体の奥に
ペニスを挿入されていった
「あぁぁー!!」
突然の衝撃に、心も肉体もついていけなかった。
大声を挙げて大きく全身を戦慄かせて、目の前のガラス戸に手をついていって
どうにか倒れないように自らを支えるのが精一杯だった。
何度も、春の嵐が夜空に走り抜けていく。
けれど…もう、怖くなかった。
否、もう不安や恐怖が入り込む余地がないくらいに…全てがもう一人の
自分の存在によって満たされていく。
最奥を深々と貫かれることで、克哉は彼に支配されていった。
「余計な事など、考えるな…」
「んっ…はっ…」
「…不安になるぐらいなら、何も考えるな。それぐらいならお前は俺のことだけを
感じて啼いていれば充分だろう…?」
「はっ…あぁ…う、ん…判った…くっ…ぁ…!」
身体の奥が、熱くて仕方なかった。
もう一人の自分に貫かれて、気持ちよくて頭の芯すら痺れてしまいそうだ。
克哉の感じる部位を執拗にこすり上げて、的確に快楽を与えられる。
その感覚に全てを奪われる。
だからもう…先程のような焦燥感や空虚な想いを、感じる暇など…なかった。
克哉が手を突いているガラス戸がガタガタガタと大きな音を立てて軋んでいく。
漆黒の鏡に映るのは、自分と寸分変わらぬ容姿を持つ酷い男。
けれど…繋がっている部位から、快感と共に…確かに身体が繋がっている
喜びもまた溢れ出ていて、克哉を満たしていく。
「んっ…あっ…お前で、オレを…いっぱいに、して…!」
無意識の内に、嬌声交じりにそんな事を懇願していた。
克哉のその言葉を聴いた瞬間、こちらを犯している男は満足げに
微笑を浮かべていく。
そして…春雷が変わらず鳴り響く中で、告げていく。
「あぁ…お前の望み、叶えてやるよ…。雨も雷も…深い闇も、そんなものが
何でもなくなるぐらいに…強く、お前の中を俺だけで満たしてやる…」
その一言を聞いた時、克哉は知った。
―もう一人の自分は、こちらの不安と恐怖、そして呼び声を聞いた上でこうして
姿を現してくれた事実を…
(本当に、こいつは…!)
率直に優しいことを言ってくれない奴だなと感じた。
けれど…その遠まわしで判りにくい気遣いに、やっと気づけた克哉もまた…
微かな笑みを口元に湛えていった。
瞬間、相手がこちらの内部を一層深く抉っていく。
互いの体液が深く絡まり…グチャグチャと粘質の水音を立てながらこちらを
深い悦楽へと容赦なく叩き込んでいった。
「ふっ…あぁー!!」
そして、克哉は何も考えられなくなる。
ただ相手の与える感覚だけを全身で享受していった。
もう、何もかもがどうでも良い。
彼だけがこうして傍にいてくれれば…あんな風に無闇に桜を怖いとか、
何とも形容しがたい不安感も、感じずに済むから…
(せめて、今夜だけでも…お前にずっと、いて欲しい…)
一人が寂しくて、何となくぽっかりと胸に空洞が空くようなそんな
気持ちになる夜は、誰にだって存在する。
けれどそんな夜に、誰かが傍にいてくれれば。
その心を癒してくれれば…恐怖も傷も、薄れてくれる。
再び閃光が走って、世界が白く染まっていく。
立て続けに強烈な感覚を与えられ続けたせいか…ついに克哉は
限界を迎えて、意識が遠くなるのを感じていった。
(ダメ、だ…もう、本当に…これ以上は、意識が…)
ガクリと全身から力が抜けていく。
白天から黒い闇に、一気に突き落とされていくような感覚。
けれどすっぽりと相手の体温を背中に感じているから、その
急降下されているような感覚もあまり怖くなかった。
「…夜明けまでは、いてやろう…」
完全に眠りに落ちる寸前、もう一人の自分がぶっきらぼうに
そう呟いていった。
その一言が、今の克哉には少し嬉しかった。
だから、微笑を湛えながらそっと告げていく。
―ありがとう、『俺』…
ただ傍にいてくれるだけで、心強く感じられる夜もある。
こうやって一方的に…というか問答無用に犯されてしまうのだけは
頂けないけれど、けれど会えて嬉しかったのは事実だから…
そう告げた瞬間に、やや苦しい体制を取らされながら…相手から
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―それを幸福そうな顔で受け止めていきながら、克哉はその春雷の夜、
静かに意識を手放していったのだった―
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
鬼畜眼鏡にハマり込みました。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
当ブログサイトへのリンク方法
URL=http://yukio0201.blog.shinobi.jp/
リンクは同ジャンルの方はフリーです。気軽に切り貼りどうぞ。
…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
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