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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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『きよしこの夜』



 クリスマスイブの夜、忘年会の会場から…克哉は何故かサンタの格好をして
帰路につく羽目になっていた。
 真っ赤な帽子と…襟元と袖の処にフワフワとした綿が散らされている真っ赤な服。
 そして赤いブーツの三点セットとくれば…クリスマスの定番の服装である。
 しかし街道や、店の前でならばともかく静かな住宅街の中では非常に
浮き捲くっている服装である事は否めなかった。

(…トホホ、駅からここまでの道の途中で目立ち捲くっているよな…)

 それでも、駅の周辺と違ってこの辺りには余り通行客がいない事に克哉は
非常に安堵を覚えていた。
 本日の忘年会で本多が取引先から貰ってきたサンタの衣装。
 丁度克哉の身体のサイズにぴったりだったので…宴会の余興として着て見たは良かったが
その間に…克哉の元々着ていたスーツの上に片桐部長がお酒をひっくり返してしまい
…結果的にこのままの格好で帰る事になったのだ。
 電車の中でも駅のホームの中でも、クリスマスの当日の今日…非常に目立ち巻くって
克哉は居たたまれない気持ちに陥っていた。
 
(どうかご近所の方と顔を合わせませんように…)

 必死の気持ちで祈りながら自分のアパートの階段を登っていく。
 ふと、足を止めた。
 …何故か自分の部屋の扉が、微かだか開いていたのだ。

「…おかしい、な…確か今朝、ちゃんと…オレは鍵を掛けて出ていった筈なのに…」

 訝しげに思いながら、慎重に足を進めて部屋の方を伺い見る。
 自分の部屋の明かりが灯っている事に、余計に眉根を寄せていく。
 …自慢ではないが克哉は一人暮らしの身分である。
 電気代も水道代も全て自腹を切って払わなければならないのだ。
 鍵の開け閉めはともかく…自分が朝に電気を点けたまま出て行く事など、ありえない。
 そんな真似を繰り返していては…電気代が恐ろしい事になるのだ。
 どれだけ慌てていても…電気の消し忘れに関しては自分は気を配っている筈だ。
 だから、おかしかった。

「もしかして…空き巣にでも入られたのかな…?」

 こんな格好して帰る羽目になった上に…クリスマスの夜に泥棒に入られたとなったら
泣くに泣けない。
 深い溜息を突きながら…どうしようと立ち尽くしていると、ふと…部屋の中から
オルゴールの音が鳴り響いた。

「…きよしこの夜…?」

 静かなメロディが、部屋の中からしっとりと奏でられていくのが聞こえて…つい、興味を
持って扉の奥を覗き込んでいく。
 その瞬間…予想もしていなかった人物と目を合わせて…克哉はぎょっとなった。
 大慌てで自室に入り、相手を指差しながら叫んでいった。

「…っ! 何でお前がここにいるんだよっ!」

「…ここは佐伯克哉の部屋だろ? それなら…俺がこの部屋の中にいたって
何の不思議もないだろうが…。そうじゃないか? なあ…<オレ>」

 クスクス笑いながら、白のYシャツに黒い上着を着崩した服を着たもう一人の自分が…
部屋の中で立ちながら自分を出迎えてくれていた。

(…最近、柘榴の実を食べてなくても…こいつ、やたらとオレの前に顔出してないか…?)

 言って見れば、あの銀縁眼鏡を掛けた日から…何かの表紙ににこいつが
突発的に顔出すのはすでに克哉にとって日常茶飯事になっていた。
 それでも自宅に当たり前のように陣取って現れたのは今回が初めてだった為に
克哉も動揺を隠せなかった。

「どうして…オレの部屋に、現れたんだ…?」

「ご挨拶だな…とりあえずあの男が、今宵の祝いにという事で…俺にこれを
持たせたんでな。それでわざわざ配達に来てやったというのに…随分と
ご挨拶だな…」

 そうして、眼鏡が差し出したのは…開けばオルゴール風のメロディを奏でる
メッセージカードと…一本のシャンパンの瓶だった。

「あの男…?」

「お前に…この銀縁眼鏡を与えた、あの怪しい男だ…。今宵はクリスマスだから
プレゼントとしてどうぞ…との事だ。ほら…」

「えっ…どう、して…?」

 突然の事に呆けながらも、メッセージカードを開いていく。
 そこには『Merry Christmas Dear 佐伯克哉様  Mr.Rより愛を込めて』と
短い一文で記されていた。
 流れていくのは…『きよしこの夜』 
 そしてカードの絵柄は蒼い夜空に白い雪の結晶が舞い散り…白い杉の木が
三本ほどバランス良く立ち並んでいる絵柄だった。

 添えられたシャンパンの銘柄は『グリュグ』
 フランス産のものの中では最上レベルの一品だ。
 克哉の薄給ではなかなか飲めない代物であるだけに…顔をほころばせていった。
 クリスマスにぴったりの音楽とカードに…少し警戒心を解いて、克哉は
受け取っていった。

「あの人がこんな物を…オレにくれるなんて、凄く意外だけど…嬉しいな。
わざわざ持って来てくれて有難うな<俺>」

 笑顔でそう告げていくと…少し居心地悪そうな顔をしながら…ズイっと
眼鏡が距離を詰めていく。

「…本当におめでたい奴だな。俺が何の対価も無しに…こんな親切な真似を
してやると思っているのか…?」

「えっ…?」

 自分の部屋のガラス机の上にカードとシャンパンの瓶を置いて振り返ったと
同時に、眼鏡の神業が炸裂していった。

「…何が一体…? ってっ! えぇぇぇ!!」

 克哉が叫び声を上げると同時に、下着ごとサンタの赤いズボンが相手の手の中に
握り込まれていて…とっさに上着の裾を引っ張って前を隠していく。

「くくっ…良い格好だな、<オレ>…。なかなかそそるぞ…?」

「くっ…こら! オレのズボン返せよ! 悪戯するにも程があるだろ!」
 
 カッと頭に血が昇って、克哉は眼鏡に掴みかかっていく。
 そのまま…ベッドの上になだれ込み、相手の手から赤いサンタズボンと下着を奪い取ろうと
必死になるが、グっと押さえ込まれて…逆にこちらが呻く羽目になった。

「…こんな無粋な物を履いていては、せっかくのプレゼントにならないだろうが…。
これくらい、楽しませてくれたって良いんじゃないのか…?」

「何判らない事言っているんだよっ! って…! バカ…何を…!」

 剥き出しになった臀部を思いっきり掴まれて、痛みと妙な疼きが背筋を
走り抜けていく。

「さっきも言っただろ…? わざわざここまでプレゼントを運んでやったんだ。
今度は俺がクリスマスプレゼントを貰う番だろ…?」

 そうして、眼鏡の顔がゆっくりと近づいてくるのに気づいて…軽く蒼白になりながら
克哉は呟いていく。

「あの…物凄い嫌な予感するんだけど…もしかして、そのプレゼントって…その…」

「…お前以外に、何があるというんだ?」

 当たり前のように言われて、いきなり唇を奪われて…瞬間、頭が真っ白になる。
 こちらが硬直している間にも眼鏡の手が怪しく蠢いて…こちらの妙な処とかを
触り巻くって、身体に火を点け始めていった。

「も…うっ! いい加減にしろよ! そう何度もオレを良いように…するなぁ!!」

 バタバタと相手の腕の中でもがいていくが…いつの間にかベッドの上に組み敷かれて
しまっていてはすでに勝負になる訳がない。
 足を開かされて、身体の間に割り込まれていくと…そのまま深く唇を奪われていった。
  そのまましっかりと押さえ込まれた状態で…たっぷりと五分は熱い舌先で口内を
蹂躙されたまま…尻肉を揉みしだかれた。
 終わった頃には…すっかりと、克哉の身体からは…芯が抜けてしまっていた。
 抵抗する気力すらも…すでに霧散してしまっていた。

「…くくっ。ようやく観念したみたいだな…せいぜい、今夜は楽しませてもらおうか…?
 なあ<オレ>…?」

「…もう、良い…好きにしろよ…」

 もう抵抗しても、どうしようもならないと思い知って…ようやく観念して克哉は大人しく
なっていく。
 その瞬間、ガラスの机の上から…メッセージカードが落下して…部屋中に
『きよしこの夜』のメロディが響き渡った―

 そうして…克哉のクリスマスイブの夜は、眼鏡に熱く翻弄されながら過ぎていった―



 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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