鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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溜息を突きながら、とりあえず抱きしめ続けてやると…次第に克哉の身体から
力が抜けて…相手の体重が全て、こちらに掛けられた。
まったく同じ体格である為…それなりに眼鏡の方にも負担が掛かっていたが今は
敢えて何も言わずに好きなようにさせていった。
先程までのヤル気は、見事に拡散されてしまっている。
それが判ったのか…子供のように克哉は、相手に抱きつき続ける。
記憶を失ってから、初めて拠り所を得たような…そんな気持ちになって…。
(暖かい…)
眼鏡の鼓動を感じ取って、克哉はほっと息を突いた。
ふと…瞳から涙がうっすらと滲んでいく。
それで初めて…記憶を失くしてから、どれくらい自分は無理をして普通に振舞って
笑っていたのか、嫌でも自覚せざるを得なかった。
記憶がなくなる、という事は…自分自身がどんな人間だったかも判らなくなるという
事である。自分がどんな事を好きだったのか、嫌いだったのか…どんな事を体験して
生きてきたのか…何を大事に想い、どんな人達が自分の周りにいたのかも
関係する全ての事を、忘れてしまうという事なのだ。
誰だってこの状況で不安を覚えないで済む訳がないのだ。
それでも…誰かにこうやって、縋りついた瞬間…ほっと安心して、嗚咽を漏らし始める。
「…おい。泣いているのか…?」
「…ご、御免。何か…ほっとしたら、つい涙が…」
「…面倒な奴だな。…好きにしろ…」
口でそう言いつつも…特にどけ、とも何とも言わず…深い溜息を突きながら
克哉の頭をグシャグシャ、と掻き混ぜていく。
何とも、珍妙な気持ちだった。
…そのまま、二人の間に沈黙が落ちていく。
耳に入る音は、微かな風の音と…風によってその度に微かに軋む窓の音、そして
お互いの息遣いと…鼓動のリズムだけだった。
「…ありがとう、甘えさせてくれて…少し、ほっと出来た…」
「…特別に、だからな。…普段の俺なら、こんな振る舞いは…そうは、しない…」
「…だろうね。貴方は…ちょっと意地悪な感じがするから。けど…今は優しくしてくれて、
本当に…ありがとう」
そうして、うっすらと頬に涙が伝っている顔を上げて…こちらを真っ直ぐ見つめていく。
…そんな弱々しい表情で、微笑まれても…こっちは困惑するしか出来ない。
言いようの無い、モヤモヤした気持ちが胸の中に更に大きく広がっていく。
それが不快なのか、悪くないものなのか…今の眼鏡にはまったく判らなかった。
「…ん。貴方に優しくして貰えると…凄く嬉しい。…貴方が本当に、オレの兄さんか
どうか判らないけど…優しくして貰えるとこんなに嬉しいって事は、記憶失う前も
…オレは貴方の事を好きだったんだろうな…」
「っ!!」
思ってもいなかった事を言われて、眼鏡はぎょっとする。
一体全体、こいつはこちらの心をどれくらい掻き乱せば済むのだろうか?
もう一人の自分が…<俺>を好きだなんて、有り得る訳がない。
そう考えて、視線で反論の気持ちを示していくが…こちらの反応を見て
ふっと克哉は楽しそうに…笑った。
「…オレが好きだっていうの、そんなに…驚く事なんですか?」
「…当然だ。そんな事が有り得る訳がない…」
ベッドの上でぐったりとしながら眼鏡が答えていくと…そんな彼の反応も楽しいのか
またぎゅっと抱きついて克哉がクスクスと笑い続ける。
「…何か照れている兄さん、可愛い…。そんな顔も出来るんだ…」
「誰が可愛いって言うんだ。冗談も大概にしろ…」
プイ、と克哉から顔を背けながら、呟いていくが…相手の腕の力は一向に弱まる
気配を見せない。
すっかり相手の方はこちらに甘える気満々のようだ。
何かを確認するかのように…こちらの輪郭を、頬の稜線を…鼻筋や顎のラインを指先で
辿っていた。
瞳を笑ませながら、そんな風に触れられるとくすぐったいような居心地が悪いような
妙な気分になってくる。
けれど、もう…不快になっていないのは…自分でも不思議だった。
「…本当に、暖かい…」
しみじみとそう呟きながら、克哉は…もう一度、相手の胸に顔を埋めていく。
再び…克哉の目元に涙が浮かんでくる。
それで初めて…自分自身が、記憶を失くした事で…こんなに不安を覚えていた事を
自覚出来た。
自然と肩が震えて、また嗚咽が零れていく。
記憶が無くても…目の前の人に迷惑を掛けては駄目だと、そう思って閉じ込めていた
不安や惑いなどのマイナスの感情が…一粒、一粒…涙となって零れ落ちていく。
「おい…泣くな。本当に…面倒な奴だな…」
そう言いながら眼鏡は相手の顔に唇を寄せて、そっと涙を拭っていってやる。
最初は舌で涙を拭われて驚いた顔をしていたが…特に反論せずに、眼鏡の
成すがままだった。
拭い終わると、ほっとしたのだろう。
ふっと瞼を閉じていくと…そのまま、昨日からずっと張り詰めていたものが緩んで
そのまま眼鏡の胸の上で…安らかに眠り始めていた。
「…おい、寝るな…。と、もう…遅いみたいだな…」
はあ、と深い溜息を吐きながら相手の身体を揺さぶったが一向に起きる気配がなかった。
スースースーと実に穏やかな寝息を零しながら、幸せそうな顔をして…
克哉は眠っていた。
これじゃあ、まるっきり子供だ。
まだ…以前に一夜の相手にした、あの秋紀とかいう少年の方が手を出す気分になれる。
よっぽど悪戯してやろうと思ったが…こうまで、あまりに無防備な姿を晒されると…そんな
気持ちさえも萎えて…どうにでもなれ、という気分になった。
「…まあ、仕方ない。乗りかかった船だ…。後、九日…子供のお守りを続けてやろう…」
そうして、眼鏡も仕方なく瞼を閉じて…一時の休息へと意識を落としていく。
…隣に暖かい気配がある、という事だけは…悪い気分でなかったのが今の
唯一の救いだった―
力が抜けて…相手の体重が全て、こちらに掛けられた。
まったく同じ体格である為…それなりに眼鏡の方にも負担が掛かっていたが今は
敢えて何も言わずに好きなようにさせていった。
先程までのヤル気は、見事に拡散されてしまっている。
それが判ったのか…子供のように克哉は、相手に抱きつき続ける。
記憶を失ってから、初めて拠り所を得たような…そんな気持ちになって…。
(暖かい…)
眼鏡の鼓動を感じ取って、克哉はほっと息を突いた。
ふと…瞳から涙がうっすらと滲んでいく。
それで初めて…記憶を失くしてから、どれくらい自分は無理をして普通に振舞って
笑っていたのか、嫌でも自覚せざるを得なかった。
記憶がなくなる、という事は…自分自身がどんな人間だったかも判らなくなるという
事である。自分がどんな事を好きだったのか、嫌いだったのか…どんな事を体験して
生きてきたのか…何を大事に想い、どんな人達が自分の周りにいたのかも
関係する全ての事を、忘れてしまうという事なのだ。
誰だってこの状況で不安を覚えないで済む訳がないのだ。
それでも…誰かにこうやって、縋りついた瞬間…ほっと安心して、嗚咽を漏らし始める。
「…おい。泣いているのか…?」
「…ご、御免。何か…ほっとしたら、つい涙が…」
「…面倒な奴だな。…好きにしろ…」
口でそう言いつつも…特にどけ、とも何とも言わず…深い溜息を突きながら
克哉の頭をグシャグシャ、と掻き混ぜていく。
何とも、珍妙な気持ちだった。
…そのまま、二人の間に沈黙が落ちていく。
耳に入る音は、微かな風の音と…風によってその度に微かに軋む窓の音、そして
お互いの息遣いと…鼓動のリズムだけだった。
「…ありがとう、甘えさせてくれて…少し、ほっと出来た…」
「…特別に、だからな。…普段の俺なら、こんな振る舞いは…そうは、しない…」
「…だろうね。貴方は…ちょっと意地悪な感じがするから。けど…今は優しくしてくれて、
本当に…ありがとう」
そうして、うっすらと頬に涙が伝っている顔を上げて…こちらを真っ直ぐ見つめていく。
…そんな弱々しい表情で、微笑まれても…こっちは困惑するしか出来ない。
言いようの無い、モヤモヤした気持ちが胸の中に更に大きく広がっていく。
それが不快なのか、悪くないものなのか…今の眼鏡にはまったく判らなかった。
「…ん。貴方に優しくして貰えると…凄く嬉しい。…貴方が本当に、オレの兄さんか
どうか判らないけど…優しくして貰えるとこんなに嬉しいって事は、記憶失う前も
…オレは貴方の事を好きだったんだろうな…」
「っ!!」
思ってもいなかった事を言われて、眼鏡はぎょっとする。
一体全体、こいつはこちらの心をどれくらい掻き乱せば済むのだろうか?
もう一人の自分が…<俺>を好きだなんて、有り得る訳がない。
そう考えて、視線で反論の気持ちを示していくが…こちらの反応を見て
ふっと克哉は楽しそうに…笑った。
「…オレが好きだっていうの、そんなに…驚く事なんですか?」
「…当然だ。そんな事が有り得る訳がない…」
ベッドの上でぐったりとしながら眼鏡が答えていくと…そんな彼の反応も楽しいのか
またぎゅっと抱きついて克哉がクスクスと笑い続ける。
「…何か照れている兄さん、可愛い…。そんな顔も出来るんだ…」
「誰が可愛いって言うんだ。冗談も大概にしろ…」
プイ、と克哉から顔を背けながら、呟いていくが…相手の腕の力は一向に弱まる
気配を見せない。
すっかり相手の方はこちらに甘える気満々のようだ。
何かを確認するかのように…こちらの輪郭を、頬の稜線を…鼻筋や顎のラインを指先で
辿っていた。
瞳を笑ませながら、そんな風に触れられるとくすぐったいような居心地が悪いような
妙な気分になってくる。
けれど、もう…不快になっていないのは…自分でも不思議だった。
「…本当に、暖かい…」
しみじみとそう呟きながら、克哉は…もう一度、相手の胸に顔を埋めていく。
再び…克哉の目元に涙が浮かんでくる。
それで初めて…自分自身が、記憶を失くした事で…こんなに不安を覚えていた事を
自覚出来た。
自然と肩が震えて、また嗚咽が零れていく。
記憶が無くても…目の前の人に迷惑を掛けては駄目だと、そう思って閉じ込めていた
不安や惑いなどのマイナスの感情が…一粒、一粒…涙となって零れ落ちていく。
「おい…泣くな。本当に…面倒な奴だな…」
そう言いながら眼鏡は相手の顔に唇を寄せて、そっと涙を拭っていってやる。
最初は舌で涙を拭われて驚いた顔をしていたが…特に反論せずに、眼鏡の
成すがままだった。
拭い終わると、ほっとしたのだろう。
ふっと瞼を閉じていくと…そのまま、昨日からずっと張り詰めていたものが緩んで
そのまま眼鏡の胸の上で…安らかに眠り始めていた。
「…おい、寝るな…。と、もう…遅いみたいだな…」
はあ、と深い溜息を吐きながら相手の身体を揺さぶったが一向に起きる気配がなかった。
スースースーと実に穏やかな寝息を零しながら、幸せそうな顔をして…
克哉は眠っていた。
これじゃあ、まるっきり子供だ。
まだ…以前に一夜の相手にした、あの秋紀とかいう少年の方が手を出す気分になれる。
よっぽど悪戯してやろうと思ったが…こうまで、あまりに無防備な姿を晒されると…そんな
気持ちさえも萎えて…どうにでもなれ、という気分になった。
「…まあ、仕方ない。乗りかかった船だ…。後、九日…子供のお守りを続けてやろう…」
そうして、眼鏡も仕方なく瞼を閉じて…一時の休息へと意識を落としていく。
…隣に暖かい気配がある、という事だけは…悪い気分でなかったのが今の
唯一の救いだった―
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HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
鬼畜眼鏡にハマり込みました。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
当ブログサイトへのリンク方法
URL=http://yukio0201.blog.shinobi.jp/
リンクは同ジャンルの方はフリーです。気軽に切り貼りどうぞ。
…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
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