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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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  眼鏡達のいる部屋に、無常な電話が突きつけられる二時間前。
  御堂孝典は、都内を一人でドライブしていた。
  昨晩は結局一晩で三本のワインを一人で空けたが、結局は軽い二日酔いと
ダルさが残されただけで気持ちが晴れる事はなかった。

 直接、何度も眼鏡の携帯の方へとコールを続けたが…結果は、昨日と同じく
電源が入っていないままになっていたようだった。
 それならば彼の家に直で向かえば…という考えも過ぎったが、携帯が途中で
電源を落とされてずっと戻されていない。
 その事実が…何故か、こちらの存在を酷く拒絶されているように感じられてしまって
御堂は身動きが取れないままになっていた。
 こんな気弱なのは、自分らしくはない!
 そんな憤りのままに夜の街を愛車で走り抜けた結果―御堂は災害に巻き込まれる事
になってしまった

 20時32分。
 ここ数年世界各地で、大規模な地震災害が多発していて地震に関しての報道が多く
なっている中…この日、都内に震度5強の地震が発生した。
 震度6から7の地震が襲えば、余程耐震装備が成されている建物以外は被害が
免れないし、電話線や電線、水道などのライフラインの断絶や…地面が割れたり、
橋や高速道路が壊れて横転したりなど派手な事態に陥る。
 だが、震度5弱までならば…いる場所によっては、大きな被害から免れる可能性も
高く…都市機能も充分に生きているレベルだ。

 この場合、大きく…現在身に置いている場所が明暗をくっきりと分けていく。
 そして御堂は、地震に見舞われたその時…空いている道を走っていた為に本来の
交通規則で定められた制限速度よりも20~30キロ、速いスピードで愛車を走らせ
続けていた。
 結果、同じような速度で走っていた湾岸の道路沿線は一瞬にして阿鼻叫喚地獄と
化していた。
 
 地震によってハンドルを取られた対向車と時速70~80キロの速度が出た状態で
正面衝突。
 それに伴い、その前後を走行していた車達と玉突き衝突も時間差で発生し…
瞬く間に大きな衝突音と、ガラスがひび割れる音が周囲に響き渡った。

「くっ…! ここ、は…?」

 大規模な事故から3分後。
 事故直度のショックによって、意識を飛ばしていた御堂の意識が徐々に覚醒していった。
 最初は、黄色いもので目の前を覆われた上に、それによって顔面を圧迫されていたので
一体何が起こったのか把握は出来なかった。
 だが少しして、それはエアバックが作動して…自分を守ってくれていたのだと判った。

(どうやら…顔とか頭は、エアバックによって…守られたみたいだな…)

 だが、自分の脇腹やアバラ骨、そして二の腕に掛けてアチコチから鋭い痛みが走っていく。
 どうやらアバラと二の腕は、ヒビでも入ったのだろう。そして…脇腹には不運にも、
エアバックで防ぎ切れなかった側面から飛び散ったガラスの破片の大きいのが深々と
突き刺さっていた。
 どんな自動車でも、水難事故に遭った際に脱出出来るように…運転席の側面のガラスは
割れやすい構造になっている。
 それが今回の場合は、不幸に繋がってしまっていた。

 玉突き事故によって立て続けに強い衝撃に晒された御堂の愛車は、全面のガラスがその
ショックに耐え切れずに無残に大きくひび割れて…車内から満足に外の様子を伺えない
有様になっていた。
 特に側面のガラスは酷い事になっていて、突き刺さっているガラスの他にも大きな
破片が幾つも御堂の腿や、足の周辺に散らばっていた。
 身体を少し動かす度に鋭い痛みが走ったが…本能的にここにいたら危ないという直感が
彼の肉体を突き動かしていた。

(…このまま、車内にいたら…危ない気がする…!)

 そう思った瞬間、車外から…そう離れていない距離内で、爆音と…赤々と燃える大きな
火柱が上がっていった。
 同時に響き渡る人々の悲鳴。
 御堂は、それを聞いて急きたてられるようにシートベルトを外して…車の外に出ようと
足掻いていった。
 
(このまま…ここにいたら、この車もまた…ガソリンに引火して炎上するかも知れない…。
すでに爆発している車がある以上、一刻も早く…車の傍から離れた方が良い…)

 ここ数年、大きな地震に関しての報道が成される度に…御堂なりに、こういうケースの
場合はどのように行動したら生存確率が上がるかシュミレーションを重ねて来た。
 その経験が初めて、この場に来て生かされる形となった。
 脇腹の負傷はかなり深く、そこから自分の心臓が脈動する度に少しずつ出血していく
のが判った。だが…どれだけ痛くても辛くても、御堂は敢えてそれを引き抜こうとせずに…
激痛が伴うのを承知の上でそのままにしていく。

 この状況でガラスの破片を抜き取れば、出血が酷くなるし…感染症などの二次
被害が出る可能性が格段に高まってしまうからだ。
 御堂は、死にたくなかった。
 激痛で意識が朦朧になりそうになっても、考えるのは…どうやってこの場から
生きて生還するか、その事ばかりだった。
 必死の想いで車を飛び出すと…身を低い位置に保ちながら、這いずるようにして…
少しでも車が密集している地点から離れようと試みていく。

(佐伯…!)

 頭の中に浮かぶのは、自分の恋人の事ばかりだった。
 相手とすれ違ったまま…一言も話せないで、このまま逝くのなど冗談ではなかった!
 その想いが彼の身体を突き動かしていく。

 ―私は、死ねない! 死にたくなどない! 君に何も言えないままで…こんなに
すれ違ったままでなど、絶対に逝きたくない!

 痛みで顔を歪めながら、みっともない有様だと自分でも思った。
 だがもう形振りなど構っていられなかった。
 格好つけて死ぬよりも、今の自分は無様でも生きたいと強く願っていた。
 こんなに後悔したまま…この生を終える事など、御免なのだ!
 自分は何も彼に伝えていない!
 怒りも、許しも、愛情も…想いも、何もかもだ!

 だから御堂は周囲に満ちる一酸化炭素や、ガソリンや機械類が燃焼する事によって
発生するその他の有毒な気体を吸わないように…逸る心を抑えていきながら…確実に
その場から離脱していく。
 意識が続く限り、男はそうやって生き延びる可能性が高い道を進み続けた。
 だが、都内では他にも同時に多くの事故が多発し…救急車や、救助隊は各地に
飛び続けたが運悪く対応が遅くなってしまう件も多々あった。

 そして…御堂がどうにか、救急隊員によって保護された頃には…すでに多量の
出血によってかなり危険な状態へと陥っていた。
 幸いにも搬送された病院が、災害による被災者を多く受け入れる体制を素早く
整えてくれていたので受け入れ拒否をされずに治療を施されたが、その頃には完全に
意識を失ったまま、昏睡状態になっていた。

 21時半を過ぎた頃には身元の確認は済んでいたので、搬送された病院の
看護士の手によって、その家族に…危篤を告げる内容が早くも電話によって告げられた。
 そして都内に在住の家族にその連絡が回ってくるとすぐに、現在の御堂の所属している
会社の社長である眼鏡の元へと…その事実が伝えられていったのだった-
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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