忍者ブログ
鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
[1250]  [1249]  [1248]  [1247]  [1246]  [1245]  [1244]  [1243]  [1242]  [1241]  [1240
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 ※この話はバレンタインにちなんだ克克話です。
 あまり深いテーマ性もなくイチャついているだけの
ゆる~いお話です。それを了承の上でお読み下さいませ~。
 克克が書きたかったんです!

 チョコレート・キッス 

 ―この二週間我ながら場かな真似をしてしまったと
何度思ったか判らなかった。

 誕生日を祝ってくれたお礼だからと言って、もう一人の自分に男である
自分がバレンタインチョコを贈るなんておかしいって事ぐらい
判っていた。
 けれど街行く女性達や、同じ会社内にいる人達が好きな男の
ことを語ったり、幸せそうにチョコレートを選んでいる姿を見ていると
自分もふと、そんなお祭り騒ぎに参加してみたいと思ってしまったのだ。
 今の自分の感情が、相手が気になる程度のレベルであったと
しても…「お前は本当に馬鹿だな」と言いながら、どこかであいつが
出て来てくれる事を密かに祈っていたのだが…。

(実際に叶うなんて、思ってみなかった…)

 玄関からズカズカと入り込んで来た男の姿を見ながら、克哉は
未だに信じられないといった表情を浮かべていた。
 もう、会えないままなのかと思っていた分だけ…内心ではこうして
会えた事に少しだけ嬉しさはあったけれど、やはりもう一人の自分で
あるせいか…意地の方が先立って、素直に喜びを表せなかった。

「…よお、久しぶりじゃないか、オレ…。俺に会えなくて寂しかったか…?」

「そ、そんな事…ある訳、ないだろ…! オレはお前に会えなくったって…
別に寂しくはないよ…!」

 と、口で言いつつも相手にチョコレートなんて用意してしまった為か
いつ先に気づかれてしまうのか気が気じゃなくて…まともに顔を
見ることが出来ず、頬を赤らめたまま相手から目を逸らすことしか
出来なかった。
 しかしきっと、相手はこんなこちらの動揺などお見通しなのだろう。
 ククっと喉の奥で笑いを噛み殺しているのが聞こえて、克哉はカっと
なりそうだった。

(うううう…実際にこいつと顔を合わせると、メチャクチャ恥ずかしくて
仕方ない…! 何でオレ、チョコレートなんて用意しちゃったんだろ…!)

 しかも相手から真っ直ぐに見つめられているのが判るだけに
ドンドン居たたまれなくなってしまった。
 しかしチョコレートの存在を相手から完全に隠してしまったら今度は
本末転倒になってしまうので…どうすれば良いのか判らず、克哉は
内心パニックに陥りかけていた。

「…ほら、どうした…? お前は俺に何か贈り物をしたいから…
強く会いたいと望んでいたんじゃないのか…?」

「…っ! それは…!」

「…ほら、図星だろう…? それならば…少しぐらい素直になった方が
良いんじゃないのか…? 変な意地を張り続けているとロクな事に
ならないもんだからな…」

「そ、んな事…言われたって…」

 克哉は困ったように、つい机の上のチョコレートを見つめていくと
相手は目ざとく、その存在を発見していく。

「…おいオレ、それがそうじゃないのか…? お前が何も俺に対して
用がないんだったら…俺はこのまま、大人しく退散するが…どうする?」

「っ…! ちょっと待って! 判った、判ったよ…!お前にこれを渡すから…
帰るのは止めろよ!」

 そうして克哉は反射的にチョコレートの箱に飛びついていって、
相手に押し付けるように渡していく。
 ムードや情緒のカケラもない渡し方だった。
 それに少しだけ後悔しかけたが…二十代半ばの成人男子が
女性のように可愛らしくチョコを贈るなど到底出来る訳がない。

「…これ、受け取って! とりあえず…オレの誕生日に、こっちを祝って
くれたお礼だから! 他意はないから…! た、単なる義理チョコだから!」

 恥ずかしさの余りに、本心とは裏腹の言葉ばかりが口から零れていくが…
こっちの思惑に反して、顔は見る見る内に赤くなり耳まで火照り始めていた。
 その様子を見て、こっちが意地を張っているだけだと丸判りに
なってしまっているに違いない。
 もう一人の自分は相変わらず、ククク…と笑い続けていきながら
意地悪そうな笑みを浮かべてこちらを見つめて来ていた。

(うううう…バレンタインにチョコを相手に贈るのってこんなにも
恥ずかしいことだったのかよ…!)

 うっかり魔が差して、どうして自分はコイツにチョコを贈ろうと
などと考えてしまったのかその軽率さに本気で後悔しかけた。

「…ほう、義理なのか。なら…お前の気持ちなど、これにはまったく
込められていないと…そういうんだな…?」

「あっ…」

 自分からそう言ったのに、相手に先にそういわれてしまうと…何故か
唐突に寂しくなってしまった。
 どうして、眼鏡にそういわれてしまったらこんなにも胸が痛く
なってしまうのだろう。
 ふと、寂しくなって縋るように相手を見つめてしまうが…相手は変わらず
意地の悪い光を瞳にたたえるばかりで、特に反応がない。
 こちらが何も言わないままでいれば…ただ、義理チョコを贈っただけに
なり…自分の想いも、何も伝わらないままになってしまうと考えた時、
何となく寂しくなった。

「…違う、よ…」

 だから、猛烈な羞恥を堪えていきながら…自分から、撤回していく。
 せっかく、会いたいと思っていたその願いが叶ったのならば…せめて
素直にならなければ勿体無いと思ったから。

「…ほう? 何が違うというんだ…?」

「…今日、オレはお前に逢いたいと思ったから…チョコを用意したんだ。
こんなの全然オレらしくないって判っていたけど、お前に馬鹿にされるかも
知れないとも考えたけど…贈りたいと思ったのは本当だから…」

 縋るように相手を見つめていきながら、そう…精一杯の想いを
搾り出していく。
 愛しているとか、好きだとか…臆面もなく言える性格じゃない。
 相手に抱いている感情がそういったものなのかもまだ自分では
判らないけれど…。

「…お前に逢いたい、と思ったのは本当だから…お前に馬鹿な奴だな
といわれるだけでも構わないから…顔を、見たかったんだ…」

「…やっと素直になったな」

 克哉の口からやっと本心が零れ落ちると同時にもう一人の自分が
満足そうに微笑み、そして間合いを詰めていく。

「えっ…」

 克哉が間の抜けた声をつい漏らしてしまった時にはすでに…
相手の顔は、彼のすぐ眼前にまで迫って来ていたのだった―
 
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
この記事のURL:
カレンダー
02 2024/03 04
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
カテゴリー
フリーエリア
最新コメント
[03/16 ほのぼな]
[02/25 みかん]
[11/11 らんか]
[08/09 mgn]
[08/09 mgn]
最新トラックバック
プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

 当ブログサイトへのリンク方法


URL=http://yukio0201.blog.shinobi.jp/

リンクは同ジャンルの方はフリーです。気軽に切り貼りどうぞ。
 …一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
ブログ内検索
カウンター
アクセス解析
忍者ブログ * [PR]