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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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以前に書いた残雪を、改めて構成し直して再アップ
したお話。太一×克哉の悲恋です。
 1話と2話は以前にアップしたものの焼き直しですが…
3話目以降からは一からの書き直しになります。
 書き掛けで止まっている話の方は(不定期連載)の方に
あります。

 残雪(改) 
      


 太一と克哉の優しい思い出の場面が終わると同時に、シンクロしていた
男の意識も一旦途切れて、現実へと引き戻されていった。
 深い深海から、一気に地上に戻されたかのように苦しくて…男は
息をゼイゼイとさせながら、必死に喘いでいた。

―おや、どうしましたか…? 随分と冷や汗を掻いていらっしゃるようですが…?

 男が恭しく、こちらを心配するような素振りを見せていく。
 だが、男は相変わらず無言を決め込んだまま…ただ、Mr.Rを
睨みつけていくだけだった。

「………」

―まったく先程から貴方はずっとだんまりですね。確かに私を警戒するのは
仕方ないことだと思いますが…私は貴方が知りたくて仕方ない事の答えや、
太一さんと克哉さんのその経緯を、好意で教えて差し上げているのに…
いつまでも疑われたり、警戒されてばかりで…感謝の言葉一つもないままなら
虚しいですから、ここでその道筋を追うのを中断したってこっちは構わないん
ですよ…? 

 流石にこの段階になっても、未だに満足に言葉を発さない相手に、
黒衣の男も苛立ちを覚えたらしい。
 口調は穏やかながら…それは遠回しな警告であり、脅しでもあった。
 赤い天幕で覆われ、エキゾチックな香りで満たされた妖しい空間だった。
 ここが本当に現実の場所なのか、疑う気持ちも未だにあった。
 だが…確かにどんな仕組みや力なのかは判らないが、男はずっと…
あれ程一時はどん底に堕ちて荒れていた太一が、立ち直ったのか
その答えを追い求めていたのだ。
 だから…もう、ここは折れるしかないと観念し…やっと男は口を
開き始めていった。

「…それは困るな。俺の息子が…あの克哉って男とどんなことがあって、
そして…復活したのかずっと答えを求めていた。それを中断されたら
堪ったモンじゃないな…」

―やっと言葉を発して下さいましたね…。なら、このまま続行という
形で宜しいですか…?

「嗚呼、ここまで見ちまったら途中で止められたら不完全燃焼に
なっちまう…。最後まで、見せてくれ…お願いする」

―ええ、そういって頂けたのならば…私も貴方のお願いを無下に
断る理由はありません。夜は長いです…その間に、あの二人の間に
起こった出来事を貴方にお見せしましょう…。貴方が知りたかった答えは
その中に確実に存在していますから…

 ようやく男が言葉を発して、会話が成り立つようになった事で…
Mr.Rの機嫌も治っていった。
 この男性をクラブRに今夜招いたのは、完全にRの気まぐれだった。
 気が向いたから、このような真似をしただけの事だった。
 何故なら、今の男は退屈だったから。
 自分を満たして刺激的な時を与えてくれた佐伯克哉は…不完全な
形でしか存在しない。
 今現在の彼は、つまらなくなってしまって男にとっては興味を
そそるものではなくなってしまったから…。

(…あの時の私は、間違えてしまったんですよね…。余計な因子を
取り去れば、あの方は完全になると。私の望む者になってくれると
思っていた。だが…あの日、弱い方の克哉さんが消えたことによって
あの方は…いえ、過去を振り返っても仕方ないですね。もう…私の
望みは満たされることはない。
 ならば…せめて過去を振り返り、そのピースを繋ぎ合わせることで
私のこの退屈を紛らわせる事としましょうか…)

 男は様々な想いを交差させていきながら、そっと太一の父親で
ある男性の方に手を伸ばして…その目元を、白い手袋で覆われた
指先で伏せていった。
 そうされた瞬間に父親の意識は遠退いていき、再びRが紡ぎ直した
二人の過去へと堕ちていく。

―さあ、序幕は終わりました…。嗚呼、克哉さんにあの太陽の石を贈る
場面を最初に選んで見せたのは…その出来事が、太一さんを再び
蘇らせる大きな布石となっているからです。
 むしろ其れがなくては、あの二人の物語は…悲しくも美しい悲恋は
成立しないのですから…。
 どうか、その事を頭の片隅に入れていきながら…これからの展開を
眺めていってくださいね…

 愉快そうに笑いながら、Rはそう告げて…男の意識を再び闇の中へと
落としていく。
 そして…太一の過去を追う物語の二幕がゆっくりと開かれていった―

                     *

 夢から目覚めると、心だけは暖かかった。
 克哉との幸せな一幕を久しぶりに見れたから。
 けれど…自分が会いたくて仕方ない方の克哉は、もう存在していないと
いう事実を思い出すと太一ばベッドの中で大きく塞いでいった。

「…嗚呼、そういえば…そんな出来事もあったよな…」

 克哉に贈った太陽の石、サンストーン。
 自分の髪の色に良く似た色合いの石。
 あの日の克哉は本当に可愛くて、その満面の笑顔を思い出すだけで
こちらの心は満たされていくようだった。

「…あの石、克哉さんはどうしたんだろ…? 肌身離さず持っていて
くれたとしたら…今はあいつの方が持っているって事で! うわっ…
何か俺と克哉さんの大切な思い出が穢されるみたいで嫌だな。
…克哉さんの部屋か何かに、置かれたままなのかな…?」

 あんな夢を見たから、つい…あの日贈った石が何処にあるのか
凄く気になってしまった。

(けど…あの性格悪そうな奴が、こっちが聞いたってまともに
答えてくれる訳ないよな…)

 太一は深い溜息を突きながら、しみじみと考えていく。
 思い出してしまった以上…あの日渡した石が今は何処にあるのか
どうしても知りたかった。
 聞いても無駄と知りながらも…ふと、太一は一度だけでも尋ねて
みようかなと考えていく。

(無駄だって判っていても…やるだけやってみるか…。あの石に、俺は
克哉さんへの愛情をいっぱい込めたんだからな…)

 白い方の克哉の為に、当時彼が担当していた営業が上手く行くようにと
精一杯の気持ちを込めたお守りのつもりだった。
 その想いを思い出してしまったからこそ…太一は、どうしても知りたいと
いう感情を抑えることが出来なくなってしまった。

「…一応、あいつに聞いてみよう…」

 そう、決心して…太一はベッドの上から身体を起こして、乱れた服装を
整え始めていった。
 だが、この時点では彼は気づいていなかった。

―その石の事を眼鏡を掛けた克哉に聞くことによって大きな激震が
起こることなど、この時点の太一には知る由もなかったのだった―



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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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