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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※  この話はN克哉が事故で昏睡して記憶を失っている間、夢の世界で眼鏡と
十日間を過ごすという話です。それを了承の上でお読みください(やっと中盤…)
  
 この世界に来てから、七日目の夜。
 眼鏡の胸で泣いて縋りついた日からは五日程が経過していた。
 あれから克哉の記憶は徐々に戻り続けて、現在は大学に入学した頃くらいまでは
思い出したらしい。
 6日目の朝辺りから、それまでは完全に眼鏡任せだった家事の類をやり始めたので
気になって「本多の事は思い出せたのか?」と聞いたら、うんと頷いていたので
丁度それくらいまでは戻ったんだな、と納得する事にした。
 
 本多憲二との出会いは、大学に入学してバレー部に入ってからの事だ。
 こいつの事を思い出したのなら…現在の克哉の記憶は18~21歳の間くらいまでは
回復したという目安となる。
 この辺りまで思い出せば、自分がどんな人間だったか…という事は把握出来るので
最初の五日間までは酷くおどおどした態度を見せていた克哉も、段々自分が知っている
彼に近づいていた。

「~♪」

 本日の夕食は、克哉の方が担当する運びとなった。
 キッチンに鼻歌を歌いながらエプロンをつけて一人で立ち…大きな鍋を前にややぎこちない
手つきではあるが包丁を握って鶏肉やニンジン、玉ねぎ、ジャガイモなどを下ごしらえして
シチューを作っている。
 大量の蒸気を溢れさせている鍋から、アクを梳くって…ニンジン、ジャガイモ、玉ねぎの
順に野菜を入れてグツグツと煮込んでいた。

 煮込んでいる間、洗濯物をしたり…洗い物を片付けたり、レタスとトマトだけの簡単な
サラダを作ったり、パンをバターを薄く塗ってオーブントースターで焼いてカリっと仕上げ
たりして時間を潰していく。
 具がしっかりと煮込み終わる頃には市販のシチューの素を用意して、
火を下ろして掻き混ぜていく。
 ここら辺は今の時代、便利な物があってくれて本当に良かったな…と思った。

「よし、こんな物かな…久しぶりに作った気がするけど…上手く出来て良かった」

 シチューの素を全部溶かして、適度なとろみがついていくと…安心したような
笑みを浮かべていった。
 とりあえずサラダも、トーストもどうにか失敗せずに済んだ。
 これなら…彼に、それなりに美味しい夕食を振舞う事が出来るだろうと…安堵した瞬間
背後から、何か気配がした。

「っ…! 何っ!」

 克哉がシチューに気を取られている間に、眼鏡がいつの間にか忍び寄って背後を
取っていく。
 ふいに自分の胸元から腹部に掛けて、怪しく手が蠢き…カプっと耳朶の辺りを
思いっきり甘噛みされていく。

「っ…!! な、何をいたずらしているんですかっ!」

「…別に? お前が何か上機嫌でキッチンを立っている姿を見てチョッカイを掛けたい
気分になっているだけだ…気にするな…」

「気にします! 火を使っている間に…妙な事を仕掛けないで…あっ!」

 ふいに服の隙間から手を差し入れられて、胸の突起を軽く摘まれれば…克哉の
身体はビクっと震えていく。

「ちょっ…指、冷たい…ですから! やめ…」

 こっちが外そうともがいている内に、チュっと首筋に吸い付かれて軽く舐め
上げられていく。
 そのまま…調子に乗って、両方の指で突起を弄り上げていくと…。

 ドカッ!!!!

 克哉も負けじと、眼鏡の胸元に強烈な肘鉄を食らわしていく。

「もう!! いい加減にして下さい! オレは貴方にちゃんと美味しい夕食を食べて
欲しくて頑張っているんです! 邪魔しないで下さい」

「…俺は夕食よりも、お前を食わせて貰った方が欲求が満たせるんだがな…」

 パァン!!

 相変わらずの眼鏡の物言いに、今度は本日の調理の参考に使った料理書を片手に
思いっきり叩き上げていく。

「に・い・さ・ん? あんまりこっちの邪魔をすると…オレの方にも…考えがあるよ?」

 克哉がにっこりと笑いながら、声に不穏な調子を混ぜて言い切っていく。
 なかなか黒いものを滲ませている朗らかな笑顔である。
 その凄みに、一瞬…眼鏡も言葉に詰まったが…すぐに強気な笑みを浮かべて
応戦していく。

「ほう? お前の考えなど…たかが知れているが、どんな案を持ち出すつもりなんだ?」

「さあ…何だろうね? 夕食抜きなんて案はどう? 今日の夕飯はオレが作っているん
だから…夕食を食べさせるかどうかの権利はオレの方が握っていると思うんだけど…?」

「…ふっ。その程度か。それくらいで俺が怯むと思うか?」

「あぁ…その際には、オレの方でしっかりと食料庫への鍵は隠させて貰うから。
そうしたら…明日の朝まで兄さんの方は何も食べる事が出来ないでしょ? こんな案は
どうかな…?」

 それは流石に応えるので、眼鏡は一瞬…答えに詰まった。
 このロッジには冷蔵庫ではなく、食材の殆どは専用の冷室に置かれている。
 夢の世界なのに妙にこのロッジはリアルに作られていて…食料庫にもしっかりと
鍵の類はつけられている。ついでに空腹感までちゃんとある。
 それを握られてしまったら、空腹で明日の朝まで過ごす事になる。
 ここで下手に怒らせれば、もっと長い時間…こちらへの食料の供給は絶たれて
しまうかも知れない。この状況下で…下手な振る舞いをするのは、明らかに
こちらの不利であった。

「…ちっ! 知恵が回るようになったな。…お前に今日の夕食を任せたのは
失敗だったか…」

「もう、そんな妙なチョッカイを掛けてくるのが悪いんでしょ? ここで止めてくれれば
オレだってそんな真似しないよ。…そろそろ、シチューが完成するから…お皿とか
並べるの手伝ってよ」

 そう言って笑いながら、シチュー皿を用意して…その中にシチューを注ぎ始めていく。
 
「…気に入らんな」

 眼鏡は憮然としながらも克哉の言葉に従って、一応…この場は言う事を聞いてやる事にした。
 そうして…暖かい食事が、食卓の上に並べられていく。
 …目の前には、克哉がニコニコと微笑みながら…先に座って待っていた。

「お待たせ、兄さん。…さあ、夕食をどうぞ」

 そう笑顔で薦められてると、不本意ながら…悪い気分ではなかった。
 相手のペースに乗せられるのは好ましくないが、目の前に並んでいる夕食はどれも
簡単なものばかりだが確かに美味しそうだったからだ。

「あぁ…」

 眼鏡の口から、不機嫌そうな響きの声が漏れる。
 それでも表情は…微かに微笑んでいた。
 ゆっくりとした動作で克哉が作った夕食に手をつけていく。
 どれも悪くない味だったので…一応、眼鏡の機嫌はそれなりに回復していった。

 ―そうして、七日目の夜は静かに更けていった。

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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