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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※  この話はN克哉が事故で昏睡して記憶を失っている間、夢の世界で眼鏡と
十日間を過ごすという話です。それを了承の上でお読みください(やっと中盤…)

 八日目の、朝七時前後。
 隣で寝ている眼鏡が目覚める前に、克哉は揺さぶり起こされていった。

『おい、克哉!』

『佐伯君…』

『克哉…』

 
 まったく異なる声が三種類重なって聞こえてくる。
 最初の声だけは辛うじて聞き覚えがあった。

「本多…? け、けど…残り二つの声は…」

 最初の威勢の良い声はどうやっても間違えようがない。大学のバレー部で一緒だった
本多憲二のものだった。
 直後に聞こえる声は酷く穏やかで、壮年の男性のものっぽく…そして、最後に聞こえた
ものは…いつも自分の脳裏に響き渡る声と同じだった。
 彼ら三人の声が聞こえた時、世界は大きく揺れた。
 激震、と言える位の激しい揺れが建物全体に走っていく。

「な、何だ…っ! こ、れ…!」

 ぎゅっとベッドの縁に捕まりながら、身体を支えていった。
 揺れが収まると同時にふと窓の外を見て、ぎょっとなった。
 今朝は雪も降り止んでて…真っ白い空の中心に…雲がうねりながらキラキラと強烈な
光を放っていた。
 このロッジがある場所から少し離れた崖の先に一筋の強い光が差し込み、
神々しくすらあった。
 
『克哉っ!!』

 その叫び声が聞こえた瞬間、自分の胸が射抜かれたかと思った。
 とっさにその胸を押さえて、身体を起こしていく。
 もう、何も考えられなかった。考えるよりも先に身体は突き動かされるように
ベッドから起き上がって、外に行く支度を整え始めていた。

「行かなきゃ…っ!」

 今、強い意志を持った呼びかけにより…この世界と外界を繋ぐ扉が微かに
こじ開けられようとしていた。
 白い光は、その象徴だと…克哉は本能で察していた。
 パジャマから白いセーターと厚手の黒いズボン、そして白のマフラーとダウンコート、
スキー用の長靴と手袋を身に纏い…しっかりと防寒していく。

「…どこに行くつもりだ?」

 準備が終わって部屋を飛び出す間際、不機嫌そうな眼鏡の声が聞こえた。
 …それを聞いた時、ぎょっとなった。
 思わず相手の方を振り返ると…今までの中で最大中に不貞腐れた表情を顔に浮かべて
こちらを睨んで来ている。

「…ちょっとだけ、外に…行くつもり…だよ…」

 その迫力に押されて、たどたどしく答えると…ベッドサイドに置いてあった銀縁眼鏡を
顔に掛けて…押し上げる動作をしていく。

「…そうか、勝手にしろ…」

 そうして、怒っているような表情を浮かべて…ふい、とこちらから視線を外していった。

「…お前がどうなろうと、俺の知った事ではない。お前が予定よりも早く…帰るべき場所に
戻るというのなら…それでも良いさ。好きにしろ…」

 いつも克哉が聞いていた声は、基本的に眼鏡の方に届く事はなかった。
 しかし今朝だけは例外で…あの三人の声と、白い光は…彼の方にも感じていた。
 眼鏡の方はその三人の声の主がそれぞれ誰だか、全員承知している。
 彼らの必死の呼びかけが…この夢の世界を揺らがせ、克哉をここから連れ出そうと
しているのだろう。あの白い光は恐らく…その象徴だ。
 多分、其処に克哉が向かえば…期日よりも先に、克哉は現実へと戻る事を…眼鏡は
薄々と感じていた。
 だから敢えて、突き放すような言葉を投げかけていく。
 しかし…その態度に、克哉は傷ついた顔を浮かべていった。

「…予定よりも早く帰るべき場所に戻るって…一体、どういう事…?」

 克哉の方は、この世界が己の夢の中である事実を知らない。
 だから眼鏡が言う言葉の意味が理解出来なかった。

「…さあな。とりあえずあの光に向かえば…判る事じゃないのか?」

 そうして、ゴロンと寝返りを打って…克哉から視線を外していく。
 克哉は、呆然と其処に立ち尽くす事しか出来なかった。
 どうしてだか判らないけど…今の眼鏡は酷く、悲しんでいるような…憤っているような
そんな気配を感じて、つい…その場に硬直してしまう。
 身動きが取れないまま、長い沈黙が落ちていく。
 このまま…この人と離れたら、二度と…会えないような、そんな嫌な予感がして
行かなければならない、という衝動が掻き消えていく。

「…行けよ」

 眼鏡が短く告げていく。
 それでやっと、呪縛が解けた気がした。

「…お前は本来、在るべき場所に戻るべきだ。今なら…快く見送ってやる。
だから…行けよ」

 こちらの顔を見る事なく、静かな声で…眼鏡が告げていく。
 けれど…克哉は動けなかった。
 気づけば…涙が、静かに頬を伝い始めていく。

(どうして…オレ、泣いて…?)

 自分自身でも、不思議だった。
 どうして涙を流しているのか理由が判らなかった。
 胸が引き絞られるように痛む。
 切なくて…キュウ、と締め付けられるようだった。

「ど、うして…」

 もう、会えないような感じで彼はこんな事を言っているのだろう。
 どうして…自分はそれを聞いて、身動き取れなくなっているのだろう…。
 チクタクチクタク、と規則正しい時計の秒針の音が静寂の中で
静かに響き渡っていく。
 しかし、窓の向こうの白い光が少しずつ弱々しくなっているのに気づいて
克哉はやっと、踵を返していく。

「…必ず、ここにもう一度帰って来るから…待ってて!」

 そう強い意志を込めた声で眼鏡に告げて、克哉はロッジを後にして…
白い光が差し込んでいる崖の方へと向かっていく。
 そう言った時…眼鏡が果たしてどんな顔を浮かべていたのか、最後まで克哉は
知る事はなかった―
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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