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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 須原秋紀は夜の繁華街を一人、彷徨い歩いていた。
 長身の背広姿の20~30代くらいの年齢の男性を見つけると、つい目で追ってしまい…
その度に探している人物でない事に落胆していく。

(克哉さん…一体、どこにいるの…?)

 求める存在は、ただ一人。
 九ヶ月前にクラブで出会い…熱い一夜と、蕩けるようなキスだけを秋紀の記憶に
残して、姿を消してしまった人。
 佐伯克哉、覚えているのは…颯爽とした身のこなしと自信満々そうな態度。
 そして…その面影と、忘れられない二つの思い出だけだった。

「あ…」

 似たような髪形の人物を見つけて、一瞬胸が跳ねていく。
 しかし良く観察すれば…微妙に違う処が多いし、ふと相手の顔を見れば別人で
ある事はすぐに判った。
 期待しては、すぐに落胆する。
 いつの間にか、いつもつるんでいた仲間達と距離を置いて…夜のオフィス街で
あの人の姿を探す。
 それがいつしか…ここ半年の、秋紀の日課になっていた。

(克哉さん、克哉さん…克哉さん…お願いだから、もう一度で良いから…
僕は、貴方に…逢いたい…)

 逢えなくなればなるだけ、眼鏡を掛けたあの人の存在は…遠くなる処か、日増しに
大きくなって溢れそうになる。
 キスをされた時、欲しいものがあるのならそれ相応の態度をするんだな…と言われた
日から、必死になって考え続けていた。
 それで…やっと、自分なりの回答を見出して…毎晩のようにクラブに通った。
 あの人に会うことを目的にして、すぐに連れ出されても良いように一人で
飲むようになって…。

(けれど、あの人は…二度と店に顔を出さなかった―)

 一月が過ぎ、二月が過ぎ…あの店で待っているだけでは会えないと悟った時、
いつの間にか常につるんでいた仲間達とは一緒に過ごさなくなっていた。
 それから…以前に職業を尋ねた時に「ただのしがない営業マンだ」という言葉だけを
頼りにオフィス街を回り始めた。
 仕事が終わり、アフターファイブへと入った人影を目で追って…偶然でも何でも
良いから、あの人とばったり会える事を願って。

 しかし…秋紀は知らなかった。
 今の克哉は御堂と恋人関係になった事をキッカケにキクチ・マーケーティングからMGNに
移籍して…今では車での送迎が多くなっているから、この近隣を歩く事がめっきり…
激減していた事を。
 そのおかげで…この半年、眼鏡を掛けていない克哉ですら…ただの一回も遭遇
する事なく過ぎ去っていたのだ。
 
 あの日から九ヶ月が過ぎて、秋紀は高校三年生に進級していた。
 その期間に誕生日を迎えて…17歳になった秋紀は随分と大人びていた。
 克哉と出会った頃よりも少し髪が伸びて、顔から幼さが抜けて…少しだけ背も
高くなっていた。
 子供から大人に代わる、過渡期に入った秋紀は…恋をしたことにより…少しだけ
以前よりも大人っぽい雰囲気を纏うようになっていた。
 少なくとも、夢中で恋しい相手を探すようになってからは…暇を持て余して、クラブで
くだらない連中と一緒にヘラヘラと過ごすような時間の使い方をしなくなった。
 それだけでも少年にとっては大きな変化、と言えた。

「あの…あ、すみません…。人違いでした…」

 また一人、克哉に似た人間を見つけて声を掛けていくが…人違いだった事を
素直に詫びて、離れていく。
 今夜は三人くらい、そうかな…と思える人物に遭遇していたが、どれも外していたので
結局秋紀は疲れて…この付近の公園のベンチに足を向けていった。
 この公園は、オフィス街を頻繁に歩くようになってから知ったスポットだった。
 意外に敷地も広く、緑も豊かで…一度フラリと足を向けてから妙に気に入って…克哉を
探すのに疲れると、何気なく立ち寄って身体を休める事も多くなっていた。
 ここに来る途中で購入したミネラルウォーターの入ったペットボトルに口をつけながら、
ベンチに腰を掛けて…深い溜息を突いていく。

「あ~あ、今夜も収穫なし…か。本当に克哉さん、どこにいるんだろう…」

 自宅も、働いている会社も…携帯番号も、メルアドも何も知らない。
 知っているのは…佐伯克哉、という名前だけだ。
 名前だけを手がかりにこの広い都会で人を探すのはかなり大変だった。
 それでも秋紀は…諦めたくなかった。

 今までの人生であの人ほど、一目会っただけで自分の心に入り込んできた存在は
いなかったから。
 容姿に恵まれていた秋紀は、男女問わず…色んな人間が寄ってきていた。
 けれど…自分からこれだけ激しく求めたのは、克哉ただ一人だけだった。
 恋人になりたいとか、そういうのじゃないけれど…あの日から自分の中に灯った想いは
会えない日々が重なる程、募っていって。
  その想いが彼を夜の街へと、彼を駆り立てている状態だった。

「…一目だけで良いんだ。あの人に…どうしても、会いたいんだ…それ以外に
僕が望む事なんて、ない…」

 項垂れながら、秋紀はうっすらと涙を浮かべて呟いていく。
 この九ヶ月…どれだけ、あの人を想って泣きたく衝動に駆られただろう。
 あんなセックスとキスの記憶だけを残して…幻のように自分の前から姿を消した
あの薄情な男をどうして、自分は未だに忘れられないんだろう…と思う。

 秋紀はふと、月を仰いだ。
 その姿は…酷く様になっていて、見ているものを一目で虜にするぐらいに…
整った風貌をしていた。
 綺麗な花は、それに引き寄せられる虫をも大量に呼び込む。
 そして秋紀は、酷く他者の目を引いた。
 一度見たら忘れられないくらいに印象的な、優美な顔立ち。
 だから…秋紀は、知らず呼び込んでいた。
 自分にとって…決して望ましくない存在を。

「秋紀…久しぶりだなぁ…」

 ふと、ねっとりした口調で声を掛けられていく。
 そちらの方に視線を向けると…かつて自分がつるんでいた男達が
秋紀の座っているベンチを囲むように立っていた。

「…お前達は…」

 かつては毎晩のように、一緒に過ごしていた…悪友たちだった。
 声を掛けられたので、とっさに挨拶しようとしたが…ふと、彼らから立ち昇る
気配に嫌なものを感じて、身構えていく。
 するとジリジリと間合いを詰められて…閉じ込められるような形になっていった。

「何だよぉ、久しぶりに会うダチにそんなツラする事はないだろ…?」

 男達の顔には、一応笑顔が浮かんでいる。
 しかし…その表情に、秋紀の中で警鐘が鳴り響いていった。
 そう…この半年、沢山のサラリーマンに声を掛けてきたことで…多少なりとも
危険な目に遭いそうになった事は何度もあった。
 その経験が…一緒にいる時には気づかなかった、男達のどす黒い欲望を感知
させていたのだ。

(逃げなきゃ…! 何かコイツら、凄い嫌な感じがする…)

 男達をキっと睨んでいくと、一瞬だけ目の前の男が立ちすくんでいった。
 その隙を逃さずに、秋紀は素早くベンチから立ち上がって…素早く男達の
脇をすり抜けていった。
 それは小柄な体格の秋紀だからこそ出来る芸当でもあった。
 全力で走り、その場から逃げていくと…10メートル程度、離れてからやっと
男達も現状を理解して秋紀を追いかけ始めていく。

「てめぇ! 秋紀っ! それがダチに対して取る態度か!? えぇ!」

 激昂した男の一人が、口汚く秋紀を罵る言葉を吐いていきながら…逃げる
彼を追いかけて来た。
 他の人間も、それに必死になって続いていく。

 そうして…男達と、秋紀の鬼ごっこは…幕を開けたのだった―
 

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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