鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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四月の中旬、週末の夜。
今週は珍しく…仕事上がりに御堂のマンションに直行せずに、自分のアパートの
方へと戻っていた。
付き合いだしてからの週末は…二人で協力して、ほぼ同じくらいの時間帯に
仕事を片付けて…御堂の自家用車でマンションにという流れが基本だった為に
珍しい事態と言えた。
「月曜の朝に必ず必要な書類を…部屋に忘れるなんて、オレ…マヌケすぎるよな…」
そう、平日は自分のアパートで寝泊りしているのだが…昨晩仕上げて、本日に
渡す筈だった重要書類をうっかり忘れてしまっていたのだ。
月曜の朝には必ず必要になるので、御堂のマンションに向かう前には回収して
おかなければならなかった。
恐らく、御堂は今頃はすでに自室に戻って…克哉がいつ来ても良いように
準備をしてくれている事だろう。
アパートの階段を登りながら、例の書類を部屋のどこに置いたかを思い出して…
そして、その場に固まった。
「えっ…?」
階段を登り切ると同時に、克哉はその場に立ち尽くすしかなかった。
部屋の前に…予想もしていなかった人物が立っていたからだ。
これが片桐や本多とか、八課にいた頃の仲間とかだったら…自分の部屋の前に
誰かが立っていてもここまで驚かなかっただろう。
しかし…其処に立っていたのは、一人の綺麗な少年だった。
自分の記憶よりも少し大人びた雰囲気になって…より、人目を惹くようになった…
その少年の姿を見かけて、克哉は…ゴクン、と息を呑むしかなかった。
(どうして…あの子がオレの部屋の前にいるんだっ…?)
其処に立っていたのは、秋紀だった。
九ヶ月前、眼鏡を掛けた克哉が気まぐれに抱いた…一夜の相手。
お互いに名前以外の情報を殆ど交換していないのに、自宅になど辿りつける筈が
ない相手が…間違いなく其処に存在していた。
階段の前で、凍りつくしか出来なかった。
何故、この少年がここを見つけ出したのか…どうやって自分の住居まで探り出した
のかがまったく見当がつかない。
ドクン、ドクン、ドックン、ドックン…!
最初は荒くなった鼓動が、次第に激しいリズムを刻み始めていく。
背中から冷や汗が伝い、悪寒にも似た感覚が全身を走り抜けていった。
それくらい…今の克哉は驚き、緊張状態に陥っていた。
「あ…克哉さんっ! 本当に…本物、だ…!」
最初一目見た時は、確証が持てなかった秋紀も…今…階段を登ってきた
人物の顔を見て、ようやくそれが待ち人である事に気づいていく。
思い描いた印象よりも気弱そうで…髪も下ろしてあるし、眼鏡もなかったけれど
間違いない。
九ヶ月前に出会った、佐伯克哉本人である事は間違いなかった。
そう確信した秋紀は、真っ直ぐに愛しい相手の胸に向かって飛び込んで…
勢い良く抱きついていった。
「良かった! 僕…ずっと貴方を探していたんだよっ! 会えて…本当に
嬉しいっ!」
無邪気な顔をしながら、秋紀は自分の胸元に擦り寄っていた。
その姿は…本当に愛らしくて、可愛いと思う。
しかし今の克哉には…その整った風貌に見蕩れたり、感心したり出来る
心境とは程遠かった。
(どう、して…今になって、この子が…オレの部屋の前に…?)
克哉にとって秋紀は、自分の罪の象徴たる存在だった。
眼鏡を掛けて、自我を失っていた時に抱いてしまった…一夜の相手。
その事を後悔こそすれ、愛しいという感情とは無縁の存在だった。
なのに…あれからこれだけ長い時間が過ぎていても、この少年は一途に
自分を思い続けて…ついに自分を見つけ出したのだ。
今の克哉の胸にあるのは、これ程までにもう一人の自分を想ってくれていた
相手を九ヶ月も…何のけじめもつけずに放っておいてしまった、後悔だけだ。
「…ねえ、どうして…何も、言ってくれないの…?」
無言のまま、抱きしめ返すこともせずに…立ち尽くす克哉を訝しげに思った
のだろう。少し拗ねた顔をしながらこちらに問いかけてくる。
「…御免。まさか…君が部屋の前にいるとは、思わなかったから…本当に
びっくり、して…」
とりあえず、本当に思った事だけを口にしていく。
心底驚いたのは事実だったからだ。
「うん…僕も本当に貴方がここに帰ってくるか…半信半疑だったから。
怪しい眼鏡の人が僕に色々…貴方の事を教えてくれたんだけど、とても
信じられないような内容ばかりだったし。
だから…ここが貴方の部屋かどうかも判らなかったし、不安になりながら…
ここで待っていたんだけど。『眼鏡』を掛けていない貴方でも…
会えて、本当に良かった…」
「えっ…?」
その言葉を聞いた瞬間、秋紀からヒヤリとした空気が流れた気がした。
ぎょっとなって…自分の胸元に抱きついて来ている秋紀が…本当に、こちらが
陶然となるくらいに綺麗な笑みを、顔に刻んでいった。
それに一瞬、虚を突かれる形になっていた。
「眼鏡を掛けていない克哉さん、久しぶりに会えて…嬉しかったよ。
けど…僕が本当に会いたくて堪らないのは、眼鏡を掛けた方の貴方だから…。
だから、こうさせて貰うね?」
「うわっ!」
とびっきり無邪気な笑顔を浮かべながら、いつの間にか銀縁眼鏡を掛けさせられていた。
それと同時に、克哉の身体から…一気に力が抜けていく。
この感覚には、覚えがあった。
初めて…この銀縁眼鏡を掛けた時も、意識がゆっくりと遠くなって…それから頭が
すっきりと冴え渡るような感覚が走っていった。
それと同時に…克哉の意識が、ゆるやかに閉ざされ始めていって―。
「嫌だっ! 止めろっ! …これを、外して…くれっ!」
克哉の身体が、その場に崩れ落ちて…壁に凭れかかって、どうにか倒れ込む事だけは
阻止していた。
目の前の秋紀の顔を見つめながら、必死になって懇願する。
しかし…秋紀は、相変わらず愛らしい笑顔だけを浮かべて、サラリと言ってのける。
「ダメだよ。僕は…眼鏡を掛けた方の克哉さんをこの九ヶ月…必死になって探し続けた
んだから…。貴方じゃなくて、あの人に僕は会いたいんだ。だから…ね? 判って…?」
秋紀は相変わらず、綺麗に微笑み続ける。
その顔には…克哉に眼鏡を掛ける事の罪悪感など、一片も見当たらない。
自分がした事が、どのような結果を招く事になるのかも…全て承知の上でこの少年は
克哉に眼鏡を掛けたのだと…その顔を見れば、嫌でも判った。
(御堂さん、御堂さんっ…御堂さぁぁぁん!!)
必死になって、愛しい人の顔を思い出して…自分の意識を繋ごうと試みていく。
それでも、次第に克哉の意識は遠くなっていった。
眼鏡を振り外そうにも、すでに両腕は鉛のように重くなっていて…ただ手を顔の前に
持って来て、それを外すという簡単な動作すらも困難になっていた。
はあ、はあ…はあ…!
それでも、ギリギリまで克哉は粘った。
自分を取り戻す為に…競り上がってくるもう一つの意思に対して反抗し続けていた。
だが…それも、無駄な努力だった。
ふいに…克哉の背筋に…猛烈なまでの快感が走り抜けて、その瞬間…ガクリと
膝から力が抜けて…その場に崩れ落ちていく。
その瞬間、全てが逆転した―
『もう良いだろ…<オレ> お前はこの半年間…ずっと俺を差し置いて生き続けていた。
ここまで…俺を望んでくれる人間がいるのに、お前は…自分の都合で…俺をここに
閉じ込め続けるつもりなのか…?』
それは怒っているような、無感情のような静かな声。
しかし…その一言を聞いた瞬間に、克哉は自分が…身体の奥に閉じ込められて
いくような感覚を味わっていた。
今まで感じていた世界が、まるで間に大きなガラスが立ちふさがってしまったかのように
遠いものに感じられていく。
そう、今までは自分が…<彼>を閉じ込め続けていた。
あの例の銀縁眼鏡を放棄する事によって。
だから…これは、当然の結末だったというのだろうか?
『秋紀…久しぶりだな。良い子にしていたか…?』
『うん! 僕…良い子にしていたよ! そして…貴方が最後に言った…それ相応の
態度で振舞えって意味も考え続けていた…。聞いてくれますか?』
『良いだろう…言ってみろ。聞いてやるよ…!』
『…! ありがとうございます…。克哉さん、お願いします…どうか、どうか…僕を
貴方のものにして、下さい…!』
意識が遠くなる寸前、そんな二人のやり取りを聞いていた。
秋紀は必死になって克哉の身体に縋りつき、必死の形相で…もう一人の自分に
お願いし続けていた。
(止めろっ! これ以上…オレに罪を重ねさせないで、くれっ…!)
九ヶ月前は、克哉には恋人といえる存在はいなかった。
しかし今は違う。
身も心も結ばれた、とても大事な人がいるのだっ!
だから止めてくれっ! 応えないでくれっ! とガラスの向こうに広がる世界に
懸命に訴えかけていく。
だがその声が…二人に届く事はなかった。
『秋紀…お前だけは、<俺>を求めてくれるんだな…。それなら、お前の
望む通りに…して、やるよ…』
そうして、二人の唇が重なり…そのまま、アパートの部屋にもつれ込んでいく。
克哉はもう、声が涸れるまで叫び続けるしかなかった。
―止めてくれぇぇ!!!
しかし…もうすでに克哉の意識と、肉体は…眼鏡を掛けた事をキッカケに完全に
分断され、主導権は眼鏡を掛けた自分の方に移ってしまっていた。
そうして…まだ、克哉の意識が微かに繋がっている夜―
秋紀は、愛しい人の腕の中で…幸せな時間を九ヶ月ぶりに過ごしたのだった―
今週は珍しく…仕事上がりに御堂のマンションに直行せずに、自分のアパートの
方へと戻っていた。
付き合いだしてからの週末は…二人で協力して、ほぼ同じくらいの時間帯に
仕事を片付けて…御堂の自家用車でマンションにという流れが基本だった為に
珍しい事態と言えた。
「月曜の朝に必ず必要な書類を…部屋に忘れるなんて、オレ…マヌケすぎるよな…」
そう、平日は自分のアパートで寝泊りしているのだが…昨晩仕上げて、本日に
渡す筈だった重要書類をうっかり忘れてしまっていたのだ。
月曜の朝には必ず必要になるので、御堂のマンションに向かう前には回収して
おかなければならなかった。
恐らく、御堂は今頃はすでに自室に戻って…克哉がいつ来ても良いように
準備をしてくれている事だろう。
アパートの階段を登りながら、例の書類を部屋のどこに置いたかを思い出して…
そして、その場に固まった。
「えっ…?」
階段を登り切ると同時に、克哉はその場に立ち尽くすしかなかった。
部屋の前に…予想もしていなかった人物が立っていたからだ。
これが片桐や本多とか、八課にいた頃の仲間とかだったら…自分の部屋の前に
誰かが立っていてもここまで驚かなかっただろう。
しかし…其処に立っていたのは、一人の綺麗な少年だった。
自分の記憶よりも少し大人びた雰囲気になって…より、人目を惹くようになった…
その少年の姿を見かけて、克哉は…ゴクン、と息を呑むしかなかった。
(どうして…あの子がオレの部屋の前にいるんだっ…?)
其処に立っていたのは、秋紀だった。
九ヶ月前、眼鏡を掛けた克哉が気まぐれに抱いた…一夜の相手。
お互いに名前以外の情報を殆ど交換していないのに、自宅になど辿りつける筈が
ない相手が…間違いなく其処に存在していた。
階段の前で、凍りつくしか出来なかった。
何故、この少年がここを見つけ出したのか…どうやって自分の住居まで探り出した
のかがまったく見当がつかない。
ドクン、ドクン、ドックン、ドックン…!
最初は荒くなった鼓動が、次第に激しいリズムを刻み始めていく。
背中から冷や汗が伝い、悪寒にも似た感覚が全身を走り抜けていった。
それくらい…今の克哉は驚き、緊張状態に陥っていた。
「あ…克哉さんっ! 本当に…本物、だ…!」
最初一目見た時は、確証が持てなかった秋紀も…今…階段を登ってきた
人物の顔を見て、ようやくそれが待ち人である事に気づいていく。
思い描いた印象よりも気弱そうで…髪も下ろしてあるし、眼鏡もなかったけれど
間違いない。
九ヶ月前に出会った、佐伯克哉本人である事は間違いなかった。
そう確信した秋紀は、真っ直ぐに愛しい相手の胸に向かって飛び込んで…
勢い良く抱きついていった。
「良かった! 僕…ずっと貴方を探していたんだよっ! 会えて…本当に
嬉しいっ!」
無邪気な顔をしながら、秋紀は自分の胸元に擦り寄っていた。
その姿は…本当に愛らしくて、可愛いと思う。
しかし今の克哉には…その整った風貌に見蕩れたり、感心したり出来る
心境とは程遠かった。
(どう、して…今になって、この子が…オレの部屋の前に…?)
克哉にとって秋紀は、自分の罪の象徴たる存在だった。
眼鏡を掛けて、自我を失っていた時に抱いてしまった…一夜の相手。
その事を後悔こそすれ、愛しいという感情とは無縁の存在だった。
なのに…あれからこれだけ長い時間が過ぎていても、この少年は一途に
自分を思い続けて…ついに自分を見つけ出したのだ。
今の克哉の胸にあるのは、これ程までにもう一人の自分を想ってくれていた
相手を九ヶ月も…何のけじめもつけずに放っておいてしまった、後悔だけだ。
「…ねえ、どうして…何も、言ってくれないの…?」
無言のまま、抱きしめ返すこともせずに…立ち尽くす克哉を訝しげに思った
のだろう。少し拗ねた顔をしながらこちらに問いかけてくる。
「…御免。まさか…君が部屋の前にいるとは、思わなかったから…本当に
びっくり、して…」
とりあえず、本当に思った事だけを口にしていく。
心底驚いたのは事実だったからだ。
「うん…僕も本当に貴方がここに帰ってくるか…半信半疑だったから。
怪しい眼鏡の人が僕に色々…貴方の事を教えてくれたんだけど、とても
信じられないような内容ばかりだったし。
だから…ここが貴方の部屋かどうかも判らなかったし、不安になりながら…
ここで待っていたんだけど。『眼鏡』を掛けていない貴方でも…
会えて、本当に良かった…」
「えっ…?」
その言葉を聞いた瞬間、秋紀からヒヤリとした空気が流れた気がした。
ぎょっとなって…自分の胸元に抱きついて来ている秋紀が…本当に、こちらが
陶然となるくらいに綺麗な笑みを、顔に刻んでいった。
それに一瞬、虚を突かれる形になっていた。
「眼鏡を掛けていない克哉さん、久しぶりに会えて…嬉しかったよ。
けど…僕が本当に会いたくて堪らないのは、眼鏡を掛けた方の貴方だから…。
だから、こうさせて貰うね?」
「うわっ!」
とびっきり無邪気な笑顔を浮かべながら、いつの間にか銀縁眼鏡を掛けさせられていた。
それと同時に、克哉の身体から…一気に力が抜けていく。
この感覚には、覚えがあった。
初めて…この銀縁眼鏡を掛けた時も、意識がゆっくりと遠くなって…それから頭が
すっきりと冴え渡るような感覚が走っていった。
それと同時に…克哉の意識が、ゆるやかに閉ざされ始めていって―。
「嫌だっ! 止めろっ! …これを、外して…くれっ!」
克哉の身体が、その場に崩れ落ちて…壁に凭れかかって、どうにか倒れ込む事だけは
阻止していた。
目の前の秋紀の顔を見つめながら、必死になって懇願する。
しかし…秋紀は、相変わらず愛らしい笑顔だけを浮かべて、サラリと言ってのける。
「ダメだよ。僕は…眼鏡を掛けた方の克哉さんをこの九ヶ月…必死になって探し続けた
んだから…。貴方じゃなくて、あの人に僕は会いたいんだ。だから…ね? 判って…?」
秋紀は相変わらず、綺麗に微笑み続ける。
その顔には…克哉に眼鏡を掛ける事の罪悪感など、一片も見当たらない。
自分がした事が、どのような結果を招く事になるのかも…全て承知の上でこの少年は
克哉に眼鏡を掛けたのだと…その顔を見れば、嫌でも判った。
(御堂さん、御堂さんっ…御堂さぁぁぁん!!)
必死になって、愛しい人の顔を思い出して…自分の意識を繋ごうと試みていく。
それでも、次第に克哉の意識は遠くなっていった。
眼鏡を振り外そうにも、すでに両腕は鉛のように重くなっていて…ただ手を顔の前に
持って来て、それを外すという簡単な動作すらも困難になっていた。
はあ、はあ…はあ…!
それでも、ギリギリまで克哉は粘った。
自分を取り戻す為に…競り上がってくるもう一つの意思に対して反抗し続けていた。
だが…それも、無駄な努力だった。
ふいに…克哉の背筋に…猛烈なまでの快感が走り抜けて、その瞬間…ガクリと
膝から力が抜けて…その場に崩れ落ちていく。
その瞬間、全てが逆転した―
『もう良いだろ…<オレ> お前はこの半年間…ずっと俺を差し置いて生き続けていた。
ここまで…俺を望んでくれる人間がいるのに、お前は…自分の都合で…俺をここに
閉じ込め続けるつもりなのか…?』
それは怒っているような、無感情のような静かな声。
しかし…その一言を聞いた瞬間に、克哉は自分が…身体の奥に閉じ込められて
いくような感覚を味わっていた。
今まで感じていた世界が、まるで間に大きなガラスが立ちふさがってしまったかのように
遠いものに感じられていく。
そう、今までは自分が…<彼>を閉じ込め続けていた。
あの例の銀縁眼鏡を放棄する事によって。
だから…これは、当然の結末だったというのだろうか?
『秋紀…久しぶりだな。良い子にしていたか…?』
『うん! 僕…良い子にしていたよ! そして…貴方が最後に言った…それ相応の
態度で振舞えって意味も考え続けていた…。聞いてくれますか?』
『良いだろう…言ってみろ。聞いてやるよ…!』
『…! ありがとうございます…。克哉さん、お願いします…どうか、どうか…僕を
貴方のものにして、下さい…!』
意識が遠くなる寸前、そんな二人のやり取りを聞いていた。
秋紀は必死になって克哉の身体に縋りつき、必死の形相で…もう一人の自分に
お願いし続けていた。
(止めろっ! これ以上…オレに罪を重ねさせないで、くれっ…!)
九ヶ月前は、克哉には恋人といえる存在はいなかった。
しかし今は違う。
身も心も結ばれた、とても大事な人がいるのだっ!
だから止めてくれっ! 応えないでくれっ! とガラスの向こうに広がる世界に
懸命に訴えかけていく。
だがその声が…二人に届く事はなかった。
『秋紀…お前だけは、<俺>を求めてくれるんだな…。それなら、お前の
望む通りに…して、やるよ…』
そうして、二人の唇が重なり…そのまま、アパートの部屋にもつれ込んでいく。
克哉はもう、声が涸れるまで叫び続けるしかなかった。
―止めてくれぇぇ!!!
しかし…もうすでに克哉の意識と、肉体は…眼鏡を掛けた事をキッカケに完全に
分断され、主導権は眼鏡を掛けた自分の方に移ってしまっていた。
そうして…まだ、克哉の意識が微かに繋がっている夜―
秋紀は、愛しい人の腕の中で…幸せな時間を九ヶ月ぶりに過ごしたのだった―
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
鬼畜眼鏡にハマり込みました。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
当ブログサイトへのリンク方法
URL=http://yukio0201.blog.shinobi.jp/
リンクは同ジャンルの方はフリーです。気軽に切り貼りどうぞ。
…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
当ブログサイトへのリンク方法
URL=http://yukio0201.blog.shinobi.jp/
リンクは同ジャンルの方はフリーです。気軽に切り貼りどうぞ。
…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
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