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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 御堂が週末にバレンタインチョコを作ることを決意した翌日、御堂は
早起きをして…インターネットで、チョコを作成に必要そうな道具一式や
材料の類を吟味して、本日の夕方には届くように手配していた。
 流石この辺りは有能なビジネスマンである。
 心に決めれば行動が迅速であった。
 
 本日のスケジュールは…午前中は社内で二人で…これから取引を
していく会社の資料集めや、持ちかける企画内容を明確に伝える為の
書類作成。
 そして午後からは…二人で一緒に、これからの仕事上、欠かす事が
出来ない企業を二件…立て続けに挨拶に回っていた。
 克哉が設立した新会社はまだ正式な運営を始めてから二週間程度しか
経過していない新興のものだ。

 前職での付き合いがあった処も数多いが、新しく繋がった場所もそれなりに
ある。
 二人が出向した二社も、これから克哉が打ち立てるプロジェクトに必要不可欠と
判断された…新しく付き合い始める処である。
 繋がりを強化した方が良いと…二人で一緒に訪ねて、たっぷりと時間を掛けて
打ち合わせをしたおかげで…二社共、良い手応えを得る事が出来た。

 二件目の会社を後にした頃には…すっかりと、日が暮れてしまっていた。
 終業時間を迎えて、閑散としていたオフィス街に…帰宅途中のサラリーマンや
OLの姿が現れる時間帯。
 二人はそんな雑踏の中を颯爽と歩いて、最寄駅の方まで向かっていた。

(…この後、どうしようか…。行きたい店があるんだが…)

 御堂は、前を進む克哉の後を着いていきながら…考えあぐねいていた。
 二人で取引先に出向く前に…本日、やるべき仕事は全て終えてある。
 いつもの流れなら…このまま会社の方に戻って、同じビル内にある彼のマンションで
週末の夜を過ごすのだが…今日ばかりは気が進まなかった。
 …この二週間、やっと一緒に仕事に出来るようになったばかりのせいか…
週末は克哉は決して、御堂を離してくれなくなる。
 
 彼から告白されて、去られてから一年。
 再会してからは…一ヵ月半。
 殆ど一緒に過ごす事もなく、共に過ごす時間も大半は…恋人としてではなく
仕事上のパートナーとしてという現状は、一緒にいられる時間を濃密なものに変えて…
先週に至っては、金曜日から土曜日の夜に掛けては…殆どベッドから出ることも
叶わなかったくらいだ。

「どうしたものかな…」

 軽い溜息を突きながら、どうやって克哉に…誘いを断ろうかと考え始めていく。
 御堂とて、自分の恋人と一緒に甘い週末の時間を過ごしたい気持ちがある。
 だが…本日は夕方にチョコレート作成に必要な材料一式が届くし…明日は
実際に上手く作れるように練習に費やしたい。
 …克哉のマンションの方に行ってしまったら、どちらも出来なくなってしまうのは
明白だった。
 ついでに言うと…一度誘いに乗ったら最後、日曜日の夜まで離してくれなく
なってしまうかも知れない。
 そうしたら…こっそりと隠れて練習をする事など不可能になってしまう。
 …初めての季節イベント、どうせなら喜んで貰えるレベルのものを作って
コイツに贈ってあげたい。
 それを考えたら…今回は断るしかないのが、少し…辛かった。
 
 駅に辿り着く間際、やっと前を歩く克哉がこちらの方を振り返り…柔らかい笑みを
浮かべながらこちらに問いかけてくる。

「…御堂、今日は…俺の部屋に、来るか…?」

 問いかける言葉は、一応こちらの意思を尋ねてはいるけれど…声に自信が満ち溢れて
いて…こちらが承諾するのを疑わない響きが込められていた。

「いや…佐伯、すまないが…本日は少し用事がある。自宅に…必要な荷物が届くので
今日は遠慮させて貰おう…」

「そうか。なら…俺の方があんたのマンションに出向こう。それなら構わないだろう…?」

 その切り替えしに、一瞬…グっと言葉に詰まった。
 予想はしていたが…それをやられてしまうと、結局何も変わらない。
 舞台が克哉のマンションではなく、こちらのマンションになってしまっただけの事だ。
 これだけ…逢いたい、と言う気持ちを前面に出している克哉を前に…断りの言葉を
ぶつけるのは少し胸が痛んだ。
 だが…時に、一人になる事が必要な事もあるのだ。
 そう自分に言い聞かせて、更なる言葉を続けていった。

「…いや、すまない。今日の夕方から…明日に掛けては少しやりたいことがあるんだ。
 それが終わったら明日の午後には私の方から…君の部屋に出向いて、一緒の
時間を過ごさせてもらう。だから…本日の夜の誘いは申し訳ないが…遠慮させて
貰おう。悪いな…佐伯」

 苦笑しながら、彼にそう告げていくと…見る見る内に目を見開いていった。
 まさか、御堂が断ることなど予想もしていなかった顔だった。
 この男にそんな顔をさせられた事に少しだけ…優越感のようなものを覚えたが
気を取り直して、そのまま踵を返そうとした時―

 しっかりと克哉に、肩を掴まれてしまっていた。

「…俺よりも優先する事って、一体何だ…? 御堂…?」

「えっ…その、それは…っ!」

 克哉瞳の奥に、ふと…焦燥のようなものを感じて、一瞬背筋がヒヤリとした。
 チラリと見せた鋭い眼差しに…こちらの視線も囚われていってしまう。

「…俺に言えない、やましい事なのか…?」

「そんな訳がないだろう! だが…少し、君から離れて一人になりたいという事も
あるだけだ…。それくらいは良い大人なんだから、理解出来るだろう…?」

(…お前がいる前で、チョコレート作りの練習なんて出来る訳がないだろう…!)

 心の中で半ば叫んでいきながら、それでも諭すような言葉を紡いでいく。

「…判った、と言ってやりたいが…俺は本気で今夜、あんたと一緒に過ごしたいんだ。
ちゃんと理由を言ってもらわない限りは…納得出来そうもない。
 だから言ってくれないか…? 御堂…」

「…言えない。だが少しすればすぐに判る事だ。だから今は…黙って私を見送って
くれないか…佐伯」

「嫌だ」

 きっぱりと言い切られながら、瞳を覗きこまれていく。
 まるで駄々っ子のような彼の聞き分けのなさに…御堂は苛立っていった。

(…お前の為に、今夜は一旦…一人の時間を貰うだけなのに、何故…そんなに
寂しそうな顔をするんだ…?)

 それにかなり…後ろ髪を引かれる思いがしたが…それでも御堂は強い意志を持って
克哉の前から、駆け出して雑踏の方へと向かっていく。
 人波の中に紛れて…それを掻き分けて、御堂は…一旦、克哉を巻く作戦に
出たのだ。

「御堂、待てっ!」

 慌てて克哉が…御堂を追いかけていく。
 だが、彼は決して足を止める事も振り返る事もなく…雑踏の中に紛れ込んで…
すぐに姿が見えなくなった。

(すまない…佐伯。お前にはどうしても…これから向かう店も、マンションにも
一緒に向かわせる訳にはいかないんだ…!)

 そんなの、あまりに恥ずかしすぎるからだ。
 顔を赤く染めながら、相手に心の中で詫びて…御堂は全力で彼から離れていく。
 克哉は、必死に追いかけて…結局、御堂の姿を見失ってしまった時に…
道の真ん中で、懸命に大事な人を追い求めて辛そうな顔を浮かべていた―
 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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