鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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第二話 『ご飯ですよ~』 片桐稔
『ただいま~良い子にしていました? もんてん丸に静御前。今日もご飯が遅くなって
しまって、本当にごめんなさい…』
本日も遅くまでの残業のせいで、随分と長くこの子たちを待たせてしまいました。
声を掛けると、二匹のオカメインコは…盛大に僕を出迎えてくれました。
あぁ、出迎えてくれる存在が家にいるって良いですよね。
一人で暮らすようになってから結構な年月が過ぎていますが…今の僕はどれだけ
この子たちの存在に癒されているか判りません。
「えっと、今日は…基本配合飼料に、グリーンフード。あぁ…他にも冷蔵庫に小松菜が
あったから、それをちょっと与えてあげると良いかな。
あんまり栄養が偏ってしまうと身体の調子がおかしくなってしまいますしね…」
そうして、仕事で今日も疲れていましたけれど…大急ぎでこの子達のご飯を用意して
あげました。
ようやくご飯にありつけると二匹とも凄く嬉しそうにご飯を食べてくれます。
この様子を見ていると、一日の疲れも吹っ飛びます。
「あぁ…二匹とも、今日も凄く美味しそうに食べてくれて…。ふふ、本当にもんてん丸と
静御前は食欲旺盛ですねぇ…」
カゴの前で瞳を細めながら、この子達の様子を眺めるのは…僕にとっては
至福の一時です。
僕の方のご飯は残業時間中に本多君が買って来てくれた牛丼と野菜セットを
食べましたから…もう少ししたら、お風呂に入って寝る準備をしましょう…。
そう考えていた時、盛大に電話の音が鳴り響きました。
ジリリリリリン。ジリリリリリン。
…夜八時。
遅い時間帯の電話の音というのは、何か怖い気がしますよね。
特に僕みたいに一人暮らしの人間ですと、家中が静まり帰っていますから…。
何となくその瞬間、嫌な予感が走りましたけれど…取らない訳には行きません。
受話器を取って耳を宛がっていきます。
「はい…もしもし、片桐です」
すると、通話口からは若い女性の声が聞こえました。
…そして、中央病院の原口さんと名乗ってきました。
何故、病院の人がこんな時間帯に僕の家に電話を掛けて来られるのでしょう。
嫌な予感がしました。
「あの…病院の方がどうして、こんな時間帯に私の家に電話を掛けて来られたの
でしょうか…?」
恐る恐る、相手に尋ねていくと…とんでもない話を聞かされる事となりました。
その間、僕は全身が小刻みに震えていました。
受話器を握る手はうっすらと汗ばみ、心音も普段より荒いものになっていきます。
最初に零れた一言は…。
「嘘でしょう…まさか、彼が…」
ですが、無常にも電話口の女性は…「いえ、本当です。残念な事ですけれど…」と
こちらに同情的な口調で返答してきます。
信じたくありませんでした。
これが夢なら、さっさと覚めて欲しいとも願いました。
ですが僕がそんな事を想っても、現実の何かが変わる訳ではありません。
認めたくなかったですが…ただ、ぼうっと突っ立っている訳にはいきませんでした。
「判りました。あの…今から面会は可能ですか? それならそちらの住所を教えて
頂けると有難いのですが…」
原口さんは「ご家族の方にも連絡はつけられるでしょうか?」と尋ねて来ました。
確か佐伯君の実家は栃木県の方だった筈なので、すぐには駆けつけられないでしょうが
…一応、こちらの方で連絡はつけられる筈です。
後でこちらで連絡をしておきます、と言うと「お願いします」と頼まれていきました。
メモを取って住所と病院名を復唱していき…間違いがない事を確認すると丁寧に
挨拶をして、僕は本多君…そして佐伯君のご両親やタクシー会社に
大急ぎで連絡をしていきました。
皆、一様に驚いていましたが、心中は察せられます。
本当は八課の他の人達にも連絡したい気持ちはありましたけれど…僕も一刻も
早く彼の元に駆けつけたい気持ちでいっぱいでした。
「もんてん丸、静御前! せっかく帰って来たばかりですが…ちょっと行って来ます!
良い子に待っていて下さいね!」
本当なら少しぐらいこの子達を鳥かごから出して、自由にしてあげる時間を取って
あげたかったですが、あまり悠長な事は言ってられません。
僕は先程脱いだコートに大急ぎで袖を通していくと…先程手配したタクシーが
クラクションを一つ鳴らして家の前に待っていてくれました。
急いで中に乗り込んでいくと、運転手さんに先程のメモを手渡していきました。
「すみません! そのメモの住所に至急…お願い致します」
こちらがそう頼んでいきますと、運転手さんは快く引き受けて下さいました。
そしてタクシーが発進していきます。
その間、僕の心を占めるのは…腹部を刺されて重症を負ってしまった佐伯君の
事だけでした。
(どうして…佐伯君のような良い人が…公園で、誰かに刺されて危篤状態だ、なんて…
そんなの間違っている…!)
逸り、焦る気持ちを必死に押さえ込みながら…僕は彼が収容されている病院の方へ
向かいました。
どうか彼が助かりますように…。
心の中で強く祈りながら―僕は病院に辿り着いたら真っ先に集中治療室の方へと
駆けつけていきました―
『ただいま~良い子にしていました? もんてん丸に静御前。今日もご飯が遅くなって
しまって、本当にごめんなさい…』
本日も遅くまでの残業のせいで、随分と長くこの子たちを待たせてしまいました。
声を掛けると、二匹のオカメインコは…盛大に僕を出迎えてくれました。
あぁ、出迎えてくれる存在が家にいるって良いですよね。
一人で暮らすようになってから結構な年月が過ぎていますが…今の僕はどれだけ
この子たちの存在に癒されているか判りません。
「えっと、今日は…基本配合飼料に、グリーンフード。あぁ…他にも冷蔵庫に小松菜が
あったから、それをちょっと与えてあげると良いかな。
あんまり栄養が偏ってしまうと身体の調子がおかしくなってしまいますしね…」
そうして、仕事で今日も疲れていましたけれど…大急ぎでこの子達のご飯を用意して
あげました。
ようやくご飯にありつけると二匹とも凄く嬉しそうにご飯を食べてくれます。
この様子を見ていると、一日の疲れも吹っ飛びます。
「あぁ…二匹とも、今日も凄く美味しそうに食べてくれて…。ふふ、本当にもんてん丸と
静御前は食欲旺盛ですねぇ…」
カゴの前で瞳を細めながら、この子達の様子を眺めるのは…僕にとっては
至福の一時です。
僕の方のご飯は残業時間中に本多君が買って来てくれた牛丼と野菜セットを
食べましたから…もう少ししたら、お風呂に入って寝る準備をしましょう…。
そう考えていた時、盛大に電話の音が鳴り響きました。
ジリリリリリン。ジリリリリリン。
…夜八時。
遅い時間帯の電話の音というのは、何か怖い気がしますよね。
特に僕みたいに一人暮らしの人間ですと、家中が静まり帰っていますから…。
何となくその瞬間、嫌な予感が走りましたけれど…取らない訳には行きません。
受話器を取って耳を宛がっていきます。
「はい…もしもし、片桐です」
すると、通話口からは若い女性の声が聞こえました。
…そして、中央病院の原口さんと名乗ってきました。
何故、病院の人がこんな時間帯に僕の家に電話を掛けて来られるのでしょう。
嫌な予感がしました。
「あの…病院の方がどうして、こんな時間帯に私の家に電話を掛けて来られたの
でしょうか…?」
恐る恐る、相手に尋ねていくと…とんでもない話を聞かされる事となりました。
その間、僕は全身が小刻みに震えていました。
受話器を握る手はうっすらと汗ばみ、心音も普段より荒いものになっていきます。
最初に零れた一言は…。
「嘘でしょう…まさか、彼が…」
ですが、無常にも電話口の女性は…「いえ、本当です。残念な事ですけれど…」と
こちらに同情的な口調で返答してきます。
信じたくありませんでした。
これが夢なら、さっさと覚めて欲しいとも願いました。
ですが僕がそんな事を想っても、現実の何かが変わる訳ではありません。
認めたくなかったですが…ただ、ぼうっと突っ立っている訳にはいきませんでした。
「判りました。あの…今から面会は可能ですか? それならそちらの住所を教えて
頂けると有難いのですが…」
原口さんは「ご家族の方にも連絡はつけられるでしょうか?」と尋ねて来ました。
確か佐伯君の実家は栃木県の方だった筈なので、すぐには駆けつけられないでしょうが
…一応、こちらの方で連絡はつけられる筈です。
後でこちらで連絡をしておきます、と言うと「お願いします」と頼まれていきました。
メモを取って住所と病院名を復唱していき…間違いがない事を確認すると丁寧に
挨拶をして、僕は本多君…そして佐伯君のご両親やタクシー会社に
大急ぎで連絡をしていきました。
皆、一様に驚いていましたが、心中は察せられます。
本当は八課の他の人達にも連絡したい気持ちはありましたけれど…僕も一刻も
早く彼の元に駆けつけたい気持ちでいっぱいでした。
「もんてん丸、静御前! せっかく帰って来たばかりですが…ちょっと行って来ます!
良い子に待っていて下さいね!」
本当なら少しぐらいこの子達を鳥かごから出して、自由にしてあげる時間を取って
あげたかったですが、あまり悠長な事は言ってられません。
僕は先程脱いだコートに大急ぎで袖を通していくと…先程手配したタクシーが
クラクションを一つ鳴らして家の前に待っていてくれました。
急いで中に乗り込んでいくと、運転手さんに先程のメモを手渡していきました。
「すみません! そのメモの住所に至急…お願い致します」
こちらがそう頼んでいきますと、運転手さんは快く引き受けて下さいました。
そしてタクシーが発進していきます。
その間、僕の心を占めるのは…腹部を刺されて重症を負ってしまった佐伯君の
事だけでした。
(どうして…佐伯君のような良い人が…公園で、誰かに刺されて危篤状態だ、なんて…
そんなの間違っている…!)
逸り、焦る気持ちを必死に押さえ込みながら…僕は彼が収容されている病院の方へ
向かいました。
どうか彼が助かりますように…。
心の中で強く祈りながら―僕は病院に辿り着いたら真っ先に集中治療室の方へと
駆けつけていきました―
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
鬼畜眼鏡にハマり込みました。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
当ブログサイトへのリンク方法
URL=http://yukio0201.blog.shinobi.jp/
リンクは同ジャンルの方はフリーです。気軽に切り貼りどうぞ。
…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
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