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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 ―マンションを後にすると、冷たい空気で身が切られそうなくらいだった。

(あぁ…こんなに、外は寒かったんだな…)

 昨晩は少しの時間しか屋上にいなかったせいか、先程の出来事で心が
冷え切っているせいか…とても寒さを感じてしまっていた。
 暖めてくれるものがあれば良いと、無意識の内にそんな事を考えながら
克哉は深い溜息を突いた。

(あんな風に拒絶されると、やっぱり…ヘコむよな)

 さっきの眼鏡の態度をふと思い出し、つい涙ぐんでしまいそうだった。
 抱かれても良いと、メチャクチャにされても構わないと…最初からその覚悟で
目の前に現れた筈だったのに、それを果たす事が出来なかった。
 まるで夢遊病者のようにフラフラと彷徨い歩き、歩道橋の上に上っていき…
その縁へと身を凭れさせていく。
 昼間は渋滞ばかりしている道路も、22時半を越える頃には…車の通りも
まばらになっていく。
 代わりに視界の向こうに広がるネオンは、鮮やかなくらいだった。

 都会の空の下では、星の瞬きを見る事は出来ないという。
 いや…地上で輝く光があまりに強すぎて、三等星くらいまでの強い光を
持っている星じゃないと負けてしまって…肉眼で捉える事が出来なくなって
しまうのだそうだ。
 強い光は、弱い光を覆い隠して見えなくさせてしまう。
 自分の人生を放棄して、もう一人の自分に生を譲っても構わないと…抗う
事すら止めた人間など、眼鏡や御堂のように強い鮮烈な生の輝きを放つ
人間には霞んで、取るにも足らない存在に過ぎないのだろうか…。

(あれだけ余裕無くて、切羽詰った感じだったのに…御堂さんからの着信音を
聞くだけで理性を取り戻していたしな…)

 その事実に、何故か胸がズキン…と痛んだ。
 どうしてこんなに切ない想いをしなければいけないのか。
 そんな自分を不思議に感じながら、克哉は…かつての事を思い出していった。

 ―お前がどれだけあの人を想っていたのか。再会するまでの一年間…それを
一番間近で見続けたのは、オレだけだから…

 そう、眼鏡自身も御堂と訣別してからその想いを自覚した。
 脅迫、監禁、陵辱…訴えられても仕方ない振る舞いをしてまで御堂を追い詰めて
『自分の元に堕ちてこい』と言ったその動機。
 何が何でも御堂孝典という存在を手に入れようとしたしたその理由は…眼鏡が
あの人に憧れて、自分のいる位置まで引き摺り下ろそうとしたからだった。
 ボロボロになって廃人寸前にまで追い詰めた時にやっとその想いを自覚した
眼鏡は…あの人を解放し、その前から姿を消した。

 再会するまでの一年、どれだけあいつは…あの人を追い求めていたのだろう。
 探し出して、もう一度逢いたいと…強く望む気持ちと、彼の為に二度と自分は姿を
現してはいけないと葛藤し続けていた。
 …その頃には、克哉を弄りながら愉しげに犯した男の面影はなく。
 ただ、叶う事を望んではいけない恋に苦しむ存在に過ぎなくなっていった。

(お前は、本当に御堂さんを想って…その将来の為に自分の想いを押し殺し続けて
いたのを…誰よりも良く、知っている。だからオレは…)

 夢の中で、何度も…お前に抱かれた。
 御堂さんの代わりに…あの人の姿で―

 見ていられなかったから。
 諦めようとしている人間に、そんな振る舞いをするのがむしろ残酷である事は
判っていた筈なのに、どうしても…誰にも見せない心の深遠で、叫び続けているあいつに
何かしてやりたいと想った。
 同時にそれくらいしか、気づかれないで出来る事など…何もなかった。
 あいつは自分の存在など、すでに意識しなくなっていたし…呼びかける事もなかったから。
 心の世界では、形など幾らでも変えられる。
 だから…御堂として、自分は何度も何度も…あいつの心が、あの人を求めているのを感じると
その飢えをそういう形で、満たしていた。

(オレ…バカだよな。それで…深みにハマってしまって…)

 その夢で彼が心から愛しげに抱いていた御堂が、自分であった事など…恐らく言わなければ、
眼鏡は決して気づく事はないだろう。
 自分だけが抱いている、秘密。
 けれどその日々の中で…自分はあいつに、情を持ってしまっていた。
 内側から何も出来ない。
 特に最近のあいつは多忙すぎて、夢を見る暇もないくらいに…毎夜、深い眠りに就いていたから
余計に何も出来なくて。
 だからもどかしくて、苛立っている内に…Mr.Rの声を聞き、彼の提案を受け入れて…自分は
あいつの前に現れる決意をしたのだ。

「…今夜は、どこかのホテルにでも泊まろう…。あいつの怒りが解けるまで…後、何日
くらい掛かるかな…」

 暫く橋の上で逡巡していたが、身体が冷え切ってしまっていたので…そろそろ、今夜の
寝床となる場所を探さないといけないようだった。
 自らの身体をぎゅっと抱き締めながら、克哉は夜の街を当てもなく彷徨い歩いていく。

「…っ!」

 ふと蘇る、夢の中での…優しいあいつの眼差し。
 心から愛しいと、こちらに触れて抱いていたその記憶を思い出して一筋だけ
頬に涙が伝っていった。
 決して、自分自身にあの目が向けられる事がないと最初から判っていたのに…。
 あの人を一途に想うようになってからのアイツを想うようになったなど…最初から、
不毛極まりないのに…。
 どうしても克哉は、その気持ちを…自分の中から切り捨てる事は、出来なかった―

 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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