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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 ―全てを覆いつくすように激しい雨が降り注ぐ 
  確か以前にこんな雨が降った日も克哉にとっては
  辛い事が確かにあった。
  あの雨の日に…克哉は、御堂との縁が確かに切れてしまった
  なら、今度は本多を自分は失うのだろうか?
  そう思ったら辛くて、辛くて…涙が零れ続けた 
  この冷たい雨は、まるで…天が泣いているよう
  自分の気持ちに呼応して、雨は降り注ぎ続けていた―

  119に通報して、救急車の手配を終えると克哉は慌てて
車のボンネットの上に横たわっている本多の元へと駆けつけていった。

「本多! しっかりしろよ…!」

「…か、つや…か?」

 克哉が呼びかけると…本多は弱々しくこちらを振り向いて…笑顔を
刻んでいこうとしていた。
 だが激痛の為に、どうしてもそれは引きつったものになってしまっていた。

「そうだよ…! これ、一体何なんだよ! どうしてお前が…ここにいて、
こんな酷い状態になっていなきゃいけないんだよ! どうして…どうしてっ…!」

 克哉は混乱していた。
 本来ならこの後、御堂とこの付近で合流して…週末を一緒に過ごす予定だった。
 最初、この雨だから…と御堂に指定された通り、新しい会社の一階のロビーで
暫く待ち続けていた。
 だがいつまで待っても来ないので…問い合わせた処、御堂は自分と入れ違いに
外に出て行ったというのだ。
 御堂は当初、克哉を其処で待たせて…会社の前まで車で乗り付ける形で合流
する予定だった。
 その準備の最中に、本多と例の元工場長に捕まり…かなりの長い時間をロス
してしまった訳だが、克哉はこの時点ではその事実を知らなかった。

「…はは、御堂の奴が…ここで、車に轢かれそうになってよ。そうなって万が一の
事が、あったら…お前が泣くかな、と思っちまって。気づいたら庇って代わりに
跳ねられちまったよ…格好、悪いよな…」

「御堂さんが…?」

 その瞬間、バッと例の男を取り押さえている御堂の姿を仰ぎ見た。
 見る限り、御堂は無事そうだ。
 上等そうなスーツは雨に濡れてベショベショになっているが…本多と違って
大きな外傷らしきものはない。
 それだけが大きな救いであった。

「…御堂は、無事だぜ。俺が直前で…突き飛ばした、からな…」

「…そう、なんだ…。ありがとう…けど、オレはこんなの…望んじゃいなかったよ。
確かに…御堂さんは大切な人だけど、本多も…オレにとっては、大切な友達なんだ。
どっちを失っても…オレには辛いし、苦しいんだ…! それくらいは判れよ…」

 ボロボロ、と涙を零しながら…本多の顔を見つめていく。
 
「…泣く、なよ。俺は…大丈夫、だよ…。死には、しない…。俺の、頑丈さは…
学生時代からの付き合いのお前が、良く…知っている、だろ…?」

 本多の声は途切れ途切れで、弱々しくなっていた。
 だが、惚れた相手を安心させる為に必死で笑ってみせる。
 そう…死ぬつもりなんてない。
 ギリギリまで本多は生きる事を諦めるつもりはなかったから。
 それに幸いにも、地面に叩き付けられたり轢かれなかったりしたおかげで
かなりのスピードで跳ねられた割には本多の傷は軽度だった。
 アバラ骨数本ヒビ割れて、軽い腕の骨折。それと鞭打ちに…背面に大きな
ガラスの破片が幾つか突き刺さっている状態だった。
 それだけなら、命に別状はない。
 ただ問題なのは…ガラスが突き刺さったことにより微量ながら未だに出血が
続いている事と、冷たい雨に打たれている事だった。
 怪我で命を落とす心配がないとは言え、微量とは言え長時間出血が続けて
体温低下を引き起こせば危険な状態に陥るのは明白だった。

「あぁ…でも、凄ぇ、寒いな…。せめて、この雨だけでも…どうにか、
ならない…もの、かな…」

 本多も怪我を負った状態で10分以上、この雨に打たれ続けているのは堪えて
いるみたいだった。
 その時、克哉はハっとなって…大急ぎで先程落とした自分の傘を拾いに
向かっていく。
 
―そして自分が濡れるのも構わず、必死の形相で本多の身体の上に傘を
広げて…少しでもその身体が濡れるのを防いでいった。
 応急処置をしようにも、その知識も経験がない克哉には無理だった。
 それならばせめて…雨で濡れるのを少しでも防いでやりたかった。
 ぼんやりとぼやけている視界に、涙を流しながら必死の形相で…こちらに
傘を向けてくれている克哉の姿が入った。
 それだけで…どこか、本多は満たされた気持ちになった。

(…お前が、俺の為にそんな風に泣いてくれると…判っただけでも、
充分だな…)

 自分は確かに、失恋した。
 けれど…馬鹿な真似かも知れないが、その惚れた相手に対して何かを
出来たという事と、克哉が自分の事をここまで案じて…泣いてくれている姿を
見れただけでも、満たされる何かがあった。

「本多! もうじき救急車が来るから…! だからそれまで絶対に持ち堪えてくれ!
お前が死んだら、オレは…泣くからなっ!」

「あぁ、こんな…事で、くた…ばら、ねぇよ…。お前を、泣かせたくないから…な…」

 そうして、本多は無意識の内に克哉の顔に手を伸ばして…涙を拭う仕草を
してみせた。
 それと同時に…本多は意識を失っていく。
 その顔は…どこか、穏やかなものだった。

 同時に、遠くの方からパトカーのサイレンが鳴り響いていった。
 それを聞いて御堂が取り押さえていた男が…青ざめた顔をして、もがき
まくっていた。
 それは男の最後の抵抗。
 本来恨んでいた相手ではなく、別の人間を跳ねてしまったとは言え…罪は
罪だった。
 だが、男はこれが発覚したら更に妻子に軽蔑されると気づいてしまった。
 だから暴れて、抵抗し続ける。

「…大人しくして貰おう! 自分がした事に貴方は責任を持たないつもりか!」

「うるさい! 俺は捕まりたくないんだ…!」

 そうして、いきなり…男は全力で四つんばいの状態から立ち上がろうと
試みていく。
 その瞬間、男に乗り上げる形で押さえつけていた御堂の身体が不安定に
揺れてしまった。
 全力の人間というものは思いがけない力を発揮するものだ。
 御堂の身体がフワリと浮いて押さえつける力が緩んだ瞬間を見計らって…
男は逃走し始めていく。
 男の身体が、御堂の身体を押しのけていくと…その反動で、御堂は地面に
転がる羽目になった。
 それでもすぐに体制を整えて、必死に追いかけていく。

「待てっ!」

 逃がすつもりなどなかった。
 だから御堂は遮二無二、必死に追いかけ続けていく。
 だが駐車場の入り口の時点に差し掛かっていくと…一人の人影が其処に
立っていた。
 雨のせいで視界が効かなくなっていたせいで…それが誰だか、咄嗟に
判らなかった。

「その男を…捕まえてくれっ!」

 御堂はそれでも必死に、突然現れた人影に向かって声を掛けていく。
 だがそれを聞くよりも早く、その人物は自分の方に逃げてきた男に向かって
拳を叩きつけていった。
 その拳はみぞおちに吸い込まれて、一瞬にして元工場長であった男は意識を
失って、冷たいアスファルトの上に崩れ落ちていく。

「…随分と甘いですね。御堂さんは…これぐらいの事をしなければ、こういう
往生際の悪い男は…お縄になんてなりませんよ?」

 その男はいきなり、自分の名を呼んだ事に御堂は驚いていった。
 だが、ようやく近くに辿り着いて…その顔を見た時、信じられないものを
見たような思いになった。

「君は…!」

 とっさに、御堂は今来た道を振り返っていった。
 やはり大雨のせいで視界が悪いので遠くの方はすでにぼんやりとしか
見えなくなってしまっている。
 だが、黒い傘が掲げられているのだけは確認出来た。
 あの傘があるという事は、克哉は其処にいる筈だ。
 なのに…この現象は何だと言うのだ。

「お久しぶりですね…御堂さん」

 そういって、傲然と微笑む男は…かつて、二度だけ見た事があっただろうか?
 すっかりと弱々しく、穏やかに微笑む彼ばかりに接していたので…すでに
御堂の中では遠くなってしまった顔。
 自信に満ち溢れて、自分が知っている克哉の声よりも随分と低く迫力が
ある声音で…こちらの名前を呼んでいく。

「…どう、して…君が、ここにいるんだ…?」

 克哉は、本多の前で傘を掲げていた筈なのに…こちらに先に回りこんで
あの男の先手を打つなど「二人」いなければ不可能な筈だった。
 不可解な現象に御堂は困惑した顔を浮かべていく。

―そして、強気な笑みを刻みながら…目の前の男は口を開いていったのだった―
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HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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