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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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  ―最近、朝…誰かに見られているような気がしていた。

  駅の構内を早足で歩きながら…御堂孝典は難しい顔を浮かべながら、
もうじき問題の地点に指しかかろうとしていた。
 今朝も駅構内は多くのサラリーマンやOL等がひしめきあって、大きな人の波を
作り上げている。
 もう少し遅い時間帯に入ると、近場の学校等に向かい始める学生達の姿が
チラホラと混じり始めるので騒がしくなっていくが…今は皆、黙って目的地へと
向かっていく人間が多いように思えた。

 東京の都心部に存在する駅には幾つもの路線が重なり合っているおかげで
通路が入り組んでしまっている駅も多い。
 御堂が一度、乗り換えをするこの駅も…その例に漏れず、地下鉄と何本かの
JR線が通っているせいで知らない人間が歩いたら迷子になる事間違いなかった。
 しかしこの迷路のように入り組んだ幾つもの路線がどこに繋がっているか
把握をすれば…渋滞を起こしやすい都内を車で移動せずに済む、というメリットが
存在しているのもまた事実だった。

  新しい会社に入社してから、御堂は日によって車で通勤する日と…電車で行く日と
使い分けるようになっていた。
 御堂の新しい自宅からは、車で出社する場合…七時台にはすでに渋滞を
起こしてしまうポイントにぶつかってしまうからがその理由だった。

 渋滞などに朝から捕まって、万が一遅刻でもしてしまったら…新しい職場でも
すでにそれなりの地位についている御堂からしたら大きなロス以外の何物でもない。
 だから自然と、車で取引先を回る日は6時半には家を出て渋滞の時間帯を
避けるようにして…会社でのデスクワークが中心の日は、電車を使って出社までの
時間を自宅でゆったりと過ごすというリズムが出来上がっていた。

 御堂が電車を使うのは、そういう訳でスケジュールや予定によって前日に
ランダムで決まっている。
 何曜日には乗るとか、一定の法則性などなく…その日、出向する出先によって
大いに変動するのだ。

 だが、ここ二週間ぐらい…乗り換えの駅の通路を歩いている最中、強い
視線で誰かに見られているような気配を感じ続けていた。
 最初は気のせいだと思った。
 だが、何度も見られている内に自分の気のせいではないと確信するようになった。
 その眼差しを感じるポイントは、いつも決まっている。
 だから…本日こそ、その視線の主を確認しようと御堂はいつもより少しだけ
歩くスピードを落としていった。

 乗り換えの路線に続く通路は結構な距離があって…早足で歩かないといつも
御堂が乗っている時間帯の電車に乗り遅れてしまう。
 そのせいで御堂はいつも真っ直ぐに前を見据えて歩いて…立ち止まった事など
なかったのだ。
 だが、今朝は違う。
 あんな鋭い目で自分を見る人間が誰なのか、知りたかった。

―過去の御堂は、確かに強引なことを幾つもしたし…人を蹴落としたり、貶めたり
するような事を幾度もしてきた。

 それで恨みを買っているなら警戒した方が良いと思って…その人物を知る
決意を固めたのだった。
 固唾を呑んで問題の地点に差し掛かっていく。
 今朝は、いつもと違って人波に乗りつつも若干緩やかな足取りで進んでいく。

―周囲に目を凝らしていく。

 そして、信じられないものに遭遇していった。

(佐伯…っ?)

 まさか、と思った。
 ピッチリと整ったスーツに身を固めた長身の男が…こちらを見つめているのに
気づいた時、御堂は驚愕に目を見開いていく。
 
(何であいつが…こんな処に? あいつの今の自宅からMGNからだと…この
時間帯に決して、この駅にいる筈なんてないのに…!)

 以前に住んでいたマンションを解約して、新しい会社に移った時…万が一にもあの男と
遭遇したりしないように興信所を使って、御堂はちゃんと佐伯克哉の現住所みたいな
ものを調べておいたのだ。
 その上で…新しい住居を決定したのだから、絶対に会う筈がない。
 しかし…流れていく人波の中で、自分を凝視している人間など他に誰一人として
存在しない。
 誰もが、御堂という存在に無関心で歩き進んでいく中…強い視線で、こちらを見据えてくる
眼鏡を掛けた長身の男の姿だけが浮き上がって見えた。

「さ、えき…」

「っ…!」

 つい、足を止めながら…彼の名を呟いてしまっていた。
 まさか視線の主の正体が彼だなんて予想もしていなかっただけに…つい、驚きと
恐怖で…身体が竦んでしまっている。

―本当はそれ以外の感情も存在したが、御堂は敢えてそれに気づかない振りをした

「何で、君が…」

 知らない間に、確認しようと…彼の方へと近づいてしまっている。
 自分を監禁し、陵辱した男。
 十年掛けてMGNで築き上げた全てを奪って乗っ取った悪辣極まりない人物。
 それが佐伯克哉という人間だった。
 
(何で、あいつの顔を見て…こんな胸を引き絞られるような想いをしなければ
ならないんだ…!)

 自分でも、理由が判らなかった。
 けれど無意識の内に…男の方へと近づいていってしまう。
 人波を掻き分けるように、一歩…一歩と…近づくと、今度は克哉の方が…身体を
硬くして身構えてしまっているようだった。
 何とも言い難い、緊張した空気が二人の間だけに流れていく。

「佐伯っ!」

 今度こそはっきりと、彼の名前を呼んでいった。

 ビクンっ!

 その瞬間、男の全身が震えていく。
 そして…踵を返して、御堂から背を向けていく。

「待てっ…!」

 何故、追いかけようとしたのか自分でも判らなかった。
 けれど…どうしてか、聞きたかったのだ。
 絶対にこの駅にいる筈のない時間帯にあの男がいた理由を。
 どうしてあんな…切ないような、苦しいような…鋭い眼差しを自分に送り
続けていたのか、知りたかった。

 だが無常にも…どれだけ御堂が追いすがっても、克哉の足取りが止まる
事はなかった。
 近づこうとしても、行き交う多くの人間に阻まれて距離が縮まる事はない。
 そうしている間に…見失ってしまう。
 諦めて、その場から立ち去ろうとした瞬間…ふいに、かなり離れた処からこちらを
振り返った佐伯克哉を発見した。

―ドクン!

 心臓が大きく、波打っていく。
 それはあまりに…切迫した眼差しだった。
 瞳の奥に強い情熱を宿している、双眸。
 それに御堂は目を奪われて…意識を捉えられていく。

「さ、えき…どうして、君は…」

 そんな目で、私を見るんだ…?
 そんな疑問が浮かんでも、男は答えない。
 気づけば完全に、佐伯克哉を見失ってしまっていた。

「…何故、私を今になって…惑わせる、んだ…君、は…」

 御堂は知らぬ間に、力なく呟いていく。
 だがそんなささやかな心からの叫びは、多くの人間の生み出す喧騒によって
瞬く間に掻き消されていったのだった―
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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