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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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   御堂が正気に戻ってから…一ヶ月の月日が過ぎた。
  どれだけ苦しくても、必死になって身体を使い…身の回りの事は自力でするように
努力したおかげで、驚異的なスピードで回復していた。
 指先の感覚がきちんと戻り、長時間立っていても…足先から力が抜けるような事は
もうない。
 その為…御堂は克哉が使用している和食メインの料理本を開きながら…本日は夕食作りに
チャレンジをしていた。

「ふむふむ…包丁をこう使ってニンジンは大きめにザクザク切って…と…」

 本に書いてある通りの調理法を忠実に守りながら、肉じゃが用に
ジャガイモ、タマネギ、ニンジン、シラタキ等を丁度良い大きさに切っていく。
 一応一人暮らしをしていた期間が長い為、御堂は一通りの料理は
作る事が出来ていたのだが…イタリアンやフレンチ系のレシピが多かっただけに
肉ジャガなどは…殆ど作った事がない。
 あったとすれば…学生時代の調理実習でくらいだろう。

「見てろよ…佐伯。今日は私が夕食を予め作っておいて…びっくりさせてやろう…」

 何とも凶悪な笑みを浮かべながら、肉じゃがに必要な材料を全て切り終えていく。
 克哉は日中は…御堂の分の朝食と昼食は用意しておいて…自分が帰宅してから
二人分の夕食を作っていた。
 いつまでも克哉に食事を作って貰っている状況に、いい加減に焦れたので
本日…久しぶりに御堂が包丁を握っている訳だ。

 克哉への対抗意識が、今はみなぎる程のやる気に繋がっている。
 子なべに火を掛けて、ゴマ油を落としていって…それを軽く熱していく。
 少し湯気が出て来たくらの頃にブタ肉を切ったのを入れて丁寧に炒めていき
一通り熱が通ったら…ニンジン、ジャガイモ、タマネギの順に投下して火を
通していった。

 手順は完璧だ、と動くようになった自分の手先に満足しながら…仕上げに
麺ツユや日本酒、みりん等を入れてシラタキも投入していく。
 これで一煮立ちさせて…蓋を閉じて、暫く蒸らして置いておけば美味しい
肉じゃがの出来上がりだ。
 仕上がりを想像しながら…次は何を作るか頭を巡らしていると…ふいに
背後から抱きすくめられて、ぎょっとなった。

「なっ…!」

「ただいま、御堂…良い匂いだな…?」

 …十数分間、作る事に没頭していたおかげで…いつの間にか克哉が帰って来ていた事に
気づいてなかったらしい。
 御堂の髪にそっと顔を埋めて、項に軽く唇が触れていく。
 その感触に、思わずぎょっとなって…叫んでいた。

「さ、えき…それ、くすぐったいから…離れ、ろ…」

「嫌だね。俺の為にせっせと料理してくれている可愛い姿なんてみたら…
あんたを抱きしめたくなって、当然だろう…?」

「だ、誰がお前の為なんか、に…!」

「違うのか?」

 背後から御堂を抱きすくめた状態のまま、意地の悪そうな微笑を浮かべて
克哉が問いかけて来る。
 それに対して顔を真っ赤にしながら…御堂はぶっきらぼうに答えた。

「…いつまでも、お前に食事の世話になっているのが嫌なだけだ。これは私の
分だけを作っているだけだ…」

「へえ? その割には…子鍋いっぱいにあって…どうやっても二人分以上は
ありそうだけどな…?」

 図星を突かれて、御堂はぐっと答えに詰まっていく。
 彼の予定では…克哉が帰宅する頃を見計らって夕食を用意しておいて
びっくりさせるつもりだったのだ。
 私は、お前の世話ばかりになっている訳じゃないぞ。
 ここまで回復したんだぞ、と…そう訴えたくて、料理する事に踏み切ったのだ。
 しかしその製作途中に相手に見つかっただけじゃなくて…こんな風に背後から
抱きしめられたら、まるで新婚夫婦みたいである。
 それを自覚して、更に顔が火照り始める。

「…別に、一度に沢山作っておいても良いだろう…? その方が手間が省けて
面倒ではないし…」

「…くくっ、いい加減…認めろよ。俺の分も…作ってくれていた事実をな…」

「そんな事…っ!」

 と、相手の方を振り返った途端…唇を塞がれていた。
 一瞬…状況が理解出来なかった。
 しかし…視界いっぱいに相手の顔が移り、柔らかいものが唇に触れている事を
自覚した瞬間…御堂の頭は真っ白になり、抵抗も反論も一切出来なくなっていた。

「ん、んっ…」

 やんわりと唇を舐め上げられて、甘く吸い上げられる。
 わざと御堂の口内には侵入させず…唇の裂け目の浅い処や、輪郭を
辿るようにしながら…舌を這わせていく。
 その感触に鳥肌が立つくらいに…感じていく。
 相手のスーツの袖を咄嗟に掴んで…その感触に耐えなければ…そのまま
膝から崩れ落ちそうになるくらいに…感じてしまっていた。

「あっ…」

 久しぶりにされる甘いキスに…酔いしれそうになる。
 この一ヶ月…克哉は御堂の世話は欠かさずやっていたが…性的な意味で
触れてくる事はしなかった。
 最初の頃は入浴も少し手伝ってもらっていたが…二週間を過ぎる頃には
一切手を借りる事もなくなっていたし…肌を見せる事もなくなっていた。
 同時に…こうやって触れられることもまったくなかった。

「やっ…だ…さ、えき…や、め…」

「嫌、か…?」

 声の振動が唇に伝わってくる距離で、低い声で囁かれる。
 一瞬…眼鏡の奥で目を細めていた相手の瞳と目が合って…言葉に
詰まっていく。
 こんなキスをされたら、そこから腰から下が蕩けそうになって…力が
入らなくなる。
 それに…今、自分を支えている…彼への怒りや憎しみ。そういった感情が
綺麗に消え去ってしまいそうで…困惑した表情を浮かべていく。
 克哉はそれを拒絶と取ったのだろう。
 …ふっと目を伏せると腕を解いて…御堂から身体を離していく。

「嫌…なんだな。悪かった…御堂…」

「えっ…あ、あぁ…」

 つい、頷いてしまっていたが…こうあっさりと相手から解放されて、御堂の方も
困ったような表情になる。
 以前の彼であったのなら…自分が嫌だと言おうが泣き叫ぼうが、このまま行為に
及ばれていた事だろう。
 しかし今の克哉は違う。
 こちらが答えに詰まっているだけでもそっと腕を離して、解放してくれる。
 あまりの態度の違いに…御堂の方も、呆然とするしかなかった。

(いや、じゃないから…困っているんだ。…判ってくれ。それくらいは…)

 声にならない叫びを胸の奥に宿しながら、御堂は視線を戻していく。
 手に持っていた鍋の状況を見てぎょっとなった。

「わっ!! 佐伯の馬鹿! 火を使っている時に妙な事をしたから…肉じゃがが
少し焦げたじゃないか!! それに私が手を滑らせて鍋をひっくり返したりしたら
どうするつもりだったんだー!」

 慌てて火を止めて、ガスコンロから子鍋を開けていったが…中身の下の方が
うっすらと焦げて何とも香ばしい匂いが部屋中に漂っていく。
 危なかった…後、30秒も放置していたら香ばしいではなく、焦げた匂いになって
味も著しい劣化を免れなかっただろう。

「…すまない」

「判れば、良い。後…お前は座っていろ。今夜は私が夕食を作る。いつまでも
お前の世話になっているのは御免だからな」

「…あぁ、楽しみにしている。あんたの手料理なんて…初めてご馳走になるからな。
心して食べさせてもらおう…」

「あぁ…」

 そうして、相手の身体が遠ざかり…背面の状態のまま、克哉が部屋に
消えていく気配を感じ取った。

「…急に、あんな風に抱きしめるな…バカ…」

 短く、相手に向かって文句を言っていく。
 まだ心臓がバクバクと鳴っているのを自覚して、悔しそうに御堂が呟く。

「…一ヶ月も、私に何もしなかった癖に…」

 背中に少しだけ残っている相手の温もりを思い出し…それを振り払うように
頭を何度か横に振った後…御堂は夕食の準備に戻っていく。
 微かに残った相手の残り香が…余計に寂しさを強く感じさせる。
 何故、克哉が以前のように自分を抱かない事を…切なく思うのか
自分でもその理由を掴み切れず、御堂はギュっと瞼を閉じて…その感情を
抑えていくしかなかったのだった―

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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